プロフィールムービーの制作を有料で代行すると、仮の式場では年42万円。ただ、効くのは儲けではなく、持ち込みデータの再生トラブル年23万円を減らすほうだ
披露宴で流すプロフィールムービーを、式場が有料で作る。そんなメニューを置くかどうかは、会場によってかなり判断が割れる部分だと感じています。二人が自分で作って持ち込むのが前提の会場もあれば、制作を受けるのが当たり前の会場もあります。
結論から書きます。年120組の仮の式場で計算すると、1本3万円で代行を受けた場合の粗利は年42万円です。式場の売上全体から見ると小さい数字で、これを目当てに始めるのは割に合いません。一方で、二人が持ち込んだデータが当日うまく再生できないトラブルは、仮の置き方で年23万円ほどの損になります。代行を受けるかどうかは、儲かるかではなく、この持ち込みトラブルをどこまで減らせるかで決めるのが筋だと僕は考えています。
この記事の数字は、すべて僕が置いた仮のものです。調査や統計は使っていません。制作の所要時間も、希望する組の割合も、トラブルの発生率も、自分の会場の実績に置き換えて読んでください。
仮の式場を置く。年120組、希望は4組に1組
計算のために、1つの会場を置きます。
- 挙式は年120組
- プロフィールムービーを式場に作ってほしいと考える二人は、4組に1組の30組(希望率25%)
- 式場が作らない場合、ムービーは全員が自分で作ってデータで持ち込む。計算を単純にするため、120組全員がムービーを流すと置く
- 制作を受ける場合、式場側の作業は1本あたり8時間。素材の受け取り、構成の確認、修正2回を含む想定です
- スタッフの人件費は、現場の時給換算で1時間2,000円とします
1本8時間なら、作業の原価は1万6,000円です。ここに外注を使う場合は、また別の数字が入ります。順に見ていきます。
有料で受ける。3万円なら粗利は1本1.4万円
まず、内製で受ける場合です。価格を3万円にすると、1本あたりの粗利は3万円から原価1.6万円を引いた1.4万円になります。30本で年42万円です。
希望率が変わると、年の粗利はこう動きます。
- 希望率15%(18本): 年25万円
- 希望率25%(30本): 年42万円
- 希望率40%(48本): 年67万円
価格を5万円に上げると、1本の粗利は3.4万円です。希望率25%で年102万円、40%なら年163万円になります。ただし、5万円まで上げても希望する二人が同じ割合で残るかどうかは、計算に入っていません。ここは僕には分からない部分で、価格を上げるほど希望率は下がるはずです。
外注に出す場合は、粗利が薄くなります。外注費が1本2万円なら、3万円で受けて残るのは1万円。そこに窓口の作業2時間(4,000円)がかかるので、1本の粗利は6,000円、年18万円です。外注費が2.5万円だと、1本の粗利は1,000円で、年3万円まで落ちます。3万円で売るなら、外注に回した時点で、ほぼ儲けは残りません。
つまり、有料で受ける場合の損益は、内製か外注か、価格をいくらにするかでほとんど決まります。式場の成約や客単価に効く規模ではなく、年に数十万円の話です。
無料の特典にする。持ち出しは年48万円
次に、契約特典として無料で受ける場合です。30本を原価1.6万円で作ると、年48万円の持ち出しになります。
この持ち出しを取り返すには、特典を理由に契約した二人が何組要るか。仮に1組の粗利を140万円と置くと、48万円は0.34組分です。年に0.34組、3年に1組の成約が特典のおかげで増えれば元は取れる計算になります。
数字の上では軽いのですが、ここで困るのは「特典のおかげで増えた成約」を数えられないことです。ムービーの無料制作を理由に式場を決めた二人は、おそらくほとんどいないと思います。実際にはもう決めていた二人に、特典として渡している割合のほうが大きいはずです。その場合、0.34組の上積みは見えないままで、48万円だけが毎年出ていきます。
僕は、特典として付けるなら「二人の準備の負担を減らす」というメッセージで付けて、成約への効果は期待しない、と割り切るのが正直だと考えています。期待しない前提でも年48万円なら、続けられるかどうかを考えれば足ります。
持ち込みを許すとき、見えない手間がある
ここまでは「作るかどうか」の損益でしたが、本当に見るべきなのは持ち込みの側です。
二人が自分で作ったムービーを、データで持ち込む。式場として受けるときに、見えない手間が3つあります。
1つ目は、再生の事前確認です。式場の機材で再生できるか、音が出るか、画面比率がずれていないか。1組あたり30分かかるとして、120組の全員に行うと、年60時間、12万円です。
2つ目は、再生できなかったときの対応です。形式が合わない、容量が大きすぎる、音声が途切れる。120組のうち、3%に問題が出るとすれば約3.6件。5%なら6件、10%なら12件になります。
3つ目は、その対応にかかる人手とお詫びです。当日に問題が見つかった場合、スタッフ2人が2時間動くとして、人件費は8,000円。そこに、二人へのお詫びとして3万円相当の何かを足すと置くと、1件あたり3.8万円です。
これを年に直します。
- 発生率3%(3.6件): 年14万円
