式場名の旧名や略称で検索する二人を、公式サイトに迎える
指名検索を集客の指標にしている式場は増えました。式場名で検索された回数が増えれば、名前を知って探しに来た二人が増えたと読めるからです。ただ、その回数を数えるとき、式場名の「どの表記」を数えているでしょうか。
正式名称だけを数えている式場が、意外に多いと僕は見ています。二人は正式名称を正確に打つとは限りません。親から聞いた略称、友人が口にした呼び方、看板で見たひらがな、数年前の旧名。打つ言葉がばらけるほど、公式サイトにたどり着けない二人が出ます。
この記事では、公開された調査の数字は使いません。式場名の表記ゆれによる検索の取りこぼしを測った公開データは、僕は見つけられていません。そのため、仮の前提を置いたモデル計算と、仕組みの説明で進めます。前提の数字は僕が置いた想定で、実績ではありません。
式場名は、思っているより何通りにも打たれる
自分の式場の名前を、スタッフは一つの形で覚えています。看板に書いてある正式名称です。でも、二人が検索窓に打つ形は、次のようにばらけます。
- 略称(長い名前の前半だけ、あるいは頭文字だけ)
- ひらがなやカタカナ、英字の打ち分け(漢字の式場名をひらがなで打つ、英字の名前をカタカナで打つ)
- 運営会社名やホテル名を付けた形、付けない形
- 数年前の旧名や、改装前の名前
- 地名と組み合わせた形(「駅名 + 式場名」「市名 + 式場名」)
- 一文字違いの誤記、聞き間違い
とくに旧名と略称は、スタッフの目に入りにくい表記です。社内では誰も使わないので、存在に気づかないまま何年も過ぎます。
僕が気にしているのは、二人が情報を得る経路です。式場名を最初に知るのは、ほとんどが耳か目です。友人の結婚式に出席した、親が昔そこで挙式した、街で看板を見た。耳で聞いた名前は、漢字を知らないまま、音だけで検索窓に打たれます。目で見た名前も、スマホで探すときは見た目の記憶で打たれます。正式名称の綴りを正確に覚えて検索する人のほうが、むしろ少数かもしれません。
表記がばらけると、何が起きるか
表記がばらけて困るのは、検索結果の画面に公式サイトが出ないことがあるからです。
検索エンジンは、打たれた言葉と近い意味のページを出します。表記の違いをある程度は吸収してくれますが、全部ではありません。略称や旧名で検索したとき、公式サイトが一番上に出る保証はありません。代わりに出るのは、結婚情報サイトの式場ページ、口コミ、まとめ記事、地図の情報です。
公式サイトに来られなかった二人は、そこで脱落するとは限りません。別のサイトで式場を知り、そこから見学予約をする二人もいます。ただ、その場合、予約が入った経路は媒体や他のサイトになり、指名検索で測っている公式サイトの数字には出ません。
つまり、表記ゆれの取りこぼしは二重に効きます。
- 公式サイトに来る二人が減る
- 公式サイトに来た二人だけを数えているので、式場名の検索の広がりが数字に出ない
2番目が、指名検索を指標にしている式場には効きます。指名検索の数字が横ばいに見えても、本当は表記が割れていて、一部が数字の外に出ているだけかもしれません。
仮に取りこぼしを計算してみる
数字の感覚をつかむために、仮の前提を置いて計算します。実際の式場の数字ではありません。
- 式場名を含む検索が、月に1,000回ある
- そのうち、正式名称での検索が650回、略称やひらがななどの表記ゆれが350回
- 正式名称の検索では公式サイトが上位に出るが、表記ゆれの検索は半分しか公式サイトに届かない
- 公式サイトに来た人のうち、見学予約に進むのは2%
この想定だと、表記ゆれの350回のうち、公式サイトに来られないのは175回です。175回に2%を掛けると、月に3.5組分の見学予約が、公式サイトを経由せずに他へ流れる計算になります。年にすると42組です。
もちろん、この42組が全部失われるわけではありません。別の経路で結局予約に来る二人もいます。ここで言いたいのは、取りこぼしの大きさの目安です。表記ゆれの割合が1割なら、計算は10分の3に減ります。割合が半分なら、倍近くに増えます。自分の式場がどの位置にいるのかは、検索の実績を見ないと分かりません。
表記を棚卸しする手順
では、自分の式場の表記ゆれを、どう把握するか。難しい道具は要りません。次の順で進めます。
1. 検索の実績から、実際に打たれた言葉を拾う
Google の Search Console には、公式サイトに来た検索語句の一覧があります。そこから式場名の一部を含む語句を抜き出します。ここで見られるのは、公式サイトが表示された、あるいはクリックされた検索語句です。つまり、公式サイトに届いた分の表記ゆれが分かります。
届いていない分は、ここには出ません。そこで次の手順を足します。
2. 自分で打って確かめる
スタッフに、思いつく限りの表記で検索してもらいます。略称、ひらがな、英字、旧名、駅名つき、誤記。検索結果の一番上に何が出るかを、表記ごとに記録します。
このとき、検索の入力欄に式場名を途中まで打つと出る候補(サジェスト)も見ます。候補には、実際によく打たれている言葉が出ます。自分たちが想像していなかった形が出ていたら、それが拾うべき表記です。
3. 運営側が把握している呼び方を集める
プランナーに聞きます。「二人が会話の中で、うちの式場をなんと呼んでいたか」。見学の席で、二人は正式名称ではなく、略称や愛称で話していることがあります。電話で「前に〇〇だったところですよね」と旧名で聞かれた経験も、プランナーなら持っています。この聞き取りは、検索実績よりも先に、表記の候補を出してくれます。
