業界動向

婚姻は2年連続で増えた。それでも披露宴は増えていない

2025年に結婚したカップルは48万9,119組でした。前年より4,027組多く、婚姻件数は2年連続で増えています。厚生労働省が2026年6月に出した人口動態統計(概数)の数字です。

婚姻数は2002年から減る流れが続いていたので、2年続けて増えたのは、それだけでニュースになる出来事です。

ところが、式場の数字は増えていません。矢野経済研究所の2026年の調査によると、2025年の挙式披露宴・披露パーティ市場は前年より微減でした。理由として挙がっているのは、施行件数の減少と、列席者人数の伸び悩みです。ブライダル関連市場の全体(主要5分野)も1兆5,786億円で前年比99.9%、2026年は99.5%の予測になっています。

結婚する人は増えたのに、披露宴の件数は減った。このずれは、3か所で生まれています。披露宴をする人の割合、増えた場所の偏り、お金の行き先です。順番に見ていきます。

披露宴の数は「婚姻件数 × 実施率」で決まる

婚姻件数は、役所に婚姻届が出された数です。披露宴の数ではありません。

式場の売上の入口になるのは、婚姻件数そのものではなく「婚姻件数 × 披露宴をする人の割合」です。この割合が、思っているよりずっと低いんですよね。

リクルートの結婚マーケット調査2025だと、披露宴・ウエディングパーティーの実施率は43.1%でした。結婚した人の半分に届いていません。

この割合を、増えた4,027組に単純に掛けてみます。披露宴まで進むのは1,700組強です。全国の合計でこの数です。

ちなみに、婚姻数のニュースでは「50.6万組」という数字を見かけることもあります。こちらは外国人どうしの結婚なども含めた速報の数字で、48万9,119組は日本人の婚姻だけを数えた概数です。どちらを見ても、増え方は1%前後。統計の取り方を変えても、景色はほとんど変わりません。

1,700組という数は、全国の式場で分け合うには小さいです。しかも次に見るとおり、この増加は全国に均等に散らばっていません。

婚姻の増加は東京に偏っていて、地方はまだ減っている

日本総研が2026年3月に出したレポートによると、2025年の全国の婚姻数の増加のうち、4分の3が東京都での増加分でした。東京都の2025年の婚姻件数は8万5,137件で、前年より4.8%増えています。

同じレポートでは、婚姻数が増えた背景として、コロナ禍で急に減ったぶんの反動と、若い世代の人口の減り方が緩やかになったことを挙げています。そのうえで、地方では婚姻数の減少がまだ続いている、とも書いています。地方から大都市へ女性が多く移っていて、地方では男女の人数の釣り合いが崩れていることが、理由の1つとして挙がっています。

ここは地方の式場にとって大事なところです。「婚姻数が2年連続で増えた」は全国の合計の話で、東京を除くと、多くの地域ではまだ減っています。地元の役所に出される婚姻届は、去年より少ないかもしれない。全国ニュースの明るさを、自社の商圏にそのまま持ち込むと計画がずれます。

矢野経済研究所の調査でも、人口の流出が大きいエリアの婚礼事業はさらに厳しくなる、という見立てでした。統計の側から見ても、市場調査の側から見ても、同じ方向を向いています。

来期の計画を立てるときは、全国の婚姻数ではなく、自社の商圏の都道府県の婚姻数を見てください。都道府県別の婚姻数は、人口動態統計で毎年公表されています。前年比が全国と逆向きになっている県は少なくありません。

披露宴の売上は、組数と列席者の人数の両方で決まる

矢野経済研究所が市場の微減の理由に挙げたのは、施行件数の減少だけではありませんでした。列席者人数の伸び悩みも並んでいます。

披露宴の売上は、ざっくり言えば「組数 × 1組あたりの単価」で、その単価の大きな部分は「列席者の人数 × 1人あたりの料理や引出物」で決まります。つまり売上は、組数と列席者の人数という2つの数字で決まります。

婚姻数のニュースが関係するのは、組数のほうだけです。仮に組数が去年と同じでも、1組あたりの列席者が減れば売上は減ります。列席者の人数は、婚姻数の統計には一切出てきません。

人数で単価が決まる商品の組み方をしている会場ほど、この影響をまともに受けます。逆に、写真や演出、衣装のように、列席者の人数と関係なく1組ごとに付く商品の比率が高い会場は、人数が減っても単価を保ちやすい。来期の単価計画を立てるときは、自社の売上のうち、人数に連動する部分がどれだけあるかを一度分けて見ておくと、人数が減ったときの落ち方が読めます。

結婚にかけるお金は、フォトや会食に流れている

では、結婚した人はお金を使わなくなったのか。僕はそう見ていません。使い道が分かれただけです。

Wedding Parkのフォトウエディング動向調査2025では、フォトウエディング・前撮りの市場規模を推計1,025億円としています。平均費用は約28.4万円で、前年より約2.4万円上がりました。

