来館・成約

式場見学で黙っている側の二人に、質問を振る3つの場面

式場見学で、二人のうち片方ばかりが質問している。もう片方は相づちを打つだけで、ほとんど話さない。見学を何件かこなしたプランナーなら、一度は見たことのある光景だと思います。

この場面で、よく聞く判断があります。「質問してくれる側が前向きだから、手応えがある」というものです。僕はこれを、半分だけ当たっていて、半分は危ないと考えています。話す側の前向きさは、そのまま二人の前向きさではないからです。

この記事では、黙っている側の二人に式場が質問を振る場面を、3つに絞って整理します。数字の調査ではなく、見学の流れという構造から組み立てた話です。なので「業界全体でこうなっている」とは言いません。「仕組みとして、こうなりやすい」という範囲で書きます。

黙っている側の本音は、いつ出てくるのか

まず、黙っている理由を分けます。理由によって、質問の振り方が変わるからです。

  • 話すのが苦手で、相手に任せている
  • 会場に不満はないが、費用や日取りに引っかかりがあり、場で言い出しにくい
  • 実は乗り気でなく、見学そのものに付き合っているだけ
  • 親や職場など、二人の外に気がかりがある

外から見ると、この4つはどれも「黙っている」だけです。見分けはつきません。つかないから、式場側は「質問の形」で見分けるしかありません。

そして本音が出る時間帯には、偏りがあります。見学中は、目の前に会場があって、担当者が説明していて、隣に相手がいます。この状態で「実は不安です」と言うのは、思った以上にむずかしいことです。逆に、見学が終わって二人だけになった帰り道や、後日の話し合いでは、いきなり言いやすくなります。

結果として、式場の前では出なかった反対が、持ち帰った後に出ます。「検討します」の中身は、実はこの反対だったということがあります。式場側からは、失注の理由が見えません。

だから、見学中に本音を引き出す場面を、あらかじめ決めておく。これがこの記事の中心です。

場面1:会場の見せ場の直後に、感想でなく「選択」を聞く

最初の場面は、挙式会場や宴会場など、いちばん見せたい場所を案内した直後です。

多くの担当者は、ここで「いかがですか」と聞きます。ところが「いかがですか」は、答えやすい人しか答えません。話す側が「素敵ですね」と返して終わり、黙っている側は頷くだけです。

聞き方を、感想から選択に変えます。

  • 「この高さの天井と、もう少し落ち着いた広さの会場だと、お二人はどちらが好みに近いですか」
  • 「入場のとき、扉が開く瞬間をにぎやかにしたい派ですか、静かに迎えたい派ですか」

選択の質問には、正解がありません。そして、答えるのは「好み」であって「判断」ではないので、黙っている側にとっても重くありません。

ここで大事なのは、質問を振る相手を、体の向きと視線で先に決めることです。話す側に質問して、その流れで黙っている側にも聞くのでは、遅いです。先に黙っている側に向かって、「〇〇さんは、どちらが近いですか」と聞きます。

答えの中身より、答え方を見ます。迷いなく選ぶなら、会場に違和感はありません。「どっちでも」「相手に合わせます」なら、この時点では判断材料が少ないと読みます。決めつけは禁物です。ただ、「どっちでも」が続くようなら、次の場面の質問を厚くします。

場面2:見積もりの前に、「引っかかる項目」を先に書いてもらう

2つ目の場面は、見積もりを見せる直前です。

見積もりの説明は、費用に不安がある人にとって、いちばん発言しにくい時間です。金額を見て「高い」と思っても、目の前で口にするのは気が引けます。しかも、隣の相手が前向きなら、なおさら言いにくい。

ここで効くのは、口頭の質問ではなく、紙に書いてもらう形です。

見積もりを出す前に、1枚の紙を渡します。項目は3つで十分です。

  1. 思っていたより高かったもの
  2. 思っていたより安かったもの
  3. これは何のお金か分からないもの

この3つを、二人それぞれに、別々に書いてもらいます。同時に書くのがコツです。片方が先に口に出すと、もう片方の答えが引っ張られます。

紙にする利点は、言い出しにくさを減らせることです。口にすると「反対した」という形になりますが、紙に書くのは「感想を書いた」だけで済みます。そのうえ、担当者は紙を見て、説明の優先順位を変えられます。

注意点があります。この紙は、聞き取りであって、値引きの交渉材料ではありません。「ここが高いんですね、下げられます」と反射的に返すと、二人は「書くと下がる」と覚えます。次の見学先でも同じことをします。受け取ったら、まず「教えてくださってありがとうございます」と受け、どの項目がなぜその金額なのかを説明する。値段の調整が必要かどうかは、その後に判断します。

