出会いがネットに寄ると、式場は紹介の入口に検索の入口を足す
結婚した夫婦のうち、ネットで出会った人の割合が倍以上になりました。この数字を見て「うちの式場には関係ない話」と流してしまう経営者は多いと思います。出会い方と式場選びは別の話だからです。
ただ、式場の集客には「紹介」という入口があります。友人の披露宴に招かれて会場を知る、職場の先輩に式場を勧められる、親が知っている。こうした入口はどれも、二人のまわりに共通の人間関係があることが前提です。出会い方が変わると、この前提が少しずつ変わります。
この記事では、出会いのネット化が式場の入口をどれだけ細らせるのかを、数字を仮置きして計算します。先に結論を言うと、減り方は思ったより小さいです。小さいからこそ、紹介を捨てて検索に乗り換える話にはなりません。紹介の入口は残したまま、検索の入口を足す順番を書きます。
なお、紹介経由の割合など、式場ごとの実績は出典がありません。計算の数字はすべて「仮に〜とすると」と置いた想定で、実在の式場の実績ではないです。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
調査が示した変化と、数字の読み方
使うのは、国立社会保障・人口問題研究所が5年おきに行っている出生動向基本調査です。2021年に実施された第16回の夫婦調査では、2018年7月から2021年6月に結婚した初婚同士の夫婦のうち、ネット経由で出会ったと答えた人が13.6%でした。前回、2015年7月から2018年6月に結婚した夫婦では6.0%だったと報じられています。
僕は原資料を開けなかったので、この数字は報道経由で確認したものです。別の資料の表では14%台の表記も見かけました。集計の条件(結婚年の区切りなど)で数字が少し動くようです。この記事では13.6%と6.0%を使い、「倍以上に増えた」という方向だけを前提にします。
もう1つ、時期にも注意が要ります。この調査は、新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期して実施されました。対象の結婚期間はコロナ禍と重なっています。職場や学校で会う機会が減り、ネットで出会う人が増えた時期です。2021年の13.6%が、そのまま今の水準だとは言い切れません。上がり続けているのか、戻りつつあるのか。次の調査が出るまでは分かりません。
古い調査との比較も置いておきます。第14回(2010年)では、職場、友人やきょうだい、学校を通じた出会いが合わせて約7割を占めると整理されています。10年ほど前までは、共通の人間関係の中で出会って結婚する流れが主流でした。ネット経由は、その外側で出会う道が広がったということです。
ここで大事なのは、ネットで出会った二人が「友達のいない二人」ではないことです。出会いのきっかけがネットだっただけで、結婚する頃には、それぞれに友人も同僚も家族もいます。変わるのは、二人に共通の知り合いがいる度合いです。
紹介の入口は、3つに分けて考える
式場にとっての「紹介」は、1つの入口ではありません。僕は次の3つに分けて見ています。
- 友人・知人の披露宴で会場を体験した:招待客として出席し、料理や雰囲気を知って、自分のときの候補に入れる。式場側から見ると、披露宴1本が将来の見込み客への見本になる入口です
- 身近な人が勧めた:友人、同僚、先に挙げたきょうだい、親戚が「あの式場がよかった」と話す。口コミサイトより信頼されやすい入口です
- 職場や地域のつながりから入る:社員婚の窓口、法人提携、地元の知り合い。会社や地域の輪が入口になります
出会いがネット中心になると、この3つへの影響の出方は同じではありません。
1つ目は、あまり変わらない可能性があります。友人の披露宴に呼ばれるのは、二人のどちらかの友人関係の中での話だからです。出会い方は関係ありません。
2つ目は、片方にとっては変わりません。友人や同僚から勧められる入口は、それぞれの交友関係の中にあるからです。変わるのは、二人で共有できる人が少ないことで、「同じ友人が、同じ式場を二人に勧める」という重なりが減りがちな点です。1人が受け取った勧めを、もう1人が別の友人の勧めと比べる。そういう形が増えるかもしれません。
3つ目は、変わりやすい入口です。職場の出会いで結婚した二人は、同じ会社の福利厚生や提携窓口を通る可能性があります。ネットで出会った二人は、別々の会社にいることが多く、この入口に二人そろって乗ることが少なくなります。