4. 表記ごとに、公式サイトが出るかを表にする
縦に表記、横に「公式サイトが1位か」「何位か」「何が上に出ているか」を並べます。10行もあれば足ります。この表で、公式サイトが出ていない表記が見えれば、そこが直す場所です。
見つかった取りこぼしを直す
表記ゆれが見つかったら、直し方は三つあります。
公式サイトの文中に、その表記を書く
旧名や略称は、検索エンジンが結びつけられるように、公式サイトの中に書きます。トップページの会社概要やアクセスのページに、次のように入れます。
- 「旧名 〇〇(20XX年に現在の名称に変更)」
- 「〇〇(通称:△△)」
- 読み方(ひらがなやローマ字の表記)
無理に不自然な形で詰め込む必要はありません。説明として自然に入る場所に、一度ずつ書けば足ります。「当館はかつて〇〇と呼ばれていました」と一文があるだけで、旧名で探した二人が同じ場所に着いたと確かめられます。これは、二人にとっても親切な情報です。
地図や口コミサイトの名前をそろえる
Googleマップの店舗情報、結婚情報サイトの掲載ページ、SNSのプロフィール。これらの式場名の表記がそろっていないと、検索エンジンが同じ式場だと判断しにくくなります。改名や運営会社の変更があった式場は、とくに古い表記が残りやすい場所です。
地図の情報は、実際の店名と違う名前を載せられない決まりがあります。そのため、通称を名前の欄に入れて対応する方法は避けます。入れるなら、説明文や追加の項目など、規約に沿った場所に限ります。
広告の検索語句に、表記ゆれを入れる
検索広告で自社名を出している式場は、広告の語句に表記ゆれを入れておくと、公式サイトが自然検索に出ない表記でも、広告で受けられます。ただ、広告は費用がかかります。まず自然検索の側を直し、それでも出ない表記だけを広告で拾う順が、費用の面では堅実です。自社名への広告の損益は、別の記事(自社名検索への広告)で書いたとおりです。
指名検索の数え方も直す
表記を拾ったら、指名検索の数え方も直します。正式名称だけの検索回数を追うと、さきほどの2番目の問題が残るからです。
数える対象を、表記ゆれを束ねた一つのグループにします。
- 正式名称
- 略称、ひらがな、英字
- 旧名
- 地名つきの形
Search Console の検索語句は、複数の語句をまとめて集計するしくみがあります。式場名に含まれる言葉を条件にして、まとめて数えます。毎月同じ条件で数えれば、掲載や広告の前後で指名検索が動いたかどうかを、表記ゆれ込みで比べられます。
ここで気をつけたいのは、グループの条件を途中で変えないことです。表記を増やすたびに回数が増えるのは当然で、増えた分は集客の効果ではありません。条件を変えたら、その月から別の指標として区切って記録します。
表記ゆれの調べ方に向かない式場もある
すべての式場が、この棚卸しをする価値があるわけではありません。
式場名がもともと短く、表記が一通りしかない式場は、ばらける余地が小さいです。改名の履歴もなく、略称で呼ばれる場面もない。そういう式場では、表記ゆれの調べ方に使う時間を、口コミや公式サイトの中身の改善に回したほうが効きます。
逆に、次のような式場は、棚卸しの価値が大きいと僕は考えています。
- 過去に改名、あるいは運営会社の変更があった
- 名前が長い、または外国語や造語の綴りで、読み方が分かれやすい
- ホテルや複合施設の中にあり、館名と施設名が二重にある
- 同じ地域に似た名前の式場がある
とくに最後の、似た名前の式場がある場合は、取りこぼしが別の式場に流れる可能性もあります。検索結果の一番上に他の式場が出ていないかは、必ず確かめておく項目です。
費用と手間の目安
この棚卸しは、日数で言えば半日から1日の作業です。スタッフが検索をして表にまとめる作業が中心で、外部の費用はかかりません。公式サイトに一文を足す修正も、サイトの更新権限があればその日のうちに終わります。
効果が出るまでは時間がかかります。検索エンジンが修正を反映するのに数日から数週間の幅があり、一度の修正で結果が変わらないこともあります。変わらなかったときは、表記を追加したページが、検索エンジンに見つけられているかを確かめます。見つけられていなければ、そもそも反映の対象外です。
効果の確かめ方は、先ほどの表をもう一度作ることです。修正の前と数週間後に、同じ表記で同じ検索をして、公式サイトの順位を比べます。順位が上がった表記があれば、修正が効いています。順位の差は小さくても、数字の外にいた二人が見える側に入ったことを意味します。
まとめ
- 二人は式場名を、正式名称のまま打つとは限りません。略称、ひらがな、英字、旧名、聞き間違いで検索する二人がいます。
- 表記がばらけると、公式サイトが検索結果に出ない表記が生まれ、指名検索の数字にも映らなくなります。
- 仮の前提(月1,000回の検索のうち350回が表記ゆれ、半分が公式サイトに届かず、予約率2%)で計算すると、年42組分の見学予約が公式サイトの外に流れる目安になります。これは想定で、実績ではありません。
- 棚卸しは、検索語句の実績、スタッフによる検索、プランナーへの聞き取りの三つから表記を集め、表記ごとに公式サイトの順位を表にします。
- 直し方は、公式サイトの文中に旧名や通称を書く、地図や掲載サイトの名前をそろえる、必要な表記だけ広告で拾う、の三つです。
- 指名検索の数え方は、表記ゆれを束ねたグループにして、条件を途中で変えないようにします。
- 名前が短く表記が一通りの式場では、棚卸しより口コミや公式サイトの中身の改善を優先します。
