来館・成約

紹介で来館した二人には、紹介者と同じ条件かを最初に確認する

紹介で来館した二人は、見学の前にすでに「ほぼ決まった話」を一つ持って来ます。紹介してくれた友人から聞いた金額、日程の取りやすさ、付いていた特典です。式場側はこれを知らないまま、いつもの手順で案内を始めてしまいがちです。

結論から書きます。紹介の二人には、案内の最初の5分で「紹介してくれた方から、どんな条件を聞いていますか」と聞いて、今の条件と違う点をその場で言葉にしておくほうが、成約を取りこぼしにくいです。理由は、条件の差が見積書の段階で初めて分かると、二人は式場に騙されたような気持ちになり、紹介してくれた友人にも気まずい報告をしなければならなくなるからです。

この記事に出てくる数字は、実在の調査ではなく、僕が置いた仮の前提です。式場ごとに値は違うので、自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

紹介の二人が持ち込む期待

広告や検索で来た二人は、式場の情報をほとんど白紙の状態で見ています。公式サイトの料金表と口コミを読んで、見学で実物を確かめます。判断の材料は、その場で出てくるものがほとんどです。

紹介の二人は違います。友人が挙式した本人から、体験談を聞いてから来ます。そのとき、次のような情報がすでに入っています。

  • 総額がいくらだったか
  • 人気の日取りが意外と取れたか
  • 料理やドレスで何が良かったか
  • 契約のときに何か特典や値引きがあったか
  • 担当者の名前と人柄

このうち、式場の側が毎回変えているものが二つあります。一つは金額です。料理の原価、会場の改装、プランの改定で、一年前の総額と今の総額は同じではありません。もう一つは特典です。紹介者が契約した時期にあったキャンペーンは、もう終わっているかもしれません。

友人は嘘をついているわけではありません。覚えている金額が少し古いか、人数や季節が違うだけです。ただ、聞いた二人にとっては、その金額が「基準」になります。

差が見積書で初めて分かると起きること

案内が一通り終わって、見積書が出てきた場面を考えます。

友人から聞いていた総額より、百万円近く高い数字が出ている。二人は何も言わず、「検討します」と答えて帰ります。そこで二人が考えていることは、おそらくこのあたりです。

  • 友人が言っていたのと違う。何か追加されたのではないか
  • 聞いていた額で契約できると思っていたのに、話が違う
  • 友人にこの式場を勧められたのに、高いと言ったら失礼かもしれない
  • 他の式場の見学に行って、そっちで決めてしまおう

最後の一つが厄介です。紹介で来た二人は、友人との関係があるので、断る理由を友人に説明しなければなりません。説明しづらいと感じた二人は、式場に何も言わず連絡をやめます。式場は、なぜ失注したのかが分からないまま、紹介で来た組の一つがなくなったとだけ記録します。

つまり、紹介の二人にとって、条件の差は価格の問題である前に、人間関係の問題です。式場の側が最初に差を言葉にしてあげると、二人は「友人には、時期が違うので金額が変わっていたと言えばいい」と整理できます。

最初の5分で聞くこと

見学の最初の5分は、すでに別の記事で書いたとおり、優先順位を聞く時間です。紹介の二人には、その中に質問を三つ足します。

  1. 紹介してくださった方は、どなたですか(名前を言いたくなければ、ご友人、ご親族といった関係だけで構いません)
  2. その方から、費用、日程、料理、特典について、聞いていることはありますか
  3. 一番印象に残っている話は何ですか

一つ目は、紹介者の名前を確認する意味もあります。紹介の記録を残すためには、誰が紹介したかが分かる必要があります。ただし、言いたくない二人には無理に聞きません。

二つ目が本題です。二人が「総額は350万円くらいと聞いています」と答えたら、そこでメモを取ります。式場の側が正確な今の数字を持っていれば、その場で「今の条件だと、同じ人数でこのくらいです」と答えられます。まだ見積もりを出す段階でなくても、方向だけは伝えられます。

三つ目は、二人が友人の挙式の何に惹かれたのかを知るための質問です。料理だったのか、チャペルの雰囲気だったのか、担当者の対応だったのか。ここで出てきた答えが、その後の案内の順番を決めます。

差を伝えるときの言い方

差を伝えるときに避けたいのは、「それは昔の話なので」と切り捨てる言い方です。友人の話を否定すると、二人は友人を否定されたように感じます。

次のような言い方が、使いやすいです。

  • 「ご友人の挙式は、いつごろでしたか。その時期は、○○のプランがありました。今は内容を変えているので、金額が少し動いています」
  • 「ご友人と同じ人数で見積もると、いまはこの範囲になります。人数が違うと、ここが変わります」
  • 「当時の特典は終わっていますが、今は別の形で○○を付けられます」

どれも、友人の話を事実として受け止めてから、いまの条件を並べています。差の理由は、式場の事情であって、友人の記憶違いではないと伝わるようにします。

ここで気をつけたいのは、期限で追う言い方にしないことです。「今月中なら同じ条件で」のような言い方は、紹介の二人にも不誠実に聞こえます。今の条件を、そのまま、先に言う。それだけで十分です。

紹介者と同じ条件を約束しない

もう一つ、式場の側で決めておくことがあります。紹介者と同じ値引きや特典を、紹介の二人にも付けるかどうかです。

付ける場合は、紹介特典として仕組みにします。付けない場合は、見学の最初に「紹介だからといって、金額が変わる仕組みはありません」と言えるようにします。どちらにするかが決まっていないと、担当者によって答えが違い、二人は「あの担当者はこう言った」と友人に話します。

