上場の式場3社は、減った件数を単価で埋めきれていない。婚礼売上は3%から13%減った
結婚式の件数が減っても、単価を上げれば売上は守れる。式場の経営会議で、一度は出る考え方だと思います。
上場している式場会社の決算資料を読むと、実際にみんなそうしていました。施行件数は1%から6%減り、1組あたりの単価は上がっています。ところが婚礼の売上は、3社とも前の年を下回っていました。単価の上昇では、件数の減少を埋めきれていません。
今回は、テイクアンドギヴ・ニーズ、エスクリ、アイ・ケイ・ケイの3社の決算資料から、件数と単価の動きを分けて読みます。最後に、売上を件数と単価に分けて見るときの、式場ごとの計算のしかたも置きます。
3社の決算資料に出ていた数字
読んだのは、各社が公表している決算説明資料です。決算期も比べる範囲も会社ごとに違うので、同じ期間の比較ではありません。それぞれの資料の中で、前の年と比べた値だけを拾っています。
| 会社 | 比べた期間 | 施行件数 | 1組の単価 | 婚礼の売上 |
|---|---|---|---|---|
| テイクアンドギヴ・ニーズ | 2025年4〜9月(既存店比較) | 4,431件から4,187件(5.5%減) | 398.8万円から411.6万円(3.2%増) | 2.8%減 |
| エスクリ | 2025年4〜6月 | 資料に実数なし(通期計画は5.1%減) | 資料に実数なし(値引き抑制で好調と記載) | 12.6%減(ブライダル関連) |
| アイ・ケイ・ケイ | 2025年10月期 | 既存店の施行組数が減少 | 前期から上昇 | 5.2%減 |
エスクリとアイ・ケイ・ケイは、この期間の件数と単価の実数を、僕が読んだ資料からは取れませんでした。そこで、取れる年度の数字は後ろで別に並べます。まず、数字がいちばん揃っているテイクアンドギヴ・ニーズから読みます。
テイクアンドギヴ・ニーズ:5.5%減って3.2%増えて、2.8%減
テイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&G)の2025年12月期の中間期(2025年4〜9月)の資料には、直営店の婚礼の実績が既存店ベースで載っています。
- 施行件数:4,431件から4,187件へ。244件、5.5%の減少
- 平均単価:398万8千円から411万6千円へ。12万8千円、3.2%の増加
- 平均人数:60.1人から60.7人へ。0.6人、0.9%の増加
- 直営店婚礼の売上:178億6,900万円から173億7,400万円へ。2.8%の減少
件数と単価を掛け合わせると、0.945に1.032で約0.975です。売上は2.5%前後の減少になる計算で、資料の2.8%減と近い値です。単価が3.2%上がっても、件数の5.5%減には届いていません。
もう一つ目に留まるのは、平均人数の動きです。単価は3.2%上がったのに、人数は0.9%しか増えていません。単価の上昇のうち、人数で説明できるのは3割に届きません。残りは、1人あたりの単価の上昇や、衣裳などの付帯商品の分だと読めます。
この資料には、前の年度の実績もあります。2025年3月期(2024年4月〜2025年3月)の資料では、売上総利益の増減要因として、婚礼の取扱件数が4.4%減ったことが約18億円のマイナス、婚礼単価が2.4%上がったことが約9億円のプラスと書かれていました。件数が減った分の影響は、単価が上がった分の影響の2倍の大きさです。
さらに、中間期の資料には、こう書かれています。件数を確保するために思い切った広告投資をしたものの、第3四半期の施行件数は当初の計画を下回る見通しになったため、通期の業績予想を修正した、と。広告を増やしても、施行件数の減少は止まりませんでした。ただし、同じ資料の別の頁では、問合せ数や受注数は前年同期比で100%を超えた時期もあります。広告で入口は増えても、施行にたどり着く件数には届かなかった、という読み方もできます。
エスクリ:受注残が8割まで減っていた
