業界動向

挙式も披露宴もしなかった二人の半数強は、食事会か写真をしている。何もしない人は22.2%で、食事会だけの層は13.4%いる

「結婚式をしない人が増えている」という話は、式場の会議でよく出ます。ただ、しない人が何をしているのかまで話が進むことは、あまりありません。僕は、ここに見落としがあると思っています。式場が取り逃がしているのは、何もしない二人ではなく、別の形で何かをする二人かもしれないからです。

リクルートブライダル総研の結婚総合意識調査2024には、挙式、披露宴・ウエディングパーティー、親族中心の食事会、写真撮影の4つについて、組み合わせごとの実施率が載っています。この表を足し直すと、挙式か披露宴のどちらかをした二人が51.7%、4つとも何もしなかった二人が22.2%、残りの26.0%が食事会か写真だけで済ませた二人になります。この記事では、その26.0%の中身と、式場が食事会プランを出すときの損益を、仮の数字で計算します。先に結論を書くと、食事会プランは新しい二人を10組呼べるなら黒字ですが、披露宴の二人が1組下がるだけで、ほぼ帳消しになります。

調査の数字を足し直す

使うのは、結婚総合意識調査2024の【既婚編】です。対象は、結婚した時期が2023年4月から2024年3月で、調査時に20〜49歳の既婚者1,500人です。インターネット調査なので、全国の結婚した二人の縮図というより、この調査の回答者の中での割合として読みます。報告書の表は、挙式、披露宴・ウエディングパーティー、親族中心の食事会、写真撮影の4つの組み合わせを16通りに分けて、実施率を出しています。

2024年の数字は次のとおりです。

  • 4つすべてをした二人が25.0%で、最も多い
  • 挙式と披露宴と写真の3つが11.7%
  • 食事会だけが6.2%、写真だけが12.6%、食事会と写真の2つが7.2%
  • 何も実施していない二人が22.2%

この16通りのうち、挙式か披露宴のどちらかを含む行を足すと51.7%になります。ここは報告書に載っている数字ではなく、僕が表から足した計算です。逆に、挙式も披露宴も含まず、食事会か写真のどちらかだけをした行(食事会だけ、写真だけ、食事会と写真)を足すと、6.2+12.6+7.2で26.0%です。51.7、26.0、22.2を足すと99.9%で、四捨五入のずれの範囲に収まります。

見出しの数字は、ここから出ています。挙式も披露宴もしなかった二人は、51.7%の残りの48.3%です。そのうち、食事会か写真をした二人が26.0%なので、割合にすると約54%です。「結婚式をしない」二人の半数強は、何かしらの形でお祝いをしています。

しない二人の中身は、年々変わっている

同じ表は2020年から2024年まで載っているので、同じ足し算を年ごとにやってみました。挙式も披露宴もしなかった二人のうち、食事会か写真をした二人の割合は次のように動いています。

  • 2020年 47.9%(何かした18.3%、何もしない19.9%)
  • 2021年 47.3%(何かした25.9%、何もしない28.9%)
  • 2022年 51.2%(何かした25.5%、何もしない24.3%)
  • 2023年 52.2%(何かした23.4%、何もしない21.4%)
  • 2024年 53.9%(何かした26.0%、何もしない22.2%)

2020年から2024年にかけて、47.9%から53.9%へ、6ポイント上がっています。ただし、これは4つのイベントだけで見た割合で、年ごとの回答者も違います。「上がっている傾向がある」くらいに読むのが安全で、5年で確実に上がったとまでは言えません。

もう少し見ると、食事会が入る組(食事会だけ、食事会と写真)の合計は12.0%、12.0%、12.6%、13.6%、13.4%で、この5年ほぼ横ばいです。一方、写真だけの二人は、2020年の6.3%から2021年に13.9%へ跳ね上がり、その後は12.9%、9.8%、12.6%と動いています。2021年の跳ね上がりは、コロナ禍で式を見送った二人が写真に回った動きだと思われますが、調査はその理由までは聞いていません。

つまり、「何もしない」22.2%は、2021年の28.9%をピークに少し戻っています。その分が、挙式や披露宴に戻っているのか、食事会や写真に流れているのかを、この表だけでは切り分けられません。挙式か披露宴をした二人の足し算は、2021年45.0%、2022年50.1%、2023年55.4%、2024年51.7%と動いていて、2024年は前年から3.7ポイント下がっています。

食事会は、定番のイベントの1つになっている

もうひとつ、食事会の数字を見ておきます。報告書の実施率のグラフでは、親族中心の食事会は2024年に46.6%で、挙式の50.1%、披露宴・ウエディングパーティーの45.5%とほぼ並んでいます。写真撮影は62.1%で最も高い数字です。

