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ゲストの食の配慮を「できる・要相談・できない」の3段で決めておくと、仮の式場で年84人分の代替皿は27.7万円。粗利の0.19組分で収まる

披露宴の料理について、二人から「友人にベジタリアンがいます」「海外から来る親戚が、宗教上の理由で食べられないものがあります」と言われたとき、会場はどう答えているでしょうか。担当プランナーがその場で厨房に聞いて、料理長が「何とかします」と返す。これで回っている会場は多いのではないかと思います。

結論を先に書きます。この種の相談は、都度対応にしておくと、担当者と料理長の個人の力量に依存したまま、毎回ゼロから話し合うことになります。「できる」「要相談」「できない」の3段の対応表を作って、契約の書面に出しておくほうが、現場も二人も迷いません。僕が置いた仮の式場(年120組、1組70人)で、配慮が必要なゲストが全体の1%だとすると、代替皿の費用は年27.7万円ほどです。粗利に換算すると、成約0.19組分です。費用の大きさより、決めていないことのほうが高くつく、という話をします。

この記事に出典つきの数字はありません。ゲストの何割が食の配慮を必要としているのか、業界全体でどこまで対応しているのかは、僕は確かめられていません。以下の数字は、すべて僕が置いた仮の前提です。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

仮の式場を置く

計算の土台になる前提を並べます。

  • 年間の挙式は120組
  • 1組あたりの列席者は平均70人。年間の延べ列席者は8,400人です
  • 1組あたりの粗利は148.5万円。ほかの記事で使っている仮の式場の値に合わせました
  • 食の配慮が必要なゲストは、全体の1%を基本にします。0.5%と2%の場合も並べます
  • 代替皿の原価は、1人あたり2,500円の上乗せ。通常のコース料理とは別に食材を仕入れ、別の工程で作る分の想定です
  • 仕込みと盛り付けの追加の手間を、1人あたり800円相当と置きます。人件費の換算です

どれも「そうだとすると」の置き方です。大事なのは、数字の当たり外れではなく、どこが効いてくるのかを見ることです。

1%でも、半分の組に1人はいる

まず、配慮が必要なゲストが全体の1%だと、何組に1組の割合で出会うのかを考えます。

1組70人で、各ゲストが独立に1%の確率で配慮を必要とするなら、70人のうち1人以上いる確率は約50%です。0.5%なら約30%、2%なら約76%になります。

つまり、率が1%という小さな数字でも、組で見ると「2組に1組に、1人はいる」という頻度です。滅多にない例外ではなく、月に5組から10組は出会う日常の対応ということになります。年120組なら、1%で約60組です。

この頻度で「そのつど料理長に聞く」を続けると、問い合わせの回数は年60回前後になります。1回の確認に、プランナーと厨房の合計で20分かかるとすると、年に20時間です。時給を1,500円で置けば3万円ほどで、金額としては小さいです。ただ、回数よりも、答えが担当によって違うことのほうが問題になります。

代替皿の費用を計算する

次に、代替皿そのものの費用です。式場全体の年間の人数は、延べ8,400人でした。

配慮が必要な率 年の人数 原価のみ(1人2,500円) 原価+仕込み(1人3,300円)
0.5% 42人 10.5万円 13.9万円
1% 84人 21.0万円 27.7万円
2% 168人 42.0万円 55.4万円

基本の1%だと、原価と仕込みの合計は年27.7万円です。粗利148.5万円で割ると、約0.19組分になります。2%でも55.4万円で、0.37組分です。

ここで、費用の見え方を確認しておきます。料理の代替皿は、二人から追加の料金をもらうものではなく、料理の見積もりに含まれるのが通常でしょう。含まれているなら、この27.7万円は、会場が持ち出しで負担している費用です。持ち出しの額が年27.7万円と分かっていれば、続けるか、特定の対応だけ別料金にするか、判断できます。分かっていなければ、料理長の裁量のなかで毎回なんとなく吸収されて、数字に出てきません。

都度対応が高くつく場面

都度対応でいちばん困るのは、日が近づいてからの発覚です。仮に、配慮の申告のうち3割が、人数確定の後か、当日の受付で初めて分かるとします。

人数確定後に分かると、仕入れは緊急になります。料理長が冷凍庫の在庫でなんとかするのか、近くの店に買いに走るのか、厨房の判断になります。そこで料理の質が落ちると、二人もゲストも、その場では何も言わないかもしれません。ただ、落ちたことは、あとで口コミやアンケートに出ます。

当日に分かる場合は、さらに悪くなります。ゲストは席についてから、「これは食べられません」と給仕に伝えることになります。その人だけが皿を下げられて、他のゲストが食べている間、手元に何も出ない時間が生まれます。二人にとっては、自分の友人や親戚を、自分の披露宴で不快にさせた場面になります。

この種の事故が、仮に年に2件あるとします。1件あたりの損失は、口コミの星の低下や、紹介の機会の喪失です。ここは測れていないので、数字は置きません。ただ、27.7万円の代替皿の費用と並べるものとして、「年2件の事故が起きている状態」は、並べて考える価値があります。

3段の対応表にする

では、どう決めるか。僕のおすすめは、配慮の種類を3段に分けて、あらかじめ会場として決めておくことです。

「できる」 は、追加料金なしで、標準で対応する範囲です。たとえば、特定の食材(甲殻類、そば、乳製品など)を除く、肉を魚に替える、といった、既存のメニューの食材を入れ替えるだけで済むものがここに入ります。厨房の仕込みが大きく変わらず、1人あたりの追加が数百円で収まるものです。

