契約後の振込手数料を式場が持つと、全3回で仮の式場は年32万円。持つなら内金の1回だけにすると年11万円で、不足入金の連絡も減らせる
契約書に「振込手数料はお客様のご負担でお願いします」と書いている式場は、多いと思います。一方で、手数料を式場が持つ式場もあります。どちらが正解かという話ではなく、僕は「持つなら何回目まで持つか」で考えると、数字がきれいに分かれると思っています。
結論から書きます。仮の式場で計算すると、内金・中間金・残金の3回すべての振込手数料を式場が持つと年32万円かかります。内金の1回だけなら年11万円です。そして、手数料を持つことで減る手間は、年2万円ほどにしかなりません。つまり、手数料を持つ理由を「事務の手間が減るから」に置くと、赤字になります。持つなら、二人への最初の信頼づくりとして持つ。そう割り切った1回分だけが、僕は筋のいい線だと考えています。
先に断っておくと、この記事に出典はありません。数字はすべて僕が置いた仮の前提で、実在の式場の実績ではありません。手数料の金額は銀行や振込の方法で変わるので、自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
仮の式場の前提
計算に使う前提を並べます。
- 年間の契約は240組
- 契約1組あたりの売上は350万円、粗利率は30%(粗利は1組あたり105万円)
- 二人の支払いは3回。内金、中間金、残金
- 振込手数料は1回440円とする(二人が自分の銀行から振り込むときに引かれる金額を、仮に置いた数字)
- 手数料を二人が負担するとき、二人は請求額ちょうどを振り込む。式場は何も払わない
- 式場が負担するとき、二人は手数料を差し引いた額を振り込んでよい。式場は請求額と入金額の差を、手数料として引き受ける
440円という数字は、僕が置いたものです。窓口、ATM、ネットバンキング、同じ銀行宛てかどうかで金額は違います。ここで大事なのは、金額そのものより、「1組あたりの総額に対して、手数料はごく小さい」という点です。
1組が3回払うと、手数料は1,320円です。売上350万円に対して、0.04%にもなりません。二人から見ても、350万円の支払いの中の1,320円は、ほとんど気になりません。ところが年240組で足し上げると、式場には数十万円の話になります。この「1組では小さく、全体では目に見える」大きさが、この判断をやっかいにしています。
3回すべてを式場が持つと年32万円
式場が全部持つ場合を計算します。
- 1回440円 × 3回 × 240組 = 316,800円
年間で約32万円です。粗利1組あたり105万円で割ると、0.3組分です。つまり、手数料を持つことで年に0.3組ぶんの契約が増えれば、元は取れます。0.3組というのは、240組に対して0.13%です。
ここで、「それなら持っても損しないのでは」と思うかもしれません。ただ、手数料を持つことで契約が増えるのかどうかは、会場側からはほとんど測れません。二人が「手数料は式場持ち」を理由に会場を選ぶとは、僕は考えにくいと思っています。見積もりの比較で並べるのは、総額やプランの中身です。1,320円の差が、契約の決め手になる場面は、仮にあっても数えるほどだと思います。
増えるかどうか分からない契約を理由に、毎年32万円を払い続ける。この判断は、「元が取れる」と言い切れる材料がありません。
手数料を持つ理由にしたい「手間の削減」は小さい
もう一つ、手数料を式場が持つ理由として挙がりやすいのが、事務の手間です。二人が手数料を引いて振り込むと、請求額に数百円足りない入金になります。この不足を、経理が見つけて、担当者が二人に連絡する。そういう流れが、毎回起きると思っているからです。
この手間を計算します。ここも前提を置きます。
- 手数料を二人が負担する場合、請求額に足りない入金(手数料を引いて振り込まれたもの)が、入金全体の8%あるとする
- 1件の不足を処理する工数は10分。経理の確認、担当者への共有、二人への連絡を全部足した時間
- 担当者の時給換算は2,000円
この前提だと、次のとおりです。
- 入金の総数 = 240組 × 3回 = 720件
- 不足の件数 = 720件 × 8% = 約58件
- 工数 = 58件 × 10分 = 約9.6時間
- 金額 = 約9.6時間 × 2,000円 = 約19,200円
年間で約1.9万円です。3回すべて持つ費用は31.7万円ですから、費用のほうが16倍以上大きい計算です。
8%という割合は、僕が置いた数字です。実際は、式場が請求書にどう書くか、二人が振り込む銀行、そもそも手数料を引いて振り込むという習慣が二人にどれだけあるか、で変わります。割合を4%から12%まで振っても、結果は次のとおりです。
| 不足の割合 | 不足の件数 | 年間の工数の金額 |
|---|---|---|
| 4% | 約29件 | 約9,600円 |
| 8% | 約58件 | 約19,200円 |
| 12% | 約86件 | 約28,800円 |
12%に置いても、年2.9万円です。手間の削減だけでは、32万円は回収できません。割合がもっと大きくても、工数が1件あたり10分より大きくても、桁は変わらないと思います。逆に言えば、不足の処理に1件1時間かかる式場なら話は別です。その場合は、手数料の負担より先に、入金の確認の流れを直したほうがいいと思います。
持つなら内金の1回だけ。年11万円
では、全く持たないのが正解かというと、僕はそうとも思いません。1回目の振込だけは別に考える価値があると思っています。理由は二つあります。