ここで気をつけたいのは、食事会の46.6%のうち大半は、挙式や披露宴もした二人だということです。食事会46.6%のうち、食事会だけ、または食事会と写真だけの二人は13.4%です。残りの33.2%は、挙式や披露宴と食事会を重ねています。顔合わせや、披露宴に呼べなかった親族向けの席だと思います。

式場の側から見ると、食事会は「披露宴の代わり」と「披露宴の他にやるもの」の2つが混ざった数字です。後者は、式場が披露宴と一緒に売れる可能性があります。前者は、披露宴の見込み客が下がる先にもなりえます。この区別を付けずに食事会プランを作ると、どちらの二人が来るのか分からないまま損益が決まってしまいます。ここが、次の計算の肝になります。

仮の商圏で食事会プランの粗利を出す

ここからは、僕が仮に置いた数字で計算します。実在の式場や商圏ではありません。

  • 商圏で1年に結婚する二人は1,000組とする
  • 回答者の割合が、そのまま商圏の二人に当てはまるとする(実際には地域差があります)
  • 披露宴を受ける式場は商圏に8会場あり、どの会場も同じ数の二人を受けるとする
  • 食事会プランは、20人、1人あたり1.5万円で、1組30万円とする
  • 食事会プランの粗利率は40%とし、1組の粗利は12万円とする
  • 披露宴の1組の粗利は、140万円とする(この媒体の他の記事と同じ仮定です)

この商圏の1,000組を調査の割合で分けると、挙式か披露宴をする二人が517組、食事会だけ、または食事会と写真だけの二人が134組、写真だけの二人が126組、何もしない二人が222組です。

食事会だけ、または食事会と写真だけの134組を、8会場で均等に分けると、1会場あたり16.75組です。この16.75組を全部取れれば、粗利は年約200万円です。ただし、均等に取れる前提は甘くて、食事会を売り物にしている会場に集まるはずです。取れる割合を変えて並べます。

  • 134組のうち5%(6.7組)を取ると、粗利は年約80万円
  • 10%(13.4組)を取ると、年約161万円
  • 20%(26.8組)を取ると、年約322万円

披露宴の1組分の粗利が140万円なので、食事会プランでこの粗利を超えるには、12組弱が必要です。140万円を12万円で割ると11.7になるからです。10%を取れる会場では、食事会プラン1年分の粗利は、披露宴1.1組分くらいにしかなりません。

この計算は、会場の空いている時間に食事会を入れられる前提です。土日の人気の枠を食事会に使うと、その枠の披露宴の機会が消えます。平日や、挙式月の偏りで埋まらない閑散月に入れる使い方なら、枠の機会費用はほぼゼロです。人気日に使うのか、空いている日に使うのかで、損益の意味が変わります。

披露宴から下がる二人が1組いると、ほぼ帳消しになる

食事会プランの怖さは、新しい二人が増える話と、披露宴の二人が下がる話が、同じ数字の中に混ざることです。たとえば、食事会プランの紹介を見た二人が、予定していた披露宴をやめて食事会に切り替えたとします。この二人は新規ではなく、粗利が140万円から12万円に下がっただけです。1組あたりの減収は128万円です。

新しい二人と、下がる二人の数を変えて、食事会プランの年間の粗利を計算します。

  • 新規10組、下がる二人0組:粗利は+120万円
  • 新規10組、下がる二人1組:+120万円−128万円で、−8万円
  • 新規10組、下がる二人2組:−136万円
  • 新規10組、下がる二人5組:−520万円
  • 新規12組、下がる二人1組:+144万円−128万円で、+16万円

分かれ目は、128万円÷12万円で、約10.7です。下がる二人が1組増えるごとに、新規の食事会が10.7組、余計に必要になります。新規が1年に10〜12組という規模の会場は、下がる二人が年に1組いるだけで、食事会プランは利益がほぼゼロになります。

この計算を見ると、食事会プランを出すかどうかより、誰に見せるかのほうが大事だと分かります。公式サイトの目立つ場所に載せれば、披露宴の見込み客の目にも入ります。披露宴の見積もりを出した後に、金額の合わない二人へ案内するなら、下がるのではなく、離脱する二人を食事会で拾う形になります。この場合は、下がる二人の損は、もともと取れなかった契約の話なので、計算の外に置けます。

見せ方を3通りに分けて比べる

食事会プランの見せ方で、下がる二人の数がどう変わるかは、僕にも分かりません。調査にも、この数字はありません。そこで、仮に3つのケースを置いて、年間の粗利を比べます。新規の食事会は、どのケースも同じ10組とします。

