プランナーの求人倍率は全産業より低い。それでも式場は人が足りない
ウェディングプランナーが足りない、という声は式場の経営者からよく聞きます。ところが、国の統計でブライダルコーディネーターの有効求人倍率を見ると、2024年は全産業より低い月のほうが多いんです。
人手が足りないなら、求人倍率は高く出るはずです。数字と現場の声が逆を向いているとき、どちらかが間違っているわけではなく、物差しの当て方がずれていることが多いです。今回は経済産業省が2025年6月に出した資料を材料に、このずれを分解します。そのうえで、人が足りないときに先に見るべき場所を考えます。
2024年のブライダルコーディネーターの求人倍率
経済産業省の「省力化投資促進プラン(冠婚葬祭業)」には、厚生労働省の職業安定業務統計(令和6年分)をもとにした月別の表が載っています。ブライダルコーディネーター(ウエディングプランナー、ブライダルアドバイザー、ブライダルプランナーを含む)の有効求人数、有効求職者数、有効求人倍率です。抜き出すとこうなります。
| 月 | 有効求人数 | 有効求職者数 | 求人倍率 | 全産業 |
|---|---|---|---|---|
| 1月 | 314 | 202 | 1.55 | 1.35 |
| 3月 | 294 | 217 | 1.35 | 1.30 |
| 4月 | 261 | 233 | 1.12 | 1.18 |
| 6月 | 233 | 232 | 1.00 | 1.16 |
| 9月 | 192 | 215 | 0.89 | 1.24 |
| 12月 | 212 | 168 | 1.26 | 1.35 |
12か月すべてで計算し直すと、ブライダルコーディネーターの倍率が全産業を下回ったのは9か月です。上回ったのは1月、2月、3月だけでした。いちばん低いのは9月の0.89で、このとき全産業は1.24でした。求職者が215人いるのに、求人は192件しかありません。
もうひとつ目を引くのは、求人数の減り方です。1月の314件から9月の192件まで、約39%減っています。12月に212件へ戻っていますが、年初の水準には届いていません。求職者のほうは、1月の202人から9月の215人、12月の168人と、そこまで大きくは動いていません。倍率が下がったのは、人が増えたからではなく、求人が減ったからです。
同じ表にある葬儀師・火葬係の倍率は、12月で7.59です。ブライダルコーディネーターの1.26と比べると、6倍ほどの開きがあります。経産省の資料が冠婚葬祭業の人手不足を語るとき、数字で強く出るのは葬儀のほうで、結婚式場業は求人倍率だけ見ると人手不足には見えません。
それでも経産省の資料には「人が足りない」と書いてある
同じ資料の結婚式場業の項目には、数字と逆のことが書いてあります。
結婚式場業は、コロナを契機に結婚式の取扱件数も従業者数も大きく減りました。その後、取扱件数はある程度戻ったのに、従業者数は大きくは戻っていません。特に正社員は、今も減り続けているそうです。業界団体や事業者へのヒアリングでは、土日祝日の出勤が多く、長時間労働になりやすいので人が集まらない、という声が多かったとのことです。
個別企業の声も並んでいます。要点だけ書き出します。
- 女性比率が高く、出産や育児で辞める社員が多い。中間層のプランナーが足りない
- 給与の低いサービス業で、他業種が賃金を上げていくなか、人手不足はさらに深刻になっている印象。特にプランナーと料理人が足りない
- アルバイトに加えて派遣やパートも集まらず、正社員が施行のカバーに入っている事業者もある
- 人手不足から、新規予約をコントロールしている事業者もある
- 表には出ていないが、人手不足でサービスの質が下がっていることも心配
人手が足りなくて新規予約を絞る、という話は、経営者にとっては売上の天井がそのまま下がることを意味します。求人倍率が1を割っているのに、現場では施行に正社員が入っている。この矛盾の正体は、求人倍率がそもそも何を数えているか、にあります。
求人倍率が見ているもの、見ていないもの
職業安定業務統計は、ハローワークに出された求人と、ハローワークに登録された求職者を数えた統計です。式場の経営者が実際に人を探す場所と、ずれる可能性が高いです。
大和総研が2025年7月に出したレポートは、この点をそのまま指摘しています。有効求人倍率が2019年度比で低迷している要因として、①2020年1月の求人票の様式変更を機に、一部の企業がハローワークから離れたこと、②販売・サービス職の求人が減ったこと、③シニア層の求職者が増えたこと、の3つを挙げています。販売・サービスはもともとハローワーク経由の入職が少ないので、民間の求人サービスを使った採用が広がった可能性がある、とも書いています。業務統計である以上、業務のやり方が変わればデータも振れる、という整理です。
ここから先は僕の読みです。ブライダルのプランナー職は、民間の求人媒体や人材紹介で探す会社が多い職種だと思います。そうだとすると、ハローワークの求人が9月に192件まで減っていても、それは「求人そのものが減った」のではなく「ハローワークに出す会社が減った」だけかもしれません。逆に求職者側も、プランナー職を狙う人がハローワークに来るとは限りません。どちらの数字も、市場全体の一部しか映していないはずです。
数字の規模にも注意が要ります。2024年のこの職種の有効求人は、月に200〜300件台です。一方で、結婚式場業の事業者は経済センサス(令和3年)で431者、従業者は45,886人です。職種の範囲も産業の範囲も違うので直接は比べられませんが、ハローワークで見えているのは全体のごく一部、という感覚は持っておいたほうがいいと思います。
