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式場の見積書に月々の目安を添えるのは、挙式までの月数で割ってから

見積書の総額の隣に、月々いくらと書き添える。携帯電話や家電の売り場ではごく普通に見る形ですが、結婚式場の見積書で同じことをしている会場は、僕が見聞きする範囲では多くありません。

書かない理由は想像がつきます。月々の数字を出すと安く見せているようで気が引ける、ローンの案内と混ざる、総額で勝負したい。どれも分かります。ただ、書かないことで起きていそうなことが一つあります。見学の席で総額を見た二人が、その金額を自分たちの毎月の暮らしに置き換えられないまま、「ちょっと持ち帰って考えます」と言って帰ってしまうことです。

この記事では、月々の目安を見積書に添えるかどうかを、式場の側から考えます。先に結論を書くと、添えるなら「契約から挙式までの月数」で割った数字にします。24回払いや36回払いのような、ローンの感覚で割った数字は出さないほうがいいと僕は考えています。理由は、式場への支払いが多くの会場で挙式の前に終わるからです。

なお、この記事の数字は、すべて僕が置いた仮の前提です。実在の式場の実績でも、調査の結果でもありません。自分の会場の総額、支払い条件、見学から挙式までの月数に入れ替えて読んでください。

総額が重く見える仕組み

二人は見学の席で、見積書の最下段にある総額を見ます。仮に380万円と書いてあったとします。

この数字は、二人の頭の中ですぐには何にもなりません。貯金がいくらあって、毎月いくら残せて、ボーナスがいくら出て、親がいくら出してくれそうか。それを一度に頭の中で組み合わせないと、380万円が多いのか少ないのか判断できないからです。

ここで多くの二人は、判断を先送りにします。数字が大きすぎて、その場で足し算ができない。だから持ち帰る。持ち帰った先では、他の式場の見積書と並べ、総額の安いほうに気持ちが傾きます。式場の側から見ると、見積書の中身をいちばん説明したい場面で、二人の頭が計算に使われていることになります。

月々の目安は、この足し算を一つ手前まで代わりにやってあげる役目です。ただし、代わりにやる計算が現実とずれていると、逆効果になります。

24回払いで割ると、実態とずれる

総額380万円を24で割ると、月々15.8万円です。36で割れば10.6万円。数字としては小さく見えます。

けれども、式場への支払いは分割払いが続くものではなく、会場によって違いはあるものの、挙式の前までに全額を払う形が多いはずです(支払いの期限は会場ごとに決めているので、自分の会場の契約書で確かめてください)。提携ローンを使う場合は別ですが、ローンは二人が式場以外の相手に返していく話で、見積書の数字とは別の契約になります。

そうすると、24回で割った月々15.8万円を見て「それなら払えそう」と思った二人は、契約後に請求を見て驚くことになります。実際には挙式の数か月前までに数百万円を用意しなければならず、月々15.8万円では済まないからです。

この食い違いは、契約直後の不安として戻ってきます。期待していた月々の負担と、実際の請求の差が、契約後の不信につながる。月々の目安を出すなら、この食い違いを作らない割り方にしておく必要があります。

挙式までの月数で割る

では、どう割るか。契約の日から挙式の日までの月数で割る方法です。二人が実際に用意しなければならない金額を、実際に用意できる月数で並べるだけの計算で、ローンの感覚は入りません。

次の表は、総額を3パターン、挙式までの月数を3パターン置いて、割ってみたものです。内金や前払いの細かい扱いは考えず、総額を月数で割っただけの単純な数字です(万円)。

総額 挙式まで6か月 挙式まで10か月 挙式まで14か月
300万円 50.0 30.0 21.4
380万円 63.3 38.0 27.1
460万円 76.7 46.0 32.9

380万円の見積もりで、挙式まで10か月あるなら、月々38万円です。これを見た二人の反応は、おそらく24回払いの15.8万円を見たときと全く違います。月38万円を貯金だけで積み立てるのは、多くの二人にとって現実的ではないからです。

ここで、二人の頭の中ではもう一つ計算が走ります。貯金から出せる額、ボーナス、親の援助、ご祝儀。足りない分を、どうするか。この計算に二人が自分で向き合えるようになることが、月々の目安を添える狙いです。

僕の考えでは、この表を見せることで契約が減る場面は確かにあります。減るのは、本当は払えない二人が、早めに分かってくれる分です。これは取りこぼしではなく、契約直後や内金の入金期限のあとに起きるキャンセルを、見学の席に前倒しすることだと思います。

ご祝儀と援助を、月々の数字に混ぜない

月々の目安に、ご祝儀や親の援助を引いた数字を載せたくなる場面があります。自己負担額を小さく見せられるからです。けれども、僕はこれを見積書に載せないほうがいいと考えています。

ご祝儀は、式の後に入ってくるお金です。式場への支払いが挙式の前に終わるなら、ご祝儀は支払いの原資になりません。ご祝儀を引いて「実質の自己負担」と書くと、挙式前に用意すべき現金の額が、二人の頭の中でぼやけます。

親の援助も同じで、金額も時期も、式場には分かりません。見積書に書けるのは、式場が確実に請求する額と、その支払い期限までです。二人が援助をいくら受けられるかは、見学の席で聞くことはできても、見積書に埋め込む数字ではありません。

