来館・成約

式場見学で温度差のある二人には、乗り気でない側の心配を先に聞く

式場見学に来た二人のうち、片方はメモを取りながら質問をして、もう片方は少し離れたところでスマートフォンを見ている。接客をしていれば、一度は見たことがある場面だと思います。

こういうとき、説明はつい、熱心に聞いてくれる側に向きます。反応が返ってくるほうに話したくなるのは自然なことです。ただ、僕はここに取りこぼしの原因があると考えています。契約は二人の合意で決まります。乗り気な側がどれだけ気に入っても、もう一人が首を縦に振らなければ、「持ち帰ります」で止まるからです。

結論から書きます。温度差のある二人には、乗り気な側への説明を厚くするより、乗り気でない側の心配を最初に聞いたほうが、見学が前に進みます。この記事では、温度差がなぜ起きるのか、どう聞けばいいのか、聞いたあとに何を渡すのか、見学後の連絡を誰に送るのかを順に整理します。数字は出典のあるものを使わず、すべて仮に置いた計算です。

乗り気でない側は、反対しているのではなく「材料が足りない」

まず、温度差の中身を分けて考えます。片方が静かにしているとき、その理由はおおまかに4つに分かれます。

  1. 結婚式そのものに、あまり気が向いていない
  2. 費用が心配で、口に出せずにいる
  3. 何を決めるのか分からず、会話に入れない
  4. 仕事や家庭の事情で、疲れているだけ

このうち、式場側の説明で変えられるのは2と3です。1は、見学の場では動かせないことが多く、4は、その日の体調や都合の問題です。無理に変えようとすると、かえって空気が悪くなります。

2と3に共通しているのは、「反対している」のではなく「判断する材料を持っていない」ことです。費用が心配な人は、総額がどう決まるかを知らないまま、見学の途中で金額が膨らんでいくのを見ています。何を決めるのか分からない人は、専門用語が続くなかで、口を挟むタイミングを失っています。

つまり、乗り気でない側に必要なのは説得ではなく、判断の材料です。そして材料を渡すには、その人が何を心配しているのかを、本人の言葉で聞く必要があります。

なぜ乗り気な側に説明し続けると契約が遠のくのか

乗り気な側に話し続けることには、現場の感覚としては合理性があります。反応が良く、質問も出るので、見学が盛り上がっているように見えます。

ただ、仕組みで考えると、ここには落とし穴があります。契約の判断は、見学が終わったあと、二人の会話の中で行われます。その会話で乗り気な側が「ここがいい」と言い、乗り気でない側が「まだ決められない」と言えば、結論は保留です。

保留になったときの理由は、たいてい乗り気でない側が握っています。乗り気な側は、見学中に疑問をほとんど解消しています。解消されていないのは、静かにしていた側の疑問です。そして、その疑問は見学中に一度も口に出されていないので、式場側は答える機会がありませんでした。

さらに、乗り気な側が一人で説明を受け続けると、二人の持っている情報に差が開きます。帰り道に乗り気な側が説明を伝えようとしても、うまく伝わりません。聞いていない側にとっては、「相手が盛り上がっているだけ」に見えてしまうこともあります。

仮に、乗り気な側だけが熱心に聞いた見学が月に20組あったとします。そのうち実際に契約まで進むのが、乗り気でない側が納得した組だけだとすれば、見学中に説明を向けるべき相手は、数字の上でも静かな側です。もちろんこの20組という数は想定で、実際の割合は式場ごとに違います。自分の会場で何組あるかは、後で触れる方法で数えられます。

最初の3分で、乗り気でない側に質問を渡す

では具体的に、どう聞くか。僕は、見学の最初の3分で、乗り気でない側に先に質問を渡す形を勧めます。

聞く相手を、見た目で決めない

見学の冒頭で、二人に同じ質問をします。ただ、答える順番を、静かにしている側から始めます。

例えば、こう聞きます。

「今日見学に来られて、どんなことが気になっていますか。お二人それぞれで教えてください。まず〇〇さんから、どうでしょう」

ポイントは、「どちらが乗り気ですか」とは聞かないことです。温度差を指摘された側は、責められたと感じます。聞くのは温度差ではなく、気になっていることです。

「心配」ではなく「気になること」と聞く

「心配なことはありますか」と聞くと、心配を口にすること自体にハードルがあります。費用が心配な人は、式場の人の前でお金の話をするのをためらいます。

「気になっていること」という聞き方なら、心配も期待も、雑な疑問も全部入ります。「料理が気になります」でも、「正直、何から決めるのか分かっていません」でも、答えやすくなります。

答えが「特にありません」だったとき

静かな側が「特にないです」と答えることもよくあります。ここで無理に引き出そうとしないのが大事です。

「ありがとうございます。見学の途中で気になったら、いつでも止めてください。途中で一つ、こちらから確認させてもらうかもしれません」と返して、先に進めます。そして、見学の中盤、費用の話が出る前や、進行の流れを説明する前に、一度だけ「ここまでで、気になったところはありますか」と静かな側に振ります。

最初に聞いて終わりにするのではなく、2回に分けて聞くことで、答えが出やすくなります。最初は様子見で答えなかった人も、場が温まってから話し始めることがあります。

乗り気でない側の4つの状態に合わせて、話すことを変える

聞いた内容によって、その後の説明を変えます。先ほどの4つに沿って整理します。

費用が心配な場合

総額の決まり方を、早めに見せます。見積もりの全体像、何が含まれて何が追加になるのか、人数が変わると金額がどう動くのかを、見学の前半で見せておくほうが、静かな側は安心します。

