式場の披露宴で料理が遅れるのは、配膳より盛り付けの手数のせい
披露宴で料理が遅れたとき、反省会で出てくる対策はたいてい「配膳スタッフを増やそう」です。ホール側の人数は、シフト表を見ればすぐ数えられるので、手を打ちやすいからです。
でも、遅れの原因が厨房の盛り付けにあるなら、配膳を増やしても料理は早く出ません。結論から書くと、1品あたりの提供時間を決めているのは、多くの場合、配膳の人数ではなく、盛り付けの台に何人つけるかと、その台を同時に何組で使うかです。
この記事の数字は、盛り付けにかかる秒数も、人数も、すべて僕が置いた仮のものです。業界の平均ではありません。自分の会場の秒数を一度ストップウォッチで測って、置き換えて読んでください。
遅れは「最初の1皿」と「最後の1皿」の間に出る
まず、何が遅れなのかをはっきりさせます。ゲストが気にするのは、料理が出るまでの待ち時間そのものより、同じテーブルの中で、先に出された人と後に出された人の差です。隣の人の皿は温かいのに、自分の皿が来たときには冷めている。これが「料理が遅い」という不満になります。
ですから、見るべき数字は、最初の1皿が出てから最後の1皿が出るまでの時間です。ここでは「提供の幅」と呼びます。
提供の幅は、次の2つのうち長いほうで決まります。
- 盛り付けの幅:厨房が全員分の皿を盛り終えるまでの時間
- 配膳の幅:ホールが全員分の皿を運び終えるまでの時間
皿は盛り付けが終わったものから運ばれるので、実際には2つが重なって進みます。それでも、ざっくりとした見立てとしては、長いほうがボトルネックです。短いほうをいくら縮めても、全体は早くなりません。
仮の数字で、どちらが長いか計算する
条件を置きます。すべて仮です。
- 盛り付けの台1人あたり、1皿に25秒かかる(ソースをかけて縁を拭くところまで)
- 配膳スタッフは1回に2皿を運び、往復で45秒かかる
- 披露宴1組だけを厨房が受けている
この条件で、人数と体制を変えて計算した結果です。
- 60人、盛り付け4人、配膳8人:盛り付けの幅が約6.2分、配膳の幅が約2.8分。長いのは盛り付け
- 60人、盛り付け4人、配膳5人:盛り付け約6.2分、配膳約4.5分。やはり盛り付けが長い
- 60人、盛り付け2人、配膳6人:盛り付け約12.5分、配膳約3.8分
- 80人、盛り付け4人、配膳8人:盛り付け約8.3分、配膳約3.8分
どの組み合わせでも、この仮の条件では盛り付けのほうが長くなりました。配膳を5人から8人に増やすと、配膳の幅は4.5分から2.8分に縮みます。でも、全体の幅は盛り付けの6.2分のままで、1秒も変わりません。
つまり、配膳を3人増やしても、料理は早く出ません。増えるのは人件費だけです。
仮の条件が変わると、結論も変わるか
この結論は、置いた数字に依存します。どこまで条件が動くと逆転するか、確かめておきます。
配膳が長くなるのは、たとえば次のような会場です。
- 厨房と宴会場が離れていて、往復に90秒かかる
- 1回に運べる皿が1枚(ゲストの席がせまく、トレーを持ち込めない)
- 配膳スタッフが5人を切っている
往復が90秒、1回1皿、配膳4人の条件で60人を計算すると、配膳の幅は60 ÷ 1 × 90 ÷ 4 = 1,350秒、約22分です。この場合は、盛り付けが4人いても、配膳が詰まります。
ですから、「いつも盛り付けが詰まる」とは言えません。言えるのは、自分の会場の2つの秒数を測るまで、どちらが詰まっているかは分からないということです。測らずに配膳を増やすのも、盛り付けを増やすのも、当てずっぽうになります。
料理が遅れる日は、人数より「同時進行の組数」で決まる
もう1つ、見落とされやすい条件があります。厨房が同時に受けている披露宴の組数です。
同じ仮の条件で、60人の披露宴が2組、同じ時刻に同じ厨房で動く場合を考えます。盛り付けの台は、2組で共有します。
- 盛り付け4人で2組(合計120人):盛り付けの幅は約12.5分
- 盛り付け6人で2組(合計120人):約8.3分
1組だけなら6.2分で済んでいたものが、2組が重なると倍の12.5分になります。1日に何組も入る人気日は、人数が同じでも、提供の幅が一気に広がる日です。
ここで気をつけたいのは、2組の乾杯をずらせば幅が重ならない、という考え方です。乾杯を30分ずらすのは、転換時間や会場の使い方との兼ね合いで、現実にはむずかしい日が多いはずです。ずらせないなら、台につく人数を増やすしかありません。
さらに、2組の料理のコースが同じなら、同じ品を同時に盛り付けることになります。コースが違えば、台の上で別の手順が混ざって、1皿にかかる秒数も延びやすくなります。これは数字で確かめていませんが、仕組みとしてそうなる、という整理です。
何を増やすと効くのか
計算から見えてくる打ち手を、効く順に並べます。
1. 盛り付けの台に、人を1人足す