1つ目は、公式サイトのトップで、披露宴と同じ大きさで見せる場合です。披露宴の見込み客が目にするので、仮に年3組が下がるとします。粗利は+120万円−384万円で、−264万円になります。

2つ目は、プラン名と料金をサイトの奥に置き、問い合わせてきた二人にだけ案内する場合です。仮に年1組が下がるとします。粗利は−8万円です。

3つ目は、披露宴の見積もりで契約に至らなかった二人にだけ、後から案内する場合です。下がる二人は0組ですが、新規のうちの何組が来るかは減るかもしれません。新規が6組に減ったとすると、粗利は72万円です。

どれも仮の数字で、どの見せ方が正解とは言えません。ただ、3つ並べると、食事会プランを成功させる条件は「新規の数を増やすこと」より「下がる二人を増やさないこと」のほうに偏っていると分かります。新規が10組から20組に倍になっても、粗利は+120万円から+240万円に動くだけです。下がる二人が1組増えるだけで、128万円が動きます。

食事会と写真は、別の棚で考える

写真だけの二人も126組と多いので、触れておきます。写真は、報告書の分類でスタジオ撮影、ロケーション撮影、エンゲージメントフォト、その他のウエディングフォト・撮影会を含みます。式場が写真を扱う場合、撮影場所として会場を貸すか、提携先のスタジオを紹介するか、衣装を貸すかで、粗利の出方が全然違います。

この記事では、写真の損益までは計算しません。調査は写真の単価や、式場で撮った割合を聞いていないからです。ただ、写真だけの12.6%は、食事会だけの6.2%の約2倍あります。「しない二人」の中でいちばん大きな塊が写真だということは、覚えておいていいと思います。式場が自分の庭やチャペルを使ってもらう形は、披露宴の枠をつぶさずに、会場の名前を覚えてもらう入口にもなります。

食事会との違いは、写真が披露宴と同じ日に重ならないことです。食事会は、披露宴と同じ宴会場、同じ時間帯を使う可能性が高いので、枠の取り合いになります。写真は、挙式の予定がない日の昼間や、式場の外で撮ることもできます。枠の機会費用が低いぶん、下がる二人の損の出方も違うと思います。

判断の分かれ目と、見ておく数字

ここまでを、会場の判断に直します。食事会プランを出すかどうかは、次の3つで決まります。

1つ目は、空いている日があるかどうかです。挙式月の偏りがある市場では、閑散月や平日の枠が余っている会場が多いはずです。余った枠に食事会を入れるなら、枠の機会費用はほぼゼロです。人気日の枠が足りない会場は、そもそも食事会に枠を回す余裕がありません。

2つ目は、自分の会場で披露宴の見積もりを出した二人のうち、どれだけが契約に至らなかったかです。契約に至らなかった二人が多い会場ほど、食事会プランを後から案内する先が多く、下がる二人の損を気にせずに済みます。成約率が高い会場は、逆に、食事会プランが毎回の契約を下げる側に回りやすくなります。

3つ目は、食事会プランの粗利率です。僕は仮に40%としましたが、20人の食事会に宴会場、スタッフ、料理をどれだけ使うかで、実際の数字は大きく変わります。粗利率が20%に下がれば、1組6万円になり、披露宴から1組下がった損を取り返すのに約22組が要ります。式場ごとの原価を入れた計算が必要です。

見ておく数字は、自分の会場の過去1年の見積もりで、契約に至らなかった組数と、その理由の記録です。「予算が合わなかった」二人が何組いたかを数えると、食事会プランの案内先の大きさが分かります。調査が教えてくれるのは商圏全体の割合までで、そこから先は、自分の会場の記録でしか埋まりません。

まとめ

  • 結婚総合意識調査2024を足し直すと、挙式か披露宴をした二人は51.7%、何もしなかった二人は22.2%、食事会か写真だけの二人は26.0%(足し算は僕の計算)
  • 挙式も披露宴もしなかった二人の約54%は、食事会か写真をしている。2020年の47.9%から上がっているが、傾向として読むのが安全
  • 食事会だけ、または食事会と写真だけの二人は13.4%で、5年ほぼ横ばい。写真だけの12.6%は、食事会だけの約2倍
  • 仮の商圏(1,000組、8会場)で、食事会プランの粗利は1組12万円。披露宴の粗利140万円を超えるには11.7組が要る
  • 披露宴から食事会に下がる二人が1組いると、128万円の減収で、新規の食事会10.7組分が消える
  • 食事会プランの成否は、新規の数よりも、下がる二人を増やさない見せ方で決まる