経営・組織

式場プランナーの育休復帰後、土日勤務は5つの措置のどれで回すか

プランナーが育休から戻ってくるとき、式場がまず聞くのは「土日は出られますか」だと思います。ここを入口にすると、話はだいたい「時短にするか、辞めるか」の二択になります。2025年10月からは、入口が変わりました。事業主は、3歳から小学校就学前の子を育てる社員のために、5つの措置から2つ以上を用意しなければなりません。式場にとっての問いは「土日に出られるか」ではなく、「5つのうち、どの2つなら土日の穴が小さく済むか」です。

この記事では、法律の中身を土日が稼ぎ時の式場に当てはめて整理します。法律の部分は、中小機構のJ-Net21の解説に沿っています。人数や費用の数字は、構造を見るための僕の仮置きで、実在の式場の実績ではありません。個別の就業規則の判断は、社会保険労務士に確認してください。

2025年10月に増えた義務は、2つある

J-Net21の解説によると、2025年10月1日から、事業主は「育児期の柔軟な働き方を実現するための措置」を講じることが義務になりました。対象は、3歳から小学校就学前の子を育てる労働者です。次の5つの中から、2つ以上を選びます。

  • 始業時刻等の変更(フレックスタイム制か、時差出勤)
  • テレワーク等(月10日以上)
  • 保育施設の設置運営等(ベビーシッターの手配と費用負担を含む)
  • 養育両立支援休暇(年10日以上。原則、時間単位で取れる)
  • 短時間勤務制度(1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含む)

選ぶときは、過半数労働組合か過半数代表者の意見を聴く機会が必要です。労働者は、事業主が用意した措置の中から1つを選んで使えます。つまり、式場が2つしか用意しなければ、プランナーの選択肢もその2つだけです。

もう1つの義務が、個別の意向聴取です。2025年10月1日以降、事業主は、仕事と育児の両立について、労働者一人ひとりの意向を聴かなければなりません。聴くのは、本人か配偶者の妊娠・出産を申し出たときと、子が3歳になる誕生日の1か月前までの1年間です。聴く内容は、勤務時間帯、勤務地、両立支援制度の利用期間、業務量や労働条件の見直しの4つ。聴いたあとは、自社の状況に応じて配慮することが求められます。育休からの復帰時にも聴くことが、解説では推奨されています。

ここで大事なのは、聴く項目の最初が「勤務時間帯」だという点です。土日の出勤は、まさにこの項目に入ります。聴かずに復帰後のシフトを決めてしまう運用は、もう通りにくくなっています。

5つの措置を、土日の穴にどう効くかで見る

式場の働き方は、平日の事務所勤務とは違います。見学の接客、打合せ、挙式の立ち会いは、土日に集中します。5つの措置は、「土日の穴を小さくするか」で見ると、効き方がまるで違います。

措置 土日の穴への効き方 式場での使いどころ
始業時刻等の変更 出勤日は変わらない。時刻だけずらせる 午前の打合せだけ遅らせる、夕方の見学を早く上がる
テレワーク等 接客・立ち会いには使えない 見積作成、メール返信、資料づくりを平日に寄せる
保育施設の設置運営等 土日の保育を直接つくれる 土日出勤の日のベビーシッター費用を式場が持つ
養育両立支援休暇 時間単位で抜ける。土日の一部を空けられる 子どもの急な発熱、午前だけ抜ける日
短時間勤務制度 1日6時間に縮む。土日の枠が減る 平日中心で復帰するときの受け皿

見ての通り、土日の穴を直接小さくするのは、保育施設の設置運営等だけです。J-Net21の解説では、保育施設の設置運営に準ずる便宜として、ベビーシッターの手配と費用負担が挙がっています。自社で保育施設を持つのは現実的でなくても、シッター費用を持つ形なら、式場にも手が届きます。

逆に、テレワークは式場では使いどころが狭い措置です。法律上は「2つ以上」の1つに数えられても、土日の接客を担うプランナーにとっては、土日の穴は埋まりません。テレワークと時短の組み合わせで2つそろえると、書類の上では義務を果たしていても、土日の問題は何も動かないままになります。

