結婚式の総額は326.1万円で過去最高。ただ1人あたりに直すと5.62万円から5.40万円に下がっていて、押し上げたのは単価より人数だ
結婚式の費用が過去最高を更新した、というニュースが出ると、「単価が上がっている」「二人はお金をかけるようになった」と読まれやすいです。式場の側でも、「うちも単価を上げられるはずだ」と考える材料にされます。
マイナビウエディングの「結婚・結婚式の実態調査2026」では、結婚式の総額は平均326.1万円でした。前年より10.2万円高く、調査開始以来の最高額です。ここまでは見出しのとおりです。
ところが同じ調査の招待人数を見ると、前年の56.2人から60.4人へ増えています。総額を人数で割ると、1人あたりは前年の5.62万円から5.40万円に下がっています。過去最高の総額は、単価の上昇ではなく、人数の増加でほぼ説明がつきます。今回は、この読み違えが式場の数字の見方にどう響くかを整理します。
総額と人数を並べると、1人あたりは4%下がっている
まず、調査の数字をそのまま並べます。
- 調査:マイナビウエディング「結婚・結婚式の実態調査2026」
- 対象:2025年7月〜2026年6月に結婚式を実施した全国の20〜49歳の男女、インターネット調査、1,000名
- 結婚式の総額:平均326.1万円(前年比+10.2万円、過去最高)
- 披露宴の招待人数:平均60.4人(前年は56.2人)
前年の総額は、326.1万円から10.2万円を引いた315.9万円です。これを人数で割ります。
| 前年 | 今回 | 変化 | |
|---|---|---|---|
| 総額 | 315.9万円 | 326.1万円 | +3.2% |
| 招待人数 | 56.2人 | 60.4人 | +7.5% |
| 1人あたりの総額 | 5.62万円 | 5.40万円 | -3.9% |
総額は3.2%増えたのに、人数は7.5%増えています。人数のほうが伸びが大きいので、1人あたりは3.9%下がります。
もう1つ、別の置き方をしてみます。もし1人あたりの総額が前年のまま5.62万円で動かなかったら、人数が4.2人増えるだけで総額は23.6万円増えるはずです。実際の増加は10.2万円なので、差の13.4万円は「1人あたりが薄まった分」と読めます。人数が増えた分より、総額は伸びていません。
見出しの「過去最高」は、嘘ではありません。ただ、「二人が1人あたりの単価を上げた」とは読めない数字です。ここを取り違えると、式場の打ち手が変わってきます。
人数が増えると、総額は上がるが1人あたりは下がる理由
結婚式の費用には、人数に比例して増える部分と、人数が増えても変わらない部分があります。
- 人数に連動する:料理、飲み物、引出物、席札やメニュー、ゲストの送迎や宿泊の手配など
- 人数にあまり連動しない:会場使用料、挙式の装花、衣装、写真・映像、司会、ウエディングケーキなど
固定に近い部分が総額の中にあるので、人数が増えると、その固定部分が人数分で薄まります。1人あたりの総額は下がり、総額そのものは上がります。今回の数字は、この動きと矛盾しません。
試しに、前年と今回の2点を使って「総額 = 固定の部分 + 1人あたりの変動分 × 人数」の直線を引いてみます。
- 変動分:10.2万円 ÷ 4.2人 = 約2.43万円/人
- 固定の部分:315.9万円 − 2.43万円 × 56.2人 = 約179万円
この直線なら、人数が50人なら総額は約301万円(1人あたり6.02万円)、60人なら約325万円(5.42万円)、70人なら約349万円(4.99万円)になります。
これは調査の2つの平均値から引いただけの線です。前年と今年では回答者が違い、地域も、式のスタイルも、時期もそろっていません。「固定が179万円」と言い切れる数字ではなく、人数が増えたときの総額の動き方を見るための置き方です。ただ、この線の傾きの2.43万円/人は、同じ調査の「料理の平均費用18,291円」や、引出物などの人数連動の費用と並べて、桁が違うわけではありません。人数が増えた分の費用は、料理や引出物の積み上がりで説明できる大きさです。
料理と引出物にこだわる人は増えている
では、二人は単価をまったく上げていないのでしょうか。そうとも言えません。同じ調査には、こだわった項目の割合が載っています。
- 料理にこだわった:46.7%(前年比+3.1ポイント)
- 引出物・引菓子にこだわった:23.8%(前年比+3.3ポイント)
- 料理の平均費用:18,291円(前年より上昇。調査ページに1人あたりかどうかの明記はありません)
こだわる人は増えています。ただ、それが1人あたりの総額を押し上げるところまでは届いていません。固定部分が人数で薄まる動きのほうが大きかった、というのが、この2年の平均値の読み方です。
もう1つ押さえておきたいのは、結婚式を実施する層そのものです。同じ調査では、結婚式を挙げない・予定なしの人が24.6%で、前年より下がっています。実施済みと予定を合わせた実施率は59.4%で、前年の59.1%からほぼ横ばいです。式をする人の中身が少し変わっている可能性はありますが、調査から言えるのは、実施率が大きく動いたわけではないということまでです。
