屋外挙式のオプション料15万円を雨の日に返すと、仮の式場では年162万円が消える。返さない場合の損は、低評価が1.2組分の成約を消すかどうかで決まる
屋外の挙式やガーデンでのセレモニーに、オプション料をつけている会場は多いと思います。そのとき必ず出てくるのが、「当日が雨で屋内に変わったら、そのお金はどうするのか」という問題です。
僕が見聞きする範囲では、この扱いは契約書の細かい条項で決まっているというより、現場の担当者がその場で判断していることが多いです。返す日もあれば、返さない日もある。担当者によって違う。そうなると、会場としては毎年いくら動いているのかが、誰にも見えなくなります。
今日の話は、この雨天の扱いを、年間の金額に直して比べる整理です。結論を先に書くと、屋外挙式のオプション料が15万円、年に72組が選ぶ仮の式場では、雨の確率を15%と置くと、雨天組は年に10.8組です。全額を返すと162万円が減ります。返さない案のほうが手元には残りますが、不満をためた二人の低評価が、年に1.2組分の成約を消してしまうなら、返したほうが安くなります。
出典のある統計に頼る記事ではありません。数字はすべて僕が置いた仮のもので、前提は本文に書きます。雨の確率や料金は自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
前提:年120組、屋外を選ぶのは72組
まず仮の式場を決めます。
- 年間の挙式は120組
- そのうち6割の72組が、屋外挙式のオプションを選ぶ
- オプション料は1組15万円(税込、仮)
- 晴れの日の屋外設営にかかる費用は1組2万円(椅子、装飾、スタッフの追加配置)
- 雨で屋内に切り替えた日に、会場側で余分にかかる費用は1組3万円(屋外用に仕込んだ装花の入れ替え、動線の作り直し、スタッフの追加配置)
- 1組あたりの粗利は140万円
雨の確率は、地域と挙式月で大きく変わります。梅雨の6月と秋の晴れた10月を同じ数字で置くことはできないので、ここでは年間の平均として15%を基準にし、5%から30%まで動かして見ます。
この15%は、僕が置いた仮の値です。自分の会場の過去の挙式日について、屋外から屋内に切り替えた回数を数えると、実際の数字が出ます。たいていの会場は、この数字を一度も集計していません。
雨天組は年に何組か
屋外を選ぶ72組のうち、雨で屋内に切り替わる組数は、雨の確率をかけるだけです。
| 雨の確率 | 雨天組(年) |
|---|---|
| 5% | 3.6組 |
| 10% | 7.2組 |
| 15% | 10.8組 |
| 20% | 14.4組 |
| 30% | 21.6組 |
1組の話として考えると、雨が降るのは運の悪い話です。年間で見ると、15%の確率なら10組を超える二人が、「屋外を選んだのに屋内になった」という経験をします。これは例外的な出来事ではなく、毎年の営業の一部です。
3つの扱いを並べる
雨天の扱いは、大きく3つに分けられます。
- 返金:雨で屋内になったら、オプション料を全額返す
- 返さない:雨でも屋内でも、オプション料はそのまま受け取る
- 代わりの特典:オプション料は返さず、そのかわりに2万円相当の装花などを足す
それぞれ、年間でどれだけ手元に残るかを計算します。晴れの日の設営費(1組2万円)は3つとも共通なので、比べる際には外します。見るのは、オプション料の収入と、雨の日の追加費用3万円だけです。
| 雨の確率 | 返金 | 返さない | 代わりの特典 |
|---|---|---|---|
| 5% | 1,015万円 | 1,069万円 | 1,062万円 |
| 10% | 950万円 | 1,058万円 | 1,044万円 |
| 15% | 886万円 | 1,048万円 | 1,026万円 |
| 20% | 821万円 | 1,037万円 | 1,008万円 |
| 30% | 691万円 | 1,015万円 | 972万円 |
