来館・成約

式場への「持ち込みできますか」には、可否より先に何をいつまでに聞く

「ドレスの持ち込みはできますか」「友人が作ったウェルカムボードを飾りたいんですが」。見学を予約する前の問い合わせで、こういう一文が混ざることがあります。式場側は反射的に、規定を見て「持ち込み料がかかります」「ドレスは提携店のみです」と返しがちです。

結論から書きます。持ち込みの質問への最初の返信は、できる・できないの一言で済ませないほうがいいです。先に「何を、いつまでに、誰が使うか」を聞き、条件を1枚にまとめて返す。そうすると、断る場合でも二人の心証が変わり、見学に来てもらえる確率が上がります。この記事では、なぜそうなるのかを仕組みで説明し、前提を置いた計算で、手間をかけて元が取れるかを確かめます。

先に断っておくと、この記事の数字は僕が置いた仮の前提と、そこからの計算です。業界の平均でも、どこかの式場の実績でもありません。自分の式場の数字に置き換えて読んでください。

持ち込みの質問は、「ダメと言われるか」を確かめる質問になっている

二人が持ち込みを聞くとき、頭の中ではおおよそこうなっています。やりたいことがすでにあって、それをこの式場でやれるかを確かめている。つまり、持ち込みの質問は「この式場は、僕たちのやりたいことを受け止めてくれるか」の試験です。

ここに「持ち込み料が3万円かかります」とだけ返すと、二人が受け取る意味は、料金の案内ではなく「この式場は規定を読み上げる式場だ」になります。別の式場にも同じ質問を送っていれば、「全部OKです」「相談に乗ります」と返してくる式場と、並べて比べられます。

見学前の問い合わせは、まだ二人がその式場を好きになる前の段階です。この段階で、できる・できないの一言を返すと、答えの中身より「温度」が比べられます。可否が同じでも、聞き返してくれた式場のほうが、相談しやすそうに見えます。

可否の前に聞く3つのこと

返信の最初に聞くのは、次の3つです。それぞれ、聞く理由が違います。

何を持ち込みたいのか

「持ち込み」と一言で言っても、ドレス、ワイン、カメラマン、引出物、装飾、ムービー、席札と、式場にとっての意味はまったく違います。粗利に直結するもの(ドレス、写真、引出物、飲み物)と、粗利にほとんど影響しないもの(手作りの小物、友人が書いた看板)では、答え方の重さが変わります。

質問が「持ち込みできますか」だけのときは、まず何のことなのかを確かめます。二人が考えているのが、手作りのウェルカムボード1枚なのに、式場が「衣装の持ち込み規定」を返してしまう、というすれ違いは意外に起きます。

いつまでに必要なのか

持ち込みには、締め切りがあります。ムービーは再生確認の日、装飾は搬入日、ワインは前日の受け取り。式場のほうで確認しておく期限があるので、二人が「いつごろ使うつもりか」を最初に聞いておくと、後から「その日程だと確認が間に合いません」と言わずに済みます。

もう一つ、挙式までまだ1年ある二人には、今すぐ決める必要がない話が多いはずです。このとき、期限を聞くことで「今は決めなくていい」と伝えられます。持ち込みの不安が、見学を先送りする理由になっている二人には、これが効きます。

誰が用意するのか

二人本人が作るのか、友人が作るのか、業者に頼むのか。これで、トラブルの起き方が違います。友人が作るものは「間に合わなかった」「出来が想像と違った」のときに代わりがありません。業者なら、納品書や保証があります。誰が責任を持つかは、式場が条件を決めるうえで一番大事な情報です。

返す1枚は、「できる」「条件つきでできる」「できない」の3段にする

聞くだけでは、返信になりません。聞いたあとに渡す1枚は、ざっくり3段に分けておくと使い回せます。

  • そのまま持ち込めるもの:手作りの小物、メッセージ、ウェルカムスペースに置く写真など。二人が準備に力を入れたくなる、粗利にほとんど影響しないもの
  • 条件つきで持ち込めるもの:ワイン、カメラマン、装飾、ムービーなど。持ち込み料、事前の確認日、搬入の時間などの条件を書く
  • お受けできないもの:式場の都合(安全・衛生・契約上の制約)で受けられないもの。受けられない理由を、一文で添える

「できない」の理由は、「規定なので」ではなく、二人にも納得できる言葉にします。たとえば食品の持ち込みなら、「万一のアレルギーや食中毒のとき、式場が責任を持てないので」。理由が分かれば、二人が別の方法(式場の提携先に頼む、別の形で用意する)を考えやすくなります。

この1枚は、持ち込みの質問が来るたびに書き起こすものではありません。一度つくって、公式サイトのFAQにも載せ、問い合わせのたびに必要な行だけ貼れるようにしておくものです。

手間と効果を、仮の数字で比べる

では、この段取りに手間をかけて元が取れるのかを、前提を置いて計算します。数字はすべて仮です。

  • 月の問い合わせは120件。うち持ち込みの質問を含むものは15%の18件(年216件)
  • 1組を成約したときの粗利は80万円
  • 見学に来た二人のうち、成約するのは25%。つまり1回の来館の期待粗利は、80万円×25%で20万円
  • 1枚をつくる手間は初回8時間、その後の更新は月1時間。時給換算で2,500円とすると、年間の手間は5万円

