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ウェディングケーキを本物にしてデザートと兼ねると、1組いくら変わるか

ケーキ入刀のケーキを本物にして、そのまま切り分けてデザートとして出す。イミテーションを使い、デザートは厨房が別に作る。どちらが得かは、式場の厨房の人手で決まります。材料費の差はそれほど大きくないからです。

この記事には出典のある統計は出てきません。数字はすべて「仮に〜とすると」と置いた前提から僕が計算したものです。ご自身の会場の原価と時給に置き換えて読んでください。

先に結論

仮の前提で計算すると、本物のケーキでデザートを兼ねる方式は、イミテーション+別デザートの方式より、1組あたり1万1千円から1万7千円ほど原価が重くなります。1人あたりに直すと215円から280円です。

材料費そのものより、パティシエや調理スタッフの作業時間のほうが大きな割合を占めます。だから「本物にすると高い」とも「兼ねるから安い」とも言い切れません。厨房に余力がある時間帯なのか、婚礼が重なる土曜の午前なのかで、答えが変わります。

計算の前提

仮の前提を並べます。会場ごとに違うはずなので、置き換えて使ってください。

  • イミテーションケーキは1台20万円で購入し、150組で使い回す。保管と清掃のコストは1組500円とする
  • コース内のデザートの原価は1人300円とする
  • 本物のケーキは材料費が1人350円。装飾資材は1台3,000円とする
  • 本物のケーキを作る作業は、基本の2時間に、人数20人あたり1時間を足す。切り分けと盛り付けも含める
  • 厨房スタッフの人件費は1時間2,000円(社会保険などを含めた会社の負担ベース)とする

イミテーションの1組あたりの償却は20万円を150組で割って約1,333円で、保管清掃を足して約1,833円になります。これは人数によって変わりません。

3つの出し方

イミテーション+別デザート

入刀はイミテーションで行い、ゲストにはコースのデザートを出します。いちばん普通の形です。60人なら、イミテーション分1,833円とデザート原価18,000円で、合計約19,800円です。

本物のケーキでデザートを置き換える

入刀したケーキを下げて、厨房で切り分けてゲストのデザートにします。コース内の別デザートは出しません。60人なら、材料費21,000円、作業5時間で10,000円、装飾資材3,000円で、合計34,000円です。

イミテーション方式との差は14,167円です。40人なら25,000円と13,833円で差は11,167円、80人なら43,000円と25,833円で差は17,167円になります。

本物のケーキ+別デザート

入刀したケーキを切り分けて出したうえで、コースのデザートも出す形です。ゲストの満足は高いかもしれませんが、60人で約52,000円かかります。イミテーション方式との差は約32,000円で、1人あたり540円です。この差を価格に載せる設計がないなら、やめたほうがいいです。

差を1人あたりで見る

組あたりの差を人数で割ると、次のようになります。

  • 40人:約279円
  • 60人:約236円
  • 80人:約215円

人数が増えるほど1人あたりの差は小さくなります。イミテーションの償却費が固定で、作業時間の増え方が人数に比例しないからです。少人数の婚礼ほど「本物にする」の割高感が出ます。

ここで効いているのは、作業時間の置き方です。作業時間を2時間足しただけで4,000円が動きます。時給2,000円で5時間が10,000円。材料費の2万円台に対して、半分近くが人件費です。

ロスを入れるとどうなるか

本物のケーキは、切り分けで端が出ます。ゲストが食べ残すこともあります。仮に材料の2割をロスとして見込むと、60人の材料費は21,000円から25,200円になり、本物方式の合計は38,200円。イミテーション方式との差は約18,400円まで開きます。

1割なら23,100円で、合計36,100円、差は約16,300円です。ロスの見込みを0%、10%、20%と動かすだけで、差が14,200円、16,300円、18,400円と動くわけです。実際のロスは、自分の会場の過去の宴会で量って決めるのが確実です。

価格にどう載せるか

ここまでは原価の話です。売る側が気にするのは、ケーキ料金をいくらに設定するかです。

本物でデザートを兼ねる方式にして、イミテーション方式と同じ粗利を保つとします。差が60人で約14,000円なら、ケーキ料金かコース料金にそれだけ載せれば、粗利の額は変わりません。1人あたりで233円ほどです。コース料金が1人1万円台後半だとすれば、1%台前半の値上げに相当します。

ただ、ここで見積もりの見せ方が問題になります。「ケーキ料金:本物 +1.4万円」と別建てにすると、二人はオプションとして比べにかかります。コース料金に溶かして「デザートがケーキになる」と見せる手もあります。どちらが成約率に効くかは、僕は数字を持っていません。会場ごとに、見積書の見せ方で試すしかないところです。

