挙式写真の納品を30日から14日に縮めると、仮の式場でカメラマンへの上乗せは年36万円。元を取るには、口コミか紹介で年0.23組の成約が増えればいい
挙式の写真は、いつ二人の手元に届いているでしょうか。撮影を外注のカメラマンに任せている会場だと、「挙式後30日以内」「納品は1か月後」と契約書や案内に書いているところが多いのではないかと思います。この期限を14日に縮めると、会場の損益はどう動くのか。今回はそれを計算します。
結論を先に書きます。僕が置いた仮の式場(年120組)で、カメラマンへの上乗せを1組3,000円とすると、年36万円かかります。納品が早くなって二人からの「まだですか」の連絡が減る分は、年1.8万円ほどです。差し引きで年34万円ほどの持ち出しになり、これを取り返すのに必要なのは、写真が早く届いたことによる口コミや紹介で、成約が年に0.23組増えることです。つまり、損益を決めるのは納品の手間ではなく、二人が写真を手にした直後に何をするか、そこに会場が触れられるかどうかです。
この記事に出典つきの数字はありません。業界全体で納品に平均何日かかっているのか、早い納品が口コミを増やすのかは、僕は確かめられていません。以下の数字は、すべて僕が置いた仮の前提です。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
仮の式場を置く
計算の土台になる前提を並べます。
- 年間の挙式は120組
- 1組あたりの粗利は148.5万円。ほかの記事で使っている仮の式場の値に合わせました
- 撮影はフリーランスのカメラマンに外注していて、挙式当日の撮影と、あとの写真データの選別・補正・納品までを任せている
- 現在の納品は挙式後30日以内。実際に届くのは、ほとんどが25日から30日のあいだ
- 納品を14日以内にするには、カメラマンに1組3,000円を上乗せして払う。補正の優先順位を上げてもらう対価の想定です
- 二人から「写真はいつ届きますか」と連絡が来るのは、30日の納品のとき、全体の3割
3,000円という数字には、根拠がありません。カメラマンの稼働は挙式のある土日に集中するので、平日の編集作業を前倒しするのに、どれくらいの上乗せが必要かは、人によって違います。ここは、実際にカメラマンに聞いて入れ替えるべき数字です。
かかる費用は年36万円、戻るのは年1.8万円
費用の側から見ていきます。
上乗せは1組3,000円なので、年120組で36万円です。これは確実に出ていきます。
戻る側は、催促の対応が減る分です。30日の納品のとき、全体の3割が連絡してくると置いたので、年36組が連絡してくる計算になります。1件の対応に15分かかると置くと、年9時間。時給2,000円の人件費で換算すると1.8万円です。
14日に縮めたら、この連絡がゼロになるわけではありません。ただ、仮に半分に減ったとしても、戻るのは年1万円に届かない金額です。催促の対応を減らすためだけに、納品を早める理由は立ちません。
差し引きの持ち出しは、36万円から1.8万円を引いて、年34万円ほどです。粗利1組が148.5万円なので、34万円は粗利の0.23組分にあたります。
回収する道は、二人が写真を手にしたあとに何をするか
では、年34万円を回収する道はどこにあるのか。僕が考えているのは、二人が写真を手にしたタイミングです。
挙式から時間がたつほど、二人の気持ちは日常に戻ります。結婚式の余韻が残っているうちに写真が届くと、二人はその写真を、家族や友人に見せたり、SNSに載せたりしやすい。そのとき、会場に口コミを書いてもらう、友人の結婚式の相談を紹介してもらうといった流れが生まれる余地があります。
ここは、あくまで仮説です。僕は、納品が早いと口コミが増えるというデータを持っていません。ただ、写真が届いた直後に口コミの依頼を送る運用なら、早ければ早いほど依頼のタイミングが前に動くので、可能性としては筋が通ります。
そこで、損益の分かれ目を、効果の大きさではなく、必要な成約の数で書きます。
| 口コミ・紹介1件が増やす成約 | 年34万円を取り返すのに必要な増加件数 |
|---|---|
| 0.01組 | 23件 |
| 0.02組 | 11.5件 |
| 0.03組 | 7.7件 |
左の列は、僕が置いた仮の値です。口コミ1件が、見学に来た二人の1%に影響して成約を0.01組増やす、といった想定です。この想定どおりなら、14日納品によって年23件の口コミが増えないと、元が取れません。0.03組の影響力があれば、年8件ほどで足ります。
年120組の式場で、口コミの依頼を受ける人が全員ではないことを考えると、23件はかなり重い数字です。8件でも、今の口コミ件数から8件上乗せするのは簡単ではありません。
口コミの依頼率が上がるかどうかで見てみる
もう1つの見方をします。口コミを依頼したうちの何割が実際に書いてくれるかを、仮に15%と置きます。年120組全員に依頼を送ると、年18件の口コミが集まる計算です。
納品を早めたことで、この書いてくれる割合が上がったとします。
