式場の閑散月のフェアは来館数でなく契約までの月数で見る
閑散月に、フェアを2回足してみた。来館は増えた。ところが月末に契約数を見ると、ほとんど増えていない。「やはり閑散月は何をしても動かない」と結論して、翌年からやめる。式場の現場では、よくある流れだと思います。
この記事の結論は、閑散月に足したフェアの成否は、その月の契約数では測れない、ということです。来館した二人が契約するのは、来館の月だけではなく、翌月、翌々月にもずれて入ります。だから、来館した月ごとに「何組が、何か月後までに契約したか」を追って判定する。判定するまで待つ月数も、先に決めておく。この二つを決めずに止めると、効いていた施策を捨てることになります。
なお、この記事に出てくる組数・率・費用は、すべて僕が置いた仮の数字です。業界の平均や実績ではありません。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
閑散月のフェアが「効かない」と見える仕組み
月次の会議で見る数字は、多くの場合、その月の来館数と、その月の契約数です。この二つを並べると、来館と契約が同じ月に起きたかのように見えます。
けれど、二人の動きは違います。見学に来た二人の多くは、その場では決めません。持ち帰り、他の式場を見て、親に相談し、数週間から数か月かけて決めます。つまり、2月の来館の成果は、2月、3月、4月の契約に分かれて現れます。
これを見落とすと、二つのずれが起きます。
- 閑散月に足したフェアの成果が、翌月以降の契約に入るため、足した月の数字では「増えていない」ように見える
- 逆に、繁忙月の契約数には、前の月までの来館の成果が混ざる。繁忙月の数字が良く見えるのは、その月の施策だけの結果ではない
閑散月は、もともと来館が少ない月です。契約数も小さいので、増えた1組、2組が月次の揺れに埋もれやすい。ずれと揺れが重なって、効果が見えなくなります。
仮の数字で、追加フェアの収支を月ごとに分けてみる
具体的に計算してみます。前提は次のとおりです。すべて仮です。
- 2月に、追加のフェアを2回開く
- 追加分の来館は、合わせて12組
- 来館した二人の最終的な成約率は25%(通常月と同じと仮定)
- 契約する二人のうち、40%は来館した月、30%は翌月、20%は翌々月、残り10%はそれ以降に契約する
- 追加フェア1回の費用は、試食の原価、人件費、告知費を合わせて8万円。2回で16万円
計算すると、12組 × 25% = 3組が、追加フェアに由来する契約です。
その3組が契約するタイミングは、こうなります。
- 2月(来館した月):3組 × 40% = 1.2組
- 3月:3組 × 30% = 0.9組
- 4月:3組 × 20% = 0.6組
- 5月以降:3組 × 10% = 0.3組
2月末の時点で数えると、追加フェア由来の契約は1.2組です。費用16万円を1.2組で割ると、1組あたり約13.3万円になります。
一方、3組すべてが出そろったあとで割ると、16万円 ÷ 3組で、1組あたり約5.3万円です。
同じ施策なのに、2月末に見ると1組13.3万円、出そろってから見ると1組5.3万円。2.5倍の差があります。もし自社が許容する獲得費を、仮に1組10万円としていたら、2月末の判定は「失敗」、出そろった後の判定は「成功」になります。
月次の数字は、悪くなかった施策を、数字の切り方だけで「失敗」と読ませてしまうことがある。これが、一つ目の落とし穴です。
来館月ごとに契約を追う表を作る
直す方法は、集計の軸を変えることです。「契約した月」ではなく「来館した月」で、契約を数え直します。
表の作り方は単純です。縦に来館した月、横に「来館月」「1か月後」「2か月後」「3か月後以降」の列を置き、各マスに、その来館月の二人のうち何組がそのタイミングで契約したかを入れます。
| 来館した月 | 来館組数 | 来館月に契約 | 1か月後 | 2か月後 | 3か月後以降 | 累計成約率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 12月 | (自社の数字) | |||||
| 1月 | ||||||
| 2月 |
この表があると、二つのことが見えます。
一つは、自社の「契約までの月数の分布」です。来館月に決める二人が何割、翌月が何割。上の計算では40・30・20・10%と置きましたが、これは仮です。実際の分布は、会場の価格帯、地域、客層で変わります。
もう一つは、「どの月の来館が、どのくらいの成約率で終わったか」です。閑散月の来館が、繁忙月の来館と比べて成約率が高いのか低いのかも、この表で初めて比べられます。
ここで大事なのは、最新の1〜2か月分は空欄が多くて当然だ、ということです。まだ契約が出そろっていないだけなので、空欄を「ゼロ」と読んではいけません。
判定を待つ月数を、先に決める
来館月ごとの表を作っても、「いつ判定するか」を決めていなければ、結局は早く止めたくなります。そこで、足した施策ごとに、判定する日を先に決めます。
