業界動向

商圏の婚姻が年3%減ると、年120組の式場は5年で17組減る。件数を保つには、シェアを4.6%から5.4%に上げ続ける必要がある

年120組の披露宴をしている式場があるとします。商圏の婚姻が毎年3%ずつ減り、シェアが変わらなければ、5年後の件数は103組です。17組減ります。誰かが何かを間違えたわけではなく、市場が縮んだぶんだけ、そのまま減ります。

件数を120組のまま保つには、商圏シェアを4.6%から5.4%まで上げ続ける必要があります。年に直すと、毎年およそ3%ずつ、勝つ割合を増やす計算です。

今日は、この「何もしなければ減る」と「保つだけで上げ続けなければならない」の2つを、仮の商圏で数字にします。使うのは全国の公表値2つだけで、残りは僕が置いた前提です。前提は本文に全部書くので、自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

使う数字と置いた前提

公表値は次の2つです。

  • 2025年の婚姻件数は48万9,119組(厚生労働省の人口動態統計、概数)。2年連続で前年を上回りましたが、増えた分は4,027組で、率にすると1%弱です
  • 披露宴・ウエディングパーティーをした人の割合は43.1%(リクルート ブライダル総研の結婚マーケット調査2025)

ここから先は、僕が置いた仮の数字です。実在の商圏ではありません。

  • 商圏の婚姻件数は年6,000組
  • 披露宴をする割合は、全国と同じ43.1%
  • 披露宴をする組は、6,000 × 43.1% = 2,586組
  • 対象の式場は、そのうち年120組を受けている
  • 商圏シェアは、120 ÷ 2,586 = 4.64%

商圏の婚姻件数を6,000組と置いたのは、県庁所在地クラスの市とその周辺を思い浮かべた、ざっくりした規模です。数字そのものに意味はなく、割り算の形が見えれば足ります。

ここでいうシェアは、売上のシェアではありません。披露宴をする組のうち、何組がこの式場を選んだか、という組数のシェアです。

市場が縮むとき、何もしない式場に起きること

婚姻の減り方を、年1%、2%、3%、5%に分けて、5年後を計算します。シェアは4.64%のまま動かさないとします。

婚姻の減り方(年) 5年後の披露宴をする組 何もしない式場の件数
1% 2,459組 114組
2% 2,338組 108組
3% 2,221組 103組
5% 2,001組 93組

年1%の減り方なら、5年で6組です。ここまでは、年によるブレに隠れてしまう大きさです。年3%なら17組、年5%なら27組になります。

ここで見てほしいのは、減り方が2倍になると、5年後の差が2倍以上になることです。1%で6組、2%で12組、3%で17組、5%で27組。複利で効くので、後ろの年ほど減る組数が大きくなります。

もう1つ、気をつけたい点があります。年に3組減るくらいでは、現場は危機を感じません。営業の努力が足りなかったのか、たまたま悪い年だったのか、判断がつかない大きさだからです。しかし年3%の縮みが続くと、5年で14%近い件数が消えます。1組あたりの粗利を仮に100万円とすれば、年に約1,700万円の粗利が、誰も決めないまま消える計算です。

件数を保つのに必要なシェア

同じ表を、今度は「件数を120組に保つために必要なシェア」で見ます。

婚姻の減り方(年) 3年後に必要なシェア 5年後に必要なシェア
1% 4.78% 4.88%
2% 4.93% 5.13%
3% 5.08% 5.40%
5% 5.41% 6.00%

年3%の縮みなら、3年後に5.08%、5年後に5.40%が必要です。シェアが4.64%から5.40%に上がるのは、0.76ポイントの差に見えます。でも言い換えると、5年間で商圏の中での勝ちを、16%増やすということです。

1年あたりでは、毎年3.1%ずつ勝ちを増やし続ける形になります。10組の商談があって、これまで勝っていたのが4.64組なら、5.4組勝たなければなりません。

年5%の縮みになると、5年後に必要なシェアは6.0%です。4.64%から見て、約1.3倍です。

つまり、市場が縮んでいる会場にとって、「去年と同じ件数」を目標にすることは、現状維持ではありません。毎年、前の年より少しずつ強くなる必要がある目標です。

縮み方は、全国の数字では決まらない

では、自分の商圏は年に何%縮んでいるのか。ここは全国の数字に頼れません。

2025年の全国の婚姻件数は前年より増えましたが、僕が別の記事で整理したとおり、日本総研のレポートでは、増加分の4分の3が東京都だとされています。全国では増えていても、地域によっては減り続けています。

自分の商圏の縮み方を知るには、次の3つを並べます。

  1. 都道府県の婚姻件数の、直近5年の推移。人口動態統計で毎年公表されています
  2. 披露宴をする割合。全国は43.1%ですが、地域や年代で変わります。自社のお客さまの年代に近い数字を探してください
  3. 自社の年間の施行件数

3つが並ぶと、自社のシェアが「県の婚姻件数に対する割合」として出ます。県全体で見ると4.64%の計算が、1%を切ることもあります。ここで大事なのは絶対値ではなく、過去5年で、このシェアが上がっているのか下がっているのかです。

