フォトウェディングの問い合わせに、式場が最初に聞く3つのこと
式場のサイトや Instagram から「フォトウェディングはできますか」という問い合わせが届いたとき、どう返しているでしょうか。撮影プランの案内を送って、日程の候補を聞いて終わり、という式場が多いと思います。
僕は、この最初の返信で、先に聞いておくことが3つあると考えています。写真を何に使うのか、結婚式はしないと決めているのか迷っているのか、誰と写るのか。この3つを聞くと、フォト撮影の予約を落とさずに、挙式や食事会の見学へ進む二人を拾えます。逆に、聞かずにプランだけ送ると、フォトの予約も、その先の挙式も、取りこぼしやすくなります。
この記事では、数字の出典は使いません。フォトウェディングの問い合わせ件数や転換率を、業界全体で言い切れる調査は見当たらないからです。仕組みの説明と、仮の前提を置いたモデル計算で進めます。モデルの数字は実在の式場のデータではなく、考え方を見せるための仮置きです。
フォトの問い合わせは、「結婚式をしない二人」ではない
まず、フォトウェディングの問い合わせをしてくる二人を、ひとまとめにしないほうがいい理由から書きます。
「写真だけ」と書いてくる二人の中には、少なくとも3種類います。
- 結婚式はしないと決めていて、写真だけは残したい二人
- 結婚式をするかどうか迷っていて、費用の目安をつかむ入口としてフォトを調べている二人
- 結婚式は別の会場でやる予定で、前撮りやロケーション撮影の候補としてフォトを探している二人
見た目の文面は、どれも「フォトウェディングについて教えてください」です。でも、この3種類は、式場が提案できるものがまったく違います。
1つ目の二人に挙式を勧めても、逆効果です。決めている人に何度も勧めると、写真の予約まで逃げます。2つ目の二人は、費用の不安が解けたら、食事会や少人数の挙式を考えます。3つ目の二人は、挙式の提案はできませんが、前撮りの質で選ばれれば、次の機会(記念日の撮影や、家族が増えたときの撮影)で戻ってきます。
つまり、フォトの問い合わせで大事なのは、どれが本当に迷っている二人なのかを、押さずに見分けることです。そのために、聞く質問を3つに絞ります。
質問1:その写真を、何に使いますか
1つ目の質問は、写真の使いみちです。
「お写真は、どなたに見せたり、どこに飾ったりする予定ですか」くらいの軽さで聞きます。
答えは、だいたい次のどれかに分かれます。
- 自分たちの部屋に飾る、アルバムにする
- 両親や祖父母に見せたい、贈りたい
- SNSや年賀状で報告したい
- 職場や友人への結婚報告に使いたい
ここで拾いたいのは、「両親や祖父母に見せたい」という答えです。この答えが出るなら、二人は「家族にきちんと報告したい」気持ちを持っています。その気持ちは、写真のかたちを取らなくても満たせます。家族だけの食事会や、親族が立ち会う小さな挙式です。
反対に、「自分たちの部屋に飾りたい」「SNSで報告したい」という答えなら、写真そのものが目的で、挙式を勧めても噛み合いません。この場合は、写真の仕上がりの話に集中します。
この質問のいいところは、結婚式の話を一度も出さずに、二人の本当の目的が分かることです。式場側は営業をしていないので、二人も身構えません。
質問2:結婚式は、しないと決めていますか。まだ決めていませんか
2つ目の質問は、いちばん聞きにくい質問です。だから、聞き方を決めておきます。
NGなのは、「結婚式のご予定はありますか」です。この聞き方は、答えが「ありません」で終わります。二人は「営業されている」と感じて、話を閉じます。
僕は、次の聞き方を勧めます。
「フォトのみのご希望かどうか、確認させてください。結婚式や食事会は、まだ迷っている段階ですか。それとも、写真だけと決めていらっしゃいますか」
この聞き方には、3つの工夫があります。
1つ目は、「写真だけ」と決めている二人の答えを、あらかじめ正解にしていることです。「決めています」と答えても、式場は嫌な顔をしません。二人はそれを感じ取れます。