決め方は、自社の表から「来館した二人の契約の9割が出そろうまでの月数」を読み取ることです。上の仮の数字なら、来館月の40%、翌月まで累計70%、翌々月まで累計90%なので、判定は3か月目。2月に足したフェアなら、4月末まで待って判定します。
自社の数字がまだ無い場合は、直近1年分のデータから、1か月、2か月、3か月と累計を足していって、全体の9割に届く月を探します。データが足りないときは、仮に3か月と置いて、実際の分布が見えたら直します。
判定を待つ間は、次の二つだけを見ます。
- 追加フェアの来館組数が、見込みの組数に届いているか。届いていなければ、告知や枠の問題で、契約の話以前です
- 来館した二人の追客が、いつもどおり回っているか。追客が止まれば、契約のずれが長くなり、判定がぶれます
契約数そのものは、判定日まで見ません。見ると、止めたくなるからです。
それでも止めてよい条件も、先に決める
待つことが目的ではありません。判定日に「止める」と決められるように、基準を先に書いておきます。
- 1組あたりの獲得費が、自社の許容額(媒体費の1組あたりの上限など)を超えたら止める
- 来館は増えたのに、来館月ごとの累計成約率が通常月より大きく低いなら、閑散月の来館の質が違う可能性がある。次は枠の数でなく、告知の中身を変えて、もう一度小さく試す
- 来館そのものが見込みを下回り続けるなら、2回目以降の開催は組まない
仮の数字の例で言えば、許容額が1組10万円なら、判定日に5.3万円であれば続ける。13万円のままなら止める。この基準を2月の開催前に書いておけば、4月末の判定が感情に左右されません。
もう一つ、見落としやすい点があります。閑散月の追加フェアの来館者は、通常月の来館者の「前倒し」かもしれません。本来は3月に来るはずだった二人が、2月に来ただけなら、2月の来館が増えた分、3月の来館が減ります。この場合、追加フェアの純増は、見かけの増加より小さくなります。
前倒しかどうかは、来館月ごとの表の前後の月で見ます。2月に足した分だけ3月の来館が減っていたら、前倒しの疑いがあります。その場合は、純増で獲得費を計算し直します。仮に12組のうち4組が前倒しだったとすると、純増は8組、契約は8組 × 25% = 2組。16万円 ÷ 2組で、1組8万円になります。許容額の10万円には収まりますが、5.3万円とは違う数字になります。
閑散月に足す施策を、他の施策と同じ物差しにそろえる
この見方は、フェアだけの話ではありません。閑散月に足す施策は、広告の増額でも、メールの配信でも、イベント出展でも、成果が翌月以降にずれて入ります。
ずれが長い施策と短い施策を、同じ月次の契約数で比べると、短い施策が過大に評価されます。たとえば、当日申込みの特典をつけた施策は来館月に契約が集まり、情報提供型のフェアは翌月以降に契約が散ります。2月末の契約数だけで比べれば、特典つきが勝ちます。けれど、判定日にそろえて比べたら、結果は逆かもしれません。
そろえる方法は、全ての施策に、次の三つを同じ形で持たせることです。
- 何を足したか(開催回数、費用)
- 来館や問い合わせが何組増えたか
- 判定日(9割が出そろう月)に、何組が契約したか
この三つが同じ形で並べば、フェアも広告もメールも、同じ物差しで比べられます。物差しが違うまま、閑散月の施策を「効いた」「効かない」と話しても、議論が噛み合いません。
最初の一回は、小さく始める
ここまで読んで、「表を作るのが大変だ」と感じるかもしれません。最初の一回は、小さく始めれば足ります。
- 直近12か月の来館組数を、月ごとに書き出す
- 契約したお客様の来館日と契約日を、予約管理の記録から引く
- 来館月と契約月の差を、0か月、1か月、2か月、3か月以上に分けて数える
この三つだけで、「契約までの月数の分布」は出ます。契約件数が少なくても、数えること自体はできます。件数が少ないときは、分布を細かく読みすぎないことです。10件、20件では、1件の違いで割合が大きく動きます。「だいたい来館の翌月までに半分が決まる」くらいの粗さで十分です。
契約の記録に来館日が残っていない場合は、問い合わせ管理に来館日を入れる欄を作るところから始めます。今から記録を取り始めれば、半年後には使える表になります。
まとめ
- 閑散月に足したフェアの成果は、その月の契約数に出きらない。契約は翌月以降にずれて入る
- 仮の数字では、追加フェアの獲得費が、2月末で1組13.3万円、出そろってから見ると1組5.3万円と、2.5倍違った
- 契約月でなく来館月で契約を数え直す表を作る。最新の月の空欄は「まだ」であって「ゼロ」ではない
- 判定日は、来館した二人の契約の9割が出そろう月に置く。開催前に決めて、待つ間は契約数を見ない
- 止める基準(1組あたりの獲得費の上限など)も、開催前に書く
- 前倒しの来館は純増から引いて計算し直す。前後の月の来館数を見て疑う
- 閑散月に足すどの施策も、同じ三つ(足したもの、増えた来館、判定日の契約)で比べる