一つ目は、内金が二人にとって、式場への最初の支払いだということです。 内金は契約の直後に、数十万円単位で払うものです。ここで「手数料をご負担ください」という一文が請求書に書いてあるのと、「手数料は当館が負担します」と書いてあるのとでは、最初の取引の印象が少し違います。金額としては440円の差です。ただ、数十万円を払う最初の場面で、小さな追加負担を言われない。それだけで、二人が感じる「ちゃんとした会場だ」という安心は、わずかに変わるかもしれません。これは、測れない話です。測れないので、効くとは言い切れません。
二つ目は、内金の期限を守ってもらう目的と、相性がいいことです。 式場は、内金の入金期限が過ぎたときの連絡の段取りを持っています。期限を守ってもらうほど、後の連絡の手間も、人気日の枠を止める時間も減ります。期限内に振り込むことを二人にとって少しでも楽にするなら、手数料の心配を一つ消すことは、理にかなっています。「手数料を引いて振り込んでいいのか、別に足して振り込むのか」と迷って、二人が振り込みを後回しにする。そういう迷いの種を、最初の1回だけ消しておく。僕が考えているのは、この使い方です。
計算します。
- 440円 × 1回 × 240組 = 105,600円
年間で約11万円です。粗利1組あたり105万円で割ると、約0.1組分です。年に1組の10分の1ぶんの契約が増える、あるいは内金の遅れによる枠の停止が一度減る。その程度で元が取れる額です。3回すべて持つ場合の3分の1になります。
中間金と残金は、二人が負担する扱いにします。この2回は、すでに契約して打合せが進んでいる二人への請求です。迷いの種も小さく、期限を守る習慣もできています。手数料を持つ理由は、最初の1回ほど強くありません。
請求書の書き方で、不足入金の件数も変わる
手数料を誰が持つかを決めたら、次は請求書の書き方です。ここで、不足入金の件数がまた変わると思います。
手数料を二人が負担する回(中間金と残金)の請求書には、こう書きます。
- 振込金額は、請求額から手数料を引かずに、ちょうどの金額をお振り込みください
- 振込手数料は、お客様のご負担でお願いします
「ご負担でお願いします」だけだと、「手数料を足して振り込む」のか、「手数料は別途払う」のか、二人は迷います。「請求額ちょうどを振り込んでください。ここに手数料は含まれていません」と書けば、迷いは減ります。
手数料を式場が負担する回(内金)の請求書には、こう書きます。
- 振込手数料は当館が負担します。請求額から手数料を差し引いた金額で、お振り込みいただいて結構です
この書き方にすると、手数料を引いて振り込んでよいという許可が、二人に明確に伝わります。請求額ぴったりを振り込む二人も、手数料を引いて振り込む二人も、どちらも正しい振り込みになります。経理側は、請求額から手数料の上限(440円など)の範囲で差があるものを「入金済み」として扱うと決めておけば、不足の連絡はほぼ要りません。
ここで決めておくことが一つあります。差額が手数料の範囲を超えたときだけ、連絡する。 たとえば、請求額から1,000円以上足りない場合は、手数料以外の理由(金額の誤り、分割の誤解など)なので、連絡します。それ未満は、連絡せずに入金済みにします。この線を決めておくと、1件10分の処理が、ほとんどゼロになると思います。
判断の分かれ目
自分の会場に当てはめるときの分かれ目を、三つに分けます。
一つ目は、内金の遅れの割合です。 内金の入金が期限に遅れる二人が多い会場ほど、内金の手数料を持つ意味は大きくなります。遅れの理由に「手数料の扱いで迷った」が入っているなら、なおさらです。遅れの理由を、最近の10組で一度聞き取ってみると、この判断の材料になります。
二つ目は、手数料の実額です。 440円は、僕が置いた数字です。もし会場の主な銀行で、二人が払う手数料が平均で200円なら、全体の費用は半分以下になります。逆に、窓口やATMで1,000円近くかかるなら、内金だけでも年24万円です。実際の金額を、最近の入金の明細で確認してから決めます。
三つ目は、契約組数と単価です。 年に60組しか契約しない会場なら、内金の手数料は年2.6万円です。持っても持たなくても、ほとんど差が出ません。反対に年600組の会場なら、全3回で年79万円です。このとき、全部を式場が持つ話は、まず採用されないと思います。組数が増えるほど、手数料の負担は直線的に増える一方で、二人が感じる安心の差は増えないからです。
決めたあとに確かめること
内金の手数料を持つと決めたら、半年後に見るものを二つだけ決めておきます。
- 内金の入金が期限に遅れる割合は、前より下がったか
- 不足入金の連絡の件数は、前より減ったか
内金の遅れが下がっていなければ、手数料を持つ効果は見えていません。このとき、手数料を持つのをやめて、年11万円を別の使い方に回します。不足入金の連絡が減っていなければ、請求書の書き方か、経理の「入金済み」の線のどちらかが、決めたとおりに動いていません。
どちらも、実際の数字は会場ごとにしか出せません。この記事の数字は仮の前提です。ただ、「どの数字を、半年後に、どう比べるか」を先に決めておくことで、手数料を持つ判断を、気分ではなく数字で見直せるようになります。
まとめ
- 振込手数料は、1組3回で1,320円。350万円の売上に対して0.04%に満たず、二人にとっては小さな金額
- 仮の式場(年240組、手数料440円)で、3回すべてを式場が持つと年約32万円。粗利1組105万円の0.3組分にあたる
- 手数料を持つことで減る手間(不足入金の連絡)は、不足が入金の8%なら年約1.9万円。4%〜12%に振っても3万円に届かない
- 手間を理由に3回持つと赤字。持つなら、内金の1回だけにする(年約11万円)
- 内金は二人にとって最初の支払いで、期限を守ってもらう目的とも相性がいい。中間金と残金は二人の負担にする
- 請求書には、手数料を誰が持つかと、手数料を引いて振り込んでよいかを、回ごとにはっきり書く。手数料の範囲内の差は連絡せず入金済みにする
- 半年後に、内金の遅れの割合と不足入金の連絡の件数を見る。動いていなければ、持つのをやめて別の使い方に回す
