来館・成約

親の援助額が未定の二人には、見積もりを2本並べて渡す

見学の終わりに見積もりの話になったとき、二人のどちらかが「親がいくら出してくれるか、まだ分からなくて」と言う。式場の接客をしていれば、何度も聞いた言葉だと思います。

こう言われると、見積もりは出しづらくなります。援助が100万円なのか、ゼロなのか分からないまま金額を並べても、二人は「親に聞いてからでないと判断できない」としか返せないからです。結果は「持ち帰ります」で、そのまま連絡が途切れる。

結論から書きます。親の援助額が未定の二人には、見積もりを1本に絞らず、2本並べて渡したほうが、保留が減ります。1本目は、二人の貯金と収入だけで組んだ見積もり。2本目は、援助が出たときに足せるものを、足す順番つきで並べた見積もりです。この記事では、なぜ1本だと止まるのか、2本の作り方、援助額の聞き方、渡し方、2本にしないほうがいい場面を順に整理します。

先に断っておくと、この記事に出典のある統計は出てきません。援助の有無で成約率がどれだけ変わるかを示す調査を、僕は見つけられていません。数字はすべて僕が置いた仮定です。自分の会場の数字に入れ替えて読んでください。

「援助が未定」は、金額の問題ではなく、親に話す材料がない問題

援助額が未定の二人が何に困っているのかを、まず分けて考えます。

  1. 親にまだ聞いていない。聞くきっかけがほしい
  2. 聞いたが、親が「その時になったら考える」としか言わない
  3. 親が出すと言っているが、金額は式場が決まってから決めたいと言う
  4. 親は出さない前提だが、二人が確信を持てていない

どれも共通しているのは、二人が親に持っていく具体的な数字がないことです。親は、結婚式の総額を知らなければ、いくら出すかを決められません。「いくらくらいかかるの」と聞かれて、二人が「調べてみる」と言ったまま止まっている。見学の場に来ているのに、その数字を持ち帰れていない状態です。

つまり二人が欲しいのは、「親に見せられる紙」です。金額が一つだけ書かれた見積もりは、親に見せたときに「高い」「安い」の一言で終わります。何にいくらかかり、どこまでが必須で、どこからが足せるものなのかが分かる紙なら、親も「ここなら出せる」と具体的に言えます。

1本の見積もりだと、なぜ保留になるのか

接客の側からすると、1本の見積もりで進めたくなる理由はあります。比較する材料が多いと混乱させる、というのは自然な感覚です。ただ、援助が未定の二人にとっては、1本の見積もりは判断の材料として足りないことが多いです。

理由は三つあります。

  • 見積もりの総額が、援助がある前提で組まれているのか、ない前提なのか、二人に分からない
  • 援助が出なかったとき、どこを削ればいいのかが見えない
  • 援助が出たとき、どこに足せばいいのかが見えない

特に二つ目と三つ目は、二人が親と話すときの核心です。「出してもらえなかったら、これは諦めるんだよね」「出してもらえるなら、先にここを良くしたい」。こういう会話をするには、削る順番と足す順番が、紙の上に書かれている必要があります。

見学の場では、見積もりを出す担当者の頭の中にその順番があります。ただ、紙に書いていなければ、二人は帰り道で忘れます。覚えていても、親に伝えるときに言葉が足りなくなります。紙にして渡す意味は、ここにあります。

2本の作り方

具体的に、2本をどう作るかを書きます。

1本目は「二人だけで払える」見積もり

1本目は、二人の貯金と収入だけで払える金額に収まるように組みます。ここで必要なのは、二人の予算を聞くことです。ただし、援助を含めた予算ではなく、「親の援助がなくても用意できる金額」を聞きます。

  • 「親御さんの話は一度置いて、お二人だけで用意できる金額はどのくらいですか」

この聞き方なら、援助という話題を避けたまま、二人の自力の予算が分かります。二人が答えづらそうなら、「今の貯金で足りるラインはここです」と、見積もりの中から先に見せていく形でも構いません。

1本目では、「これがないと式として成り立たない」ものを先に入れます。会場費、基本の料理、衣裳の最低限、写真。そのうえで、削れる項目と、残す項目を分けておきます。

2本目は「援助が出たら足す」順番つきの見積もり

2本目は、1本目に足していく形で作ります。金額の違う別の見積もりを丸ごと作るのではなく、「1本目の上に、これを足すと、いくら上がる」と並べるのが分かりやすいです。

足す項目は、二人が見学中に反応したものから選びます。たとえば料理のランクアップ、装花、映像演出、ゲストの宿泊補助。反応していないものを並べても、二人にとっては意味のない項目になるからです。

そして、足す順番に番号をつけます。

  • 1番目:+30万円。料理のコースを一段上げる
  • 2番目:+20万円。会場の装花を増やす
  • 3番目:+50万円。ゲスト20人の宿泊補助

この番号が、二人が親と話すときの材料になります。「30万円出してもらえるなら料理、50万円なら装花もできる」と、親の金額に合わせて選べるからです。

2本の差額は「100万円」のように見える形にする

2本目の合計が1本目と大きく離れていると、二人は「そんなに必要なのか」と感じて引いてしまいます。足す項目は、1本目に対して上乗せ幅が見える形にしておきます。仮に1本目が280万円、2本目が380万円なら、差は100万円です。「援助が100万円あれば、ここまでできます」と言い切れる形になります。