土日の穴は、1人抜けると思っているより大きい

土日の穴の大きさを、仮の前提で数えます。

  • プランナーは6人
  • 土日の見学・打合せ・挙式の対応に、土日どちらの日も3人が必要
  • 全員が週休2日で、休みは平日に取る

土日2日間で必要な人日は、3人×2日=6人日です。6人で割ると、1人あたり土日のうち1日、出ていることになります。年52週で、年に52日の土日出勤です。

ここで、1人が土日に出られなくなったとします。残りは5人で、6人日を割り振るので、1人あたり週末あたり1.2日。年に62.4日の土日出勤です。2人が出られなければ、4人で6人日なので、1人あたり1.5日。年に78日になります。

土日に出られるプランナー 1人あたり週末の出勤日 年間の土日出勤
6人(全員) 1.0日 52日
5人 1.2日 62.4日
4人 1.5日 78日

6人から5人になるだけで、残る5人は土日の出勤が年に10日ほど増えます。2人抜ければ、26日増えます。増えた分の負担は、育児中ではない人に静かに寄ります。しわ寄せを受けた人が辞めていくと、さらに土日の人手が減ります。育休復帰のプランナーを「土日免除」で戻す運用が、チームの離職につながる経路は、この計算で見えます。

ここから先は仮定の話ですが、式場の規模によって、効く措置の優先順位は変わります。プランナーが少なければ、1人の土日免除が穴に直結します。多ければ、吸収できる余地があります。自分の式場の土日の必要人数と、プランナーの人数で、この表を一度作ってみるのが先です。

ベビーシッター費用を持つといくらになるか

土日の穴を小さくする唯一の措置であるシッター費用の負担を、仮の前提で数えます。1日あたりの費用は、地域や時間によってばらつきが大きく、僕は実際の相場を確かめていません。ここでは、5,000円、10,000円、15,000円の3つの場合で置きます。

土日出勤のうち、シッターを使うのが年に20日、30日、40日のとき、式場が持つ費用は次のとおりです。

1日あたり 年20日 年30日 年40日
5,000円 10万円 15万円 20万円
10,000円 20万円 30万円 40万円
15,000円 30万円 45万円 60万円

10万円から60万円の幅です。これを、前の節の数字と比べます。1人が土日に出られず、残る5人に年10日ずつの土日出勤が増える状況を、シッター費用で埋められるなら、1日あたりの費用が10,000円で年30日、30万円が目安です。ここに、辞めた人の採用と教育の費用が重なれば、どちらが高いかは式場ごとに変わります。

もう一つ、費用の見方があります。シッター費用は、使った日だけ発生する変動費です。短時間勤務の人は、毎日の労働時間が減るので、固定費が薄く広がります。繁忙日だけ費用を持つのと、通年で時間を減らすのと、どちらが式場の収益に合うかは、土日の挙式件数の波によって変わります。

意向聴取で聴く4項目を、式場の言葉に直す

意向聴取の4項目は、法律の言葉のままだと聴きにくいので、式場の現場の言葉に直しておきます。

  1. 勤務時間帯:土日のどちらに出られるか。午前、午後、夜のどこが難しいか。挙式の立ち会いまで出られるか
  2. 勤務地:複数の会場や店舗がある式場では、通勤時間の短い会場への異動が必要か。単一会場の式場では、通勤経路の変更が必要か
  3. 両立支援制度等の利用期間:子が何歳まで、どの制度を使いたいか。小学校入学の時期に、いったん見直すか
  4. 業務量や労働条件の見直し:担当組数を減らすか。打合せの時間帯を変えるか。新規の見学担当から外れるか

3つ目と4つ目は、式場の業務に合わせて聴くことになります。たとえば、担当組数の見直しは、プランナー1人あたりの組数が打合せ回数で決まる仕組みを、先に知っておくと話が早く進みます。

聴いたあとは、「配慮」の中身を決めます。J-Net21の解説では、事業主は聴いた意向について、自社の状況に応じて配慮することが求められています。配慮は、希望をすべてかなえることではありません。かなえられないなら、なぜかなえられないかを伝え、代わりに何ができるかを示すことまでが、配慮だと僕は読んでいます。

復帰面談の段取り

意向聴取を、復帰の直前の1回で済ませると、聴いた内容を勤務表に反映する時間が足りなくなります。式場は、土日のシフトが数か月先まで決まっていることが多いからです。次のような段取りにすると、無理が出にくくなります。

