挙式月は6月が14.0%、8月が3.0%。市場と同じ偏りの式場は、6月が満席でも年間の稼働率が6割に届かない
「繁忙期は満席なのに、年間で見ると稼働率が上がらない」。式場の数字を見ていると、こういう状態によく出会います。理由は、結婚式の挙式月が特定の月に偏っているからです。この偏りは式場の努力ではほとんど動かせないので、先に大きさを知っておくと、どこに手を打つかの判断が変わります。
リクルートブライダル総研の結婚マーケット調査2025では、挙式月の割合が最も多いのは6月の14.0%、最も少ないのは8月の3.0%です。差は4.7倍あります。この記事では、この割合のとおりに組が入る仮の式場を置いて、年間の稼働率の天井と、閑散月を埋める手・繁忙月を伸ばす手の余地を計算します。先に結論を書くと、市場と同じ偏りの式場は、いちばん忙しい6月を満席にしても、年間の稼働率が59.5%で止まります。
調査が示す挙式月の偏り
使うのは、結婚マーケット調査2025の挙式月別の割合です。ゼクシィの記事に月ごとの数字が載っていました。調査の対象と回答数は、その記事からは読み取れませんでした。そのため、ここでは「この調査では挙式月がこう分布している」という範囲で使い、式場ごとの実績とは分けて読みます。
月ごとの割合は次のとおりです。
- 1月 5.2%、2月 7.6%、3月 10.4%、4月 12.4%
- 5月 13.1%、6月 14.0%、7月 5.7%、8月 3.0%
- 9月 4.3%、10月 9.1%、11月 8.0%、12月 7.2%
12か月を足すと100.0%になります。ここから、僕が計算した数字を3つ挙げます。
1つ目は、3月から6月の4か月だけで49.9%を占めることです。1年の3分の1の期間に、挙式の約半分が集まっています。
2つ目は、7月・8月・9月・1月の4か月を足しても18.2%にしかならないことです。残りの8か月に、挙式の8割強が入ります。
3つ目は、最多の6月と最少の8月の差が4.7倍あることです。6月に1組あたりの手間がかかる式場が、8月には4分の1以下の組数で回している計算になります。
ひとつ注意があります。検索で見つかった報道には、別の年の結婚トレンド調査で10月・11月が最も多かったという紹介もありました。どの月が最多になるかは、調査の年や集計の仕方で変わりうるということです。この記事は2025年の調査の数字に沿って計算しますが、偏りの大きさ(山と谷がはっきりあること)のほうを持ち帰ってもらえれば十分です。自社の予約の入り方は、自社の過去の挙式月別の組数で確かめてください。
偏りどおりに組が入る式場を置いてみる
ここからは、調査にない数字を僕が仮に置いて計算します。実在の式場ではありません。
- 宴会場は1室で、1か月に入れられる組数の上限は20組とする(土日祝が月に10日、1日2組の想定)
- 毎月の上限は同じとする
- 組の入り方は、調査の挙式月の割合に完全に比例するとする
- いちばん多い6月は、上限の20組が埋まるとする
6月が14.0%で20組なので、年間の総数は 20 ÷ 0.14 で約142.9組になります。月ごとの組数と、上限20組に対する埋まり具合を計算すると、次のようになります。
- 1月 7.4組(37%)、2月 10.9組(54%)、3月 14.9組(74%)
- 4月 17.7組(89%)、5月 18.7組(94%)、6月 20.0組(100%)
- 7月 8.1組(41%)、8月 4.3組(21%)、9月 6.1組(31%)
- 10月 13.0組(65%)、11月 11.4組(57%)、12月 10.3組(51%)
年間の上限は20組×12か月で240組です。142.9÷240で、年間の稼働率は59.5%になります。
つまり、市場と同じ偏りで組が入る式場は、6月に満席を達成しても、年間では4割の枠が空いたままです。これは営業が弱いからではなく、分布の形から出てくる天井です。「繁忙期は満席にしているのに、年間の稼働率が伸びない」という違和感の正体は、多くの場合この形にあります。
繁忙月には、伸ばせる余地がほとんどない
では、どこに手を打つのが現実的か。仮の式場で、余地を月別に並べてみます。
3月から6月の4か月で、上限までの空きを足すと、3月が5.1組、4月が2.3組、5月が1.3組、6月が0組で、合わせて8.7組です。繁忙期の営業を強くしても、この式場が増やせる上限は年間で8.7組になります。
一方、7月・8月・9月の3か月で、上限までの空きは、7月が11.9組、8月が15.7組、9月が13.9組で、合わせて41.5組です。同じ「空き」でも、閑散月のほうが5倍近く大きい。ここに手を打つ余地があります。
ただし、空きがあることと、埋められることは別です。夏は暑さを避けたい、秋は旅行や行楽と重なる、といった二人の側の事情で、閑散月の需要は薄くなっています。空きが大きくても、そこに需要がなければ値引きをしても埋まらない。この点は、次の節で数字に置きます。
閑散月を12月並みまで引き上げると、何組増えるか
閑散月の目標を現実的に置いてみます。7月・8月・9月を、12月と同じ埋まり具合まで引き上げるとします。12月は7.2%で、仮の式場では10.3組、上限の51%です。