エスクリの2026年3月期第1四半期(2025年4〜6月)の資料では、売上高が50.8億円で前年同期から11.1%減りました。そのうちブライダル関連は、約6.2億円、12.6%の減収です。理由の欄には「値引き抑制、施行単価は好調に推移したものの施行件数の減少により」とあります。単価は上がっていますが、件数の減少で相殺しきれていません。
ここで見ておきたいのは受注残です。2025年6月末時点の受注残の件数は2,899件で、前年同月末の80.9%でした。同じ資料の通期計画の欄には、2025年3月末の受注残が前年同期の81.8%だったことも書かれています。受注残は、すでに契約を済ませて、これから施行する件数のことです。2期続けて8割台まで減っています。
通期の計画は、単価が前期比0.4%増、施行数が5.1%減という前提で組まれていました。これを掛け合わせると約0.955で、計画上の売上は4.5%減です。計画の段階で、すでに単価の上昇では件数の減少を埋めない前提になっていたことになります。
アイ・ケイ・ケイ:単価が5%上がっても、組数は減っていた
アイ・ケイ・ケイホールディングスの2024年10月期(2023年11月〜2024年10月)の資料には、年間の数字があります。
- 施行組数:5,515組から5,462組へ。53組、1.0%の減少
- 施行単価:379万8千円から398万6千円へ。18万8千円、5.0%の増加
- 受注残組数(2024年10月末):4,874組から4,473組へ。401組、8.2%の減少
この年度は、組数の減少が1.0%に収まり、単価が5.0%上がったので、件数と単価の掛け算では増える側に出ます。ただし、年度末の受注残が8.2%減っていました。その翌年の2025年10月期は、NetIB-Newsが決算を報じた記事によると、婚礼事業の売上は207億7,300万円で前期比5.2%減でした。理由は、施行単価は上昇したものの、既存店の施行組数が減少したことだと書かれています。
注意したいのは、単価の定義が会社ごとに違うことです。アイ・ケイ・ケイの施行単価は、一般宴会、キャンセル料、海外婚礼事業を除いて算出しています。3社の単価を、横に並べて高い低いを比べるのは避けたほうがいいと思います。同じ会社の中で、前の年と比べた動きだけを見るのが安全です。
もう1社、統合した会社の数字は読み方に注意が要る
ノバレーゼとエスクリが統合したオンザページは、2026年12月期の第2四半期の説明会で、平均組単価が398万8千円で前年同期から7.8%伸びたと説明しています。一方で、新規来館組数は前年同期比で2.0%減っています。平均ゲスト数は52.8人です。
ただし、この7.8%は、純粋な上昇率として読めません。資料の説明では、前年の第2四半期は旧ノバレーゼの1月から6月だけの実績で、当期は旧ノバレーゼの1月から6月に、旧エスクリの4月から6月を足したものです。対象の会場が変わっているので、単価の上昇には会場の構成の変化が混ざっています。今回の表と見出しの3社に入れなかったのは、このためです。
それでも読み取れることはあります。単価の上昇の理由として、衣裳の着用率が上がり、高価格帯の新作ドレスやタキシードが売れたことが挙がっていました。単価を支えているのは、料理や人数より、付帯商品のほうだという説明です。T&Gの人数がほとんど増えていないことと、方向は同じです。
市場全体の数字と並べる
矢野経済研究所の調査(2026年2〜3月)では、2025年のブライダル関連市場は主要5分野の合計で1兆5,786億円、前年比99.9%の見込みです。そのうち最も大きい挙式披露宴・披露パーティ市場は、2025年の施行件数の減少と、列席者の人数の伸び悩みで、前年から微減したと推計されています。
市場全体は0.1%の減少で、ほぼ横ばいです。上の3社の婚礼売上は、それよりも大きく減っています。ブライダルジュエリーなどの他の分野が、全体の数字を支えている可能性があります。ここは矢野の資料から分野ごとの内訳が取れなかったので、断定はしません。確かなのは、挙式披露宴の分野では、施行件数の減少が市場の数字にも現れているということです。
売上を件数と単価に分けて読む