仮の式場で、人数が4.2人増えると何が変わるか
ここからは、実在の式場ではなく、数字を置いたモデル計算です。前提は次のとおりです。
- 年間120組の式場
- 平均の招待人数が4.2人増える(今回の調査の差と同じ)
- 人数に連動する売上は、1人あたり2.43万円(上の直線の傾き)
- 人数に連動する部分の粗利率は、仮に50%
1組あたり、人数連動の売上は2.43万円 × 4.2人 = 10.2万円増えます。粗利は5.1万円です。年120組なら、粗利で約612万円になります。粗利率が40%なら約490万円、60%なら約735万円です。
この612万円は、単価を上げた成果ではありません。ゲストが4.2人増えたことで、料理と引出物の分が自動的に積み上がった分です。ここで判断が分かれます。
- 自分の式場でも人数が増えている:総額が伸びていても、1人あたりの売上・粗利が下がっていないかを見る。人数で稼いでいる式場は、人数が減ったときに総額も同じ勢いで落ちる
- 自分の式場の人数は変わっていない:業界の平均値が上がっても、単価を上げられた根拠にはならない。見積もりを高くする材料に、この見出しは使えない
- 自分の式場の人数が減っている:業界の総額が増えていても、自分の式場の売上は下がる。平均と逆の動きなので、人数を保つ手を先に考える
見積もりの比較に使うなら、人数をそろえてから比べる
二人が式場を比べるとき、見積もりの総額を並べることがほとんどです。ところが、人数が違う見積もりを並べた総額は、比べる意味が薄いです。
たとえば、A会場が60人で326万円、B会場が50人で301万円という見積もりが出たとします。総額ではBが25万円安く見えます。しかし、上の直線のようにゲスト1人あたりで見ると、Aは5.43万円、Bは6.02万円で、Aのほうが1人あたりでは安くなります。
式場の側でも同じです。自社の見積もりの平均を、業界の平均総額と並べて「高い」「安い」と言うときは、まず人数をそろえる必要があります。そろえないまま比べると、人数が少ないだけで「安い会場」に見え、人数が多いだけで「高い会場」に見えてしまいます。
見積もりを出すときに、次の2つを並べて見せる会場は少ないです。
- 総額
- 1人あたりの総額(人数連動の部分と、人数に関わらない部分を分けた形)
後者があると、二人は人数を10人減らしたときの総額の動きを自分で読めます。人数が減ると総額がどこまで下がるのかが分かれば、「人数を絞って予算に収める」という相談も、見積もりを取り直さずに進みます。
平均を使うときに気をつけること
今回の数字の読み方で、僕が気をつけたい点を3つ挙げます。
- 前年との差は、同じ人を追いかけた数字ではない。毎年の調査は回答者が入れ替わるので、+10.2万円が「同じ二人が10万円多く払った」を意味しない
- 総額と人数は、調査の中でも別々の設問。平均同士の割り算は目安であって、1組ごとの実態の平均ではない
- 他の調査と並べると数字がずれる。たとえば、リクルートブライダル総研「結婚マーケット調査2025」では、挙式と披露宴・パーティーをともに行った組の総額は平均298.6万円、招待客は57.2人と報告されています。対象と集計の仕方が違えば、同じ年でも約30万円ずれます
どの調査を使うにしても、総額だけでなく、人数と並べて1人あたりを出す。この手間をかけるだけで、「単価が上がった」と「人数が増えた」を分けて読めます。
自社の数字で確かめるなら、3つの比べ方がある
業界の平均がこう動いたとして、自社はどうなのか。確かめ方は手元の契約データだけで足ります。
- 前年と今年の契約について、総額の平均と、招待人数の平均を並べる。そのうえで総額を人数で割り、1人あたりが上がったのか下がったのかを見る
- 人数を50人未満、50〜70人、70人以上の3つくらいに分け、帯ごとに1人あたりの総額を出す。帯によって単価が違うなら、人数の構成が変わっただけで平均が動いている可能性がある
- 料理と引出物のグレードを上げた組の割合を、前年と並べる。こだわる人が増えているのに1人あたりが動かないなら、固定の部分の見せ方に伸びしろがある
どれも、新しい調査も費用もいりません。総額の平均だけを見て一喜一憂する前に、人数で割る一手間を入れるだけです。
まとめ
- マイナビウエディングの2026年調査で、結婚式の総額は平均326.1万円(前年比+10.2万円)で過去最高になった
- 招待人数は56.2人から60.4人に増え、1人あたりの総額は5.62万円から5.40万円に約4%下がっている
- 人数が増えた分だけで総額は23.6万円増えるはずが、実際は10.2万円。差の13.4万円は、固定の部分が薄まったと読める
- 料理にこだわった人は46.7%、引出物は23.8%と増えているが、1人あたりの総額を押し上げるところまでは届いていない
- 仮の式場(年120組)で人数が4.2人増えると、人数連動の粗利が約612万円。単価ではなく人数で積み上がった分なので、単価を上げる根拠にはならない
- 見積もりは総額だけでなく、1人あたりと、人数連動・非連動の内訳を並べて見せると、二人にも自社にも判断の材料になる
