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新人プランナーの独り立ちは何組で判断するか|式場の育成費の数え方

新人プランナーの独り立ちを、「入社から3か月」「半年後」のように、月数で決めている会場は多いのではないでしょうか。月数は分かりやすく、人事の予定にも載せやすい基準です。ただ、結婚式場には繁閑の波があります。同じ3か月でも、見学に来る組が多い秋に入った人と、少ない夏に入った人では、接客できる組数がまるで違います。

結論を先に書きます。同席を外す時期は、月数ではなく、接客した組数で決めたほうが公平で、育成費も読みやすくなります。僕が置いた仮の繁閑で計算すると、入社から3か月の間に接客できる組数は、6月入社で約21組、9月入社で約40組でした。月数が同じでも、経験は2倍近く違います。

この記事に出典つきの数字はありません。新人プランナーが独り立ちするまでの平均月数や、育成にかかる平均的な費用を示した調査を、僕は確かめられていません。以下の数字はすべて、僕が置いた仮の前提です。自分の会場の来館数と給与に置き換えて読んでください。

仮の前提を置く

数字は4つだけ置きます。

  • 新人1人が接客する見学の組数は、平均的な月で10組。月ごとの繁閑は、来館数の多い秋と春を1.3〜1.5倍、夏と冬の閑散期を0.6倍とする(年間の平均は1倍に合わせる)
  • 先輩が新人の接客や打合せに同席する時間は、月に40時間。先輩の時間を時給2,500円に換算して、同席の費用は月10万円
  • 新人の月の人件費は、会場の負担分を含めて30万円
  • 独り立ちの目安は「見学の接客30組」。この30組という数字も僕の仮置きで、根拠はありません。会場ごとに変えてください

最後の30組は、なぜ置いたのかを書いておきます。見学の接客は、型を覚えやすい仕事です。会場の説明、ヒアリング、見積もりの出し方。これらを10回やれば型が身につき、30回やれば、二人の反応に合わせて順番を変えられるようになる、というのが僕の仮説です。仮説なので、数字が合っているかどうかは分かりません。大事なのは、基準が「時間の長さ」ではなく「回数」で書かれていることです。

月数で決めると、入社した月で経験が倍違う

仮の繁閑で、入社から3か月の間に接客できる見学の組数を、入社月ごとに計算しました。

入社月 3か月間に接客できる組数
6月 約21組
7月 約24組
12月 約23組
1月 約27組
3月 約37組
9月 約40組

6月に入った新人と、9月に入った新人が、同じ「3か月で独り立ち」の基準で評価されると、前者は21組、後者は40組の経験で現場に出ることになります。6月入社の人は、型を身につける前に、独りで二人を迎えるわけです。

月数の基準で困るのは、この差が新人の能力の差として見えてしまうことです。6月入社の新人が独り立ち後に成約を落としても、本人の力不足に見えます。実際は、接客の回数が足りていなかっただけかもしれません。逆に9月入社の新人が早く成約を取っても、繁忙期に入ったおかげかもしれません。

組数で決めると、期間のほうがずれる

同じ前提で、見学の接客30組に届くまでの月数を計算します。

入社月 30組に届くまで
9月 約2.2か月
10月 約2.3か月
3月 約2.4か月
4月 約2.5か月
1月 約3.2か月
7月 約3.4か月
12月 約3.7か月
6月 約3.8か月

月数のほうがずれます。9月入社は約2.2か月で届き、6月入社は約3.8か月かかります。差は1.6か月です。同席の費用を月10万円と置くと、9月入社は22万円、6月入社は38万円。6月入社の新人のほうが、育成費が16万円多くかかります。

ここで、多くの会場が思いつく反応は、「それなら6月には新人を入れないで、秋に入れよう」でしょう。採用の時期を選べるなら、その方向は間違っていないと思います。ただ、実際には、退職が出た月に補充しなければ、担当組数が回らない会場も多いはずです。時期を選べないときに、その分の費用が見えているか、が重要です。

組数で決めても、見落としやすい点

組数で数えるときに、気をつけたい点が3つあります。

1. 接客の中身が偏っていないか。 30組の見学接客のうち、全部が「他の会場も回っている二人」では、経験が偏ります。親の同席がある回、遠方から来た二人、成約に至った回。型の違う接客が混ざっているかどうかを、組数とあわせて確かめます。数えるのは件数ですが、中身を見ずに件数だけで外すと、月数の基準と同じ穴に落ちます。

2. 見学の次の段階の経験。 見学の接客が30組あっても、契約後の打合せを1回も担当していなければ、独り立ちとは呼べません。見学、初回の打合せ、契約後の打合せ、当日の立ち会い。段階ごとに「何組」を決めて、同席を外す順番を決めておくほうが、現実的です。たとえば、見学は30組、初回打合せは5組、といった具合です。段階ごとに、自分の会場の数字に置き換えてください。