月々の目安の隣には、小さく一行だけ添えておくくらいが、ちょうどいいと思います。たとえば次のような一文です。

この金額は、契約日から挙式日までの月数で総額を割ったものです。ご祝儀や親御様からの援助は含みません。

こう書いておけば、二人はこの数字を自分の状況に当てはめて、足し引きを自分でできます。

月々の目安を添えない方がいい場面

全員に添えればいいわけではありません。添えないほうがいい場面が、少なくとも2つあります。

一つは、挙式まで2〜3か月しかない二人です。割り算をすると月々150万円前後になり、現実離れした数字が出ます。この二人にとって大事なのは、月々の積み立てではなく、挙式前にまとめて用意する額と時期です。月々の数字ではなく、支払いの期限と金額を日付で並べた紙のほうが役に立ちます。

もう一つは、貯金や援助で全額を一括で払える二人です。月々の数字を出すと、「そんなに毎月は払えない」と受け取られて、かえって重く見えます。見学の最初の会話で、「お支払いはどのように考えていますか」と軽く聞いておき、一括を考えている二人には総額と期限だけを見せるほうが自然です。

つまり、月々の目安は見積書に最初から印字するものではなく、見学の席で聞いた二人の事情に合わせて、紙を替えるものだと僕は思います。全員の見積書に同じ欄を設けるより、必要な二人にだけ別紙で渡すくらいが丁度いい。

別紙の中身

別紙にするなら、載せるものは次の程度で十分です。

  • 見積もりの総額
  • 契約日から挙式日までの月数
  • 総額をその月数で割った金額(月々の目安)
  • 式場への支払い期限の一覧(内金、中間金、残金などの名前は会場ごとの呼び方で)
  • ご祝儀や援助を含まないという注記

最後の2つは必須です。期限の一覧がないと、月々の数字だけが独り歩きして、「毎月その額を払えば間に合う」と受け取られる可能性があります。実際には、会場の定める期限までにまとまった額を払うので、月々の積み立てと支払いの期限は別のものです。二人の積み立ての目安と、式場への実際の支払いの日付は、別々の紙、または同じ紙の別々の欄に置いておきます。

数字を出したあとの聞き方

別紙を渡して終わりにすると、二人の足し算は結局持ち帰りになります。渡したあとに、一言だけ聞いておくことが大切だと思います。

おすすめの聞き方は、「この月々の数字は、いまのお二人の毎月の貯金額と比べて、近いですか、遠いですか」です。近い、遠い、という二択に近い問いなら、答えやすい。遠いと言われたなら、そこから初めて「ボーナスや親御様のご援助でどのくらい補えそうですか」という次の問いに進めます。

この会話の流れは、見積もりを下げる話にも使えます。遠いと答えた二人には、人数を減らす、日取りを変える、演出を削るといった、総額を動かす選択肢を示せます。総額を動かす話が自然に始まるのは、月々の数字が二人の暮らしと比べられた後です。総額だけを見ているときに削る話を始めても、二人は削る理由が分からないままです。

仮の数字で、効果を見る

効果の見立てを、仮の数字で置いてみます。ここから先は、すべて僕が置いた前提です。

見学に来る二人が月40組、うち別紙を渡すのが半分の20組とします。別紙を渡した20組のうち、渡さなければ持ち帰ってそのまま連絡が途切れていた二人が、2組いたとします。2組が別紙のおかげで、持ち帰る前に家計の話を始めて、次の面談の予約を取った。成約率が3割とすると、0.6組が増える計算です。

成約1組の粗利を150万円と置くと、月に90万円。この数字は大きく見えますが、前提の「2組」は僕の想定で、実際に何組になるかは、会場ごとに別紙を試してみないと分かりません。逆に、別紙を渡しても何も変わらない可能性もあります。

試し方としては、1か月だけ、見学に来た二人のうち貯金や援助の話が出た二人に別紙を渡し、次回面談の予約が取れた割合を、別紙を渡さなかった二人と見比べます。母数が少ないので、はっきりした差は出ないかもしれません。それでも、紙を作る手間はほとんどなく、続けるかどうかの判断材料は残ります。

数字を並べるときに避けたいこと

最後に、避けたいことを3つだけ挙げます。

一つ目は、月々の数字を目立たせすぎることです。総額より大きな文字で月々を書くと、二人は金額の全体を見失います。総額は総額として、同じ紙の同じ大きさで残します。

二つ目は、24回や36回の割り方を、ローンの案内と混ぜて書くことです。ローンを案内するときは、ローンの会社の条件で、別の紙に書きます。二人にとって、式場に払うお金と、ローン会社に返すお金は別の話です。

三つ目は、月々の数字を見せて、その場で決断を迫ることです。月々の目安は、二人が自分たちの暮らしと比べるための道具で、押すための道具ではありません。押すために使うと、先ほど書いた契約後の不信が、早い時期に戻ってきます。

まとめ

  • 見積書の総額は、二人が自分たちの毎月の暮らしに置き換えられない。だから持ち帰りが起きる
  • 月々の目安を添えるなら、24回払いのようなローンの割り方ではなく、契約から挙式までの月数で総額を割る
  • 式場への支払いが挙式前に終わる会場では、ローンの感覚で割った数字は、契約後の請求との食い違いを生む
  • ご祝儀や親の援助は、月々の数字に混ぜない。式場が確実に請求する額と期限だけを書く
  • 挙式まで2〜3か月の二人や、一括で払える二人には、月々の数字より支払い期限の日付を渡す
  • 全員の見積書に印字せず、見学で聞いた事情に合わせて別紙で渡す。渡したあとに、いまの貯金額と近いか遠いかを聞く
  • 効果は仮の数字では測れない。1か月だけ試して、次回面談の予約が取れた割合を見比べる