紹介特典の損益は、別の記事で試算しました。前提を置いた計算では、紹介で成約が生まれる数が少ないので、特典が割高になりやすいという結果でした。ここでは損益ではなく、言い方の話に絞ります。特典を付けない運用にする式場は、紹介の二人に、最初の5分で「紹介者様向けの割引はありません。そのかわり、紹介の方にはご友人と同じ担当者がご案内できます」のように、代わりに渡せるものを言えるようにしておくと、断る場面が減ります。

仮の式場で考える

数字を置いて確かめます。実在の調査ではなく、考え方を見るための仮の前提です。

  • 年間の紹介来館は10組とする
  • そのうち、紹介者から聞いた条件と今の条件にズレがある組は4割とする。4組
  • ズレを最初に伝えなかった場合、見積書の場面で離脱する組が、そのうち半分とする。2組
  • 最初に伝えた場合、離脱する組は4分の1とする。1組
  • 契約した場合の総額は、仮に350万円とする

計算はこうなります。

  • 何もしないときの離脱は、4組 × 50% = 2組
  • 最初に伝えたときの離脱は、4組 × 25% = 1組
  • 差は1組。350万円の契約が1件増える計算です

1組は小さな数字です。ただ、紹介の二人は広告費がかかっていません。同じ350万円の契約でも、広告で取った1組より、集客コストが低く済んでいます。契約しなかった場合、紹介してくれた卒花嫁は、友人が別の式場に決めたと知ることになります。契約した場合は「勧めてよかった」という経験になり、次の紹介につながるかもしれません。

この計算の弱いところは、離脱の半分と4分の1という置き方です。根拠のある数字ではありません。ご自分の式場で試すなら、紹介の二人が見学を終えて契約に進んだかどうかを、半年間だけ記録してください。最初に条件を聞いた組と、聞かなかった組を比べれば、自分の会場の数字が出ます。

差が大きいときの扱い

差が小さければ、言い方の工夫で足ります。問題は、差が大きいときです。たとえば、友人の挙式は少人数のプランで、二人は大人数の披露宴を考えている。この場合、聞いていた総額と今の見積もりが離れるのは、時期のせいではなく、人数のせいです。

こういうときは、金額を並べる前に、友人の挙式がどんな規模だったかを聞きます。「ご友人は何名で挙げられましたか」と聞いて、二人の人数と比べます。人数が違えば、同じ式場でも総額が違うのは当然だと、二人も納得できます。

もう一つ、差が大きくなりやすいのが、日取りです。友人は閑散期の平日に挙げ、二人は人気の土曜を希望している、という組み合わせです。この場合も、日取りで金額が動く仕組みを先に見せると、「式場が高くした」ではなく「日が違うから」と受け取ってもらえます。

差の理由が式場の改定である場合だけ、少し気を使います。理由を説明しても、二人が高いと感じる事実は変わりません。そのときは、金額を下げる約束をするのではなく、二人の予算に合わせて何を削れるかを、見積もりの前に聞く形に切り替えます。削る順番を先に示す話は、別の記事で書いています。

紹介者の体験が良くなかった場合

もう一つ、聞いておきたいことがあります。紹介者が式場に不満を持っていた場合です。

紹介は、良い話だけで成り立つわけではありません。「式場自体は良かったけれど、打ち合わせの連絡が遅くて困った」という話も、二人は聞いている可能性があります。

三つ目の質問「一番印象に残っている話は何ですか」に、否定的な答えが返ってくることがあります。その場合は、言い訳をせず、「そのことは担当に共有します。いまは連絡の取り方を、こう変えています」と、改善した点を事実として伝えます。改善していないなら、約束はしません。できないことを約束して契約を取ると、次は契約後の不満になります。

答えを聞いた担当者は、あとで紹介者の担当だった人に、何があったのかを確認します。確認の結果は、二人に渡す情報ではなく、会場の改善に使います。

記録の取り方

運用を続けるために、記録は最小限にします。

  • 紹介者との関係(友人、親族、その他)
  • 二人が聞いていた条件(総額、日取り、特典のどれか)
  • 今の条件との差(なし、小、大)
  • 案内の最初に伝えたかどうか

これを予約管理の備考欄に一行で書くだけで構いません。半年たったら、差が「大」の組で、伝えた場合と伝えなかった場合の成約を数えます。10組しかないなら、傾向が見えるまでに一年かかるかもしれません。それでも、数えないままでは、運用を続けるかやめるかを決められません。

担当者に渡す一枚

担当者が変わっても同じ対応ができるよう、次の一枚を作っておくと便利です。

  • 最初に聞く質問(上の三つ)
  • 差が出やすい項目(総額、日取り、特典)の、いまの条件の一覧
  • 差を伝えるときの言い方の例
  • 紹介特典の有無と、無いときに代わりに伝えること

一覧は、料金やプランを改定するたびに更新します。更新を担当する人を一人決めておかないと、古い一覧が使われ続けます。

まとめ

  • 紹介の二人は、友人から聞いた金額・日程・特典を基準にして来館する
  • 条件の差が見積書で初めて分かると、二人は友人との関係を理由に、何も言わず離脱しやすい
  • 最初の5分で「どんな条件を聞いていますか」と聞き、今の条件との差を先に言葉にする
  • 友人の話は否定せず、差の理由を式場の事情として伝える
  • 紹介者と同じ条件を付けるかどうかを、会場として先に決めておく
  • 仮の前提では、離脱が2組から1組に減るだけでも、350万円の契約が1件増える
  • 半年間、聞いた組と聞かなかった組の成約を記録すれば、自会場の数字で判断できる