来館・成約

親が結婚に乗り気でない二人には、式場見学で親に見せる1枚を返す

見学が終わって、二人が言います。「親とも相談して、また連絡しますね」。

どの式場でも聞く言葉です。多くの場合、これは相談相手が親だというだけの、ふつうの持ち帰りです。ただ、ときどき混ざります。親がまだ結婚そのものに慣れていない、式の形や費用に気が乗らない、という二人です。この二人の「親と相談して」は、普通の保留とは中身が違います。式場が見ているのは二人の顔なのに、決める力の一部は、その場にいない親が持っています。

この記事では、親が乗り気でない二人に、式場がどう関わるかを整理します。結論を先に書くと、式場が親に向かって動く必要はありません。二人が親に見せられる1枚を返し、親に話す日を聞いて、その翌週に連絡日を置く。これだけで保留の質が変わります。調査の数字は使わず、判断の条件と、僕が置いた仮の前提での計算で書きます。

「持ち帰る」の相手が親になっている二人

見学で保留になる理由はいくつもあります。予算、日程、他の式場との比較。そのなかに、親の了解という理由が混ざっていることがあります。

厄介なのは、この理由が式場に見えにくいことです。二人は「親に相談します」とは言っても、「親が乗り気でなくて」とまでは言いません。式場の側から聞かれない限り、言わないまま帰ります。そして連絡のないまま数週間が過ぎます。追客のメールが届く頃には、二人は親と話した後で、結論は式場の外で出ています。

もう一つ、見落とされやすいことがあります。親が乗り気でない二人は、見学の最中も、どこか落ち着かない様子でいることが多いはずです。説明をうなずいて聞いているのに、質問が出ない。見積もりの総額を見ても、数字より先に「これを親に見せたら何て言うかな」という顔をする。この様子に気づけるのは、見学の最中に二人を見ている担当者だけです。

親の反応は3つに分けて受ける

「親が乗り気でない」と一口に言っても、中身はばらばらです。式場の動き方が変わるので、見学で聞き取った内容を次の3つに分けて受けます。

1つ目は、結婚そのものに親が納得していないケースです。相手のこと、時期のこと、家同士のこと。これは式場が踏み込む領域ではありません。会場の説明も見積もりも、いったん脇に置いていい場面です。二人に必要なのは式場の資料より、時間です。無理に次回の予約を取りにいかず、「また動けるようになったら、いつでも見に来てください」と、扉を開けたまま帰ってもらうのが筋だと思います。

2つ目は、結婚には賛成だけれど、結婚式の形や規模に乗り気でないケースです。「そんなにお金をかけなくていい」「親族だけでいいんじゃないか」「式はやらなくてもいいのでは」。ここは式場が役に立てる領域です。親が気にしているのは、たいてい式場そのものではなく、費用の大きさと、何にお金がかかるのかが見えない不安だからです。

3つ目は、結婚式には賛成だけれど、日取りや場所、招待する人に注文があるケースです。「うちの親戚は遠方だから」「この日は避けたい」「あの人を呼ばないわけにはいかない」。これは親が反対しているのではなく、参加者として意見を持っている状態です。式場は、日程の候補や宿泊の案内といった具体で答えられます。

見学の最後に二人から聞き取ったことを、この3つのどこに入れるか。担当者がそれを頭の中で決めるだけで、次の連絡の中身が決まります。1つ目なら、待つ。2つ目なら、親に見せる資料を返す。3つ目なら、日程と案内を具体で返す。

見学の最初に聞く一言

親の状況は、保留になってから聞くより、見学の最初に聞いたほうが自然です。ただし「ご両親は反対されていませんか」のような聞き方は、二人を身構えさせます。

使いやすいのは、「今日のことは、ご両親にはどこまでお話しされていますか」という聞き方です。反対かどうかを聞かず、話した範囲だけを聞きます。「見学に行くとは伝えてあります」「まだ何も話していません」「父だけ知っています」。どれが返ってきても、責める響きがありません。

返ってきた答えで、見学の組み立てを少し変えます。親にまだ何も話していない二人には、見積もりの総額より、費用の内訳が親に説明できる形になっているかを意識して説明します。父親だけが知っている二人には、「お母様には、どなたが伝えることになりそうですか」と続けて聞いてもいいかもしれません。

ここで大事なのは、聞き取りを尋問にしないことです。二人が答えたくなさそうなら、それ以上は聞かない。親との関係は、二人が式場に開示するかどうかを選べる領域です。

親に見せる1枚に入れるもの

親が乗り気でない二人に、式場が渡せるいちばん役に立つものは、パンフレットではなく、二人が親に見せるための1枚です。

パンフレットは、二人に向けて作られています。写真が大きく、演出の案内があり、オプションの一覧が続く。親が見ると、「何にいくらかかるのか」が分からないまま、華やかさだけが目に入ります。乗り気でない親にとっては、これがむしろ警戒の材料になります。

親に見せる1枚は、親が気にしていることに答える形で作ります。入れる中身は次の5つです。

  • この式の形と人数の想定(たとえば、親族のみ、何名規模、挙式と食事の流れ)
  • 総額の帯と、何に使われるかの大きな内訳(料理、会場、衣裳、写真などの括り)
  • 親族に負担がかかる点と、かからない点(親に出してもらうものがあるのか、無いのか)
  • 当日の親の動き(挙式で何をするか、控室はどう使うか、何時に集まるか)
  • 親がよく心配することへの答え(お金の追加が出るのか、遠方の親族の宿泊、高齢の親族の動線)

