来館・成約

式場の問い合わせ返信は、会場名より担当者名で出す条件

問い合わせに返信するとき、差出人の欄に何が出ているか。会場名だけの共用アドレスから、署名も「ウェディングサロン」のような部署名で送っている式場は、思っているより多いと思います。

僕の考えは、初回の返信から担当者の名前で出して、予約から見学の当日まで同じ人が持つ、です。ただし、これは担当者の休みと異動の扱いを決めてからでないと、逆効果になります。この記事は、その条件を整理する話です。

先に断っておくと、差出人の名前が予約率や成約率をどれだけ動かすかを測った調査は、探しましたが見つかっていません。数字はすべて僕が置いた仮の前提で、実在の式場の数字ではありません。断定は「仕組みとしてこうなる」と言える範囲に留めます。

二人の受信箱では何が起きているか

結婚式場を探している二人は、短い期間に何軒も問い合わせを入れます。見学の候補を絞る段階では、三軒から六軒に同時に連絡している、というのは珍しくありません。すると受信箱には、同じ日に複数の式場から返信が並びます。

このとき、一覧に出るのは差出人の名前と件名の冒頭だけです。差出人が会場名だけの返信は、他の式場の返信と見た目が変わりません。名前の付いた返信は、「この人が対応してくれるのだな」と分かります。開く前の時点で、すでに差がつきます。

開いた後も同じです。共用アドレスからの返信は、誰が書いたのか、次に連絡すると誰が答えるのかが分かりません。二人が見学の前に一つだけ質問したいと思ったとき、返信ボタンを押す相手が「会場」なのか「人」なのか。ここで迷った二人は、質問を送らずに、見学の当日にまとめて聞こうと考えることがあります。質問が届かないので、式場は事前に準備ができません。

もう一つ、見学の当日に起きることがあります。受付で「メールをくれた方に会いたいんですが」と言われたとき、誰のことか分からない。担当者が当日の見学にたまたま入っていないと、二人は初対面の人に最初から説明し直すことになります。これは小さな落胆ですが、ここで起きているのは返信の見た目の問題ではなく、二人が最初に築いた「この人」という認識が、当日につながらないということです。

共用アドレスが向いている場面

共用アドレスで出すのが悪い、という話ではありません。向いている場面があります。

一つは、問い合わせが多く、一人では返信を回せない式場です。誰が返しても同じ品質で返せるように、テンプレートと共用の受信箱で運用している。この形は、返信の速さを守るために作られたもので、速さが最優先なら理にかなっています。

もう一つは、担当者の入れ替わりが頻繁な式場です。個人名で出すと、その人が辞めたときに、二人から見れば「連絡していた相手がいなくなった」ことになります。共用アドレスなら、この問題は起きません。

つまり、共用アドレスの強みは「誰が休んでも止まらない」ことで、弱みは「二人が相手の顔を思い浮かべられない」ことです。担当者名で出す形は、この強みと弱みが逆になります。顔は思い浮かべられるが、その人が休むと止まる。どちらを選ぶかは、自分の式場の問い合わせ数と人員で決まります。

担当者名で出すなら、決めておく三つの約束

担当者名で出す場合に、運用の前に決めておくことが三つあります。

返信先は共用の受信箱にも届くようにする

差出人は担当者の名前にしても、返信ボタンを押した先は、担当者個人のアドレスだけにしないほうが安全です。共用の受信箱にも同じ内容が届くようにしておく。そうすれば、担当者が休んでいる日に二人から質問が来ても、他の誰かが見られます。

形としては、差出人の表示名を「会場名 担当者の名前」にして、アドレスは共用のものを使い、担当者個人の受信箱へも転送する、という作りがあります。メールソフトの設定でできる範囲です。送信ドメイン認証の設定は別に必要ですが、そこは以前の記事で扱ったので、ここでは触れません。