ここまでは「そうなりやすい」という仕組みの話で、実績の話ではありません。どの入口がどれだけ細るかは、式場ごとの来館者のデータを見ないと分からないです。後半で、そのデータの取り方を書きます。
仮の式場で、紹介経由の割合の動きを計算する
では、減り方がどのくらいなのかを計算します。次の前提を置きます。数字はすべて想定です。
- 来館した二人のうち、紹介(友人の披露宴で知った、身近な人の勧め、職場や地域のつながり)で式場を知った割合は、ネット以外で出会った二人で30%とする
- ネットで出会った二人は、この割合が低くなるとして、10%から30%(変わらない場合)まで動かして見る
- ネットで出会った二人の割合は、前回の6.0%、2021年の13.6%、仮に進んだ場合の20%の3通りで見る
計算は、全体の紹介経由の割合を次の式で出すだけです。
全体の紹介経由の割合 = ネット以外の割合 × 30% + ネットで出会った割合 × (ネットの二人の紹介経由の割合)
結果は次のとおりです(単位は%)。
| ネットで出会った二人の割合 | ネットの二人も30%の場合 | 20%の場合 | 10%の場合 |
|---|---|---|---|
| 6.0%(前回) | 30.0 | 29.4 | 28.8 |
| 13.6%(2021年) | 30.0 | 28.6 | 27.3 |
| 20%(仮に進んだ場合) | 30.0 | 28.0 | 26.0 |
年に来館が100組の式場で見ると、ネットで出会った割合が6.0%から13.6%になり、その二人の紹介経由が20%に下がる想定では、紹介経由は29.4組から28.6組へ、0.8組の減りです。ネットの二人の紹介経由が10%まで下がる想定でも、28.8組から27.3組へ、約1.5組です。
仮に20%まで進み、ネットの二人の紹介経由が10%になる最悪側の組み合わせでも、30組が26組になる計算です。4組の減り。大きくないとは言えませんが、「紹介の入口が消える」というほどの数字ではありません。
この計算から、僕は次の2つを読み取りました。
1つ目は、出会いのネット化だけで、式場の入口が一気に崩れることは考えにくいことです。紹介を軸にしてきた式場が、慌てて方針を変える必要はありません。
2つ目は、効くのは年ごとの積み重ねだということです。1年に1組から2組の減りでも、3年、5年と続けば差になります。しかも、この減りは「来館に来ない二人」の数なので、見えにくいです。来た二人の数字だけ見ていると気づけません。
もう1つ、計算の前提そのものも疑ってください。ネット以外で出会った二人の紹介経由が30%という数字は、僕が置いた想定です。自分の式場が50%なら、同じ変化でも減る組数は大きくなります。逆に10%なら、ほとんど動きません。紹介への依存度が高い式場ほど、この変化の影響を受けます。
判断の分かれ目は、紹介にどれだけ頼っているか
この話が自分の式場に効くかどうかは、紹介への依存度で決まります。簡単な目安を3つ置きます。
紹介への依存度が高い式場:社員婚や法人提携が主力、地元の知り合いの輪の中で回っている、友人の披露宴から来る二人が多い。このタイプは、出会いのネット化の影響を先に受けます。ただし、前の計算のとおり急には崩れません。まず来館者の「知ったきっかけ」を数え直して、紹介の割合が下がっていないかを見るところから始めます。
検索・媒体への依存度が高い式場:来館の大半がポータルサイト、検索、SNSからの二人。このタイプは、出会い方の変化をあまり気にしなくて構いません。すでに紹介に頼っていないからです。むしろ、紹介の入口を捨てすぎていないかを見ます。
どちらも中くらいの式場:多くの式場はここだと思います。このタイプは、紹介の入口を守りつつ、検索の入口を少しずつ足すのがちょうどいいです。
ここで間違えやすいのは、「ネットで出会った二人向けのプラン」「マッチングアプリ婚の方へ」のように、出会い方で二人をくくって訴求することです。出会い方は、式場選びの好みと直接つながっていません。本人たちも、ネットで出会ったことを前面に出してほしいとは限らないです。くくって呼びかけると、かえって違和感を持たれる可能性があります。やるのは、出会い方を問わず、共通の知り合いが少ない二人にも届く入口を増やすことです。
検索の入口を足すときの、3つの順番
共通の知り合いが少ない二人は、式場を知る手がかりを、自分で探して見つけることになります。式場の側は、探されたときに見つかる状態をつくっておく必要があります。僕は次の順番で足すことを勧めます。
1. 式場名で検索した画面を整える