3. 閑散期の新人に、どう経験を積ませるか。 夏や冬に入った新人は、組数を待つしかないのか。そうとも限りません。先輩の接客を録音して聞く、先輩の見学に同席してメモを取る、ロールプレイで型を練習する。自分で接客する組数は増えなくても、場面の数は増やせます。ただし、この場面を「接客30組」の中に数えるかどうかは、会場の判断です。数えるなら、基準を甘くしたと分かる形で記録しておきます。

基準を組数にすると、何が見えるようになるか

月数の基準では見えなかったものが、組数で見ると3つ分かります。

1つ目は、育成費の見込みです。入社月ごとに、30組に届く月数が出せるので、同席の費用を月10万円と置けば、新人1人あたりの育成費が事前に計算できます。9月入社なら約22万円、6月入社なら約38万円。採用の時期をずらせるなら、費用の差を材料にして判断できます。

2つ目は、新人の評価の公平さです。独り立ち後の成約率を比べるとき、接客した組数が違う新人を同じ土俵で比べなくて済みます。「30組を終えた時点の成約率」で揃えて見ると、能力の差か経験の差かが分けやすくなります。

3つ目は、先輩の負担の見え方です。同席の時間は、先輩の本来の仕事の時間を削っています。月40時間という数字は、先輩の1か月の労働時間のうち、おおよそ4分の1にあたります(月160時間として)。同席が長引くと、先輩の担当組数が減り、会場の成約全体に響きます。この影響は月数の基準では見えにくく、組数の基準なら、同席の予定時間を事前に出せます。

先輩の同席を外す順番

同席を外すときは、一度に全部を外すのではなく、順番を決めておくと新人の負担が急に増えません。僕が置く仮の順番は、次のとおりです。

最初は、先輩が主担当で、新人は隣で聞く段階です。次に、新人が主担当で、先輩が隣で聞く段階。その次が、先輩は同じ部屋にいないが、終わったあとに5分だけ振り返る段階。最後に、振り返りも新人から依頼があったときだけにする段階です。

この4段階を、見学の接客組数で区切ります。たとえば、10組までは最初の段階、20組までは2段階目、30組までは3段階目、それ以降は4段階目、といった形です。同席の時間は段階が進むほど減るので、先ほど置いた月40時間という数字も、実際には毎月同じではありません。最初の段階で月60時間、3段階目で月15時間のように、段階ごとに置き直すほうが、育成費は実態に近づきます。

段階を組数で区切ると、新人にとっても見通しが立ちます。「あと何組で、次の段階に進める」が見えるからです。月数の基準では、閑散期に入った新人は、いつまで同席が続くのか分からないまま過ごすことになります。基準の見えやすさは、育成費の計算だけでなく、新人が定着するかどうかにも関わる点だと思います。ただ、これも僕の仮説で、数字では確かめていません。

運用で決めておくこと

組数で独り立ちを判断するなら、最初に次の4点を決めておきます。

  • 段階ごとの組数(見学、初回打合せ、契約後の打合せ、当日の立ち会い)
  • 組数に数える接客の条件(先輩の同席つき、新人が主担当、など)
  • 閑散期に入った新人への、場面を増やす方法と、それを組数に数えるかどうか
  • 組数に届いても外さない例外(接客の中身に偏りがあるとき、先輩が不安を感じたとき)

例外の4つ目は、特に決めておいてほしい点です。組数だけで機械的に外すと、数字を満たしただけの独り立ちになります。先輩の「まだ早い」という判断は、残してよいと思います。ただ、その判断が出たときに、理由を一行書いておくと、次の新人の基準を直すときの材料になります。

この計算が当てはまらない会場

この記事の計算は、繁閑の差が大きい会場を想定しています。年間を通して来館数がほぼ一定の会場、たとえば大都市の駅に近いホテルの婚礼部門では、月数と組数の差は小さくなります。その場合は、月数の基準のままで困らないはずです。

もう1つ、新人1人が接客する組数が極端に少ない会場も、組数の基準は合いません。月に3組しか来ないなら、30組に10か月かかります。その場合は、見学の接客だけで判断せず、他の経験(模擬の打合せ、先輩の接客の観察)を併せて基準にしないと、独り立ちが遅れすぎます。

自分の会場がどちらに近いかは、過去1年の月別の見学組数を並べれば分かります。最も多い月と最も少ない月の比が2倍以上あれば、この記事の差は実際に出ると思ってよいはずです。

まとめ

  • 新人の独り立ちを月数で決めると、入社した月によって接客できる組数が倍近く違う。仮の繁閑では、3か月間の組数が6月入社で約21組、9月入社で約40組
  • 見学の接客30組を基準にすると、届くまでの月数は9月入社で約2.2か月、6月入社で約3.8か月。同席の費用を月10万円と置くと、育成費は22万円と38万円になる
  • 組数の基準は、育成費の見込みと、新人の評価の公平さと、先輩の負担を事前に見えるようにする
  • 組数は見学だけでなく、初回打合せ、契約後の打合せ、当日の立ち会いと段階ごとに決める
  • 接客の中身が偏っていないか、先輩の「まだ早い」を残すかどうかも、あわせて決める
  • 繁閑の差が小さい会場や、来館の少ない会場には当てはまらない。過去1年の月別の見学組数で確かめる