近隣の式場が1つ閉館すると、行き先を探す150組のうち45組が同じ価格帯の会場に回る。受け皿になれるかは、空き枠と来館の受け方で決まる
近くの式場が閉館すると聞くと、競合が1つ減ったと考えたくなります。ただ、閉館する会場にも契約済みの組と、これから契約するはずだった組がいます。その人たちが行き先を探すので、残った会場には新しい組が回ってきます。
回ってくる数は、前提を置けば計算できます。今日は、出典のある統計は使いません。商圏の数字はすべて僕が置いた仮のもので、本文に全部書きます。自分の商圏の数字に置き換えて読んでください。
結論を先に書くと、こうなります。年150組の会場が閉まると、同じ価格帯の会場が2つあるなら、それぞれに約45組が回る計算です。ただし、これは全部取れた場合の上限に近い数字で、受け皿になれるかどうかは、空き枠と来館の受け方でほぼ決まります。
仮の商圏を置く
次の前提で考えます。実在の商圏ではありません。
- 商圏の年間の披露宴・挙式は1,200組
- 会場は8つ。平均すると1会場あたり150組
- 閉館するのは、そのうち1つ(年150組)
- 閉館する会場の組のうち、同じ価格帯の会場を探す人が60%、価格帯が違う会場も含めて探す人が40%
- 行き先を探す組は、残り7会場のうち3会場を見学して、1つに決める
150組は商圏全体の12.5%です。8会場のうち1つが消えるので、数字としては大きな動きです。
閉館までの流れは、会場ごとに違います。すでに契約している組は、その会場で挙式するか、系列や提携先に移るか、キャンセルになるかのどれかです。この記事で数えるのは、閉館が決まったあとに「ここで式を挙げる予定だった」組、つまり新しく行き先を探す組です。契約済みの組の移転は、別の話として最後に触れます。
全員が均等に回るなら、1会場21組
いちばん単純な計算から始めます。150組が、残り7会場に均等に散らばるとします。
150組 ÷ 7会場 = 約21組
これが出発点です。年120組の会場なら、約18%の上乗せです。これだけでも小さくはありません。
ただ、均等に散らばるという前提は現実に合いません。式場は、価格帯・立地・会場の形(ホテル、専門式場、ゲストハウス)で、候補に入る相手が決まっているからです。10万円の違いなら迷う人が、500万円の会場と200万円の会場の間で迷うことは少ないです。
価格帯が近い会場に、偏って回る
次に、前提の「60%が同じ価格帯の会場から選ぶ」を使います。同じ価格帯の会場が何会場あるかで、1会場あたりの流入が変わります。
| 閉館会場と同じ価格帯の他会場 | その1会場に回る組数 | 価格帯が違う会場1つに回る組数 |
|---|---|---|
| 1会場 | 90組 | 10組 |
| 2会場 | 45組 | 12組 |
| 3会場 | 30組 | 15組 |
| 4会場 | 22.5組 | 20組 |
計算は単純です。同じ価格帯の会場には、150組の60%(90組)を会場の数で割って配ります。残りの40%(60組)は、価格帯が違う会場に均等に配ります。
表を見ると、同じ価格帯の会場が1つしかない場合、その会場には90組が回ります。均等割りの21組の4倍以上です。同じ価格帯の会場が4つあると、22.5組まで薄まって、均等割りとほとんど変わらなくなります。
閉館の影響は、商圏全体の平均では測れません。自社が閉館する会場と同じ価格帯の何番目にいるかで、受ける数が一桁変わります。
来館は成約の3倍に増える
流入の数え方で、気をつけたい点がもう1つあります。「行き先を探す組」は、1会場だけ見るわけではないことです。
前提どおり、1組が3会場を見学するとします。150組が3会場ずつ見学すると、延べの来館は450件です。7会場で割ると、1会場あたり約64件の来館が増えます。
一方、成約は1組につき1会場です。150組が決めるので、均等なら1会場約21組。来館64件に対して成約21組なので、増えた来館の成約率は約33%です。
ここは、現場の感覚とずれやすい部分です。閉館のあとに来館が急に増えて、プランナーが忙しくなっても、成約が同じ割合で増えるわけではありません。増えた来館の多くは、他の会場との比較に使われます。来館が増えたからといって、成約が3倍になる計算ではありません。
逆に言えば、来館数だけを見て「閉館の影響で好調だ」と判断すると、間違えます。来館の増加分と成約の増加分は、分けて数えます。具体的には、閉館の発表後に来館した組へ「前の候補にしていた会場はありましたか」と聞くアンケートを、来館時に1問足すだけで、閉館の影響で来た組を数えられます。
受け皿になれるかは、空き枠で決まる
ここまでは、回ってくる数の話でした。次は、受けられる数の話です。
自社が同じ価格帯の会場2つのうちの1つで、年120組、受けられる上限が200組だとします。上限は、人気日の枠が埋まる前提で、僕が置いた数字です。余力は80組です。
同じ価格帯の会場が2つなら、流入は45組なので、余力の80組の範囲に収まります。ところが、年160組をすでに受けている会場だと、上限200組までの余力は40組です。45組を全部受けるには、5組分足りません。