返金と返さないの差は、雨天組の数にオプション料の15万円をかけた額です。雨の確率が15%なら、10.8組×15万円で162万円。30%なら324万円まで開きます。
数字だけ見ると、返さないのが一番手元に残ります。返金は、雨が多い地域や月ほど、収入を削っていきます。
ここで話を終えると「雨でも返さないのが正解」になりますが、この比較には入っていないものがあります。雨の日に返金されなかった二人の気持ちです。
返さない案の本当の損は、低評価で消える成約
雨の日に、「屋外を選んだのに屋内になった。でもお金は戻ってこない」という説明を受ける二人は、どう感じるでしょうか。
説明が丁寧で、屋内の挙式が納得できるものなら、何も問題は起きないかもしれません。ただ、満足しなかった二人の一部は、口コミサイトや友人との会話で、それを話します。その話が、のちの見学者の判断に効くことがあります。
どれだけ効くかは測りにくいので、逆から計算します。返金しない案で手元に残る162万円(雨15%の場合)を、低評価が消す成約と比べるのです。
1組の粗利が140万円なので、162万円÷140万円で約1.16組。つまり、雨天の不満が原因で、年に1.2組以上の成約が余分に消えるなら、返さないほうが損になります。
| 雨の確率 | 返さないで増える額 | 損益分岐の成約数 |
|---|---|---|
| 5% | 54万円 | 0.39組 |
| 10% | 108万円 | 0.77組 |
| 15% | 162万円 | 1.16組 |
| 20% | 216万円 | 1.54組 |
| 30% | 324万円 | 2.31組 |
読み方はこうです。雨の確率が15%の会場で、「雨天の不満が理由で見学を取りやめた人が年に1組いるかどうか」を考えます。1組なら、返さない案はまだ得です。2組なら損です。
僕の感覚では、この1組と2組を見分ける材料は、会場の口コミを読めば見えてきます。口コミに「雨で屋内になったが、その説明が不十分だった」という書き込みが何件あるかを、直近の2年分で数えてください。ゼロに近ければ、返さない運用で問題は出ていません。複数あれば、数字にならなくても、すでに成約の一部を失っている可能性があります。
説明の順序が結果を変える
返金するかしないかより先に、いつ、誰が、何を説明したかが、不満の出方を左右します。
同じ「返さない」でも、次の2つでは受け取る印象がまったく違います。
- 契約時の見積もりに、「雨天の場合は屋内での挙式となります。オプション料は屋外設営の準備費用を含むため、返金の対象外です」と書いてある
- 雨の当日の朝に、初めて「屋内に変更になります。オプション料はお返しできません」と伝えられる
前者は、二人が納得して選んだ結果です。後者は、不意打ちです。同じ162万円の収入でも、後者は不満の元を作ります。
つまり、返金の判断は金額の問題であると同時に、いつ伝えたかの問題です。契約書に書いてある運用なら、返さない案は低評価のリスクをかなり小さくできます。契約書に何も書かれていないまま返さないのは、一番損をする形です。
雨天の判断をいつ下すか
もう1つ、見落とされやすいのが、屋外か屋内かを決める時刻です。
晴れなら屋外設営の費用が2万円かかります。雨なら屋内に切り替えますが、その前に設営を始めてしまっていると、設営費2万円が無駄になります。
雨の確率15%、設営の準備を前日夜に始める会場を仮定します。当日の朝に雨になって、前日夜に設営を済ませていた分が無駄になる確率を仮に10%、20%、30%と置くと、年間の無駄は次のとおりです。
| 前日設営が無駄になる確率 | 年間の無駄 |
|---|---|
| 10% | 約2.2万円 |
| 20% | 約4.3万円 |
| 30% | 約6.5万円 |
金額は小さいです。この計算は、設営費の話では大した問題ではないことを示しています。判断を早めたり遅めたりする工夫で動かせるのは、年に数万円です。162万円の返金の判断と比べると、桁が2つ違います。