2つ目は、「迷っている段階」という選択肢を、先に言葉にしていることです。迷っている二人は、自分が迷っていることを、式場の人に言っていいのか分かりません。聞かれて初めて、「実は、費用が分からなくて」と話し出します。
3つ目は、選択肢が2つで、理由を聞いていないことです。「なぜ式をしないのですか」と聞くと、詰問になります。理由は、二人が話したいときに出てきます。
迷っている二人の答えで、いちばん多そうなのは、費用と手間の不安です。「いくらかかるか分からない」「準備が大変そう」。ここまで聞こえたら、式場の出番です。ただし、いきなり見積もりを送りません。次の質問で、人数を聞きます。
質問3:どなたと、何人で写りますか
3つ目は、一緒に写る人の人数です。
「撮影には、お二人だけで来られますか。ご家族も一緒に写る予定はありますか」
この質問には、撮影の準備として必要な理由があります。着付けの人数、控室の広さ、撮影時間が変わるからです。式場にとっては自然な確認で、営業に聞こえません。
そして、この答えが、挙式や食事会への橋になります。
- 二人だけ:写真の話を続ける
- 両親が同席:家族の集まりがあるということ。食事会の可能性が出てくる
- 両家の親族が同席:親族がそろう日がすでにある。小さな挙式にできる
家族が同席する撮影は、「家族を集める日」がすでに決まっているということです。その日に、撮影のあとの30分でも食事を足せたら、それはもう食事会です。式場は、「撮影と同じ日に、お食事もご用意できます」と、事実として一言添えるだけで済みます。
3つの質問から、提案が3つに分かれる
3つの質問で分かることを、まとめます。
| 二人の答え | 状態 | 式場の提案 |
|---|---|---|
| 部屋に飾る。決めている。二人だけ | 写真が目的 | 撮影の質と日程の話だけをする |
| 親に見せたい。迷っている。親が同席 | 家族への報告が目的 | 撮影の日の食事の追加を、選択肢として一言 |
| SNSで報告。別の会場で挙式予定 | 前撮りの候補 | 撮影の質で選んでもらう。挙式の話はしない |
どの行でも、提案が1つだけだということに注目してください。複数の提案を並べると、二人は選べなくなります。
仮のモデル:月12件の問い合わせがある式場
ここからは、仮の前提で数えます。実在の式場のデータではありません。
- フォトウェディングの問い合わせが、月に12件届く
- そのうち、3つの質問で「迷っている」「家族への報告が目的」と分かる二人が、仮に2割
- その二人のうち、挙式や食事会の見学に来る二人が、仮に半分
- 見学に来た二人のうち、契約する二人が、仮に3割
- 挙式や食事会の客単価を、仮に250万円
この前提で数えると、月12件のうち2割は約2.4件、見学に来るのは約1.2件、契約するのは約0.36組になります。1年で約4.3組、売上にして約1,080万円です。
数字の置き方で結果が変わることも、見ておきます。迷っている二人の割合を1割から3割まで、見学後の契約率を2割から3割まで動かすと、年間の追加契約は1.4組から6.5組の間で動きます。
この計算で言えることは、2つです。
1つ目は、効果は小さくないが、劇的でもないということ。月に0.1〜0.5組の追加契約です。フォトの問い合わせ対応を変えるだけで、売上が倍になる話ではありません。
2つ目は、費用がほぼかからないということ。変えるのは、最初の返信の文面と、質問の順番だけです。広告費も、人も増えません。0.1組でも増えれば、プラスになります。
質問に答えてくれない二人は、追わない
3つの質問に、答えてくれない二人もいます。
返信が「日程の候補を教えてください」だけだった。質問2への答えが、空欄のままだった。こういう二人は、聞かれたくないか、聞かれる必要を感じていないということです。
この場合は、追わずに、フォトの話を進めます。質問は1回だけにして、答えが無ければ手を引く。これを決めておかないと、現場は「もう一度聞いてみよう」と動いて、二人に嫌がられます。
