繁忙日の配膳6人を、常勤で抱えるかスポットで埋めるか。仮の式場では常勤1人が年178日以上埋まらないと割に合わず、分かれ目は時給より「何日出てもらうか」
土日の繁忙日になると配膳が足りない。これは多くの式場で起きていると思います。足りない分を、常勤を増やして埋めるのか、スポットのスタッフで埋めるのか。ここで時給の高い安いを比べ始めると、答えがずれます。分かれ目になるのは時給ではなく、その人に年間で何日出てもらう仕事があるかです。
この記事の数字は、すべて僕が置いた前提による計算です。実在の式場の実績でも、業界の平均でもありません。出典のある統計は使っていません。そのかわり前提を全部書くので、自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
仮の式場の前提
次の式場を置きます。
- 繁忙日(披露宴が複数同時に動く日)に必要な配膳スタッフは24人
- 常勤とすでにいる固定のスタッフで賄えるのは18人。足りないのは6人
- 常勤を1人増やすと、給与・社会保険・教育費を合わせて年400万円(仮)
- スポットの人は、1人1日あたり1.8万円(仮)。時給1,500円×8時間で1.2万円、それに紹介や登録の手数料、交通費、食事を足した額です
- スポットの人は、初めての会場なので動きが遅く、常勤の8割の働きとする(仮)
- 常勤の年間の出勤日は240日(仮)
数字は全部「仮」です。どれも会場の実態によって大きく動くので、後半で動かしてみます。
まず、素朴な比較
6人を常勤で増やす場合は、400万円×6人で年2,400万円です。
6人をスポットで埋める場合は、繁忙日の数で変わります。
| 年間の繁忙日 | スポット(単価1.8万円) | スポット(働き8割で補正) | 常勤6人 |
|---|---|---|---|
| 30日 | 324万円 | 405万円 | 2,400万円 |
| 60日 | 648万円 | 810万円 | 2,400万円 |
| 90日 | 972万円 | 1,215万円 | 2,400万円 |
| 120日 | 1,296万円 | 1,620万円 | 2,400万円 |
繁忙日が年間120日あっても、スポットのほうが安く出ます。土日だけでも年104日あるので、それがすべて繁忙日というわけではありません。仮に半分の日が足りないとしても、60日前後です。この場合、常勤6人の2,400万円は、スポットの810万円の3倍になります。
つまり、足りないのが繁忙日だけなら、素朴な比較ではスポットのほうが安く出ます。
分岐は「1人あたり何日埋まるか」
比べ方を変えます。常勤1人の年400万円を、スポットの1人日の単価で割ります。
- 働きを同じとした場合:400万円÷1.8万円=約222日
- 働きが8割の場合:400万円÷(1.8万円÷0.8)=約178日
常勤を1人増やすなら、その人が年間178日以上、実際に足りない穴を埋める必要があります。178日を下回るなら、同じ穴をスポットで埋めたほうが安くなります。
常勤の出勤日は240日と置いたので、178日というのは出勤日の約74%です。つまり、増やした1人が出勤日の4分の3以上、本当に足りない場所に立っていないと、元が取れません。
平日は披露宴が少ない式場が多いと思います。増やした常勤が、平日の空いた日にも立つことになるので、その分の人件費は実質的に空き時間のコストになります。ここが、常勤を増やす判断が割に合いにくくなる理由です。
前提を動かす
分岐の日数は、スポットの単価と働きで動きます。
| スポットの単価 | 働き100% | 働き80% | 働き70% |
|---|---|---|---|
| 1.5万円 | 267日 | 213日 | 187日 |
| 1.8万円 | 222日 | 178日 | 156日 |
| 2.2万円 | 182日 | 145日 | 127日 |
どのマスを見ても、分岐は127日から267日の間です。常勤の出勤日は240日なので、繁忙日だけ足りない式場では、ほとんどのマスで常勤の増員は割に合いません。割に合いやすいのは、単価が高く(2.2万円)、働きが低い(70%)場合です。このときの127日は、足りない穴が年間の半分強の日で発生しているなら、常勤が元を取れる水準です。
動かして分かったことは、時給の差よりも、年間に足りない穴の日数が分岐を決めるということです。時給が300円違っても、1日あたり2,400円の差にしかなりません。年400万円の固定費を動かす判断を、時給の差で決めるのは、桁が合っていません。
見えにくい費用:スポットの働きの8割
計算では「働きが8割」と置きました。これは僕が置いた数字で、会場の実態は分かりません。ただ、何が8割に効くのかは書き出せます。
- 会場の動線を知らない。バックヤードの場所、皿の戻し先、厨房への合図の仕方を、その日に覚える
- 料理の出し方の順番を覚えていない。コース料理のタイミングは会場ごとに違う
- 新郎新婦やゲストへの声かけの基準を知らない
- 教える側の常勤スタッフの手が止まる
最後の項目が重要です。スポットの人が6人入ると、教える常勤の手が止まる時間が発生します。この時間は、スポットの単価にも常勤の人件費にも出てきません。ただ、現場では確かに失われています。教える時間を30分と置くと、常勤1人の時間単価が約1,670円(400万円÷240日÷10時間)なので、6人に対して一人ずつ説明すると、3時間分の人件費で約5,000円です。金額としては小さく見えます。ただ、この30分は披露宴が始まる前の準備のピークと重なるので、金額以上に現場の余裕を削ります。
中間案1:固定メンバー化