- 7月:8.1組 → 10.3組(+2.2組)
- 8月:4.3組 → 10.3組(+6.0組)
- 9月:6.1組 → 10.3組(+4.2組)
合計で+12.4組になり、年間は142.9組から155.3組に増えます。稼働率は59.5%から64.7%に上がります。
数字を足し合わせて見ると、この引き上げ(約12組)は、繁忙月に打てる手の上限(8.7組)より大きいことが分かります。同じ労力を使うなら、繁忙月の最後の1組を取りに行くより、閑散月を12月並みに近づけるほうが、組数としては伸びる計算です。
では、1組あたりの利益を置いて、金額にしてみます。これも仮の数字です。
- 1組の売上は350万円とする
- 変動費率は55%とする(料理・衣装・装花など、1組増えるごとに増える費用)
- 閑散月の獲得に、1組あたり追加で10万円の販促費がかかるとする
1組増えたときの利益は、350万円×(1−0.55)−10万円で147.5万円です。12.4組なら約1,829万円になります。これは、稼働率を5.2ポイント上げるのに使える額の目安です。
この1,829万円の読み方は2つあります。ひとつは、閑散月の獲得のために、年間でこの額まで使えるという上限です。もうひとつは、閑散月の需要が薄いなら、同じ額を使っても思ったほど組数が伸びないので、元が取れない場合もあるという意味です。
6月が満席でないときは、天井がさらに下がる
ここまでは「6月が満席」という、いちばん良い場合で計算しました。6月が満席にならない年は、天井がもっと低くなります。同じ式にあてはめると、次のようになります。
- 6月が20組(100%)なら、年間142.9組で稼働率59.5%
- 6月が18組(90%)なら、年間128.6組で稼働率53.6%
- 6月が16組(80%)なら、年間114.3組で稼働率47.6%
6月の埋まり具合が10ポイント下がると、年間の稼働率は約6ポイント下がります。繁忙月の取りこぼしは、閑散月にも同じ比率で波及する、という見方もできます。数字の上では、繁忙月の最後の数組を守ることにも、閑散月を引き上げるのと同じくらいの意味があります。ただ、最後の数組を取るために値引きをすると、その値引きは残りの全組に響きます。ここは別の記事で扱った、空き枠の値引きと同じ構造です。
閑散月に打つ手の分かれ目
閑散月を埋める手は、大きく2つに分けられます。
1つ目は、同じ二人を別の月に動かす手です。たとえば、6月に希望したが人気日が埋まっていた二人に、9月を提案する。ここで効くのは、日程の選択肢が少なくなる前に、二人に代わりの月を案内することです。人気日が埋まったあとで案内すると、二人は他の式場に回ります。
2つ目は、最初から閑散月に挙げたい二人を探す手です。屋外の挙式の気候や、親族の休みなど、月が決まっている二人もいます。この二人は、式場の言う日程には動きません。値引きで釣るのではなく、閑散月だからできることを提示するほうが合います。たとえば、日程の選択肢が多く、希望の時間帯に宴会場を使いやすいことは、二人にとっての価値になります。
どちらの手を打つにしても、前提として確認したいことがあります。自社の過去の挙式月の分布が、市場の分布と同じ形か、違う形かです。たとえば、冬の屋内の演出や、秋の紅葉などに強みがある式場は、市場の山と谷が自社ではずれているかもしれません。市場の分布は、自社の分布を読むための基準線として使うのが妥当です。
今日からできる確認
この記事の数字は、市場の分布を借りて置いた仮のものです。自社の数字で確かめるなら、次の順で見ていきます。
- 過去3年の挙式月別の組数を並べる(1年だけだと、日柄や曜日の並びで揺れる)
- 月ごとの上限組数を、土日祝の日数×1日の組数で出す
- 月ごとの埋まり具合を計算し、年間の稼働率を出す
- 稼働率が80%を超える月は、繁忙月としてこれ以上増やせるかを確かめる(増やせないなら、そこは打ち手の対象から外す)
- 稼働率が50%を割る月は、閑散月として、日程変更の提案と、最初から探す手のどちらが合うかを分ける
この順で見ると、「どの月に営業の力をかけるか」を、感覚ではなく空きの大きさで決められます。空きが大きくても需要が薄い月は、手を打つ前に、需要の側(二人が避ける理由)を確かめるのが先です。
まとめ
- 結婚マーケット調査2025では、挙式月は6月が14.0%で最多、8月が3.0%で最少。差は4.7倍
- 3月から6月の4か月で49.9%、7月・8月・9月・1月の4か月で18.2%を占める
- 市場と同じ偏りで組が入る仮の式場は、6月が満席でも年間の稼働率が59.5%で止まる
- 繁忙月(3月から6月)に残る空きは8.7組。閑散月(7月から9月)の空きは41.5組
- 7月・8月・9月を12月並みに引き上げると+12.4組、稼働率は64.7%。繁忙月の上限より大きい
- 仮の前提(1組350万円・変動費率55%・追加の販促費10万円)では、引き上げの利益は年1,829万円
- 閑散月は、同じ二人を別の月に動かす手と、最初から閑散月を探す手で分ける
- 市場の分布は自社の分布を読む基準線。自社の過去3年の挙式月別の組数で確かめる