フォトの予約を丁寧に取っておけば、撮影の当日に、二人と式場が会います。撮影の日の雰囲気や、スタッフの対応で、「この式場で食事会をしてもいいかも」と感じてもらえることがあります。それは、問い合わせの時点で聞き出すより、ずっと自然な機会です。
返信の文面の作り方
実際の返信に落とすと、こうなります。
「お問い合わせありがとうございます。フォトウェディングについて、ご案内の前に3つだけ教えてください。
- お写真は、どなたに見せたり、どこに飾ったりする予定ですか
- 結婚式や食事会は、まだ迷っている段階ですか。写真だけと決めていらっしゃいますか
- 撮影には、お二人だけで来られますか。ご家族も一緒に写る予定はありますか
お答えいただいた内容に合わせて、プランと日程をご案内します。」
この文面の要点は3つです。
- 3つの質問を、番号つきで並べる。二人が答えやすく、返信の抜けも見つけやすい
- 質問の理由を、先に書く。「お答えに合わせてご案内します」の一文があるだけで、営業の質問に見えなくなる
- プランの案内を、質問の答えのあとに回す。先に送ってしまうと、二人は料金だけ見て終わる
質問を3つに絞るのは、返信の負担を考えてのことです。5つ、6つ聞くと、二人は返信を後回しにします。
よくある迷い:質問すると、返信が減るのでは
3つの質問をつけると、返信率が下がるのではないか。この心配はもっともです。
仕組みから考えると、半分は当たると思います。質問に答えるのは、プランだけ送られるより、手間がかかります。だから、最初の返信の返事が来る割合は、いくらか下がるかもしれません。
ただ、返事をくれない二人は、料金表だけで比べている二人である可能性が高い、とも思います。そういう二人は、質問がなくても、料金が最安でなければ選ばれません。質問に答えてくれる二人は、会話をしながら決めたい二人で、価格以外のことを聞いてくれます。
この差は、自社のデータで確かめられます。しばらくの間、質問つきの返信と、プランだけの返信を、半々で送ってみる。1か月で、返信率と、撮影の予約率と、迷っている二人の人数を数える。この3つが分かれば、続けるかどうかは判断できます。
確かめるときの注意が1つあります。質問つきの返信を送る日と、プランだけを送る日を、曜日で分けないでください。土日に問い合わせが偏る式場なら、曜日の差が結果に混ざります。1件ごとに交互に送る形が、いちばん公平です。
現場に渡すときの3つの約束
この運用を、現場の担当者に渡すときに、決めておくことがあります。
- 質問は3つだけで、1回だけ聞く。答えが無くても、追わない
- 「迷っている」と答えた二人にも、その場で見学を勧めない。「ご希望でしたら、お見積もりのご案内もできます」と、選択肢として一言置くだけにする
- 「決めている」と答えた二人には、二度と挙式の話をしない。撮影の質で勝負する
3つ目の約束がいちばん大事です。決めている二人に挙式の話をしないことで、式場は「押さない会場」だと覚えてもらえます。家族が増えたとき、記念日、友人の結婚。思い出してもらえるタイミングは、あとから何度か来ます。
まとめ
- フォトウェディングの問い合わせは、「結婚式をしない二人」ではなく、写真が目的の二人、迷っている二人、前撮りの候補を探す二人の3種類が混ざっている
- 最初の返信で聞くことは3つ。写真の使いみち、結婚式は決めているか迷っているか、一緒に写る人
- 「結婚式のご予定は」と聞かず、「写真だけと決めているか、まだ迷っているか」と、どちらの答えも正解になる聞き方にする
- 提案は二人の状態ごとに1つだけ。複数並べない
- 仮のモデル(月12件、迷っている二人2割)では、年間の追加契約は1.4〜6.5組の幅。劇的ではないが、費用はほぼかからない
- 質問は1回だけで、答えが無ければ追わない。決めている二人に、挙式の話を二度としない
- 返信率は、質問つきとプランだけを1件ごとに交互に送って、自社のデータで確かめる