もしシェアが横ばいなのに件数が減っているなら、負けているのではなく、市場が縮んでいます。シェアが下がっているなら、市場の縮みに加えて、選ばれる割合も落ちています。同じ「件数が減った」でも、打つ手がまったく違います。

披露宴をする割合が下がると、さらに効く

ここまでは、披露宴をする割合を43.1%で固定してきました。この割合も動きます。

試しに、婚姻件数は6,000組のまま、披露宴をする割合だけが43.1%から40%に下がったとします。披露宴をする組は2,586組から2,400組に減ります。120組を維持するには、シェアは5.0%必要です。婚姻件数が1組も減っていないのに、シェアを0.36ポイント上げなければならなくなります。

結婚式を挙げないと答える人の割合は、調査によって14.7%から26.3%までずれることを、以前の記事で書きました。どの調査の数字が正しいかとは別に、この割合が動く可能性は、計画の前提に入れておく価値があります。

つまり、式場の件数は、次の3つの掛け算で決まります。

  • 商圏の婚姻件数
  • 披露宴をする割合
  • 商圏シェア

どれか1つが下がると、残りの2つで取り返すことになります。婚姻の減り方は式場が変えられません。披露宴をする割合も、1つの式場では動かしにくい。式場の側で動かせるのは、結局、3つ目のシェアだけです。

シェアを上げる手段の置き場所

シェアを上げる手段は、大きく3つの段に分けられます。どれも、僕が経営指標に直接つなげて書けるものだけを挙げます。

1段目は、候補に入る数を増やすことです。商圏の披露宴をする組が、検討の初期に見る式場の数は限られています。その数に入らなければ、商談は始まりません。比較サイト、検索、SNS、口コミ。入口のどこで落ちているかを見るのが先で、広告費を足すのは後です。

2段目は、来館した人の成約率を上げることです。来館が480組で成約率25%なら、成約は120組です。成約率が1ポイント上がると、年に4.8組増えます。年3%の縮みで毎年約3.6組ずつ減る分は、成約率を約0.75ポイント上げれば相殺できる計算です。

3段目は、取りこぼしを減らすことです。見学のあとに持ち帰って、他の式場で決める人が一定数います。ここは、追客のやり方で変わります。

注意したいのは、3つとも同時に手をつけると、どれが効いたのか分からなくなることです。件数を保つために、毎年シェアを3%ずつ上げ続けると決めるなら、どの段で上げるのかを、年のはじめに1つだけ選ぶほうが、振り返りができます。

シェアには上限がある

毎年3%ずつ上げ続ける、という話には、限界もあります。シェアは100%を超えませんが、その前に、商圏の中で自社が届く層の限界が来ます。価格帯も、立地も、収容人数も、選ぶ人の好みに合う範囲が決まっているからです。

仮の商圏で5年後に5.4%、10年後には約6.3%が必要になります(年3%の縮みが続いた場合の計算です)。どこかで「これ以上は取れない」という線に当たります。その線がどのあたりかは、過去に失注した理由を見ると推測できます。価格で外れたのか、日程で外れたのか、会場の雰囲気で外れたのか。外れ方に偏りがあるなら、その偏りの裏側に、まだ取れる層が残っています。

偏りがなく、まんべんなく選ばれているなら、シェアを上げる余地は小さいかもしれません。その場合は、件数を保つ目標を下ろして、1組あたりの粗利を上げる側に計画を寄せる判断も出てきます。

計画に入れる数字の置き方

最後に、来期の計画に入れる数字の置き方を整理します。

まず、目標件数と一緒に、「前提とする商圏の縮み方」を書いておきます。年3%縮むと置いたなら、何もしなくても来期は件数が約3%減る、というところが出発点です。そこから、シェアを上げて埋める分を、数字で書きます。

次に、目標の言い方を「去年と同じ件数」から「去年より何ポイントシェアを上げるか」に変えます。件数は、市場の縮みとシェアの掛け算の結果です。結果の数字だけを追うと、縮みの影響と営業の成果が混ざって、評価がぶれます。

最後に、商圏の縮みが想定より早かったときに、どこで見直すのかを決めておきます。たとえば、県の婚姻件数が2年続けて前年比5%以上減ったら、件数目標を見直す。そう決めておくと、市場のせいにも自社のせいにもせずに、数字で話ができます。

まとめ

  • 商圏の婚姻が年3%減ると、シェアが同じなら、年120組の式場は5年で103組に減る(仮の商圏で計算)
  • 件数を120組に保つには、シェアを4.64%から5.40%に上げ続ける必要がある。年にして約3%ずつ、勝つ割合を増やす計算になる
  • 披露宴をする割合が43.1%から40%に下がるだけでも、必要なシェアは5.0%になる。婚姻件数が減っていなくても同じことが起きる
  • 件数は「婚姻件数 × 披露宴をする割合 × シェア」で決まる。式場の側で動かせるのは、シェアだけ
  • 自分の商圏の縮み方は、県の婚姻件数の5年推移と自社の施行件数を並べると分かる。シェアが上がっているか下がっているかで、打つ手が変わる
  • 計画には、前提とする縮み方を書き、目標を「件数」ではなく「シェアを何ポイント上げるか」で置く