結婚式の提携ローンを案内するかどうかは、手数料率より「キャンセルのときローンを誰が止めるか」で決まる。仮の式場では、手数料1%なら年34万円、3%なら年101万円
結婚式の費用は、350万円前後の買い物です。現金で一括という二人ばかりではないので、「分割にできますか」と聞かれたことのある式場は多いと思います。
この記事の論点は1つです。提携ローンを式場が案内するかどうかは、手数料の率だけでは決まりません。 率は1〜3%の差でも、仮の式場では年34万円と年101万円に開きます。それより効いてくるのは、契約が解除になったときに「ローンを誰が、どの順で止めるか」を決めてあるかどうかです。ここが決まっていないと、二人は式場に払っていないお金のローンだけを払い続けることになりかねません。
先にお断りしておくと、手数料の率に公開された統計はありません。この記事の金額は、すべて前提を置いた仮の計算です。仕組みの部分だけ、公開されている資料で確かめています。
提携ローンの仕組みを3行で
一口に「ローン」といっても、二人の財布から見える形はいくつかあります。式場が絡むのは、主に提携ローンです。
三菱UFJ銀行の解説では、提携ローンは信販会社が扱うことが多く、融資金が式場に直接振り込まれる仕組みだと説明されています。二人はローンを組んで、式場への支払いに充てます。式場から見ると、二人から回収するはずだったお金が、信販会社や金融機関から入ってくる形です。
経済産業省の割賦販売法の資料では、信販会社が保証をして金融機関がお金を貸す「4者型」の提携ローンも、個別信用購入あっせんにあたると解されています。個別信用購入あっせんは、販売業者(ここでは式場)と信販会社が契約を結んで、二人がその場で個別に申し込む後払いの仕組みです。このため、信販会社は式場について調べる義務を負い、式場は信販会社と加盟店の契約を結ぶことになります。
ここから式場側に生まれるお金の動きは3つです。
- 手数料:信販会社が式場から取る。率は契約ごとに違い、公表された相場はありません
- 入金のタイミング:融資の実行日に、式場へまとめて入る。挙式の後の残金払いより早くなることがある
- 契約解除のときの取消:二人のローンと、式場との契約は別の契約。片方を解除しても、もう片方は自動では止まらない
この記事は、この3つを順に仮の数字に置いていきます。
仮の式場の置き方
数字は、次のように置きます。出典のある数字ではなく、計算を回すための仮置きです。
- 年間の成約:120組
- 1組の売上:350万円
- 1組の粗利:売上の35%で122.5万円
- ローンを使う二人:成約した組のうち10%または20%
- ローンで払う金額:売上の80%(280万円)
- 手数料:ローンで払った金額に対して1%、2%、3%。式場が負担する前提
「ローンを使う二人」の割合は、地域や客層で大きく変わると思います。10%と20%の2通りで見るのは、どちらが正しいかを言うためではなく、自分の会場の数字を入れて読み替えてもらうためです。
手数料の年間負担を計算する
年間のローン額は、120組に利用割合と280万円をかけます。
- 利用10%:12組、年3,360万円
- 利用20%:24組、年6,720万円
これに手数料率をかけたものが、式場の年間負担です。
| 手数料率 | 利用10% | 利用20% |
|---|---|---|
| 1% | 年34万円 | 年67万円 |
| 2% | 年67万円 | 年134万円 |
| 3% | 年101万円 | 年202万円 |
同じ「ローンを案内する」でも、利用20%で3%の契約なら、年202万円です。粗利が年1億4,700万円(122.5万円×120組)の式場だと、1.4%にあたります。小さくはない金額です。
元を取るのに、成約は何組増えればいいか
手数料は、ローンを使った組すべてにかかります。ところが、ローンがあったから契約した組は、そのうちの一部です。残りの組は、ローンがなくても契約したはずです。
元を取る条件は、手数料の年間負担を1組の粗利122.5万円で割った組数です。
- 手数料1%:利用10%で0.27組、利用20%で0.55組
- 手数料2%:利用10%で0.55組、利用20%で1.10組
- 手数料3%:利用10%で0.82組、利用20%で1.65組
利用10%で手数料が1%なら、ローンがあったから契約した組が年に0.27組いれば元が取れます。4年に1組です。一方、利用20%で3%なら、年に1.65組が必要です。
見る順番は、まず成約が増えるかどうかです。ローンがなくても契約していた二人にまで手数料を払っているので、「ローンを使ったから売上が上がった」とは言えません。ローンがあったから契約した組が、何組いたか。これを数えるには、契約のときに「分割できなければ他の式場にしていましたか」と聞くしかありません。聞く欄を契約書の控えに1行足すだけで、翌年には数字が出ます。
二人の側の負担も見ておく
二人から見ると、ローンは金利のかかる借金です。式場が手数料を持つ契約であっても、二人の金利がゼロになるわけではありません。説明のとき、金利の見え方を間違えないほうがいいので、仮の計算を置いておきます。