援助が未定の二人には、この差額が、親に最初に伝える数字になります。「総額が380万円で、うちで出せるのが280万円。足りない100万円をどうするか」。この言い方なら、親も「100万円なら考える」と答えやすくなります。

援助額は「聞かない」ほうがいい

ここで注意したいのは、援助の額を式場から聞かないことです。「親御さんからはいくら出ますか」は、二人が答えにくい質問です。家庭の事情に踏み込みますし、二人も知らないことが多いからです。

代わりに聞くのは、この二つです。

  • 「親御さんにはもう、結婚式の相談はされていますか」
  • 「親御さんと話すのは、いつ頃になりそうですか」

一つ目は、状況の確認です。まだ相談していないなら、2本の見積もりは親への相談のきっかけになります。相談済みなら、親の反応が分かります。

二つ目は、次の連絡の日を決めるためです。親と話す予定が来週末なら、その翌週に連絡する。年末に実家に帰ったときに話すなら、年明けに連絡する。見学後の追客の日が、二人の予定に合わせて決まります。

聞いた内容は、記録に残します。「親には未相談。帰省する年末に話す予定」と書いておくだけで、次の連絡が自然になります。

渡し方:紙1枚、差分の3行

2本の見積もりを渡すとき、2枚の見積書を並べて渡すと、二人は比べるだけで疲れます。僕は、1枚の紙にまとめて渡す形をすすめます。

  • 上段:1本目の総額と、含まれる主な項目
  • 中段:足せる項目の一覧と、それぞれの上乗せ額、足す順番
  • 下段:親に話すときの一言の例(「うちで280万円、援助があれば最大380万円」)

下段の一言は、二人が親に伝えるための台本です。式場が親に営業をするのではなく、二人が自分の言葉で伝えられる形にしておきます。

親に見せる前提なので、紙は一人で見ても分かるように書きます。専門用語は使わない、金額には必ず「何の費用か」を添える。親が見たときに、担当者に聞かなくても理解できる状態が理想です。

仮置きの計算:どのくらいの値打ちがあるか

ここで、仮置きの数字で値打ちを見ておきます。数字はすべて想定です。

  • 見学に来た二人のうち、援助が未定と言う二人が月10組いる(年間120組)
  • 現状、その二人の成約率が15%
  • 2本の見積もりを渡すようにして、成約率が18%に上がったとする
  • 1組あたりの婚礼単価を380万円、粗利率を35%と置く

計算すると、成約数は年18組から21.6組に増えます。差は3.6組です。粗利で見ると、3.6組×380万円×35%で、年に約479万円になります。

もちろん、成約率が3ポイント上がる保証はありません。上がらない可能性もあります。ただ、作る紙は一つのひな形で、手間はそれほど大きくありません。1組ごとに足す項目を差し替える作業だけなので、見積もり作成の時間が10分増えるとしても、年120組なら20時間です。費用の側はこの程度の見立てで足ります。

成約率が15%のまま変わらなければ、増えるのは手間だけです。そのときは2本目の見直しか、やめる判断をします。続けるかどうかの線は、3か月分を見て決められます。援助が未定と言った二人の組数と、そのうち契約した組数を数えておくだけで足ります。

2本にしないほうがいい場面

この方法が合わない場面も、書いておきます。

  • 二人が「援助は一切ない」と最初から言っている。この場合は1本目だけを丁寧に作ります。2本目を出すと、使えない選択肢を見せることになります
  • 二人の予算が、すでに会場の最低ラインに届いていない。2本目で足す話に進む前に、会場が合うかどうかの判断が先です
  • 親が見学に同席している。援助の話は、その場で直接出ます。2本に分ける必要がなく、親の前で金額の相談をしたほうが早いです
  • 二人が、足せる項目を見て「全部ほしい」と言う。足す順番がつかなくなるので、優先順位を二人で話してもらう時間を取ります

2本目が、二人を煽る材料になってしまうのは避けたいところです。「援助があればここまでできます」は、あくまで選択肢の提示です。親から出してもらうことを前提に契約を急がせるような言い方は、トラブルのもとになります。

見学後の連絡は「親と話した結果」を聞く形にする

見学後の連絡は、見積もりを渡した3日後などの機械的な日ではなく、二人が親と話す予定の日の少し後に置きます。

  • 「親御さんとお話はできましたか。もし金額の見え方で迷うところがあれば、足す順番を組み直す案をお送りします」

この連絡で聞きたいのは、契約するかどうかではなく、親の反応です。援助が出ると決まったなら、2本目の中から選びます。出ないと決まったなら、1本目で進めます。どちらの場合でも、次に何を決めるかが明確なので、二人は迷いません。

親の反応が「もう少し安くならないの」だった場合は、1本目の削れる項目を見直します。そのとき、削れる項目も紙に書いてあれば、担当者と二人で見直せます。

まとめ

  • 親の援助額が未定の二人に必要なのは、金額ではなく、親に見せられる紙です
  • 見積もりは、二人だけで払える1本目と、援助が出たら足す順番つきの2本目の2本で渡します
  • 援助の額は聞かず、親に相談済みかと、話す予定の時期を聞きます
  • 紙は1枚にまとめ、親に伝えるための一言の例を下段に添えます
  • 援助がない二人、親が同席する見学、足したい項目が決まらない二人には、この形は合いません
  • 仮置きの計算では、成約率が3ポイント上がると年に約479万円の粗利です。自分の会場の数字に入れ替えて確かめられます
  • 見学後の連絡は、親と話す予定の少し後に置きます