紹介で式場を知った二人も、結局は式場名で検索します。紹介の入口が細っても、この画面は変わらず見られます。口コミ、地図の情報、公式サイトの見出し。ここが古いまま、あるいは薄いままだと、検索の入口を足す以前の問題になります。ほかの記事でも書きましたが、集客の中でいちばん最初に整えるのはここです。
2. 友人前提の言葉を、紹介の案内から外す
紹介カードや紹介特典の案内文が、「お友達をご紹介ください」だけになっていないでしょうか。紹介する側が友人に限られると、共通の友人が少ない二人は、特典の対象から外れやすいです。「ご家族・ご友人・職場の方」など、紹介する相手を広く書く。ご自身の披露宴に来たゲストに向けた案内も同じです。ここは費用がほとんどかからず、すぐ直せます。
3. 二人だけで決める前提の資料を用意する
共通の知り合いが少ない二人は、式場の評判を周りに聞いて回れません。判断の材料が、式場が出す情報とネット上の口コミに偏ります。見学のときに、価格の見方、人数の目安、決める順番を書いた1枚があると、二人だけで比べやすくなります。親が同席する見学なら、親にも渡せる形にしておくと便利です。
3つとも、新しいツールや大きな広告費が要る話ではありません。すでにある情報の置き場所と書き方を変える話です。
効果は「知ったきっかけ」の数え直しで確かめる
この変化が自分の式場に出ているかどうかは、来館した二人の「知ったきっかけ」を数えれば分かります。出会い方を聞く必要はありません。出会い方は個人的な話で、答えたくない二人もいます。聞かなくても、別の指標で見られます。
見る指標は3つです。
- 紹介の割合:友人の披露宴、身近な人の勧め、職場や地域のつながり、と答えた二人の割合
- 検索・SNS・媒体の割合:自分で探して見つけた二人の割合
- 「共通の知り合い」に当たる質問:見学の冒頭で「式場探しは、誰かに相談されましたか」と聞き、「ふたりだけで」と答えた二人の割合
3つ目が、出会い方の変化をいちばん近くで拾えます。身近に相談できる人がいるかどうかは、共通の知り合いの多さと関係するからです。もちろん、これだけで出会い方まで推測はできません。あくまで、紹介に頼れない二人が増えているかを見る目安です。
数え方は簡単で、見学予約のフォームか、見学の最初の質問で選択肢を5つほど出し、受付台帳に1行足すだけです。半年たったところで、紹介の割合が動いているかを見ます。動いていなければ、今は何もしなくて構いません。動いていれば、前の3つの順番で足していきます。
数える前に、割合の分母を決めておいてください。来館した二人を分母にするのか、予約した二人を分母にするのか。月によって分母が変わると、割合が動いたように見えてしまいます。
やらないこと
最後に、この話でやらないことを3つ書きます。
紹介の入口を捨てない。計算のとおり、減り方は小さいです。検索に力を入れる分、紹介の施策を止めるのは逆です。紹介経由の二人は、成約まで進みやすい二人でもあります。
出会い方で二人を分けない。「ネット婚の二人」と名づけて訴求しない、見学で出会いを聞かない。出会い方は式場選びの理由ではないので、聞いても接客は変わりません。
13.6%を自分の式場の数字にしない。この数字は、2018年から2021年に結婚した夫婦全体の話です。自分の式場に来る二人は、年代も地域も違います。年代が低いほどネット経由の割合は高いと考えられますが、それも式場ごとに確かめる話です。
まとめ
- 結婚した夫婦のうち、ネット経由で出会った割合は6.0%(2015〜2018年結婚)から13.6%(2018〜2021年結婚)に増えたと報じられている。調査はコロナ禍と重なり、今の水準とは限らない
- 式場の紹介の入口は、友人の披露宴で知る・身近な人の勧め・職場や地域のつながり、の3つに分けて考える。出会い方の変化は、共通の知り合いが少ないことを通じて、3つ目と2つ目に効きやすい
- 仮置きの計算では、来館100組のうち紹介経由が30組の式場で、ネット出会いの割合が6.0%から13.6%に増え、その二人の紹介経由が20%になっても、減るのは1組弱。急に崩れる話ではない
- 紹介に頼る度合いが高い式場ほど影響を受けるが、先にやるのは入口の追加ではなく、来館者の「知ったきっかけ」の数え直し
- 足すなら、式場名で検索した画面を整える、紹介の案内から「友人前提」を外す、二人だけで決める前提の1枚を用意する、の順
- 出会い方で二人をくくった訴求はしない。やるのは、共通の知り合いが少ない二人にも届く入口を足すこと