年5万円の手間が元を取るには、年に何件の来館が増えればいいか。5万円を、1回の来館の期待粗利20万円で割ると、0.25件です。年216件の持ち込み質問の中で、来館が4年に1回増えれば元が取れる計算になります。

別の言い方をします。持ち込み質問216件のうち、来館につながる割合が1ポイント上がると、増える来館は約2.2件。期待粗利にして約43万円です。3ポイント上がれば約130万円、5ポイントなら約216万円。この「ポイント」は仮の例で、実際にどれだけ上がるかは式場ごとに違います。ただ、元を取るために必要なのは0.1ポイント強(0.12ポイント)にすぎません。

ただし、条件つきで認める持ち込みが増えると、粗利は減る

ここまでの計算は、いいことしか見ていません。実際には、持ち込みを条件つきで認めるほど、式場が売るはずだった商品が減ります。この分を引かないと、判断を誤ります。

仮に、来館が3ポイント上がって来館が約6.5件増えたとして、そのために認めた持ち込みが増え、持ち込み1件あたりの粗利が10万円減るとします。

  • 認める持ち込みが年2件増える:粗利の減少は20万円。増えた来館の期待粗利約130万円から引いても、手間の5万円を引いて約105万円残る
  • 年4件増える:約85万円残る
  • 年8件増える:約45万円残る

この仮の前提では、持ち込みを8件増やしても黒字です。ただし、持ち込み1件で減る粗利が10万円ではなく50万円(ドレスやカメラマンのように粗利の大きいもの)なら、話は変わります。8件で400万円の減少になり、増えた来館の期待粗利を上回ります。

ここから出る判断は、次のとおりです。

  • 粗利の小さい持ち込み(手作りの小物、装飾の一部)は、広く「できる」にして構わない。見学の入口を広げる効果のほうが大きい
  • 粗利の大きい持ち込み(ドレス、写真、引出物)は、「できない」ままでも構わない。ただし、断る理由と、代わりに何ができるかを一緒に返す
  • その中間(ワイン、装飾の一部)は、持ち込み料を、式場が売る場合の粗利が残る額に置く

つまり、返信の書き方を変えても、持ち込みの規定そのものを緩めるかどうかは別の話です。規定は今のままで、返し方だけを変える。これでも、効果は出ます。

実際の返信文の組み立て

文面の流れは、次の順番にすると崩れません。

  1. 質問へのお礼と、見学前から相談してくれたことへの一言
  2. 「具体的なことが分かると、確かな答えを返せます」と添えて、何を・いつごろ・誰が用意するかを聞く
  3. 今分かる範囲の目安(粗利の小さいものは基本的にOKという方針、条件が付くものは確認が要ること)
  4. 見学のときに現物や写真を見せてもらえれば、その場で答えられる、という誘い(見学の予約ページへのリンク)

3 のところで、できないと決まっているものは、はっきり書きます。曖昧に濁すと、後で「聞いていない」という行き違いになります。ただし書き方は「お受けしておりません」でなく、「この理由でお受けできないのですが、代わりにこういう形ならご用意できます」。

そして4が、この返信のゴールです。持ち込みの質問への返信は、持ち込みの話を終わらせるためでなく、見学の予約につなぐためのものです。「現物を持ってきてください」の一文があると、二人にとって来館の理由が1つ増えます。

返信を変えるときの落とし穴

この段取りには、気をつけたい点が3つあります。

1つめは、聞きすぎることです。3つの質問を並べて、全部答えないと返信しない形にしてしまうと、二人には尋問のように感じられます。聞くのは「分かる範囲でいい」と添えて、答えがなくても最低限の返信をする形にしておきます。

2つめは、担当者によって答えが変わることです。1枚をつくる意味は、誰が返信しても同じ線で答えられることにもあります。持ち込みの可否を担当者の判断に任せると、「前の人は大丈夫と言った」というトラブルになります。

3つめは、条件の更新を忘れることです。提携先や持ち込み料は変わります。この1枚には更新日を書いて、月1回の見直しの日を決めておきます。古い条件を返してしまうと、契約後に揉める原因になります。

まとめ

  • 持ち込みの質問は、「この式場は僕たちのやりたいことを受け止めてくれるか」の試験になっている
  • 「できます」「できません」の一言で返すと、可否が同じでも、相談しやすさで比べられる
  • 最初に聞くのは「何を」「いつまでに」「誰が」の3つ。分かる範囲でいいと添える
  • 返す1枚は「そのまま」「条件つき」「お受けできない」の3段。断る理由は二人に分かる言葉で書く
  • 仮の前提では、年5万円の手間は、来館が4年に1回増えれば元が取れる
  • ただし粗利の大きい持ち込みを広く認めると、増えた来館の粗利を上回る場合がある。規定は今のまま、返し方だけを変える
  • 返信のゴールは持ち込みの話を終わらせることでなく、現物を持って見学に来てもらうこと