現場では「何時までに決めるか」の議論に時間がかかりがちですが、会場の収益に効くのは、そちらではなく、契約時の説明と返金の運用のほうです。
代わりの特典は、返金と返さないの間に置ける
3つ目の案、代わりの特典についても見ておきます。
オプション料は返さない。そのかわり、雨で屋内になった二人には、2万円相当の装花やフォトの追加サービスをつける。こうすると、二人には「何も戻ってこなかった」ではなく、「お詫びが付いた」という感覚が残ります。
会場の負担は、特典の2万円と、雨の日の追加費用3万円の合計です。雨の確率が15%なら、10.8組×5万円で54万円。返金の162万円より108万円安く、返さない案の32.4万円より、21.6万円高いだけです。
この21.6万円で、低評価のリスクをどこまで下げられるかが、代わりの特典の効き目です。仮に、特典をつけることで、雨天の不満を理由に取りやめる見学者が年に0.2組分減るとすると、粗利にして28万円です。特典の追加費用21.6万円をわずかに上回ります。
ただし、0.2組という数字は、僕が置いた仮の値です。減る効果が0.15組分しかなければ、この案は損になります。特典を足す案は、効果を測る見込みが立つ会場だけが採るべきだと思っています。測れないのに足すと、ただの値引きになります。
屋外オプションそのものの採算
最後に、この雨天の扱いを抜きにして、屋外オプション自体が採算に合うかを見ておきます。
72組×15万円で、オプション料の収入は年に1,080万円です。晴れの日の設営費が1組2万円で、晴れの組数が61.2組(72組×85%)なら、設営費は年に122.4万円。雨の日の追加費用が10.8組×3万円で32.4万円。差し引きは約925万円です。
もし屋外オプションをやめたら、この925万円がなくなります。さらに、屋外を理由に選んでくれた二人の何割かが、他の会場に流れる可能性があります。
もう1つの見方として、屋外オプションの年間の収入1,080万円を、1組の粗利140万円で割ると約7.7組。屋外挙式があるから契約してくれた二人が、年に7.7組を超えているかどうかを、見積もりの選択状況から確認できるはずです。ここは僕に実データがないので、数字は書きません。ただ、1,080万円の収入が出ている以上、屋外をやめる判断は、簡単には下せないはずです。
自分の会場に当てはめる手順
最後に、この記事の計算を自分の会場で使う手順を書いておきます。
- 過去2〜3年の挙式で、屋外から屋内に切り替わった回数を数える。屋外を選んだ組数で割ると、実際の雨天率が出る
- 切り替えた組のうち、返金をした組、しなかった組、特典をつけた組を分ける。現場の判断がバラバラなら、それ自体がリスクです
- 契約書と見積もりに、雨天時の扱いが書かれているかを確認する。書かれていなければ、先に書く
- 直近2年の口コミで、雨天対応に触れた書き込みを数える
- 数が少なければ「返さない」、多ければ「返金」または「特典」を、この記事の表で比べる
この手順で、162万円という数字が自分の会場ではいくらになるかが出ます。出た数字が数十万円なら、運用を整える必要はあまりありません。数百万円になるなら、契約書の文言から変える価値があります。
まとめ
- 屋外挙式のオプション料が15万円、年72組が選ぶ仮の式場では、雨の確率が15%なら雨天組は年に10.8組。
- 全額返金すると162万円が減る。返さなければその分が手元に残る。
- ただし、返さない案が損になる分かれ目は、雨天の不満が年に1.2組以上の成約を消すかどうか。
- 同じ返さない運用でも、契約時に書いてあるのと、当日の朝に初めて伝えるのでは、不満の出方がまったく違う。
- 雨天の判断時刻は、年に数万円の話。返金の運用は、年に百万円単位の話。優先順位は金額の大きいほうが先。
- 代わりの特典は、返金と返さないの中間。効果を測れる会場でだけ足す。
- まず、自分の会場の雨天率と、過去の対応のバラつきを数える。
