集客

式場の地元メディア掲載は、予約数より指名検索の増加で測る

地元の新聞やニュースサイトに式場の記事が載ったあと、予約フォームの「知ったきっかけ」を見て、がっかりした経験はないでしょうか。載ったのに「新聞を見て」の回答は1件も増えていない。そこで担当者は「掲載はやっても意味がない」と結論を出しがちです。

僕は、この結論は測り方が間違っていると考えています。地元メディアに載った式場の名前を見た人は、その場で予約フォームを開くことはほとんどなく、あとでスマホを開いて式場名を検索します。効果が出る場所は予約フォームではなく、検索の窓です。

この記事では、数字の出典は使いません。式場の地元メディア掲載の効果を測った公開調査は見当たらないので、仮の前提を置いたモデル計算と、仕組みの説明で進めます。前提の数字は僕が置いた想定で、実績ではありません。

掲載が予約に変わるまでの道

雑誌や結婚情報サイトの広告は、記事の中に予約ボタンがあります。載った瞬間から、予約までの距離が数センチです。

地元メディアの記事は違います。ニュースの形で式場の名前が出るだけで、読み手は「結婚式場を探している二人」とは限りません。同じ街に住んでいる人、親世代、職場の同僚、まだ結婚の予定がない人。その中の一部が、数日から数週間後に式場探しを始めたとき、記事で見た名前を思い出します。

つまり、掲載から予約までの道は次の順になります。

  1. 記事で式場名を見る
  2. 式場探しを始めたときに、名前を思い出す
  3. 式場名で検索する
  4. 公式サイトやGoogleマップを見る
  5. 見学を予約する

予約フォームの「知ったきっかけ」に出てくるのは、5番目の直前に見たものです。多くの二人は検索で公式サイトにたどり着いたと答えるか、結婚情報サイトの名前を書きます。記事を見たことは記憶に残っていても、きっかけとしては選びません。だから「新聞を見て」の回答は増えません。

ここで測るべきなのは、3番目の指名検索です。式場名で検索された回数が掲載の前後でどう動いたかを見れば、記事の効果は数字に出ます。指名検索を集客の指標に置く考え方は、別の記事(指名検索を集客の指標に置く)で書いたとおりです。ここでは、その指標を地元メディアの掲載に当てはめます。

取材に出せる話と、出せない話

掲載を狙う前に、取材してもらえる話があるかを見ます。ここを間違えると、リリースを書いて送っただけで終わります。

僕の見立てでは、地元メディアが扱いやすいのは、地域の読み手にとってニュースになる話です。

  • 開業、リニューアル、移転、建て替え
  • 地元の事業者や自治体、学校、商店街との連携
  • 地域の産品を使った料理や、地元の職人とつくる演出
  • 地域の行事や季節に合わせた企画
  • 新しい形の結婚式(少人数、平日、会費制など)を始めたこと

一方で、扱ってもらいにくいのは次のような話です。

  • 割引、特典、期間限定のフェア告知
  • 「当館の魅力」を並べただけの紹介
  • 式場の中だけで完結する改善(システム導入、社内表彰など)

割引や特典の告知は、読み手にとって広告だからです。広告をニュースとして載せてほしいと頼まれても、媒体側は困ります。

この線引きは、媒体の規模や編集方針で変わります。小さなニュースサイトやフリーペーパーなら、広告に近い話も載せてくれることがあります。ただ、載せてもらえたとして、それが二人の記憶に残るかどうかは別の問題です。割引の告知を見た人が覚えているのは割引で、式場の名前ではありません。

迷ったときの確認は一つだけです。「この話を、結婚式に関係のない地元の人が読んで、面白いと思うか」。思わないなら、取材に出す話ではありません。広告として買うか、自社のSNSで出すほうが向いています。

仮の式場で損益を組む

前提を置いて計算します。これは僕が置いた想定で、実績ではありません。

  • 1組の成約あたりの粗利は100万円
  • 見学予約から契約までの歩留まりは、予約100組あたり契約11.9組(来館70%、見積もり提示85%、返事40%、契約50%を掛けた値。ほかの記事と同じ仮の前提)
  • 式場名の月間検索回数は300回、うち掲載前後の2週間では150回
  • 式場名で検索した人が、そのあと見学を予約する割合は3%
  • 掲載にかかる作業は、リリース作成と送付、取材対応、写真の準備で合計15時間。1時間あたり3,000円で換算して4万5,000円

見学予約1件が契約になる確率は、歩留まりの積から11.9%です。掲載で指名検索がどれだけ増えれば、4万5,000円が回収できるかを逆算します。

必要な追加の検索回数は、4万5,000円 ÷ 100万円 ÷ 11.9% ÷ 3% で約12.6回。2週間の検索150回に対して約8%の増加で足ります。

では、掲載後の2週間で、指名検索が10%、30%、60%増えたらどうなるかを並べます。

検索の増え方 追加の検索 追加の見学予約 追加の契約 粗利の増え方
10% 15回 0.45件 0.05組 約5万4,000円
30% 45回 1.35件 0.16組 約16万円
60% 90回 2.7件 0.32組 約32万円

この計算で分かることは3つあります。

1つ目は、作業コストが小さいことです。4万5,000円は、契約の0.045組分です。たとえ効果が小さくても、人件費の面では回収のハードルが低い施策です。

2つ目は、効果の大きさがほとんど「検索の増え方」だけで決まることです。3%を1ポイント変えるより、掲載で検索が10%増えるか30%増えるかのほうが、粗利の差が大きくなります。

3つ目は、この計算に入っていない費用があることです。取材の日に見学枠を1つ空ける、写真の使用許諾を取る、記事の誤りを直してもらう連絡をする。こうした手間は、時給換算の15時間に収まらないことがあります。