分かれ目は厨房の時間帯

差の大きな部分は作業時間ですから、判断は厨房に余力があるかどうかで割れます。

余力がある会場は、本物方式に向いています。平日の婚礼や、1日1組の会場です。ケーキ入刀の前後でパティシエの手が空いているなら、人件費の増加はほぼゼロです。計算上の1万円は、実際には追加支出にならない可能性があります。

余力がない会場は逆です。土曜に3組が重なる会場では、ケーキの切り分けが他の料理の提供と同じ時間帯に当たります。盛り付けの人手を増やすか、提供のタイミングを遅らせるか。遅らせれば、デザートの時間が後ろにずれて、披露宴の進行にも響きます。

だから「一律で本物に切り替える」はおすすめしません。曜日や組数ごとにルールを分ける会場が多いのでは、と想像しますが、これは僕の推測で、数字の裏付けはありません。

アレルギーとの関係

ゲストのアレルギー申告は、コースの料理について取るのが一般的です。本物のケーキを全員に出すなら、ケーキの原材料も同じ手順の対象に入れる必要があります。卵、乳、小麦を使うのが一般的なので、申告があった人には別のデザートを用意することになります。

つまり、デザートを完全に置き換える方式でも、別デザートの仕込みはゼロになりません。申告者の分は残ります。60人で2人なら、その分の原価と手数は、本物方式の中に隠れて増えます。ここを計算に入れずに「デザート原価300円×60人が丸ごと浮く」と読むのは危ないです。

二人に何と説明するか

本物のケーキのよさは、写真と味の両方で説明できます。食べられるケーキは、ファーストバイトの場面に本物を使えます。イミテーションだと、ファーストバイトは別の小さなケーキを用意する形になりがちです。ここに追加の手間と原価が出ているなら、それも比較に入れる必要があります。

一方、イミテーションには「高さのあるデザイン」「何段も重ねる」といった見た目の自由度があります。食べられる構造にすると、段数や飾りに制約が出ることがあります。二人の希望が「3段で背の高いケーキ」なら、本物方式は希望と合わないかもしれません。

説明のコツは、値段の話の前に、二人がケーキに何を求めているかを聞くことです。写真、味、入刀の演出。求めるものが「写真」ならイミテーションで足ります。「ゲストと分けたい」なら本物です。

外部のパティスリーに頼む場合

厨房で作らず、提携のパティスリーに60人分のケーキを頼む会場もあります。仮に1台3万円で仕入れて、切り分けと盛り付けを厨房が1時間(2,000円)で受けるとします。合計は32,000円です。厨房で作る34,000円とほぼ同じ水準で、差は2,000円しかありません。

この場合、金額で選ぶ理由はなくなります。決め手は2つです。ひとつは納品の締切で、人数の最終確定日より前にケーキの大きさを決めることになります。人数が直前に動く会場では、大きさが合わないリスクが出ます。もうひとつは、パティシエが辞めたときの代わりです。内製だと、厨房の1人が抜けた途端にこの方式ごと止まります。外部なら止まりません。

人数変更への備えとして、仮に最終確定日の時点で±5人までは吸収できる大きさで頼む、と決めておく手があります。5人分の材料は350円×5人で1,750円。大きめに頼むコストはこの程度なので、足りなくなる事故より安く済みます。

自分の会場で試す手順

実際に判断するときは、次の順に数字を拾います。

  1. 直近の婚礼から、デザート原価を人数で割った平均を出す
  2. 厨房に、ケーキの製造と切り分けに実際にかかる時間を測ってもらう(1組分でよい)
  3. 過去3か月の婚礼から、曜日と組数ごとに厨房の余力を判定する
  4. 本物方式にする日を、余力のある日だけに絞った場合の追加原価を計算する
  5. 見積書の見せ方を2パターン用意して、翌月の見積もりで半々に使い分ける

2の測定は1組で足ります。それだけで、この記事の「基本2時間+20人あたり1時間」の仮定が実態より重いのか軽いのか分かります。

まとめ

  • 仮の前提では、本物ケーキでデザートを兼ねる方式は、イミテーション+別デザートより1組あたり約1.1万〜1.7万円重い(40〜80人)
  • 1人あたりに直すと約215〜280円で、人数が増えるほど小さくなる
  • 差の半分近くは材料費ではなく、厨房の作業時間である
  • ロスを2割見込むと60人で差は約1.8万円まで開く
  • 本物のケーキに加えて別デザートも出す形は、60人で差が約3.2万円になる。価格に載せる設計がないなら避ける
  • 判断の軸は厨房の余力で、平日や1日1組の会場は本物方式と相性がよく、土曜の重なる日は割れる
  • アレルギー申告者の別デザートは残るので、デザート原価が丸ごと浮くとは読まない