来館・成約

式場の覆面見学は、点数でなく迷った1点を聞いて使う

式場の接客がどう見えているかは、中にいる人には分かりません。毎日同じ説明を同じ順番でしていると、二人がどこで迷っているかも、どこで気持ちが冷めるかも、見えなくなります。

そこで考えられるのが、知人に二人のふりをして見学に来てもらう「覆面見学」です。接客を外から見てもらう方法として昔からあります。ただ、やり方を間違えると、採点表の点数だけが残って何も変わりません。

僕は、覆面見学は点数をつける道具にしないほうがいいと考えています。使うなら、見学の最後に「ここで決めきれなかった点」を1つだけ聞く道具にします。この記事では、その理由と、頼む相手、空き枠の使い方、見てもらう場面、結果の返し方を整理します。数字の調査をもとにした話ではなく、段取りと判断の条件の話です。損益は「仮に〜とすると」の計算で示します。

点数をつけると、なぜ使えなくなるのか

覆面見学というと、採点表を渡して「挨拶」「説明の分かりやすさ」「清潔感」に5段階で丸をつけてもらう形を思い浮かべる人が多いと思います。僕はこの形があまりうまくいかないと考えています。理由は3つです。

1つめは、点数が高く出やすいことです。知人は、式場の人に失礼になりたくありません。感じが悪かったわけでもないのに、低い点はつけにくい。結果は4と5ばかりになり、直す点が見えません。

2つめは、点数が人の評価に見えることです。プランナー個人の接客に点がつくと、点の低い人は自分が責められたと受け取ります。次の回から、見学の場で硬くなる。外から見てもらった意味が、そこで消えます。

3つめは、成約に関係するかどうかが分からないことです。「説明が丁寧」は大事ですが、丁寧な説明を受けた二人が契約したくなるとは限りません。二人が決めるときに効くのは、説明の丁寧さより「自分たちの迷いに答えてもらえたか」です。採点表はこの点を測れません。

だから覆面見学では、接客の質を測ろうとせず、契約に至らなかったとしたらどこで止まったかを聞きます。測るのではなく、止まった場所を見つけます。

頼む相手は、式場探しをしていない未婚の知人

誰に頼むかで、結果の質はほぼ決まります。条件は3つです。

  • 式場の関係者ではないこと(取引先、スタッフの家族、提携店の人は避けます)
  • 近く結婚する予定がないこと(本物の二人の枠を取ってしまうと、本物の二人を断ることになりかねません)
  • 結婚式の相場や用語を知りすぎていないこと

3つめが少し意外かもしれません。挙式を終えた友人や、ブライダル業界にいたことのある人は、頼みやすい一方で、基準が高すぎたり、知識で聞いてしまったりします。見学に来る二人の多くは、相場も用語も分からないまま来ます。その二人の感覚に近い人のほうが、止まった場所を正しく拾えます。

付き合っている相手と二人で来てもらえるなら、いちばんいい形です。二人の会話の中で「どこで黙ったか」「どこで話題を変えたか」が出てきます。一人で来てもらう場合は、「相手と来ている」という設定を事前に決めてもらいます。決めていないと、質問されたときに答えが揺れて、プランナーが不自然に感じます。

謝礼は、時間に見合う額を渡します。ここでは額を決めませんが、「感想を良くしてもらうための謝礼」にならないよう、結果が良くても悪くても同じ額にします。

事前に決める3つのこと

頼む前に、式場側で次の3つを決めておきます。

1. どの枠を使うか。 本物の二人が入る枠を使わず、空いている枠に入れます。閑散月の平日や、予約の入っていない時間帯です。繁忙の土日に入れると、本物の二人を1組断ることになります。

仮に、見学1組あたりの成約率が30%、成約1組の粗利が100万円だとすると、見学枠1つの期待粗利は30万円です(この2つの数字は計算のための仮置きです)。覆面見学を3回、繁忙の枠で行えば、本来の見込みは90万円を手放すことになります。空き枠なら、この費用はかかりません。覆面見学の費用の中でいちばん大きいのは謝礼ではなく、この枠です。

2. 現場のスタッフに知らせるか。 知らせない場合の利点は、普段の接客がそのまま見えることです。ただ、後から「だまされた」と受け取るスタッフが出る可能性があります。僕は、「年に数回、外から見てもらう日がある」と全体には伝えておき、いつ誰が来るかは伏せる形をすすめます。抜き打ちの驚きは残りつつ、後で揉めません。

3. 結果を誰に返すか。 最初に決めておかないと、結果が店長の手元で止まります。返す相手は、見学を担当した本人と、見学の運用を決められる人(店長や支配人)の二人です。プランナー全員に結果を回すと、個人が特定されて、さきほどの評価の話に戻ります。

見てもらうのは3つの場面だけ

見てもらう場面は、多くしないほうがいいです。項目が20個あると、知人は見学そのものより採点表のほうに気を取られます。見るのは3場面だけにします。

場面1:来館する前の連絡

予約を取る段階から、覆面見学は始まります。見るのは次の点です。

  • 予約の連絡から返信までの時間
  • 返信の文面で、来館当日の流れや持ち物が分かったか
  • 当日の前に、確認の連絡が来たか

二人が式場を選ぶのは、見学のときだけではありません。予約の返信が遅い、何を準備すればいいか分からない、といった小さな引っかかりが、当日の印象に先に乗っています。ここは数字で記録してもらうとよい部分です。返信までに何時間かかったかは、知人の感想ではなく事実として残せます。

