来館・成約

祖父母に見てほしい二人の問い合わせには、日程の幅を先に聞く

「祖母が高齢なので、できるだけ早く挙げたいです」。式場の問い合わせフォームに、こういう一文が入ることがあります。

この一文を受け取った式場の返信は、だいたい二つに分かれます。ひとつは、希望の時期の空き日を並べる返信。もうひとつは、体調のことを心配して、「お身体の具合はいかがですか」と踏み込んで聞く返信です。僕は、どちらも二人がいちばん知りたいことに答えていないと思っています。

結論から書きます。祖父母や親に晴れ姿を見せたい二人には、空き日を並べる前に、日程をどこまで動かせるかを聞いたほうがいいです。聞くのは体調ではなく、二人の側の事情です。「いつまでに」が決まっていない二人は、動かせる範囲が分かった途端に、選べる式場が一気に増えます。その範囲を最初に一緒に確かめてくれる式場が、候補に残ります。

この記事に出てくる数字は、すべて僕が置いた仮のものです。業界の平均でも、どこかの式場の実績でもありません。式場ごとに空き状況も準備期間も違うので、自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

「早く」と書く二人は、期限を決めていない

まず、この問い合わせの特徴を整理します。

転勤や赴任が決まった二人は、動かせない端がカレンダーの上にあります。赴任日という、誰が見ても分かる期限です。一方、祖父母に見てほしい二人の「早く」には、日付がありません。本人たちも、いつまでなら間に合うのか分かっていないことが多いです。

分からないのは当然です。祖父母の体調がこの先どうなるかは、誰にも読めません。二人は、読めないものを前にして、「早いほうがいいはず」と考えているだけです。

この状態の二人に空き日の一覧を送ると、二人は一番近い空き日に目を向けます。そして、その日だと準備が間に合うのか、親族の都合が合うのか、衣装は選べるのか、を考え始めます。最短の日に引っ張られて、かえって選べなくなることがあります。

反対に、「いつまでに挙げられたら安心か」を二人が自分で決められれば、期限のある問い合わせに変わります。期限ができれば、式場も段取りを返せます。最初の返信の役目は、日付のない「早く」を、日付のある希望に変えてあげることです。

体調を聞かないほうがいい理由

では、どう聞くか。ここで体調の話に入るのは避けたほうがいいです。理由は三つあります。

ひとつめは、答えにくいことです。祖父母の病状や年齢は、二人にとっても家族の大事な話です。見知らぬ式場の担当者に最初のやりとりで話したい内容ではありません。答えられなければ、二人は返信を止めます。

ふたつめは、式場の側が答えを使えないことです。「入院中です」と聞いたところで、式場にできることは、日程の相談に乗ることだけです。体調の詳細を知らなくても、日程の幅さえ聞ければ、必要な段取りは組めます。

三つめは、聞き方によっては、期待させてしまうことです。「お身体のことを考えて、最短の日をご案内しますね」と返せば、二人は、その日を逃したら間に合わないと受け取ります。式場が、二人の不安を強めてしまう形になります。

聞くのは、二人が自分で決められる範囲に絞ります。二人がコントロールできるのは、日程、人数、挙式の形、顔合わせの有無のような、こちらの事情です。祖父母の側の事情は聞かず、二人の側の動かせる幅だけを聞く。これが、詮索にならない聞き方です。

日程の幅を聞く、3つの質問

具体的には、最初の返信に次の三つを入れます。二人がフォームの短い文章に書いてきた情報だけで、返信を組み立てます。

1. 動かせない日があるか。 「祖母が参加できる日は、お決まりでしょうか」と聞くと体調に踏み込みます。そうではなく、「ご家族の予定で動かせない日はありますか」と聞きます。法事、入院予定の有無までは聞かず、「ご家族の予定で」とまとめておけば、二人が話したい範囲だけ答えられます。

2. 一番早い日と、一番遅い日。 「いつまでに挙げられたら安心か」という聞き方にします。「半年以内なら安心」「一年先は不安」という答えが返ってくれば、期限の見当がつきます。答えが出なくても、聞かれたことで、二人は期限を自分で考え始めます。

3. 挙式の形をどこまで変えられるか。 大きな披露宴を開く場合と、挙式と食事会だけに絞る場合とでは、準備にかかる期間がまるで違います。「準備の期間を短くしたい場合は、人数や演出を絞る方法もあります」と添えておくと、二人は、形を変えれば早い日が選べるのだと分かります。

三つとも、二人が答えやすく、式場が段取りに使える内容です。聞いたことがそのまま、次の返信の材料になります。

空き日の「数」より、動かせる幅で見たときの差

この聞き方が、どれだけ選択肢を増やすかを、仮の数字で見てみます。

仮の前提を置きます。

  • 式場の挙式枠は、週末のうち土日の午前・午後で、1週あたり合計4枠とする
  • 準備に必要な期間は、標準で12週間、人数と演出を絞った形なら8週間とする
  • 二人が問い合わせた日から、準備期間が終わるまでに挙げられる日を数える
  • その期間に、すでに埋まっている枠は半分とする

二人が「できるだけ早く」とだけ書いてきて、式場が標準の12週間で返信するとします。12週間後より前の枠は選べません。12週間後から数えて、6か月後までの24週間を見ると、24週のうち最初の12週は使えません。残りは12週で、1週4枠、半分が埋まっているので、使える枠は24枠です。