ポイントは、見積もりそのものではなく、親が見て不安になる順に答えを並べることです。親は式場の営業を見たいのではなく、「うちの子が、変なお金の使い方をしていないか」を確かめたいはずです。1枚が、その確認に応える形になっていれば、二人は親との会話で、自分の言葉に詰まらずに済みます。

文章のトーンは、売り込みから最も遠い位置に置きます。「素敵な1日に」「特別な時間を」のような言葉は入れません。数字と段取りだけにします。

式場から親に動くのは、二人が頼んだときだけ

親が乗り気でないと分かると、「親御さんにも見学に来てもらえませんか」と言いたくなります。気持ちは分かりますが、二人から頼まれていないうちは、式場から親に向かわないほうが安全です。

理由は、二人と親の関係の中に、式場が割り込む形になるからです。親が結婚に前向きでない理由が、二人にとってセンシティブな場合は、特にそうです。式場が親に連絡することで、「話が大きくなった」と二人が感じる可能性があります。

動いていいのは、二人から「親も一度見に来たいと言っています」「親に直接説明してもらえますか」と言われたときです。そのときは、親の来館を歓迎します。そして、親の前では二人を主役のままにします。説明を二人に向けて行い、親の質問には二人の返事を挟んでから答える。親が来る見学では、親の納得を取りにいくより、二人が親に説明するのを助ける立ち位置のほうが、結果として親の警戒も下がります。

追客は、親に話す日から数える

見学の後の追客は、「見学から何日後」で数えがちです。親が絡む二人は、数え方を変えます。

見学の最後に、「ご両親には、いつ頃お話しできそうですか」と聞きます。「今週末に実家に帰ります」「来月の連休に会う予定です」。この答えを控えておき、その日の翌週に連絡を置きます。

親に話す前に連絡すると、二人はまだ結論が出ていないので、返事に困ります。親に話した直後なら、二人は感想を持っています。「思ったより話が進んだ」「やっぱり少し待ちたい」。どちらでも、式場が聞きたい情報です。

連絡の中身は、決断を促すものにしません。「ご両親とのお話は進みましたか」ではなく、「お渡しした1枚で、足りなかった点があれば教えてください」と、資料の改善として聞きます。二人は、親から出た質問をそのまま式場に流せます。出てきた質問は、次の1枚の改善材料にもなります。

ここで、期限や特典で背中を押してはいけません。親が乗り気でない二人にとって、「今月中なら」のような期限は、親への説明をさらに難しくするだけです。

仮の前提で数える

この取り組みにどれくらいの意味があるかを、仮の前提で計算します。数字は僕が置いたもので、調査の結果ではありません。自社の来館表に置き換えて使ってください。

  • 月の来館は40組
  • そのうち、親の了解待ちで保留になる二人が10%(4組)
  • 1組を成約したときの粗利は140万円

親に見せる1枚と、親に話す日の翌週の連絡によって、保留の4組のうち何組が戻るかで、効果が変わります。

  • 4組のうち0.5組が、月に追加で成約に戻る(回収率12.5%)なら、月の粗利は70万円、年に840万円
  • 4組のうち1組が戻る(回収率25%)なら、月の粗利は140万円、年に1,680万円

もちろんこれは、保留の割合も、回収率も、置いた仮の値です。実際の回収率はもっと低いかもしれません。ただ、見てほしいのは費用の側です。1枚を作る費用は、担当者が6時間かけ、時給を2,500円と置いても15,000円です。印刷も、更新も、年に数万円で済みます。

つまり、年に1組が戻るかどうかで、この施策の元は取れます。回収率の議論に入る前に、費用がこれだけ小さいことは確かめておいてください。

書かないほうがいいこと

最後に、1枚に書かないことを挙げます。

「親御様にも安心いただける」「ご家族の絆を深める」のような、感情に寄った言葉は入れません。親が乗り気でない理由は、感情ではなく心配です。心配には、数字と段取りで答えるのが一番届きます。

「皆様、同じように最初は迷われます」のような、一般化した励ましも避けます。実際に親が反対した後、結婚式に至った二人の割合を、式場が正確に把握していることはほとんどありません。確認していない傾向を、既成事実のように書かないことが大事です。

そして、親を説得するための言葉も入れません。1枚は、二人が親に見せるものであって、式場が親に宛てた手紙ではありません。二人が自分の言葉で話すための材料に徹します。

まとめ

見学で聞き取った「親」の話を、記事の流れで振り返ります。

  • 親が乗り気でない二人の「親と相談して」は、普通の持ち帰りとは中身が違う。決める力の一部が、その場にいない親にある
  • 親の反応は3つに分けて受ける。結婚そのものへの反対は待つ、式の形や費用への消極は資料を返す、日程や招待への注文は具体で答える
  • 見学の最初に、「ご両親にはどこまでお話しされていますか」と、話した範囲だけを聞く
  • 親に見せる1枚は、パンフレットではなく、式の形、総額の帯、親族の負担、当日の親の動き、心配への答えを数字と段取りで並べる
  • 式場から親に動くのは、二人が頼んだときだけ。追客は、親に話す日の翌週に置く
  • 仮の前提(月40組来館、保留4組、粗利140万円)では、1枚の費用は1.5万円ほど。年に1組が戻れば元が取れる