スポットの人を毎回違う人にするのではなく、同じ人に繰り返し来てもらう形にすると、働きは上がります。働きが8割から95%になれば、分岐は178日から211日に動きます(400万円÷(1.8万円÷0.95))。これは常勤の増員が割に合うラインをさらに上げます。つまり、固定メンバー化すると、スポットのほうがより有利になります。
固定メンバーにするための手間は、次のようなものです。
- 来てもらった人の名前と、できる持ち場を記録する
- 次の繁忙日の予定を早めに出して、同じ人に声をかける
- 初回に動線の説明をして、2回目以降は省く
これは会場がやることを増やします。ただ、紹介手数料が毎回かかる形の場合、直接登録の形に切り替えられるかどうかも確認の対象です。その場合は契約の条件が関わるので、契約書の中身は個別に確認してください。
中間案2:週末だけのパート
もう一つの形は、土日だけ働くパートを雇う形です。仮に週末1日あたり時給1,500円×8時間の1.2万円に、交通費などの0.2万円を足した1.4万円で、年間104日出てもらうと、年146万円です。紹介の手数料がかからない分、スポットより安くなる、という置き方です。
- 年146万円÷104日=1日あたり約1.4万円
- スポット(1.8万円)より安く、働きも固定なので95%程度に上がる
仮の数字ですが、同じ人が週末に出てくれる形になると、スポットよりも1日あたりの費用が下がり、働きも安定します。ただし、この形は応募が集まるかどうか、雇用契約として労働条件を整える必要があるかどうかが別の論点です。休みが取りにくい土日のみの募集に人が来るかは、地域によって差があります。
1人だけ常勤を増やして、残りをスポットにする場合
全部を常勤かスポットかで割る必要はありません。6人のうち1人だけを常勤で増やし、残り5人をスポットにする形も計算できます。
- 常勤1人:年400万円
- スポット5人×繁忙日60日×1.8万円÷0.8=年675万円(働き8割で補正)
- 合計:年1,075万円
6人すべてをスポットにすると810万円なので、この形は265万円高くなります。高くなる分で買っているのは、繁忙日に必ず1人、会場の動線を知っている人が増えることです。この265万円が高いか安いかは、教える側の手が止まる時間や、ミスが減る分と比べて決めます。ミスで失う金額は、僕が数字を置けません。会場で、直近1年に配膳のミスで返金や値引きをした件数と額を数えると、置き換えられます。
固定費は、繁忙日が減っても戻せない
もう一つ、見ておきたい点があります。常勤の400万円は、繁忙日が減っても払い続ける費用です。スポットの費用は、繁忙日が減れば減ります。
繁忙日が年60日から40日に減ったとします。
- スポット(働き8割補正):6人×40日×2.25万円=540万円。60日のときの810万円から270万円減る
- 常勤6人:2,400万円のまま変わらない
この差が、固定費を持つことのリスクです。婚姻数が減る地域や、近くに新しい会場ができる地域では、繁忙日の数は動きます。動く数字に対して、動かない費用を積むことになります。スポットの単価は高く見えても、需要が減ったときに自動で下がる費用だと考えると、見え方が変わります。
反対に、繁忙日が年200日近くあるような会場では、固定費のほうが安くなります。ここまでの分岐の計算は、その会場がどちら側にいるかを確かめるためのものです。
判断の分かれ目
ここまでの計算から、判断の分かれ目を整理します。
- 足りない穴は、年に何日あるか。 130日を超えるなら、常勤の増員や週末パートを検討する価値があります。60日前後なら、スポットのほうが安く出ます
- その穴は、毎年同じ日に空くか。 土日の繁忙日のように予定できるなら、固定メンバーが組めます。欠員の穴など不規則なものは、スポットのほうが適しています
- 教える時間は、誰が持つか。 スポットを6人入れる日は、教える役をあらかじめ1人決めておきます。決めておかないと、全員の手が少しずつ止まります
- 常勤が足りないのではなく、平日に余っているのかもしれない。 繁忙日だけ足りないという話の裏には、平日の人員が余っているという話があることがあります。シフトの組み方で、平日の人を週末に寄せられるかも確かめる価値があります
前提を自分の数字に置き換える
自分の会場の数字に置き換えるときは、次の四つを手元に出してください。
- 繁忙日の必要人数と、常勤で賄える人数の差
- その差が出る日が、年間に何日あるか
- スポット1人日にかかる総額(時給だけでなく、手数料・交通費・食事)
- スポットの人が入った日、教える側の動きがどれだけ止まるか
この四つが分かれば、分岐の日数は「年間の常勤コスト÷(スポットの1人日÷働きの割合)」で出ます。表計算の1セルで足ります。
まとめ
- 繁忙日だけ足りない配膳を常勤の増員で埋めると、仮の式場では年2,400万円。スポットで埋めると年405〜810万円で済む
- 常勤1人が割に合う分岐は、スポットの働きが8割なら年178日。出勤日の約74%を、足りない穴で埋める必要がある
- 分岐を動かすのは時給の差ではなく、足りない穴の日数。スポットの単価を1.5万円〜2.2万円で動かしても、分岐は127〜267日の範囲に収まる
- スポットの見えにくい費用は、教える側の手が止まること。教える役を先に決めておく
- 固定メンバー化(働き95%)で分岐は211日に動き、スポットがさらに有利になる。週末パートは年146万円(仮)で1日約1.4万円に下がるが、応募が集まるかは地域次第
- 判断は、穴の日数、穴が予定できるか、教える時間の持ち主、平日の余りの四つで決める
