最低保証を50人から40人に下げると、仮の式場では年約660万円の粗利が消える。元に戻すには、成約率の落ち幅が10%から2.5%まで縮む必要がある
最低保証人数は、式場にとっていちばん確実な粗利です。50人で保証している会場なら、40人しか来なくても50人分の料理と飲み物の代金が入る。仮の式場で数えると、この仕組みだけで年に1,000万円を超える粗利が残ります。
その一方で、40人未満で式を考えている二人は、見積もりを見た時点で離れていきます。守っている粗利と、見学から契約まで進まなかった組。この2つを同じ表に並べないまま、最低保証の数字は「昔からこうだから」で決まっていることが多いです。この記事では、保証人数を50人、40人、30人に動かしたときの損益を、仮の式場で計算します。
先に断っておくと、人数の分布も、1人あたりの粗利も、僕が置いた仮の数字です。調査の結果ではありません。実在する数字として使うのは、ゼクシィ結婚トレンド調査2024の招待客平均52.0人だけです。自分の会場の数字に置き換えて使ってください。
最低保証は、値引きの代わりに置かれている
最低保証人数が生まれた理由は、料理や人件費の仕込みにあります。宴会場を1組に貸し切り、スタッフを配置し、料理の食材を発注する。人数が読めないと、この準備が無駄になります。そこで「この人数分は、来ても来なくても払ってください」と決めておく。
つまり最低保証は、会場側の仕入れのリスクを二人に移す約束です。ここまでは筋が通っています。問題は、この約束の高さが、見学に来る二人の人数の分布と合っているかどうかです。
ゼクシィ結婚トレンド調査2024では、披露宴・ウエディングパーティーの招待客の平均は52.0人でした。平均が52人ということは、40人以下で考えている組もかなりいます。分布の形は会場の商圏でも変わります。自分の会場の見学客がどういう分布かは、数えないと分かりません。
仮の式場を置く
計算のために、次の式場を置きます。すべて仮の数字です。
- 年間の見学は300組。成約率は35%で、年105組が契約する
- 見学に来る組の希望人数は、20〜29人が30組(10%)、30〜39人が45組(15%)、40〜49人が60組(20%)、50人以上が165組(55%)
- 1人あたりの料理・飲み物の売上は2万円。人数分の食材や人件費を引いたあと、実際に来た人の粗利は1人1万円
- 不足分、つまり保証しているのに来なかった人の分は、食材を発注しないので、1人あたり1.8万円が粗利に残る
- 人数に関係なく入る部分(会場費、演出、衣装など)の粗利は、1組100万円
最後の1行は、実際には会場ごとにまったく違います。ここでは、人数に比例する粗利と、比例しない粗利を分けて見るために、わざと単純にしてあります。
保証が効いているのは「保証より少ない組」だけ
最低保証が50人だと、この式場で保証が効くのは、希望人数が50人未満の組です。50人以上の組には、保証はなにも起こしません。
効いている組の数は、20〜29人が30組、30〜39人が45組、40〜49人が60組。合計135組が見学に来ます。見学の45%です。
この135組が契約したとき、保証がない場合と比べて何が違うか。各帯の平均を25人、35人、45人として計算すると、1組あたりの上乗せは次のとおりです。
- 20〜29人(平均25人):25人分の不足 × 1.8万円 = 45万円
- 30〜39人(平均35人):15人分の不足 × 1.8万円 = 27万円
- 40〜49人(平均45人):5人分の不足 × 1.8万円 = 9万円
25人の組に50人分を請求すると、1組で45万円の上乗せです。見積もりを見た二人が離れていく理由の一つは、ここにあると僕は見ています。
もう一つ見ておきたいのは、保証が最も強く効く帯ほど、組数が少ないことです。45万円の上乗せが乗る組は30組。9万円の上乗せの組は60組。上乗せの大きい少人数の組は、見学に来る数そのものが少ない。分布の形に、計算を左右する力があります。
成約率が落ちなければ、保証は年1,000万円超の粗利になる
保証を50人に置いたまま、成約率が35%で変わらないとします。契約するのは、20〜29人の帯で10.5組、30〜39人の帯で15.75組、40〜49人の帯で21組です。