| 書いてくれる割合 | 年の口コミ件数 | 増えた件数 |
|---|---|---|
| 15%(現状) | 18件 | 0件 |
| 18% | 21.6件 | 3.6件 |
| 21% | 25.2件 | 7.2件 |
| 25% | 30件 | 12件 |
15%から25%まで、10ポイント上がっても、増えるのは年12件です。そのうち、さっきの表で見た、1件あたり0.03組の影響力を置いたとしても、成約の増加は0.36組。粗利にして約53万円です。費用の年34万円を上回るのは、25%まで上がった場合だけです。18%や21%では届きません。
数字を見て思うのは、納品期限を縮める施策は、口コミの依頼率が大きく動かなければ元が取れないということです。写真の納品を早めること自体は、二人にとって悪い話ではありません。ただ、会場の損益として考えると、回収のハードルが高い。
費用を下げる側から考える
そうなると、費用を年34万円から下げる方向を考えたほうが現実的です。いくつか、分かれ目になる条件を書きます。
全組ではなく、挙式後すぐに予定がある組だけを14日にする。 たとえば、挙式の翌月に新居への引っ越しや、親族への報告の予定がある二人には、早い納品に意味があります。希望した組だけに有料のオプションとして出す、あるいは会場が負担して早める、といった形です。仮に全体の3割が使うとして、費用は年36組×3,000円で10.8万円。全組にかけるより、3分の1になります。
繁忙期の挙式だけを14日にする。 土日が詰まる時期は、カメラマンの編集が遅れやすく、二人の待ち時間も長くなりがちです。年120組のうち、繁忙期の挙式が6割あるとすると、72組×3,000円で21.6万円になります。ただ、これは繁忙期のほうが、カメラマンにとって負荷が高い。上乗せ額を3,000円で据え置けるかは分かりません。
納品の期限を縮めず、中間の「先出し」を付ける。 選んだ10枚から20枚だけを、挙式の翌日か3日後に二人へ送る形です。全データの納品は30日のまま、先出しのデータだけ先に届きます。カメラマンへの上乗せは、全データの前倒しより小さく済むはずですが、これも金額は聞いてみないと分かりません。
3つの案のうち、僕は先出しが一番現実に近いと考えています。二人が余韻の残るうちに手にしたいのは、全部の写真というより、SNSに載せられる数枚です。その数枚が早く届けば、口コミや紹介を頼むタイミングも前に動きます。
納品を早める前に、会場で確かめること
数字を出す前に、まず確かめておきたいことがあります。
1つ目は、今の納品が実際に何日かかっているかです。契約書では30日以内でも、現場では20日で出ている、というカメラマンもいるはずです。実績を調べて、多くが20日以内に出ているなら、14日への縮小は上乗せが小さくて済みます。
2つ目は、催促の連絡がどのくらい来ているかです。僕は3割と置きましたが、会場によっては1割かもしれません。担当者の記録か、LINEの履歴で数えてみると、数字がはっきりします。
3つ目は、口コミの依頼を、写真の納品後に送っているのか、挙式の直後に送っているのかです。すでに挙式の翌週に送っている会場なら、写真の納品を早めても、依頼のタイミングは変わりません。この場合は、納品を縮める意味がほとんどなくなります。
4つ目は、カメラマンとの契約です。納品期限を契約上で変えるなら、上乗せ額と、遅れたときの扱いを決めておく必要があります。14日と書いておきながら、繁忙期に守れない状態が続くと、二人の期待だけが上がって、かえって不満を生みます。
14日にすると決めた会場が、最初にやること
仮に縮めると決めた場合、最初にやることを順番に書きます。
- カメラマンに、14日で納品できる条件を聞く。上乗せ額、繁忙期の対応、選別枚数の見直し
- 二人への案内文を直す。「挙式後30日以内」を「14日以内」にして、遅れるときの連絡ルールも書く
- 口コミの依頼を、納品のメッセージに合わせて送る形に変える
- 3か月たったら、口コミの件数と催促の連絡数を数えて、仮の数字と見比べる
4つ目の見直しが大事です。この記事の計算は、仮の前提の上に立っています。実際の件数が、仮に置いた見込みの半分に届かなければ、元に戻す判断も要ります。上乗せの契約を、3か月で見直せる形にしておくほうが安全です。
まとめ
- 納品を30日から14日に縮めると、仮の式場(年120組)で、カメラマンへの上乗せは1組3,000円、年36万円
- 催促の対応が減る分は年1.8万円ほどで、差し引きの持ち出しは年34万円。粗利の0.23組分
- 回収する道は、二人が写真を手にした直後の口コミや紹介。この効果を裏づけるデータを、僕は持っていない
- 口コミを書いてくれる割合が15%から25%まで上がっても、年12件。費用を上回るのは25%まで上がった場合だけ
- 全組ではなく、希望者だけ、繁忙期だけ、数枚の先出しだけにすると、費用は3分の1から半分ほどに下がる
- 縮める前に、今の実際の納品日数、催促の件数、口コミ依頼のタイミングを数える
- 3か月で見直せる契約にしておく