280万円を借りたとき、年率ごとの総返済額(元利均等)は次のとおりです。
| 年率 | 36回払い | 60回払い |
|---|---|---|
| 3% | 月8.1万円・利息13万円 | 月5.0万円・利息22万円 |
| 6% | 月8.5万円・利息27万円 | 月5.4万円・利息45万円 |
| 10% | 月9.0万円・利息45万円 | 月6.0万円・利息77万円 |
年率は仮置きです。実際は信販会社や金融機関で違うので、ここで言いたいのは水準ではありません。回数を36回から60回に延ばすと、月の負担は3万円ほど軽くなる一方、利息は倍近くなるという構造です。二人は月の額に目がいきやすいので、案内するときは月額と一緒に「利息の合計」を出しておくと、あとで「聞いていない」が起きにくくなります。
本題:契約解除のとき、ローンを誰が止めるか
ここからが、手数料の率より重い話です。
式場との契約を解除する場面は、年に何度か必ず出ます。二人の事情での解約もあれば、体調や仕事、家族の事情での延期もあります。このとき、現金払いなら流れは単純です。式場が規定に沿って返金額を計算し、二人に振り込みます。
ローンが入ると、お金の流れが2本になります。
- 式場と二人の契約(結婚式の提供と代金)
- 二人と信販会社・金融機関の契約(ローン)
融資金はすでに式場に入っています。式場が契約解除で一部を返金するなら、返金は式場から二人ではなく、信販会社に戻すのが普通です。二人がローンを組んでいる以上、二人の手元に返すと、二人は借金を残したまま現金だけ持つことになります。ただし、どちらに返すか、どの順で止めるかは、加盟店契約と契約書の書き方で変わります。ここは会場ごとの契約を確認する必要があり、この記事で一般論として断定はしません。
手順で整理すると、確認しておくことは5つです。
- 解除の連絡を受けたら、式場から信販会社に連絡を入れるのか、二人が連絡するのか
- 返金は信販会社に戻すのか、二人に払うのか。キャンセル料を引いた残りの金額を誰が計算するのか
- 信販会社への連絡から、ローンが止まるまでの日数。その間に引き落としが1回走る可能性はあるか
- 二人の側で、すでに払った月々の返済はどう扱うか
- ローン契約と式場契約の解除に、時間差が出た場合の責任を、契約書のどこに書いているか
この5つが決まっていない式場は、案内を始めない選択もあると思います。手数料を持っても、解約のときに二人から「ローンだけが残った」と言われると、式場の信用が傷つくからです。
契約前に聞いておく審査の話
もう1つ、契約のタイミングの話があります。ローンは審査があります。審査に通らなかったとき、二人は支払い方法を変えるか、契約をやめるかを選びます。
契約書を先に交わして、そのあとで審査が落ちると、式場は契約をどう扱うかを決めなければなりません。審査に落ちたから解除で、キャンセル料はなし、と決めている式場もあれば、現金に切り替えてもらう式場もあると思います。どちらがよいかは、契約の書き方次第です。決めておきたいのは、次の2点です。
- 審査結果が出るまで、契約書に押印しない(仮押さえの期間を使う)
- 押印したあとに審査が落ちたときの扱いを、契約書に1行書く
人気日の仮押さえが1週間なら、その間に審査の結果が出るかどうかが分かれ目になります。審査に数日かかるなら、仮押さえを延ばすか、審査を先に申し込んでもらうかのどちらかです。
案内するかどうかの分かれ目
ここまでを、判断の順番にします。
- 解除のときの取消の流れが、書面で決まっているか。決まっていなければ、案内しない。先に決める
- 手数料率と、自分の会場のローン利用割合から、年間負担を出す
- その金額を1組の粗利で割る。ローンがあったから契約した組が、その組数に届きそうか
- 届かないなら、手数料を二人に回す形(二人が金利の一部を持つ、あるいは手数料を持たない提携先に変える)を考える
- 案内するなら、月額と利息の合計を一緒に出す
3と4の判断は、会場の客層で変わります。客単価が高く、現金や一括払いが多い会場は、利用割合が低くなるので負担が小さくなります。一方、20代前半の二人が多い会場は、分割の希望が多いと思います。割合は会場の実績で見るのがいちばん確かです。
まとめ
- 提携ローンは、信販会社が式場に融資金を直接振り込む仕組み。経済産業省の資料では、4者型も個別信用購入あっせんにあたると解されている
- 手数料の率に公表された相場はない。仮に、売上350万円・ローン利用割合10〜20%・ローン額280万円で見ると、手数料1%で年34〜67万円、3%で年101〜202万円
- 元を取るのに要る成約は、手数料1%で0.27〜0.55組、3%で0.82〜1.65組。ローンがあったから契約した組は、契約時に聞かないと数えられない
- 二人には、月額と一緒に利息の合計を見せる。280万円を6%で借りると、36回で利息27万円、60回で45万円
- 手数料の率より先に決めるのは、契約解除のときにローンを止める手順。返金先、連絡する人、止まるまでの日数を書面にしておく
- 審査の結果が出る前に押印させない。押印後に落ちたときの扱いは、契約書に1行足す