検索の増減を数える手順

指名検索の数字は、Google Search Consoleで見られます。公式サイトを登録してあれば、検索クエリごとの表示回数とクリック数が出ます。式場名と、その表記ゆれ(略称、カタカナ・ひらがな、「式場名 口コミ」「式場名 料金」のような組み合わせ)を拾います。

手順は次の4つです。

  1. 掲載日を記録する。記事が出た日と、媒体名、記事のURL
  2. 掲載前の2週間の指名検索回数を数える
  3. 掲載後の2週間の指名検索回数を数える
  4. 同じ期間の見学予約数と、予約の流入元(検索、地図、媒体)も並べて残す

ここで気をつけたいのは、前後比較のぶれです。指名検索は季節で動きます。春と秋の挙式シーズン前後は、探し始める人が増えます。広告を出した月や、ほかの媒体に載った月も動きます。掲載の効果だけを取り出すことはできません。

だからこの数字は、「掲載の前後で動いたか」を見るためのもので、効果を厳密に測るものではありません。同じ式場で掲載を4回、5回と重ねていくと、どのくらい動くのが普通なのかが分かってきます。1回の結果で良し悪しを決めず、回数を重ねて傾向を見ます。

予約フォームには「知ったきっかけ」の選択肢として「新聞・ニュースサイト」を足しておくと、少数でも手がかりが残ります。ただし、先ほど書いたとおり、ここに数字が出ないことを理由に掲載をやめないほうがいいです。

掲載後に公式サイトでやること

掲載の効果を取りこぼさないために、記事を見て検索した人が来たときの受け皿を整えます。

まず、公式サイトのトップページか専用のページに、掲載されたことを載せます。媒体名、掲載日、記事へのリンク。記事のテキストや写真を転載する場合は、媒体の規約や著作権の扱いを確認します。許諾が必要な媒体もあるので、リンクだけにしておくのが安全です。

次に、記事で触れられた話(地元の食材を使った料理、地域と連携した企画など)を、公式サイトで見学前の二人が読める形にします。記事で興味を持った人が検索して公式サイトに来たとき、記事と同じ話が書いてあれば、「あの式場だ」とつながります。書いていなければ、そこで離れます。

さらに、Googleマップの写真や投稿にも同じ話を載せておきます。式場名で検索した人が最初に見るのは、公式サイトよりもマップの欄であることが多いからです。

見学の予約ページには、特別な変更は要りません。記事経由の人だけ別の導線を作る必要はなく、いつもの予約導線がそのまま受け皿になります。

続けるか止めるかの条件

掲載を続けるかどうかは、次の3つで決めます。

  1. 取材に出せる話が、年に何回あるか。ネタがなければ無理に出さない
  2. 取材対応をする人が決まっているか。窓口が担当者ごとに変わるなら、先に決める
  3. 掲載の前後2週間の指名検索を、毎回記録できるか。記録がなければ、効果は判断できない

1番目は、リリースを出す頻度の上限です。開業やリニューアルのように年に1回あるかどうかの話を、毎月出すことはできません。地域連携の企画を年に2〜3回つくれる式場なら、それを軸にするのが現実的です。

2番目は、取材の電話が来たときに誰が出るかの問題です。メディアの記者は、締め切りの前に確認の連絡をしてきます。「担当者が休みで分かりません」と返してしまうと、掲載が流れることがあります。

3番目は、効果の判断の問題です。記録を取らないまま続けると、1年たっても「効いているのか分からない」状態のままです。3回分の記録がたまれば、動く幅の見当がつきます。

反対に、見送ったほうがいい場合もあります。割引やフェアの告知しか出せる話がないとき。取材に応じる余裕が、繁忙期で全く取れないとき。公式サイトに、記事で触れられた話の受け皿がないとき。こうした状態で掲載だけ狙っても、検索が増えたあとの受け皿がなく、効果が空振りに終わります。

広告とのすみ分け

最後に、広告との関係を書いておきます。

地元メディアに広告枠を買って出す方法もあります。広告は、出す内容と時期を自分で決められます。取材は、載るかどうかも、何が書かれるかも、媒体が決めます。

僕は、この2つは役割が違うと思っています。広告は「今、見てほしい情報を確実に届ける手段」で、取材は「第三者が書いた記事として名前を覚えてもらう手段」です。割引やフェアの告知は広告に、地域との連携や新しい取り組みは取材に、と使い分けるのが筋です。

ただし、取材は必ず載るものではありません。リリースを5本出して、載るのは1本という式場もあれば、ほとんど載らない式場もあるはずです。この確率は式場ごとにかなり違うので、僕は一般的な数字を置くことができません。

だから、取材を狙う作業は、「載らなくてもほかに使える形」にしておくのがいいです。リリースを書く過程で整理した話は、そのまま公式サイトの記事、Instagramの投稿、見学時の説明に使えます。載れば追加の効果で、載らなくても作業の無駄にはなりません。

まとめ

  • 地元メディアの掲載は、予約フォームの「知ったきっかけ」には出にくい。効果は、式場名を検索する回数に出る
  • 掲載の効果は、掲載前後2週間の指名検索回数を、Search Consoleで数えて確かめる
  • 取材に出せるのは、地域の読み手にとってニュースになる話。割引やフェアの告知は広告で出す
  • 仮の前提(1組の粗利100万円、作業15時間)では、指名検索が約8%増えれば作業コストが回収できる。検索が30%増えれば粗利で約16万円
  • 公式サイトとGoogleマップに、記事で触れられた話の受け皿を作っておく
  • 年に出せる話の数、取材の窓口、記録の3つが揃わないなら、見送る