福利厚生の割引を使いたい二人には、適用条件を見学の前に返す
「うちの会社の福利厚生で、割引は使えますか」。この質問が見学の最後、見積もりを前にして出ると、式場側は答えに詰まります。担当者が確認に席を立ち、戻ってきたときには二人の気持ちが少し冷めている。そういう場面は、数字のよさとは関係なく、成約を逃す入口になります。
結論から言います。福利厚生の割引を使いたい二人には、適用条件を見学の前に返します。 条件は「併用」「対象」「期限」「書類」の4点で、これを先に文章で渡しておけば、見学当日の見積もりが割引込みの数字で出せます。この記事に出典の数字はありません。計算に使う数字はすべて、考えやすいように僕が置いた仮のものです。
福利厚生の割引は、二人の頭の中ではもう決まっている
勤務先が契約している福利厚生サービス、加入している共済や生協、親の会社の提携。こうしたところで結婚式場の優待を見つけた二人は、式場を探し始める前から「割引で安くなる」と考えています。見学で初めて聞かされる話ではなく、見学に来る理由の一部です。
ここが式場側の見立てとずれやすいところです。式場にとっての割引は、見積もりの最後に乗る調整項目です。二人にとっての割引は、式場を選ぶ前提条件です。同じ割引でも、置かれている場所が違います。
優待の条件は、式場ごと、サービスごとに違います。僕はここで特定のサービスの条件を書くつもりはありません。書けるのは、どの式場にも共通して起きる「聞かれる順番の問題」です。
二人は、割引の話を次の3つのタイミングのどれかで持ち出します。
- 問い合わせの時点(「福利厚生の優待は使えますか」)
- 見学の最中(見積もりが出る少し前)
- 契約の直前(金額を見て、思い出したように)
いちばん多いのは、おそらく最後の2つです。二人は割引を当たり前のものと思っているので、わざわざ最初に切り出さないからです。そして式場が答えに詰まるのも、この2つです。
4点を先に決めておく
答えに詰まらないために、式場側であらかじめ決めておくことは4つです。
併用できるか
最初に決めるのは、フェア特典や成約特典と併用できるかどうかです。ここが決まっていないと、担当者は目の前で計算をやり直すことになります。
併用の整理は、3段階で足ります。
- 併用できる(割引も特典も両方つく)
- どちらか一方(二人が有利なほうを選ぶ)
- 併用できない(割引は特典の対象外の日・プランのみ)
「どちらか一方」の場合は、有利なほうを式場が計算して先に出します。二人に選ばせるだけだと、比べ方が分からないまま保留になります。
何に対して割引が効くか
次に、割引が総額にかかるのか、会場使用料のような一部の項目だけにかかるのかです。二人の期待は、たいてい総額にかかるほうに寄っています。ここのずれが、後で大きな差になります。
仮の数字で見てみます。総額350万円の見積もりで、割引率が5%だとします。
- 総額にかかる場合:350万円 × 5% = 17.5万円
- 会場使用料80万円だけにかかる場合:80万円 × 5% = 4万円
差は13.5万円です。二人が「5%引き」とだけ聞いて17.5万円を期待していたのに、実際は4万円だった、となると、割引が使えること自体は事実でも、受け取られ方は「思っていたのと違う」になります。ここで気持ちが離れるのは、割引の額が小さいからではありません。期待との差が、説明の抜けとして見えるからです。
もちろん、式場によって対象の切り方は違います。大事なのは、対象をどう切るかではなく、対象を最初の説明に含めることです。「5%引き」ではなく「会場使用料に対して5%、今の見積もりだと4万円」と、金額まで言い切ります。
いつの時点で適用が決まるか
三つめは期限です。割引の適用が、見学の予約日で決まるのか、契約日で決まるのか、挙式日で決まるのか。ここが曖昧だと、二人は「いつまでに何をすれば間に合うのか」が分からなくなります。
特に気をつけたいのは、優待サービス側の利用期間と、式場側の見積もりの有効期間が別々に動くことです。二人の勤務先のサービスが年度の途中で変わる、式場の特典の期限が先に来る、といったことが起きます。僕は、期限は「二人が何かを持ち帰って戻ってくる日数」とセットで書くのがよいと考えています。持ち帰り検討が一般に何日かかるかは、式場ごとの実績で決まります。自社の持ち帰りから成約までの日数を数えて、その日数より適用期限が短くないかを確かめます。
どんな書類が要るか
四つめは書類です。会員証の提示で済むのか、勤務先の在籍証明が要るのか、申込時にサービス側のクーポンコードが要るのか。契約の日に初めて「書類が要ります」と言われると、その日は契約できません。保留になり、書類を取り寄せている間に他の式場に動かれます。
書類の話は地味ですが、割引を巡る保留の理由として、いちばん防ぎやすいものです。見学の予約が入った時点で「割引をご利用の場合は、〇〇をご用意ください」と一行送れば済みます。
見学の前に返す、という段取り
