人前式の問い合わせには、できますの前に式の流れを返す
人前式の問い合わせに「はい、できます」とだけ返す式場は、思っているより多いはずです。間違いではありません。ただ、この返信は二人の疑問にほとんど答えていません。
人前式を考えている二人が知りたいのは、できるかどうかではなく、その式で自分たちに何が起きるのかです。誰が進行するのか、何分かかるのか、チャペルのままなのか、親族は何を見るのか。ここが分からないと、二人は返信を読んだあとも判断ができず、別の式場の返信と見比べ始めます。
この記事では、人前式の問い合わせに対して、可否より先に返すとよい情報を3つに絞って整理します。数字で証明できる話ではなく、問い合わせ対応の順番の話です。
人前式は少数派の相談ではなくなっている
まず、人前式がどのくらい選ばれているのかを確認します。
ゼクシィ結婚トレンド調査2023を引いた記事(serai.jp)によると、人前式の割合は全国推定で35.4%、首都圏で27.7%でした。同じ記事は、首都圏の2017年が22.7%だったことにも触れています。首都圏同士で比べると、6年で5ポイントほど増えた計算です。
この記事では、人気の中心は教会式で全体の約5割、人前式がそれに続いて約3割と書かれています。ただ、35.4%が同じ調査の同じ区分の数字なのかは、記事の文面からははっきり読み取れません。そのため僕は、「約3割前後で、増える向きにある」くらいの強さで受け取るのがよいと思っています。
ここで大事なのは正確な割合ではありません。人前式は、一部の変わった二人が聞いてくる特別な相談ではなく、問い合わせ全体の中にふつうに混ざっている相談だ、ということです。
特別な相談だと思って対応すると、返信が「個別確認します」「担当者から連絡します」になりがちです。ふつうの相談だと思えば、返信の型を前もって用意できます。
「できます」だけの返信で起きること
人前式の問い合わせを出す二人を、少し具体的に想像してみます。
二人は、気に入った式場のホームページを見ています。写真に写っているのは、白いチャペルとバージンロード、ステンドグラスです。教会式の写真しかありません。それでも式場の雰囲気は好きで、ゲストに誓う形の人前式にしたいと思っている。だから問い合わせフォームの自由記入欄に、こう書きます。
「人前式を考えていますが、こちらのチャペルでできますか?」
ここで返信が「はい、可能です。詳細は見学時にご案内します」だけだと、二人の頭の中には次の疑問が残ります。
- チャペルで人前式をすると、牧師さんや神父さん役はいないのか。誰が進めるのか
- 賛美歌や聖書の朗読は入るのか。入らないなら何を入れるのか
- 十字架やオルガンは、人前式のときはどうなっているのか
- 教会式と比べて、料金や準備の手間は変わるのか
見学で聞けばいいことばかりです。でも二人は、見学の予約を入れる前の段階で、この式場に行くかどうかを決めようとしています。疑問が残ったままの返信は、「聞かないと分からない式場」という印象で終わります。
もう一つ、見落とされやすい点があります。人前式を希望する二人は、チャペルに十字架があること自体を気にしていることがあります。宗教的な理由のときもあれば、ただ「自分たちの式の意味と違う」と感じているだけのこともあります。「できます」の一言では、その気持ちに触れる余地がありません。
可否より先に返す3つの情報
返信に入れるのは、次の3つです。長くする必要はありません。それぞれ一、二文で足ります。
1. 式の進行を誰が担当するか
人前式には、牧師や神父にあたる役がいません。式場によって、司会者が進行する、プランナーが進行する、二人の知人が立会人として進める、といった形があります。どの形で受けているのかを、最初に一文で書きます。
「当会場の人前式は、式場の司会者が進行します。ご友人に立会人をお願いする形も選べます」
この一文があるだけで、二人は式の絵を頭に描けます。逆に、ここが書かれていないと、二人は自分で一から想像するしかありません。
2. 教会式のときと何が変わるか
チャペルのある式場では、教会式の流れが標準になっています。人前式にすると、その流れのどこが変わるのかを、短く書きます。
たとえば、賛美歌の代わりに二人が選んだ曲を使える、聖書の朗読の代わりに誓いの言葉を二人が読む、指輪交換の前にゲスト全員で承認の拍手をする、といった具合です。式場ごとに違うので、これは自社の実際の運用を書きます。
ここで気をつけたいのは、「教会式の代わり」という言い方を避けることです。人前式を選ぶ二人にとって、教会式は「本来の形」ではありません。「教会式から外した式」ではなく、「別の式」として説明します。
3. 所要時間と、増える準備
教会式はおおむね決まった長さで進みますが、人前式は演出の入れ方で長さが変わります。誓いの言葉、承認の儀式、証明書への署名などを足すと、その分だけ時間が延びます。目安の時間を書いておくと、披露宴の開始時刻を決める二人の助けになります。