つまり、求人倍率が1を割ったことは「人が余っている」ことを示しません。「ハローワークの窓口で見える範囲では、求人も求職者も少ない」ことを示しているだけです。
足りないのは、人数ではなく中間層
経産省のヒアリングには、もうひとつ大事な言葉があります。「中間層のプランナーが不足」です。
新卒や第二新卒の応募は、プランナー職なら一定数あるのでしょう。一方で、現場を回せる中堅層が足りません。ここを求人倍率の1.0前後という数字は拾いません。全体の倍率が1.0なら、数としては求職者と求人が釣り合っていることになります。足りないのは、数ではなく年次の層、つまりひとりで打合せから当日まで持てる人です。
年次の層が薄くなる理由として、資料が挙げているのは次の連鎖です。女性の雇用比率が高いこと、出産や育児を機に辞める人が多いこと、土日祝日の出勤が前提になっていること。結婚式場業の事業者431者のうち、従業者100人以上の71者が37,127人、全従業者の約81%を抱えています。5人未満の事業者は101者あっても従業者は合計434人で、全体の約1%です。つまり規模の大きい会場ほど人の移動も大きく、中間層の離職は、そのまま打合せの担当枠の減少になります。
担当枠が減ると、何が起きるか。経産省の資料にある「新規予約のコントロール」です。人が足りなくて新規の来館を絞る、という判断は、売上の面では集客の成果を捨てていることになります。広告費をかけて来館を集めても、担当できる人がいなければ成約まで進みません。
人手不足の「どこ」に手を入れるか
資料の中で僕がいちばん面白いと思ったのは、結婚式場業の業務を5つの工程に分けて、必要人員と省力化の余地を並べた図です。要約するとこうなります。
| 工程 | 必要人員 | 省力化の余地 |
|---|---|---|
| 集客・営業(情報サイト掲載、フェア予約管理、問合せ対応) | 少 | 大 |
| 事前準備・打合せ(プランナーと新郎新婦の打合せ、見積書作成、衣装や引き出物の管理、各取引先への発注) | 少 | 非常に大きい |
| 結婚式・披露宴 | 多 | 小 |
| 請求・入金管理 | 少 | 大 |
| 顧客フォロー | 少 | 大 |
人がもっとも必要になるのは当日の施行で、ここはサービスの中心なので、機械化にも限界があると資料は書いています。反対に、打合せの工程は、必要な人員こそ少ないものの、省力化の余地が「非常に大きい」とされています。
理由も書いてあります。打合せは土日に長時間になることが多いこと。料理、花、衣装、引き出物の情報を表計算に手入力して、取引先にFAXやメールで発注していること。発注後の変更も多いこと。ゲストの氏名やアレルギーの情報はミスが許されないので、確認に労力と精神的な負担がかかること。プランナーが担当を持てる組数は、この事務作業にどれだけ時間を取られるかで決まる、ということです。
資料の中の事業者の声にも、「残業が多い理由はバックオフィス業務の多さで、これまでは長時間労働でカバーしてきた」とあります。中間層が辞めていく理由が、土日の出勤と長時間労働だとしたら、長時間の中身を見るのが先です。打合せそのものを短くするのか、打合せ後の事務を減らすのかで、手を入れる場所は変わります。
僕の考えを書いておくと、人手不足に対して「採用を強める」と「1人あたりの担当組数を増やす」は別の判断です。求人倍率が低く出ているからといって、採用が楽だとは限りません。そして採用が難しいなら、打合せ後の事務を減らして、いまいる中間層が持てる組数を増やすほうが、効き方が速いと思います。理由は単純で、採用は人が入ってから戦力になるまでに時間がかかる一方、事務の減らし方は明日からでも試せるからです。
経営指標に直すと
最後に、これを経営の数字に置き直します。人手の問題は、次の3つの数字に出てきます。
- 受けられる新規の組数:プランナー1人が持てる組数と在籍人数の掛け算で決まります。ここが先に詰まると、来館数を増やしても成約は増えません
- 離職による引き継ぎ:担当が途中で変わると、新郎新婦の信頼が下がりやすくなります。キャンセルや追加の見積もりの受け方にも影響が出ます
- 当日の人員:正社員が施行に入る事業者があるとのことなので、打合せの時間がそのぶん削られます
自社の数字を見るときは、求人媒体ごとの応募数と、プランナーひとりが担当している組数の月ごとの推移を並べて見るのがいいです。公的な統計の倍率を見ても、自社の採用が楽か苦しいかは分かりません。
経産省はこの業界の労働生産性を2029年度に680万円まで上げる目標を置いています。2024年度比で24%の向上です。逆算すると、現状は550万円弱という水準です。全産業と比べて低いと資料自身が書いている数字なので、人手不足と生産性の低さは、同じ話の表と裏だと読めます。
まとめ
- 2024年のブライダルコーディネーターの有効求人倍率は、12か月のうち9か月で全産業より低く、最低は9月の0.89でした
- 求人倍率が低いことは、人が余っていることを意味しません。ハローワークの統計は、民間の求人媒体を使う職種では実態の一部しか映さない可能性があります
- 経産省のヒアリングでは、不足しているのは人数ではなく中間層のプランナーで、人手不足で新規予約を絞る事業者も出ています
- 結婚式場業の業務のうち、打合せ工程は必要人員が少ないのに省力化の余地が非常に大きいと整理されています
- 採用の数字だけでなく、プランナーひとりが持てる組数を自社の指標として追うほうが、人手不足の実態に近づきます