金額を後半まで伏せて、最後に出す進め方だと、費用が心配な側は見学中ずっと身構えたままになります。先に帯を見せて、あとは中身を説明するほうが、落ち着いて聞けます。

何を決めるのか分からない場合

決めることの全体像を、紙一枚で渡します。「契約までに決めること」と「契約後にゆっくり決めること」を分けて書いた紙です。

何を決めるのか分からない人は、決めなければいけないことが山ほどあるように感じています。実際には契約の時点で決めることは限られているので、それが見えるだけで、受け身の姿勢が変わることがあります。

結婚式そのものに気が向いていない場合

ここは、説得しません。式をするかしないか、どんな規模にするかは、二人が決めることです。

聞くのは、「理想のイメージはありますか」ではなく、「これはやりたくない、というものはありますか」です。やりたいことより、やりたくないことのほうが、気が向かない人にも答えやすい質問です。やりたくないことが分かれば、それを外した提案ができます。たとえば「大勢の前で目立ちたくない」と分かれば、演出を最小限にした形を見せられます。

疲れているだけの場合

見学の時間を短くし、見学後の連絡の取り方を、本人が負担の少ない方法で選べるようにします。LINEでも、メールでも、電話でもいいので、「連絡は、どちらにお送りするのが楽ですか」と聞くだけで十分です。

この場合は、その日に決めさせようとしないほうが、結果として次につながります。

見学の最後に、持ち帰る材料を二人分用意する

見学が終わった後の二人の会話が、契約を決めます。式場はその会話に同席できないので、会話の材料を渡すことしかできません。

渡すものは、次の2つに分けると効きます。

  • 乗り気な側が、もう一人に説明するための一枚(見学で見たことの要約)
  • 乗り気でない側が、自分の疑問を確認するための一枚(心配なことに対する答え)

前者は、よく用意されています。見積もりや会場の概要を書いた資料です。後者は、あまり作られていません。

後者は、見学の冒頭で聞いた「気になること」に対する答えを、その場で一行ずつ書き足して渡す形にします。たとえば、「費用の総額が分からない」→「人数が10人増えると、〇〇円ほど変わります」のように、静かな側が言った言葉と、それに対する答えを並べます。

手書きでかまいません。静かな側にとっては、「自分の疑問をちゃんと聞いてもらえた」という記録になります。そして帰宅後、乗り気な側と話すときに、その紙を出して「ここで聞いたら、こうだった」と言えます。自分の疑問が解消された人は、反対する理由が減ります。

見学後の連絡は、静かだった側にも届くようにする

もう一つ、見学後の連絡の宛先も見直します。

見学の予約を取った人、つまり乗り気な側のメールアドレスや電話番号だけに連絡していると、静かだった側には何も届きません。見学後のお礼を送るとき、可能であれば二人に届く形にします。LINEなら二人のグループがなくても、乗り気な側に「〇〇さんにも、見学のときの答えを、このまま転送してください」と一言添えられます。

ただし、ここは注意が必要です。二人の連絡先を両方聞くことは、見学の入口で嫌がられることがあります。予約フォームに必須で入れると、予約件数が減るかもしれません。聞くなら、見学の最後に「お二人のどちらにお送りするのがいいですか」と尋ねるのが、負担の少ないやり方です。

連絡内容も、乗り気な側向けと静かな側向けで変えます。乗り気な側には、次のステップ(再見学、見積もりの更新)を。静かな側には、見学のときに聞いた「気になること」の続きを。同じ文面を二人に送るより、一人ひとりの疑問に続けて返すほうが、返信が来やすくなります。

効果を測る:見学後の「持ち帰り」の理由を残す

この聞き方が効いているかどうかは、感覚ではなく、記録で確かめられます。

見学ごとに、次の3つだけを台帳に残します。

  • 温度差があったか(担当者の見立てで、あり・なし)
  • 静かな側に最初の3分で質問を渡したか(した・しない)
  • 見学の結果(契約・持ち帰り・辞退)

1か月分たまれば、「温度差あり」の見学のうち、質問を渡した組と渡さなかった組で、契約率に差があるかが見えます。件数が少ないうちは誤差の範囲です。たとえば温度差ありの見学が月に10組しかなければ、1組の違いで契約率は10ポイント動きます。数か月分をまとめて見るか、差が出ても結論を急がないのが現実的です。

また、「温度差があったか」の判断は担当者ごとに揺れます。最初のうちは、判断の基準を「見学中に、片方の発言が極端に少なかった」程度の粗い基準に決めておくと、記録がそろいます。

やってはいけない聞き方

最後に、避けたほうがいい聞き方を挙げます。

  • 「ご主人は乗り気ではないようですが」のように、温度差を言葉にして指摘する
  • 静かな側に、他の人の前で費用の考えを聞く(費用の話は、全員のいる場でなく、見積もりを見ながら自然に出す)
  • 結婚式の意義を説いて、気持ちを動かそうとする
  • 乗り気な側に「説得してあげてください」と頼む

どれも、静かな側を追い込みます。追い込まれた人は、さらに口を閉じます。聞くことと、押すことは、別の動きです。

まとめ

  • 契約は二人の合意で決まるので、見学で説明を向けるべき相手は、反応の良い側より、疑問が解消されていない側です
  • 乗り気でない側の多くは、反対しているのではなく、判断の材料を持っていません
  • 見学の最初の3分で、静かな側から先に「気になっていること」を聞きます。「特にない」なら無理に引き出さず、中盤にもう一度だけ聞きます
  • 費用が心配なら総額の決まり方を前半に、何を決めるのか分からないなら決めることの全体像を紙一枚で、気が向かないならやりたくないことを聞きます
  • 持ち帰る紙は二人分用意し、静かな側の疑問と答えを一行ずつ並べて渡します
  • 見学後の連絡は、静かだった側の疑問の続きが届くようにします
  • 効果は、温度差のあった見学の契約率で測ります。件数が少ないうちは数か月分をまとめて見ます