同じ二人に、人数と演出を絞った形を提案したとします。準備の期間は8週間に縮まります。8週間後から24週間後までは16週で、使える枠は32枠です。

表にすると、次のとおりです。

返信の仕方 準備に要る週数 24週間までに選べる枠
標準の形だけを案内 12週間 24枠
絞った形も案内 8週間 32枠

絞った形を知らせただけで、選べる枠が8枠増えました。もちろん、これは仮の計算です。ただ、構造は実際にも同じです。準備期間を短くできる形を持っていて、それを最初に見せる式場は、同じ期間のなかで多くの日を提案できます。

もうひとつ見えることがあります。二人にとって大事なのは、枠の数そのものより、「自分たちの場合、いつまでに何ができるか」を知ることです。枠が多いかどうかではなく、その枠の意味が分かることが、安心につながります。

見学に、祖父母を連れてくる二人もいる

この問い合わせの二人には、もうひとつ特徴があります。見学に、祖父母や親を連れてくることがあります。

その場合は、見学の時間の使い方が変わります。会場の写真を見せたり、料理を試食したりするより先に、動線を確かめる必要があります。駐車場から会場の入口まで、控室から挙式会場まで、段差の有無、座れる場所の位置です。

見学の予約を受ける時点で、「当日、ご家族の同席はありますか」と聞いておくと、案内の準備ができます。同席する人数と、移動の補助が要るかどうかを、ここで聞きます。体調の詳細は聞きません。「歩く距離を短くしたいか」「椅子を多めに置いたほうがいいか」といった、会場側の準備に直結する聞き方にします。

この聞き方なら、二人は体調を説明しなくても、必要な配慮を受けられます。説明する負担がないことが、二人にとってはいちばんありがたい配慮です。

日程が決まったあとに、もう一度だけ聞くこと

見学が終わって日程が決まったあと、準備を進める中で、もう一度だけ聞いておくとよいことがあります。「もし日程を変える場合、いつまでなら対応できるか」と、式場の側の事情を先に伝えることです。

祖父母の体調によっては、予定していた日に出席できなくなる可能性があります。そのときに、日程の変更や挙式の形の変更をどこまで受けられるかを、契約の前に二人が知っているかどうかで、二人の安心感は変わります。

変更の受付期限、変更にかかる費用、料理や衣装の手配の戻し方。これを契約の段階で書面で渡しておくと、二人は「何かあっても対応してもらえる」と思えます。「何かあったときの話」を契約前にしておくのは、気が引けるかもしれません。でも、二人はもう、その可能性を頭の中で考えています。式場が先に話題にしてくれたほうが、二人は安心して契約できます。

前に別の記事で、契約後に変えられることの一覧を渡す、という話を書いたことがあります。この問い合わせの二人には、とくにその一覧が効きます。

返信の文面を、1つの例で見る

ここまでの話を、返信の文面にしてみます。二人が「祖母が高齢なので、できるだけ早く挙げたいです。5月ごろを考えています」と書いてきたとします。

「ご連絡ありがとうございます。5月ごろの挙式をご検討とのこと、承知しました。日程のご案内の前に、3つだけ教えてください。ご家族の予定で動かせない日はありますか。5月より後ろにずれても大丈夫な時期はありますか。挙式と食事会を中心に、人数を絞った形も検討の範囲に入りますか。人数や演出を絞った形なら、お申込みから挙式まで最短でお受けできる日が早まります。お答えいただいた範囲で、5月前後の空き日と、それぞれの準備の進め方を一緒にお送りします。」

ポイントは、体調に触れていないこと、質問が三つだけで答えやすいこと、答えたあとに何が返ってくるかが書いてあることです。二人は、答えるだけで、次の返信に具体的な日付と段取りが載ってくると分かります。

式場の側で用意しておくもの

この返信を毎回ゼロから書くと、担当者によって差が出ます。次の三つを、あらかじめ式場の中で決めておくと、誰が受けても同じ水準で返せます。

  • 標準の形と、絞った形の、それぞれの最短の準備期間
  • 絞った形で、実際に何を省けるのか(人数の目安、演出、打ち合わせの回数)
  • 日程の変更を受けられる期限と、費用の考え方

これらは、問い合わせに答えるための資料であると同時に、式場の中で「この形ならいつまでに受けられる」を共有するための材料にもなります。担当者が違っても、二人に違う案内をしてしまう事故が減ります。

まとめ

  • 祖父母に見てほしい二人の「早く」には日付がない。最初の返信で、日付のある希望に変えてあげる
  • 体調は聞かない。聞くのは、動かせない日、一番早い日と遅い日、挙式の形をどこまで変えられるか、の三つ
  • 準備期間を短くできる形を最初に見せるだけで、同じ期間のなかで選べる枠が増える(仮の計算では24枠が32枠)
  • 見学に家族が同席する場合は、体調ではなく「歩く距離」「椅子の数」のように会場の準備に直結する聞き方にする
  • 契約前に、日程や形の変更をどこまで受けられるかを書面で渡す
  • 空き日を並べる返信より、動かせる幅を聞く返信のほうが、この二人には届く