あわせて、二人が準備するものも書きます。誓いの言葉は二人が考えるのか、式場が文例を出すのか。署名する証明書は式場が用意するのか。準備の負担が見えると、二人は「やれそうかどうか」を判断できます。
所要時間の数字は、僕が作れるものではありません。会場ごとの実際の運用を、プランナーに確かめて入れてください。
公式サイトの挙式ページに置く順番
問い合わせの返信が整っても、公式サイトの挙式ページが教会式の写真だけだと、問い合わせの数そのものが増えません。人前式を考える二人は、ページを見た時点で「ここではできない式場かもしれない」と思い、フォームまで進まない可能性があるからです。
ここでは、挙式ページの見せ方を考えます。仮に、いまのページが次の順で並んでいるとします。
- チャペルの全景写真
- 教会式の流れ
- 料金
- 問い合わせボタン
この並びの中に、人前式の居場所はありません。次のように、人前式を独立した見出しで足すと、二人が探している情報の入口ができます。
- チャペルの全景写真
- 挙式のスタイル(教会式・人前式)
- 人前式の流れ(誰が進行するか、教会式との違い、所要時間)
- 料金
- 問い合わせボタン
ポイントは、人前式の説明を「よくある質問」の奥に埋めないことです。よくある質問は、疑問を持った二人が最後にたどり着く場所です。人前式を考える二人は、挙式ページを読む時点で人前式の情報を探しています。
見出しの言葉も、二人が検索する言葉に寄せます。「ご自由なスタイルの挙式」のような上品な表現より、「人前式」と書いたほうが、検索でも、ページを開いた二人の目にも引っかかります。
返信を用意するときの落とし穴
3つの情報を返信の型にするとき、起きやすい失敗が二つあります。
自社で受けていない形を「できます」と書く
人前式を受けた経験がほとんどない会場が、型だけ整えて「できます」と返すのは避けるべきです。見学で「実際にはあまり事例がなくて」と分かると、二人の信頼は下がります。受けた件数が少ないなら、少ないままを伝えたうえで、どこまで形にできるかを書くほうが、結局は成約につながります。
人前式を値引きの材料にする
教会式より準備が少ないから安い、と考える式場もあります。でも、人前式を選ぶ二人は、安さで選んでいるわけではありません。式の意味で選んでいます。料金の話を最初に出すと、二人は「予算の相談をされている」と受け取ることがあります。料金は、式の流れを伝えたあとに置きます。
問い合わせの数え方も変える
返信の型ができたら、人前式の相談がどのくらい来ているのかを数え始めます。方法は単純で、問い合わせの記録に「人前式の希望あり」の印を一つ足すだけです。
月に数件でも、印が付いた問い合わせのうち、何件が見学予約に進んだかを見ます。仮に人前式の相談が10件あって、見学予約に進んだのが2件だったとします。教会式の相談の予約率より低ければ、返信か挙式ページのどちらかが、人前式の二人に届いていないと読めます。
逆に、予約率が同じくらいなら、いまの対応で足りています。型を増やしたり、ページを作り直したりする必要はありません。数えた結果で、手を入れるかどうかを決めます。先に作り込んでから数えると、手間をかけた分だけ、結果を良く見たくなります。
数えるときに、見学後の動きも別に見ておくと役に立ちます。人前式を希望した二人が、見学のあとに契約に進んだのか、「検討します」で止まったのか。止まった二人の理由が、式の形への不安だったのか、料金だったのかは、見学中のやりとりで分かることが多いです。
返信文の例
最後に、3つの情報を入れた返信の例を置きます。数字や運用は、各会場の実際のものに置き換えて使ってください。
「お問い合わせありがとうございます。人前式は、当会場のチャペルで挙げていただけます。進行は式場の司会者が務め、ご友人に立会人をお願いする形も選べます。教会式との違いは、賛美歌と聖書の朗読の代わりに、お二人が選んだ曲と、お二人の言葉による誓いを入れられる点です。所要時間はおおよそ〇〇分で、誓いの言葉の準備は、文例をお渡ししながら一緒に決めていきます。ご見学の際に、チャペルの中で実際の位置関係をご覧いただけます」
この文面には、可否、進行、教会式との違い、所要時間、準備の負担、見学で見られるものが、六つ入っています。それでも長さは数行です。
まとめ
- 人前式は、ゼクシィ結婚トレンド調査2023を引いた記事で全国推定35.4%、首都圏27.7%と紹介されている。特別な相談ではなく、ふつうの相談として返信の型を用意しておく
- 「できます」だけの返信は、二人の疑問にほとんど答えていない。二人は式の可否より、何が起きる式なのかを知りたがっている
- 可否より先に返すのは、進行を誰が担当するか、教会式と何が変わるか、所要時間と増える準備の3つ
- 人前式を「教会式の代わり」として説明しない。別の式として説明する
- 公式サイトの挙式ページには、人前式を独立した見出しで置く。よくある質問の奥に埋めない
- 受けた経験が少ないなら、少ないままを伝える。料金の話は式の流れのあとに置く