「要相談」 は、対応できるが、条件がつく範囲です。たとえば、ベジタリアン向けの1皿を、コース全体として組み替える場合、料理長と相談して、事前に提案します。人数が一定を超える場合や、特別な調理器具が必要な場合は、追加の費用を見積もりに明記します。ここは「いつまでに申告があれば受けられる」という期限と、「いくらか」を書いておくのが大事です。

「できない」 は、会場の設備や方針として、安全に提供できないものです。たとえば、調理場で特定の食材を完全に分離することができない場合や、認証を受けた調理が必要な場合などがあります。ここを曖昧にして「頑張ります」と言うのが、いちばん危ない答え方です。できないことは、できないと、早い時点で伝えるほうが、二人にとっては親切です。二人は別の方法(持ち込みの相談、別会場での食事など)を考える時間が持てます。

3段の線をどこに引くかは、会場の厨房の力で決まります。ここは僕には決められません。ただ、決めること自体に価値があります。決めていない会場の「できる」は、担当者ごとに違います。

申告の回収を契約の流れに入れる

対応表を作っても、申告が遅ければ意味がありません。申告の回収は、契約後の早い段階で、仕組みにします。

  • 契約時に、対応表を書面で渡す。「できる・要相談・できない」の3段に、それぞれ申告の期限を書く
  • 招待状の返信を集める段階で、二人がゲストに食の配慮を聞く。返信はがきに欄を作るか、Web招待状の項目に入れる
  • 人数確定の日(挙式の1か月前など)を、配慮の申告の期限にする
  • 期限を過ぎた申告は、「できる」の範囲だけ受ける。それ以外は、当日の対応が難しいと伝える

アレルギーの申告については、別の記事で、回収の時期を書きました。食の配慮は、アレルギーと同じ流れで集めるのが、二人にとっても楽です。アレルギーのほうが、安全に直結するので、優先順位は上になります。ここで言う「配慮」は、命に関わらないが、食べられない、食べたくない、というものを広く指しています。

回収の手間は、1組あたり30分、時給1,500円で置くと、年120組で9万円です。代替皿の27.7万円と合わせても、37万円ほどです。粗利に直すと0.25組分で、これが「年2件の事故」を減らすための費用と考えると、高くはないと僕は思います。

判断の分かれ目

この対応表を作るかどうかを決める、判断の分かれ目を並べます。

  1. 外国籍のゲスト、国際結婚の二人が年に何組あるか。 多い会場ほど、配慮の種類が増えます。年に数組なら、「要相談」の段で足ります
  2. 厨房の人手に余裕があるか。 仕込みの追加は、手が空いている時間にしかできません。繁忙日に2組が重なると、代替皿の仕込みが後回しになります
  3. 料理長が替わっても、対応が続くか。 都度対応の最大の弱さは、人が替わると基準も替わることです。紙にしておけば、引き継げます
  4. 見積もりの書き方。 代替皿が見積もりのどこに含まれているか。含まれていないなら、都度対応は持ち出しになっています

この4つのうち、2つ以上に当てはまれば、対応表を作る価値は大きいと思います。

見学で聞かれたときの答え方

対応表の使い道は、契約後だけではありません。見学の場でも、「ベジタリアンの友人がいるんですが、対応してもらえますか」と聞かれる場面があります。

そのときの答えが「大丈夫ですよ、相談してください」だけだと、二人は何が大丈夫なのか分かりません。「肉の代わりに魚か野菜にする対応は、追加の費用なしでできます。コース全体をベジタリアン向けに組むのは、費用が変わるので、人数が決まった段階でご提案します」と言えれば、二人は安心できます。

比べている他の会場に、この答えがなければ、これは差になります。料理そのものの味ではなく、「準備ができている」という印象で選ばれる場面です。

数字を置き換えて使う

この記事の数字は、ほとんどが仮の前提です。自分の会場に当てはめるときは、次の順で置き換えてください。

  1. 過去1年の披露宴で、食の配慮の申告が何件あったか。数えていなければ、担当者と料理長に聞いて、おおよその率を出す
  2. 申告のうち、人数確定の後に分かった割合。これが高いほど、回収の仕組みの価値が大きい
  3. 代替皿の原価と、仕込みの手間。料理長に聞けば、1皿あたりの追加が分かる
  4. 「できる」の範囲を、仮に決めてみて、料理長に確認する

3段の線を引く作業は、1回やれば、あとは更新するだけです。更新は、年に1回、メニューを入れ替えるときにあわせて見直せば足ります。

まとめ

  • 食の配慮は、1%の率でも、1組70人なら約半数の組に1人はいる。月に何組も出会う日常の対応で、例外ではない
  • 仮の式場(年120組、年8,400人)で、1%なら代替皿は年84人、原価と仕込みで27.7万円。粗利の0.19組分で、2%でも0.37組分
  • 申告の回収に、1組30分を使うと年9万円。合わせても粗利の0.25組分で、当日発覚の事故を減らすための費用と考える
  • 配慮の種類を「できる・要相談・できない」の3段に分け、書面で渡す。「できない」を曖昧にする答えが、いちばん危ない
  • 申告の期限は人数確定の日に置き、期限後は「できる」の範囲だけ受ける
  • 見学の場でも、3段の答えを持っていれば、料理の味とは別の「準備ができている」という差になる