場面3:見学の終わりに、「今日の帰り道で話すこと」を一緒に決める

3つ目の場面は、見学の最後です。

ここまでの2つが「見学中に聞く」工夫だとすれば、3つ目は「見学中に聞けなかったことを、帰り道に持ち帰る」工夫です。

黙っている側の本音は、帰り道に出ます。それなら、帰り道の話題を、式場から渡してしまいます。

  • 「今日お話しした中で、お二人それぞれが気になった点を、1つずつ挙げてもらえますか」
  • 「帰りの電車で話すなら、日取りと予算とどちらからになりそうですか」

大切なのは、帰り道の話し合いが、反対意見を出しやすい場になるよう、枠をつくっておくことです。「お二人でよく話し合ってくださいね」という一言は、親切に聞こえますが、話題がないので、結局は話しやすい側の意見に寄ります。

話題を渡すときは、式場の都合ではなく、二人の都合に合わせます。「お二人が、今日いちばん引っかかった点を、一つだけ教えてください」と聞けば、黙っていた側も答えやすくなります。答えた内容は、メモに残し、追客の連絡で「前回〇〇が気になるとおっしゃっていた点について」と使います。

3つの場面を、1回の見学にどう並べるか

3つとも毎回やる必要はありません。見学の長さを2時間とすると、おおまかに次の配置になります。

  • 会場案内の中盤:場面1。選択の質問を、黙っている側へ先に向ける
  • 見積もりの直前:場面2。紙の3項目を、二人別々に書いてもらう
  • 見学の終盤:場面3。帰り道の話題を決める

時間が押したら、場面2を残します。費用の引っかかりは、持ち帰った後の反対の中で、最も理由として挙がりやすいところだからです。これは調査の数字ではなく、見積もりの説明が最も言い出しにくい場面だという構造からの判断です。

やってはいけない振り方

質問を振る場面を増やすと、逆効果になる場合もあります。

  • 「〇〇さんはどう思いますか」と名指しで意見を求める:発言が苦手な人にとって、名指しは圧になります。選択肢を出して選んでもらう形にします
  • 答えが遅れても、先に話す側が代わりに答えてしまうのを放置する:待つ時間を3秒ほど取り、それでも出なければ、聞き方を変えます
  • 黙っている側を「決裁者でない」と扱う:決めるのは二人です。どちらかが了承しなければ、契約は進みません
  • 反対意見が出たとき、すぐ言い返す:まず受け止めて、条件を確認します

名指しの圧を避けることと、黙ったままにしてしまうことは、別の問題です。選択肢を用意して聞くのは、その両方を避けるための方法です。

仮に、見学の5組に1組で黙っている側がいたとすると

数字の例を1つ置きます。これは調査の数字ではなく、考え方を見るための仮定です。

仮に、月に40組の見学があり、そのうち5組に1組、つまり8組で、片方がほとんど話さなかったとします。8組のうち、見学中に本音を拾えなかったために、後日に「やはり考えたい」と辞退された組が、仮に2組あったとします。

月に2組の差は、成約単価を仮に300万円とすると、月あたり600万円の売上に相当します。もちろん、この2組が全員契約に至るわけではありません。ただ、見学中に拾えていれば、料金の説明を変える、日取りを提案し直すなどの手を打てた可能性があります。

この計算で見てほしいのは、金額ではなく構造です。黙っている側の本音を拾うことは、成約率を上げる手段というより、失注の理由を見学中に取り出す手段だということです。理由が見えれば、手が打てます。見えなければ、「検討します」の後で連絡が途絶えるだけです。

見学後の記録に、「誰がどこで反応したか」を残す

最後に、記録のことです。

見学の記録には、多くの場合、二人の希望や予算が書かれています。ここに、二人それぞれの反応を足すと、追客の質が変わります。

  • 場面1で、黙っていた側が選んだのは何か
  • 場面2の紙に、引っかかりとして書かれた項目は何か
  • 場面3で、帰り道の話題として挙がったのは何か

三行で十分です。担当者が交代したときや、数週間後に連絡するときに、この三行が、二人の本音への手がかりになります。

まとめ

  • 見学で話す側の前向きさは、二人の前向きさとは限りません。黙っている側の本音は、契約の直前や持ち帰り後に出てきやすいです
  • 場面1:会場の見せ場の直後に、感想でなく選択肢を出して、黙っている側へ先に向けて聞きます
  • 場面2:見積もりの前に、「高かったもの・安かったもの・分からないもの」を二人別々に紙へ書いてもらいます。値引き交渉の入口にはしません
  • 場面3:見学の終わりに、帰り道で話す話題を式場から渡します。「よく話し合ってください」だけでは、話しやすい側の意見に寄ります
  • 名指しの質問は圧になります。選択肢を用意して選んでもらう形が、黙っている側にも答えやすい聞き方です
  • 見学の記録には、二人それぞれの反応を3行残します。追客の連絡で、本音への手がかりになります
  • 黙っている側の本音を見学中に拾うことは、成約率を上げる前に、失注の理由を取り出す手段です