矢野経済研究所の調査でも、今後の挙式披露宴市場はフォト婚をはじめとするカジュアル化が進む、という見立てです。

並べると、結婚を機にお金を使う人は減っていません。お金の行き先が、披露宴の一本道から、フォトや会食、少人数の式へと何本にも分かれた、と読めます。

ここで式場にとって痛いのは、分かれた先の多くを、式場以外の事業者が取っていることです。フォトスタジオ、レストラン、写真だけの専門店。結婚した人の財布は開いているのに、式場のレジを通らない取引が増えています。

式場は、写真を撮る場所としても、少人数で食事をする場所としても、本来は条件がそろっています。チャペルもガーデンも、料理を出す厨房もある。それでも結婚した人が式場以外を選ぶのは、式場が「披露宴をする人のための場所」として見られているからです。写真だけ、食事会だけの相談をしていいのか分からない。問い合わせのフォームを開いても、選択肢に出てこない。そういう状態だと、小さな入口の詰まりがお金の流れを外に逃がします。

フォトや会食の相談を月3組断ると、年1,000万円の売上を逃す

どのくらいの売上を逃しているのかを、数字で置いてみます。ここからは会場ごとに違う数字が入るので、前提を明示したモデル計算です。

前提として、披露宴はしないがフォトや会食の相談をしてきた人を、月に3組断っている会場を考えます。単価には、さきほどのフォトウエディング・前撮りの平均費用、約28.4万円を使います。

  • 月3組 × 28.4万円 = 月85万円ほど
  • 年間にすると、約1,020万円

ブライダル産業新聞の試算で使われている平均単価350万円で割ると、披露宴およそ3件分です。広告費を使って披露宴を年3件増やすのと、いま断っている相談を受けられるようにするのと、どちらが軽いか。会場によって答えは変わりますが、比べる価値はある数字です。

もちろん、これは売上の話で、利益の話ではありません。フォトや会食を受けるには、撮影の手配や、披露宴と重ならない日程の組み方といった手間がかかります。それでも、平日や空いた時間帯に入る仕事であれば、会場の稼働を埋める売上になります。

逆に、月3組も断っていないなら、それはそれで情報です。相談がそもそも来ていないなら、写真だけ、食事会だけの相談を受けていることが外から見えていない可能性があります。

試しに、ここ半年の問い合わせのうち、少人数や会食、写真だけといった相談が何件あって、何件を受けられたかを数えてみてください。この数字、すぐに出てくるでしょうか。

一番の競合は、披露宴をしないという選択

婚姻数の増減で一喜一憂していると、本当の競合を見落とします。

式場の競合は、隣の式場だけではないです。披露宴をしないという選択そのものが、一番大きな競合です。数で見ても、披露宴をしない側の57%のほうが、する側の43%より多い。

この57%に向けた商品を何も持っていない会場は、婚姻数がどれだけ増えても取り分が増えません。問い合わせの段階で「披露宴まではしないんですが」と言われて、そこで話が終わっているなら、それは断っている売上です。

ただし、57%を取りに行けば全部うまくいく、という単純な話でもありません。矢野経済研究所は同じ調査で、有力企業では新しい施設やリニューアルの効果で組単価が上がる見込みがある、とも書いています。

組単価を上げて43%の中で勝ち切る会場と、入口を広げて57%の側からも組数を取る会場。同じ業界でも、取るべき打ち手が逆になってきています。

どちらを取るかは、2つの数字で決まります。1つは、自社の商圏の婚姻数の前年比。東京のように増えている商圏なら、43%の中での取り合いでも分母が育ちます。減っている商圏なら、43%の中だけで戦うと、毎年少しずつ縮む分母を競合と奪い合うことになります。

もう1つは、自社の組単価が商圏の中でどの位置にあるか。立地や施設で単価を取れる会場は、43%の中で勝ち切る戦い方が合っています。単価で勝てない会場が、43%の中だけで戦い続けるのは苦しいです。

来期の予算を組む前に、この2つを一度はっきりさせておくと、広告費の配分も商品開発の優先順位も決めやすくなります。

まとめ

婚姻数のニュースと、式場の数字のずれを振り返ります。

  • 2025年の婚姻件数は48万9,119組で2年連続の増加。一方、挙式披露宴・披露パーティ市場は施行件数の減少で微減だった
  • 式場の売上の入口は「婚姻件数 × 披露宴の実施率」。実施率は43.1%なので、増えた4,027組のうち披露宴に進むのは1,700組強にとどまる
  • 披露宴の売上は組数と列席者の人数で決まる。婚姻数が関係するのは組数だけで、列席者の伸び悩みは統計に出てこない
  • 増えた婚姻の4分の3は東京。地方では婚姻数の減少が続いているので、計画には全国ではなく自社の商圏の都道府県の数字を使う
  • お金を使う人は減っていない。フォトウエディング・前撮りの市場は推計1,025億円で、平均費用も上がっている。行き先が式場の外に分かれただけ
  • フォトや会食の相談を月3組断っていると、年間で約1,020万円。披露宴3件分ほどの売上を外に逃がしている計算になる
  • 組単価で勝ち切るか、入口を広げて組数を取るか。商圏の婚姻数の向きと、自社の単価の位置で決める