- 発生率5%(6件): 年23万円
- 発生率10%(12件): 年46万円
事前確認の12万円を足すと、持ち込みを受けるコストは年26万円から58万円になります。代行で稼げる年42万円と、同じくらいの規模です。
代行は、持ち込みを減らすための手段になる
ここで考え方を逆にします。代行を「ムービーで稼ぐメニュー」と見るのをやめて、「持ち込みの不具合を減らす手段」と見るのです。
式場が自分で作ったムービーなら、形式は自社の機材に合わせて作れます。事前確認も要りません。希望する30組が代行に移れば、持ち込みの対象は120組から90組に減ります。事前確認は9万円に、トラブルは発生率5%なら4.5件、17万円に減ります。持ち込みのコストは年26万円ほどです。
整理すると、仮の式場では次のように動きます。
- 代行なし(全員持ち込み): 持ち込みのコストが年35万円(確認12万円+トラブル23万円)
- 3万円で代行を受ける: 粗利42万円が入り、持ち込みのコストは年26万円に下がる。下がる9万円を足して、差し引きで年51万円ほどよくなる
- 無料の特典にする: 持ち出し48万円が出て、持ち込みのコストは9万円下がる。差し引きで年39万円ほど悪くなる
無料にすると、持ち込みのコストが下がる分を入れても、年39万円の持ち出しが残ります。有料なら、プラスになります。ここまで見て、僕は有料で受けるのが筋だと思っています。無料で付けるなら、年40万円弱の持ち出しを、二人の準備の負担を減らす費用として納得できるかどうかが、判断の線です。
納期の山が来る。担当者の空きを数える
代行を始めるときに、損益より先に壊れるのが納期です。
挙式は6月や10月などの特定の月に偏ります。仮に年の14%、約17組が6月に入るとして、希望率25%なら4.2本のムービーが6月にまとまります。1本8時間なら33.6時間です。ムービーの納期は、挙式の2週間前に置くのが普通で、制作は挙式の1か月前から2週間前に集中します。つまり、6月の挙式に向けた作業が、5月の前半から中旬に押し寄せるわけです。
担当のプランナーが1人で受けると、月に34時間は、1日の勤務時間が8時間として4日ちょっとです。見学の接客や打合せが詰まる繁忙期に、4日分の制作が乗る。ここで制作が遅れると、二人は確認の期間が足りなくなり、結局は不満になります。
守る方法は、受ける本数に上限を置くことです。たとえば月4本まで。上限を超えた月は、持ち込みを案内する。この上限を最初に決めておけば、納期の山で崩れることはありません。
もう1つの方法は、素材の受け取りの締切を決めておくことです。挙式の2か月前までに写真と文章を受け取る、と決める。二人の側が遅れた場合は、持ち込みに切り替える。締切を契約書や案内に書いておけば、遅れの責任が曖昧になりません。
判断の分かれ目を並べる
ここまでの計算から、代行を受けるかどうかの線を並べます。
内製で受けられる人手があるか。1本8時間を、月4本分、つまり32時間を、繁忙期でも出せるか。出せないなら、外注に頼るしかなく、外注費が2万円を超えると粗利はほぼ残りません。
持ち込みのトラブルが実際にどれくらい起きているか。過去1年の再生トラブルを数えてください。年に4件以上あるなら、代行を置く意味が出てきます。ゼロに近ければ、持ち込みのままで問題ありません。
価格をいくらにするか。3万円なら粗利は1.4万円。5万円なら3.4万円。ただし希望率の下がり方は、僕には分かりません。最初は3万円で始めて、希望が集まりすぎるなら上げる、という順番が安全だと思います。
無料の特典にするか。年48万円の持ち出しを、成約の上積みではなく、準備の負担を減らす費用として許せるか。許せないなら有料にします。
持ち込みを受けるときの最低限のルール
代行を置かない会場でも、持ち込みの事前ルールは置いたほうが損が減ります。
- 受け取りの形式を1つか2つに絞る(たとえばMP4のH.264)
- 容量の上限を案内する
- 挙式の1か月前までにデータを受け取り、式場の機材で再生して確認する
- 確認で問題があれば、その場で二人に連絡して直す期間を残す
これだけで、当日に問題が見つかる割合は下がるはずです。事前確認の手間は、全組で年12万円。トラブルの年14万円から46万円と比べて、同じかそれより小さな費用です。
まとめ
- 1本3万円でプロフィールムービーの制作を受けると、仮の式場では粗利が年42万円。希望率が15%なら25万円、40%なら67万円
- 外注に出すと、外注費が2万円で粗利は1本6,000円、2.5万円なら1,000円まで落ちる。外注前提で3万円は割に合わない
- 無料の特典にすると、年48万円の持ち出し。取り返す成約は0.34組だが、特典のおかげで増えた成約は数えにくい
- 持ち込みの再生トラブルは、発生率3%で年14万円、5%で年23万円、10%で年46万円の損。事前確認の手間は別に年12万円
- 代行を「持ち込みを減らす手段」として見ると、有料なら年51万円ほどよくなり、無料なら年39万円ほど悪くなる
- 先に壊れるのは納期。月の受付本数に上限を置き、素材の締切を挙式の2か月前に決めておく
- 代行を置かない会場も、形式と容量を決めて、挙式の1か月前に再生を確認するだけで、トラブルの損は減る