  • 育休に入る前:妊娠・出産の申し出のときに、1回目の意向聴取をします。復帰後の希望の大まかな方向と、育休中の連絡の取り方を決めます
  • 復帰の3か月前:2回目の面談で、5つの措置のうち、どれを使いたいかを聞きます。土日のシフトは、このあとの月から反映できるようにします
  • 復帰の1か月前:具体的な勤務表を見せます。担当する組数と、土日の出勤の日を確かめます
  • 復帰して3か月後:使っている措置が合っているかを確かめます。子どもの保育の状況は、短期間で変わります
  • 子が3歳になる誕生日の1か月前までの1年間:法律で決まった時期の意向聴取です。ここで、3歳から就学前までの措置に切り替わります

J-Net21の解説によると、この周知と意向確認は、面談(オンライン可)、書面、FAX、電子メール等のいずれかで行います。音声のみの面談では、義務を果たしたことになりません。

もう一つ、解説には「対象措置の利用促進が目的であるため、利用を控えさせるようなことを行ってはなりません」とあります。「前例がない」と強調する言い方は、これに当たりえます。式場では、土日に出られない人の前例がないことが多いので、面談する人が気をつける点です。

措置の選び方、よくある3つの誤り

用意する措置を2つ選ぶときの、よくある誤りを3つ挙げます。

1つ目は、書類上の都合で選ぶことです。 運用の手間が小さい、既にある制度に近い、という理由で、テレワークと時短を選ぶ会社はありえます。式場では、テレワークは土日の接客に使えないので、実際に使う人が少なくなります。使われない制度は、プランナーを引き留める力になりません。

2つ目は、1人分の希望だけで決めることです。 今いる復帰予定の1人の希望で2つを決めると、次に復帰する人の事情に合いません。措置は、5年先まで見て選ぶ制度です。復帰する人が毎年1人出るなら、制度を毎年変えるのは現実的ではありません。

3つ目は、費用を「無駄」と見ることです。 使われた日だけ発生するシッター費用は、使われなければ0円です。使われたなら、その日にプランナーが土日の現場に立っています。穴を埋めた費用として見るのが、数字の読み方として合っています。

判断の分かれ目

式場の事情を3つの軸で見て、措置の組み合わせの方向を決めます。

  • 土日の必要人数に余裕があるか:6人で必要3人なら、1人が抜けても回ります。ぎりぎりなら、土日の穴を直接小さくする措置(シッター費用の負担)を1つ目に置きます
  • 平日の仕事が切り出せるか:見積作成、資料づくり、メール返信を平日に寄せられるなら、時間単位の休暇や時差出勤と組み合わせて、土日の負担を軽くできます
  • 復帰する人が毎年出るか:毎年出るなら、制度を標準化します。1人きりなら、個別の配慮の比重を高めます

5つの措置の中で、式場に合う組み合わせの一例を挙げます。土日の穴を小さくするシッター費用の負担と、柔軟に抜けられる養育両立支援休暇を組み合わせる形です。ただ、これは僕の仮の案で、式場の規模や土日の挙式件数によって、時差出勤や短時間勤務を入れたほうが合う場合もあります。

まとめ

  • 2025年10月から、事業主は3歳から小学校就学前の子を育てる社員に、5つの措置から2つ以上を用意する義務があります。選んだ2つが、社員の選択肢の全部になります
  • 同時に、勤務時間帯・勤務地・利用期間・業務量の4項目で、個別の意向聴取と配慮も義務になりました。土日の出勤は、勤務時間帯の項目に入ります
  • 土日の穴を直接小さくするのは、保育施設の設置運営等(ベビーシッターの手配と費用負担を含む)だけです。テレワークは、土日の接客には使えません
  • 仮の前提(プランナー6人、土日の必要人数3人)では、1人が土日に出られなくなると、残る5人の土日出勤は年に約10日増えます。しわ寄せは、チームの離職につながります
  • シッター費用は、1日1万円で年30日使うと30万円が目安です。使った日だけ発生する変動費で、穴を埋めた費用として見ます
  • 復帰面談は、育休前、復帰3か月前、復帰1か月前、復帰3か月後の4回に分けると、土日のシフトに反映する時間が取れます
  • 措置は、今の1人の希望ではなく、5年先に復帰する人まで見て選びます