4点が決まったら、渡し方を決めます。僕のおすすめは、次の3段階です。
予約フォームに1項目だけ足す
見学予約フォームに、「福利厚生サービスや共済の優待を利用予定ですか」という選択式の質問を1つ足します。項目名は具体的でなくて構いません。利用予定の有無と、サービス名を書く任意欄があれば足ります。
質問を足す目的は、割引の話を二人が切り出すのを待たないことです。二人は当たり前だと思っているので、聞かれなければ言いません。聞かれれば、「使う予定がある」と答えます。
予約確定の返信に4点を文章で入れる
予約が確定したら、返信メールかLINEに、4点を短い文章で入れます。長い説明は要りません。
- 併用:フェア特典とは〇〇です
- 対象:会場使用料にかかります
- 期限:契約日までのご利用開始が必要です
- 書類:会員証の画面をご用意ください
この4行があるだけで、二人は「話が通じる式場だ」と感じます。そして何より、見学当日に確認で席を立つ場面が消えます。
見積もりは割引込みで出す
見学当日の見積もりは、割引込みの数字と割引なしの数字を並べて出します。割引の額が見えるようにするためです。「いくら引かれるか」が数字で見えると、二人は割引を使うことを前提に、残りの検討に集中できます。
ここで大切なのは、割引なしの数字を隠さないことです。割引は優待サービスの条件が変わると使えなくなることがあります。割引込みの数字だけを見せていると、後で条件が変わったときに、総額が急に上がったように見えてしまいます。
割引を使えない二人には、使えない理由を先に
条件を満たさず、割引が使えない二人も出ます。たとえば、対象の日程ではない、併用不可の特典を選びたい、書類が揃わない、といった場合です。
この場面では、使えない理由を先に、短く伝えます。続けて、使えない代わりに何ができるかを置きます。同じ金額帯に収める別の項目の調整案があるなら、それを見積もりの2本目として出します。
僕が避けたいのは、割引が使えないことを見学の最後に伝える形です。二人が割引を前提に予算を組んでいると、最後に聞くのは大きな落差になります。使えないなら、予約の段階で分かるようにしておくほうが、結果として見学の質が上がります。
数えておくと見えること
この段取りが効いているかは、数字で確かめられます。僕なら次の3つを数えます。
- 見学予約フォームで優待の利用予定ありと答えた二人の割合
- そのうち、見学当日に確認で担当者が席を立った件数
- 優待の利用予定がある二人の、見学から契約までの日数と成約率
3つ目を、利用予定のない二人と並べて見ます。利用予定のある二人のほうが日数が長い、成約率が低いなら、割引の条件の見せ方に改善の余地があります。逆に差がないなら、現行の見せ方で足りている、と読めます。
注意したいのは、件数が少ない月に割合だけを見て判断しないことです。たとえば優待の利用予定ありが月に数組なら、成約率の差は1組の増減で大きく動きます。数か月ぶんをまとめて見るか、傾向だけを読むに留めます。
この段取りを入れないとき
最後に、この段取りを入れなくてよいケースも書いておきます。
優待を使う二人が、ほとんどいない式場です。商圏の企業の福利厚生に優待登録していない、あるいは登録していても利用がほぼない、という式場なら、予約フォームの項目を増やす分だけ入力の手間が増えます。この場合は、フォームには足さず、問い合わせで聞かれたときに4点を返す運用で十分です。
また、割引の条件が頻繁に変わる式場でも注意が要ります。返信の定型文に条件を固定で書くと、変わったときに古い文面が残ります。条件を書く場所を1か所に決めて、返信ではそこを参照する形にします。定型文を直す回数を減らすためです。
担当者が替わっても同じ答えが出るように
4点は、一枚のメモにして共有します。割引の話は担当者ごとの記憶に頼りやすく、新しく入ったプランナーほど答えに詰まります。メモには、4点の現在の答えと、最後に見直した日付を書きます。日付があれば、古い条件のまま案内する事故が減ります。二人から見れば、誰に聞いても同じ答えが返ってくる式場になります。これは割引に限らず、見積もりの信頼につながる小さな部分です。
まとめ
- 福利厚生の割引は、二人にとって式場を選ぶ前提条件で、式場にとっての最後の調整項目とは置かれ方が違う
- 二人は割引を当たり前に思っているので、見学の最中か契約の直前に、思い出したように持ち出す
- 式場で決めておくのは「併用」「対象」「期限」「書類」の4点
- 対象は「総額か一部か」で金額が大きく変わるので、「5%引き」ではなく見積もりの金額まで言い切る(仮に総額350万円なら、総額にかかる場合17.5万円、会場使用料80万円だけなら4万円)
- 渡し方は、予約フォームに1項目、確定返信に4行、見学当日は割引込みと割引なしの見積もりを並べる
- 使えない二人には、見学の最後ではなく予約の段階で理由と代わりの案を伝える
- 効果は、利用予定ありの二人の確認で席を立つ件数と、成約までの日数で数える