3社に共通していたのは、次の3つです。
- 件数は1%から6%減っている
- 単価は上がっている(T&Gは3.2%、アイ・ケイ・ケイは5.0%)
- それでも婚礼の売上は減っている
ここから、式場ごとに使える計算を置いておきます。売上は、件数に単価を掛けたものです。件数が減ったとき、売上を守るために必要な単価の上昇率は、1を(1から減少率を引いた値)で割って、1を引けば出ます。
| 件数の減少率 | 売上を守るのに必要な単価の上昇率 |
|---|---|
| 1% | 約1.0% |
| 3% | 約3.1% |
| 5% | 約5.3% |
| 5.5%(T&Gの中間期) | 約5.8% |
| 10% | 約11.1% |
件数が5.5%減ったT&Gは、単価が5.8%上がれば売上が横ばいでした。実際の上昇は3.2%でした。足りない分は2.6ポイントです。
もう一つ、年を重ねたときの影響があります。件数が毎年5%減り、単価が毎年3%上がるとします。売上は1年目に約2.2%減ります。3年目には約6.3%、5年目には約10.3%減ります。単価の上昇が続いても、件数の減少が続くかぎり、売上は下がり続けます。この計算は、3社の毎年の動きを予測したものではなく、前提を置いた試算です。
受注残をどう使うか
受注残は、翌期以降の施行件数のもとです。エスクリは2期続けて前年の8割台、アイ・ケイ・ケイは2024年10月末に前年比で8.2%減でした。どちらも、期中の件数の計画より深く落ちています。
ただし、受注残の減少率を、そのまま翌期の施行件数の減少率に当てはめることはできません。受注残には、1年以上先の予約が含まれています。式場によって、契約から施行までの期間も違います。T&Gのように、広告投資の効果で受注残が戻る局面もあります。受注残は、翌期の件数を見立てるときの材料の一つとして、前年の同じ時点と並べて見るものだと思います。
判断の分かれ目
僕が3社の資料を読んで、式場の経営会議で確認する価値があると思ったのは次の点です。
- 売上の増減を、件数の増減と単価の増減に分けて、毎月記録しているか
- 単価の上昇が、人数、料理、衣裳、写真などのどこから来ているか。人数が増えないまま単価が上がっているなら、付帯商品の比率が上がっているということ
- 前年の同じ時点の受注残と比べて、何%になっているか
- 件数の計画に、広告費の増額がどれだけ前提として入っているか。T&Gは広告を増やしても計画の件数に届かなかった
単価を上げる施策は、件数の施策より手を付けやすいので、先に動きます。ただ、3社の数字を見るかぎり、単価の上昇だけで件数の減少を埋めるのは難しい。同じ期間の中で、どちらが売上の変化を大きく動かしているかを、数字で確認しておくことが先です。
この記事の限界
- 3社は上場している式場会社で、ゲストハウスやホテルを多く運営しています。地方の小規模な会場、神社、互助会は含まれません
- 比べた期間が会社ごとに違います。T&Gは2025年4〜9月、エスクリは2025年4〜6月、アイ・ケイ・ケイは2025年10月期です
- エスクリとアイ・ケイ・ケイの直近期の件数と単価の実数は、読んだ資料からは取れませんでした。見出しの「3%から13%」は、婚礼売上の減少率(2.8%、5.2%、12.6%)の範囲です
- T&Gの数字は既存店ベースで、会社の戦略的な店舗の再編が件数に影響していると資料に書かれています
- 単価の定義は会社ごとに違うので、会社同士の単価の比較はしていません
まとめ
- 上場の式場3社では、施行件数が減り、1組の単価は上がり、それでも婚礼の売上は2.8%から12.6%減っていた
- T&Gの中間期は、件数5.5%減、単価3.2%増、売上2.8%減。売上を守るには単価が5.8%上がる必要があった
- 単価の上昇は人数ではなく、付帯商品や1人あたりの単価から来ている面が大きい
- エスクリとアイ・ケイ・ケイでは、受注残が前年の8割台や8.2%減まで落ちていた。前年の同じ時点と比べる材料になる
- 売上は件数と単価に分けて、毎月同じ形で記録するのが先