上乗せの合計を、Python で計算します。
- 10.5組 × 45万円 = 472.5万円
- 15.75組 × 27万円 = 425.25万円
- 21組 × 9万円 = 189万円
合計で約1,087万円です。年300組の見学、年105組の成約のうち、保証がなければ出なかった粗利が、1,000万円を超えて残ります。最低保証を守りたくなる気持ちは、この数字を見ると分かります。
ただし、この計算の前提は「成約率が35%のまま変わらない」です。保証が高いのに成約率が変わらない、ということは、あまり起きません。上乗せ45万円の見積もりを出された25人の組が、35%の確率で契約してくれるのかどうか。ここが最低保証の議論の核です。
成約率が1割落ちるだけで、1,087万円は330万円に縮む
保証が効く135組の成約率が、一律で下がったとして計算し直します。落ち幅は、35%に対する割合で置きます(5%落ちるなら、35%が33.25%になる)。
| 保証50人で、成約率が落ちた割合 | 契約が減る組数 | 保証による粗利の増減 |
|---|---|---|
| 0% | 0組 | 約1,087万円 |
| 5% | 約2.4組 | 約708万円 |
| 10% | 約4.7組 | 約330万円 |
| 15% | 約7.1組 | 約-49万円 |
| 20% | 約9.4組 | 約-427万円 |
成約率が15%落ちたところで、保証の粗利はゼロに届きます。年7組が契約をやめただけで、1,000万円あった粗利が消える計算です。
15%の落ち幅は、一律で全部の帯に当てはめた数字です。実際は帯ごとにまったく違います。45万円の上乗せが乗る25人の組は、落ち幅が大きいはずです。上乗せが9万円の45人の組は、ほとんど落ちないかもしれない。次の節で、帯ごとに見ます。
帯ごとの損益分岐:少人数の帯ほど落ち幅に弱い
帯ごとに、成約率が何割落ちたら保証の粗利がゼロになるかを出します。保証なしで契約したときの粗利を base、保証による上乗せを extra とすると、成約率が r 倍に落ちて粗利が同じになる条件は、r × (base + extra) = base です。
保証50人の場合:
| 希望人数の帯 | 見学の組数 | 上乗せ | 粗利が同じになる成約率の落ち幅 |
|---|---|---|---|
| 20〜29人 | 30組 | 45万円 | 約26.5% |
| 30〜39人 | 45組 | 27万円 | 約16.7% |
| 40〜49人 | 60組 | 9万円 | 約5.8% |
読み方は逆です。20〜29人の帯は、成約率が26.5%まで落ちて、はじめて保証が損になる。つまり、少人数の帯は、上乗せが大きいぶん、多少離れても保証のほうが得です。逆に、40〜49人の帯は、5.8%落ちただけで損に転じます。上乗せが9万円しかないので、1組でも離れると合わないからです。
ここから分かることが一つあります。保証を下げるかどうかは、全体の成約率では決まりません。40〜49人の帯、つまり保証との差が小さい帯が、実際にどれだけ離れているかで決まります。
保証を下げると、何が戻って何が消えるか
保証を40人に下げると、40〜49人の帯には保証が効かなくなります。30〜39人と20〜29人の帯は、上乗せが27万円と9万円に縮みます。
保証40人で計算し直すと、成約率が落ちない場合の上乗せの合計は約425万円です。50人の約1,087万円から、約660万円減ります。成約率がまったく動かないなら、保証を50人から40人にするだけで約660万円の粗利が消える計算です。
そのうえで、40人に下げると、保証が効く帯の成約率がどれだけ動けば得になるか。表に直します。
| 保証の人数 | 成約率が落ちない場合の上乗せ合計 | 5%落ちたとき | 10%落ちたとき | 15%落ちたとき |
|---|---|---|---|---|
| 50人 | 約1,087万円 | 約708万円 | 約330万円 | 約-49万円 |
| 40人 | 約425万円 | 約232万円 | 約39万円 | 約-154万円 |
| 30人 | 約94万円 | 約24万円 | 約-46万円 | 約-117万円 |