60人の披露宴で、盛り付けを3人から4人にすると、幅は約8.3分から6.2分に縮みます。台につく人数は、割り算で効きます。2人から4人にすれば、半分になります。
2. 1皿の盛り付け秒数を縮める
25秒を20秒にできれば、4人で60人の幅は約6.2分から5.0分になります。人を足さなくても、同じくらい効きます。
秒数を縮める方法は、会場によって違います。ソースを前もって小分けにしておく、縁を拭く作業を別の人に分ける、盛り付けの順番を皿ごとに固定する、など。どれも、厨房の人が自分の手を見直すことで生まれる時間です。経営者の側ができるのは、1皿の秒数を測る日をつくることと、測った数字を厨房に返すことです。
3. 皿を温めておく、置いておく場所をつくる
盛り付けが終わった皿が、配膳を待つ間に冷める。これも「遅い」という印象を強めます。皿を温めておく設備や、盛り付け済みの皿を並べておく台があれば、幅が広がってもゲストの体感は和らぎます。提供の幅そのものは変わらないので、解決ではなく、緩和の策です。
4. 配膳を増やす
ここで初めて、配膳の人数が出てきます。配膳が長いと確かめられた会場だけです。
測り方:披露宴1組分の記録を取る
必要なのは、次の4つだけです。
- 盛り付けの台につく人数
- 1皿を盛り付ける秒数(5皿ほど測って平均する)
- 配膳1回あたりの皿数と往復の秒数
- 最初の1皿と最後の1皿が出た時刻
4つ目は、キッチンタイマーかスマートフォンのメモで十分です。コースの中で一番温かさが大事な品(メインなど)で測れば、1組分で足りることもあります。
そのうえで、盛り付けの幅と配膳の幅を、本文の式で計算して比べます。盛り付けの幅は「人数 × 1皿の秒数 ÷ 台の人数」、配膳の幅は「人数 ÷ 1回の皿数 × 往復秒数 ÷ 配膳の人数」です。
もう1つ、記録に添えておきたいのは、その日の同時進行の組数です。遅れた日のデータを取るときは、人数と組数を並べて残しておくと、後から「この日は2組が重なっていた」と気づけます。
数字を見るときの落とし穴
平均の秒数で決めない
盛り付けの秒数は、メインがもっとも長く、前菜は短いことが多いはずです。コース全体の平均で計算すると、一番詰まる品を見落とします。幅を見たいのは、一番長い品です。
熱い料理と冷たい料理を分けて考える
冷たい前菜は、幅が広くても味に大きな影響はありません。許容できる幅は、品によって違います。仮に、温かい品は8分以内に収めたいとしたら、60人・盛り付け4人・25秒の条件なら6.2分で収まり、80人になると8.3分で超えます。この8分も僕が置いた仮の数字で、会場が自分で決めるものです。
遅れた日の原因を、配膳のミスに寄せない
遅れた日に、ホールのスタッフが叱られる会場があります。でも、仕組みとして詰まっていたのが厨房なら、ホールは悪くありません。原因を人に寄せると、数字が取れなくなって、次の日も同じ詰まり方をします。
メニューを決める段階で、盛り付けの秒数を見る
遅れの対策は、当日の人の配置だけではありません。料理の中身を決める段階で効く手もあります。
たとえば、メインに添えるソースを皿の上で3回に分けてかける品と、先に皿に敷いておける品では、1皿の秒数が違います。仮に前者が30秒、後者が20秒だとすると、60人・4人の台で、幅は7.5分と5.0分になります。同じ人数で、2.5分の差です。
この差は、味や見た目の好みとは別の話として、メニュー会議で一度並べておく価値があります。料理長が「この品は手が掛かる」と感じていても、それが何秒で、何人の披露宴まで耐えられるのかは、数字にしないと経営側に届きません。
逆に、手の掛かる品を外す必要はない、とも言えます。手が掛かる品を入れるなら、その品の日は台に1人足す。人気日の2組が重なる日は、手の掛かる品を避ける。こうした使い分けの基準が、秒数から作れます。
もう1つ、厨房とホールが同じ数字を見ているかも確かめたいところです。厨房は「盛り付けは間に合っている」と言い、ホールは「皿が来ない」と言う。この食い違いが起きるのは、お互いが自分の持ち場の秒数しか見ていないときです。最初の1皿と最後の1皿の時刻を、両方が見られる場所に書いておくだけで、会話が「誰が悪いか」から「どこが詰まったか」に変わります。
まとめ
- 料理が遅いという不満は、最初の1皿と最後の1皿の間の「提供の幅」で見る
- 提供の幅は、盛り付けの幅と配膳の幅のうち、長いほうで決まる
- 本文の仮の条件では、どの体制でも盛り付けが長く、配膳を増やしても全体は縮まなかった
- 往復が長い・1回1皿・配膳が少ない会場では、配膳が詰まる。自分の会場の秒数を測るまでは、どちらかは分からない
- 人気日に2組が同じ厨房を使うと、盛り付けの幅は同じ人数でも約2倍になる
- 効く順は、台の人数、1皿の秒数、皿を置く場所、配膳の人数
- 測るのは4つだけで、1組分の記録で足りる
料理が遅い日の原因は、人数の足りなさより、詰まっている場所の見当違いであることが多いはずです。