さらに、実際に足りなくなるのは年間の数字ではなく、人気日です。閉館する会場で式を挙げたかった人は、希望の日が土日の大安や吉日のような日に集中しやすいと考えられます。年間の余力が80組あっても、希望日の枠が埋まっていれば、その日には受けられません。
自社の空き枠を確認するときは、年間の組数ではなく、次の3点を見ておきます。
- 土日祝の枠のうち、半年後から1年半後の分で、埋まっていない日が何日あるか
- 人気の時間帯(午前の挙式、午後の挙式)のうち、片方が埋まっていないか
- 平日や、閑散期の枠を提案できる組が、何割ぐらいいそうか
3つ目は、同じ価格帯で日程の柔軟な組が受け皿になる、という見方です。希望日が埋まっていても、日取りを動かせる組なら受けられます。第3希望まで聞くことの意味が、閉館のあとにはいつもより大きくなります。
売上に直すと
流入がどれだけ売上になるか、仮の数字で置いてみます。
1組あたりの売上を400万円と仮定します。同じ価格帯で2会場のうち1つなら、流入45組を全部取った場合の売上は、
45組 × 400万円 = 1億8,000万円
です。全部取れる前提は強すぎるので、取れる割合を半分とすれば、約22組で9,000万円です。均等割りの21組だけを取れた場合は、8,400万円です。
目安として、10組取れるごとに4,000万円の売上です。閉館への対応は、広告費をかけて集客を増やすのと同じ種類の判断として、金額で考えられます。
ここで大事なのは、取れる割合が自社の動きで変わることです。受け皿として動く会場と、何もしない会場では、同じ流入でも成約が変わります。
閉館のあとに、会場側ができること
モデル計算の外にある話ですが、判断の材料として挙げておきます。どれも、僕が確認した事実ではなく、状況から考えた打ち手の候補です。
1. 閉館する会場の契約済みの組への対応
閉館が決まると、契約済みの組は式の場所を失います。この組に対して、閉館する会場が移転先を案内することは考えられます。受け皿になりたい会場は、日程と条件を整理して、閉館する側に伝えておく準備ができます。ただし、閉館する側の事情や契約の扱いは会場ごとに違うので、誰がどう案内するかは、事前に決まっていません。
2. 来館の受け方
閉館が発表されたあと、問い合わせの内容が変わる可能性があります。「他の会場も見てから決めたい」という組が増えるはずなので、初回の来館で比較される前提の準備が必要です。見積もりを出すタイミング、日程の仮押さえの扱い、比較される項目に対する説明を、準備しておきます。
3. 閉館する会場の人材
閉館する会場には、プランナーやスタッフがいます。その人たちが次の職場を探すことになります。人材の採用に関心のある会場にとっては、機会になります。同時に、人が動くと、顧客との関係も一緒に動くことがあるので、扱いは慎重にします。
契約済みの組の移転は、別に数える
冒頭で、契約済みの組は数えないと書きました。ここで少しだけ触れておきます。
閉館する会場に契約済みの組が年間の挙式の中にいるなら、その組の移転先探しは、新規の流入とは別の山になります。契約済みの組は、すでに金額や日程の希望が決まっているぶん、移転先に求める条件が具体的です。同じ日、同じ人数、近い金額で受けられる会場にしか動けません。
そのため、新規の流入より、受けられる会場が少なくなります。受け皿として名乗りを上げるなら、日程と人数と金額の幅を先に整理して、条件が合うかどうかをすぐ答えられる状態にしておく必要があります。数としては小さくても、条件の合う会場が少ないぶん、取れる確率は新規より高いと考えられます。
閉館が起きていない商圏でも使える
この計算は、閉館のニュースが出てから使うものではありません。自社の商圏で、閉館が起きたら何組が回ってくるかを、先に計算しておけます。
必要なのは次の4つです。
- 商圏の会場数と、それぞれのおおよその年間組数
- 自社と同じ価格帯の会場がいくつあるか
- 自社の年間の上限と、人気日の枠の埋まり具合
- 1組あたりの売上
商圏の他会場の組数は、公開されていません。ただ、会場の口コミや公式サイトの挙式実績の記載から、桁は推測できます。数字は粗くても、表の見方(同じ価格帯の会場が1つだと4倍以上、4つだと均等割りと変わらない)は変わりません。
逆の方向にも使えます。自社が閉館する側になる場合を考えると、顧客が行き先を探すときに、同じ価格帯のどの会場へ行くかが分かります。自社の競合は、地図上の近さではなく、価格帯の近さで決まっています。
まとめ
- 近隣の式場が閉館すると、行き先を探す組が出る。仮の商圏(8会場、年1,200組、閉館会場は年150組)では、均等割りなら1会場あたり約21組
- 閉館会場と同じ価格帯の会場は偏って受ける。同じ価格帯が1会場なら90組、2会場なら45組、4会場なら22.5組
- 行き先を探す組が3会場を見学する前提だと、来館は成約の約3倍に増える。来館の増加と成約の増加は分けて数える
- 受け皿になれるかは、年間の余力ではなく、人気日の空き枠と、日取りを動かせる組の数で決まる
- 取れる数は自社の動きで変わる。10組で4,000万円(1組400万円の仮定)の差になる
- 閉館が起きていない商圏でも、価格帯の近い会場の数を数えておけば、起きたときの影響を先に見積もれる