場面2:見学の途中で、自分の話ができたか

見学中、二人は式場の説明を聞きますが、それと同じくらい、自分たちの希望を聞いてもらいたいと思っています。知人には、見学の中で自分たちの希望を聞かれたのは何回で、それは説明の前だったか後だったかを覚えておいてもらいます。

説明を全部終えてから「ご希望はありますか」と聞かれても、二人はもう聞いた情報で頭がいっぱいです。希望を聞く位置が後ろにあるほど、二人は「この式場は自分たちの話を聞く気がある」と感じにくくなります。逆に、早い段階で聞かれ、その答えに合わせて説明が変わったと感じられれば、同じ内容の説明でも印象が違います。

場面3:帰り際

いちばん大事なのは、ここです。見学が終わって、二人が席を立つまでの数分です。見てもらうのは次の点です。

  • 帰り際に、次に何をすればいいかを言われたか
  • 言われたのが「ご検討ください」だけだったか、具体的な次の一歩だったか
  • 見積もりや資料を、何と一緒に渡されたか

二人は、帰り際の言葉をそのまま持ち帰ります。そこで次の一歩が具体的に示されていれば動きやすい。「ご検討ください」だけなら、二人は検討する理由も期限もないまま帰ります。

聞くのは「止まった場所」の1つだけ

見学のあと、知人には短いメモを書いてもらいます。ここで点数は聞きません。聞くのは次の質問です。

もし今日、契約するかどうかを二人で決める場面になったら、いちばん決めきれない点は何でしたか。それは、見学のどの場面で生まれましたか。

質問は1つです。「良かった点」「改善点」と2つに分けると、知人は良かった点を先に書いて、改善点は遠慮して短くなります。「決めきれない点」は、批判ではなく自分の気持ちの話なので書きやすい。そして、場面を添えてもらうことで、直す場所が分かります。

返ってくる答えは、たいていいくつかの型に分かれます。

  • 総額が見えなかった:見積もりの出し方、または出すタイミングの話です
  • 他と比べる材料がなかった:違いを言葉にして伝えられていない話です
  • 相手に相談する材料がなかった:持ち帰る紙の話です
  • 急かされた気がした:締めの言い方の話です
  • 特に引っかかりはない:この場合は、次の質問を足します。「それでも他の式場も見たいと思うなら、何を確かめたいからですか」

最後の問いは、引っかかりがなかったと答えた人にも使えます。「他も見たい」は、二人の自然な行動だからです。その理由が分かると、自社が最初に出せる材料が見えます。

結果の返し方で、次の見学が変わる

結果は、点数の表ではなく、場面ごとの一文で返します。たとえば次のようにします。

  • 場面1:予約の返信は翌日の昼でした。当日の持ち物は書かれていませんでした
  • 場面2:希望を聞かれたのは説明のあと1回だけでした
  • 場面3:帰り際は「ご検討ください」で終わりました。決めきれない点は「総額がいくらになるか分からなかったこと」でした

評価の言葉は入れません。何が起きたかだけを書きます。事実だけなら、受け取る側も防御に入りにくい。そして、直す点は、1回の結果につき1つだけ選びます。3つも4つも直すように言うと、現場は何も変えられません。

直す点を決めたら、1か月は同じ点だけを続けて見ます。1か月後に、同じ点で別の知人に確かめてもらいます。直ったかどうかは、点数でなく「前回と同じ場面で、同じ止まり方をしたか」で判断します。

覆面見学が向かない場面

最後に、この方法を使わないほうがいい場面も書いておきます。

  • 見学の枠が常にいっぱいで、空き枠がない式場。覆面見学のために本物の二人を断るのは本末転倒です
  • 接客の担当者が1人しかいない式場。誰の接客か一目で分かるので、結果が個人の評価になります。この場合は、見学の録音を本人が聞き返す形のほうが向いています
  • 直す権限を持つ人がいない状態。結果を聞いても変えられない人に返しても、不満だけが残ります

また、覆面見学は年に数回で十分です。回数を増やしても、見えてくる止まり方は似ています。大きく変えたい点があるときだけ、前後で1回ずつ行うくらいがちょうどいいと思います。

まとめ

  • 覆面見学は点数をつけるものではなく、契約に至らないとしたら止まる場所を見つけるものです。点数は高く出やすく、人の評価に見えて、成約との関係も分かりません
  • 頼む相手は、式場の関係者でなく、近く結婚する予定がなく、相場や用語を知りすぎていない未婚の知人です
  • 本物の二人の枠は使わず、空き枠に入れます。仮に成約率30%・粗利100万円なら、繁忙の枠1つで期待粗利30万円を手放します(仮置きの計算です)
  • 現場には「外から見てもらう日がある」と伝え、いつかは伏せます。結果を返す相手は、担当者本人と運用を決められる人だけです
  • 見てもらう場面は、来館前の連絡、見学の途中で希望を聞かれた位置、帰り際の3つだけです
  • 聞くのは「今日決めるとしたら、いちばん決めきれない点は何か」の1つで、場面を添えてもらいます
  • 結果は評価の言葉を入れず、場面ごとの事実の一文で返します。直すのは1回につき1点だけにします