ここからは「どの保証が正しいか」ではなく、「どの落ち幅を信じるか」の話になります。同じ落ち幅なら、50人のほうが常に上回ります。たとえば成約率が10%落ちる場合、50人は約330万円、40人は約39万円です。
下げて得になるのは、落ち幅が保証ごとに違うときです。保証50人だと成約率が10%落ちていた会場(約330万円)が、40人に下げて落ち幅が2.5%まで縮めば、約330万円で並びます。50人のまま15%落ちていた会場(約-49万円)なら、40人で5%落ちる程度(約232万円)でも、下げたほうが上回ります。
つまり、保証を下げて得になるのは、保証を下げたことで、40〜49人の帯の契約が大きく戻るときだけです。下げると、確実に1組ずつ契約が増えるわけではありません。
保証を下げて得になる条件は、3つに絞れる
計算の結果を、判断の条件にまとめます。
- 40〜49人の帯の見学が多い。保証を40人に下げて戻るのは、この帯だけだからです。50人以上が見学の7割を占める会場では、下げて戻る組自体が少ない
- 少人数の見学が、契約前に離れている。見学のあと、人数を理由に断った組が、記録に残っているか。ここが空欄なら、離れた数を知る方法がありません
- 不足分の請求が、実際には食材や人件費のコストを伴っている。不足分1人あたりの粗利が1.8万円から1.2万円に下がる会場は、保証の粗利は計算より小さい。保証が重いと感じる前に、不足分の粗利率を確かめる
逆に、保証を維持したほうがいい会場は、見学の7割以上が50人を超えていて、少人数の見学が年に数組しかない会場です。この場合、保証の下げ幅に見合うだけの組数が戻りません。
数え方:見学の時点で「希望人数」を記録する
最低保証の議論が止まる理由は、見学の時点で希望人数が記録されていないからです。見学の予約フォームか、当日の接客メモに、希望人数を一つ入れます。それだけで、次の3つが数えられます。
- 希望人数の帯ごとの見学数(ここが分布になる)
- 帯ごとの成約率
- 人数を理由に断った組の数
半年たてば、帯ごとの成約率が並びます。仮の式場で、20〜29人の帯の成約率が35%に対して12%なら、差は23ポイントです。この差が、保証に原因があるのか、予算や好みに原因があるのかは、この数字だけでは分かりません。ただ、保証が原因の上限は分かる。上限の組数が、先の損益分岐に届くかどうかで、次の一手が決まります。
希望人数は、見学の予約のときには「だいたい」で構いません。見学のあと、見積もりを出す段階で修正されるからです。大事なのは、見学のときの数字を、あとで書き換えないことです。書き換えると、見学の入口で何人の組が来ていたかが、記録から消えます。
保証を下げる以外の手もある
保証の人数を動かす以外にも、上乗せの痛みを小さくする方法はあります。
- 保証の対象を料理だけにする。飲み物、装花、引出物を人数連動にしておけば、不足分の請求は食材と人件費のぶんだけになる
- 保証の人数を、日取りや曜日で変える。人気日は50人、閑散期は35人、と分ける。人気日は他の組に回せるので保証が効き、閑散期は1組でも欲しいので下げる
- 契約後の人数確定を段階的にする。保証は契約時の人数ではなく、挙式の1か月前の確定人数に対して置く。不足分の請求は、確定のあとに発生するので、見積もりの印象が変わる
どれも、最低保証の高さそのものを動かさずに、離れる理由を減らす手です。保証を下げる前に、見積もりを見て離れている組がどの項目で離れているかを確かめると、手の選び方が変わります。
まとめ
- 最低保証は、仮の式場で年1,000万円超の粗利を生む。ただし、成約率が変わらないことが前提の計算
- 保証が効くのは、希望人数が保証より少ない組だけ。上乗せの大きい少人数の組ほど、見学に来る数そのものが少ない
- 保証50人では、成約率が15%落ちると上乗せの粗利はほぼゼロになる。落ち幅が帯ごとに違うので、見るべきは保証と希望人数の差が小さい帯
- 保証を50人から40人に下げると、成約率が動かない場合は約660万円の粗利が減る。得になるのは、40〜49人の帯が実際にそれだけ離れているときだけ
- 見学のときに希望人数を記録して、帯ごとの成約率を半年数えると、判断の材料が揃う