休みの日と、その代わりに出す名前を最初に書く

初回の返信の末尾に、「私が不在の日は、同じチームの〇〇が対応します」と一行入れます。これだけで、休みの日に返信が遅れたときの印象が変わります。二人にとって、担当者が休みなのは当然のことで、困るのは「返事が来ない理由が分からない」ことです。

もう一つ、休みの曜日を書くのも有効です。式場の定休日は水曜日や火曜日であることが多いので、「水曜日はお休みをいただいており、翌日にご返信します」と書いておけば、二人は返信が来ない理由を想像しないで済みます。

見学の当日も、同じ名前の人が出迎える

初回の返信で名前を出したのに、当日の受付に別の人が出てくると、名前を出したことが裏目に出ます。見学の予約に担当者の名前を紐づけて、当日のシフトで、その人が見学の枠に入れるようにする。入れないときは、前日までに二人へ「当日は〇〇がご案内します。私も後で挨拶に伺います」と連絡する。

この連絡があるかないかで、二人の受け取りは変わります。担当が変わること自体より、知らされずに変わることのほうが、信頼を落とします。

前提を置いて、数えてみる

実在の数字ではなく、仮の前提で計算します。

  • 月に80件の問い合わせが来る
  • そのうち40%が見学を予約する(32組)
  • 見学した組の30%が成約する(約9.6組)

ここで、担当者名で出す形に変えたら、予約率が2ポイント上がって42%になったと仮定します。

  • 予約は 80 × 0.42 = 33.6組。増えるのは月1.6組
  • 成約率が同じ30%なら、増える成約は月0.48組。年にすると約5.8組

予約率の上がり方が小さく、1ポイントだけなら、増える成約は月0.24組、年で約2.9組です。逆に5ポイント上がるなら、年に約14組。幅はかなり大きくなりますが、仮に1ポイントでも、年に3組近く増えるなら、運用の手間と比べる価値はあります。

では、手間はどれくらいか。担当者の休みを月4日と置くと、80件を30日で割って1日あたり約2.7件、4日で約10.7件の返信を、休みの担当者の代わりに他の誰かが見ることになります。共用の受信箱にも届く形にしてあれば、これは「代わりに返す」作業で、新しく増えるものではありません。もともと誰かが返していた件数です。

増えるのは、返信の頭に名前を入れる手間と、引き継ぎの連絡の手間です。1件あたり1分としても、月に数十分から1時間程度。年の成約が数組増える可能性と比べれば、手間のほうが軽い、というのが僕の見立てです。

ただし、この計算は「予約率が上がる」という前提に乗っています。上がらなければ、増えるのは手間だけです。ここは自分の式場の数字で確かめるしかありません。

自分の数字で確かめる方法

確かめ方は単純です。問い合わせを半分ずつに分けて、片方は共用アドレス、片方は担当者名で返す。1か月か2か月続けて、予約率を比べます。

分け方は、問い合わせが来た日の偶数・奇数で分けるのが手軽です。曜日で分けると、土日の問い合わせの質が平日と違うので、比べにくくなります。日付の偶数・奇数なら、偏りが出にくい。

注意点は二つあります。まず、80件で半分ずつなら一方が40件です。この件数では、予約率が数ポイント違っても、偶然の揺れの範囲に入ります。差が出るかどうかを一回で決めつけず、翌月も続けて、同じ向きに違いが出るかを見る。次に、返信の速さを揃えること。担当者名のほうだけ返信が早ければ、名前の効果ではなく速さの効果を見ていることになります。

分けて試せるほどの件数がない式場は、試さずに、担当者名にしてしまってかまいません。月に20件前後なら、担当者が全部見られる件数です。共用アドレスの強みである「回せる」は、そもそも必要ありません。

担当者名を出さないほうがいい式場

条件を満たしていないのに名前を出すと、損をします。次の場合は、いまのままでよいと思います。

  • 担当者の入れ替わりが年に何人もある。名前を出しても、二人が当日会う頃にはいない
  • 共用の受信箱を誰も見ていない。休みの日に返信が止まるのが目に見えている
  • 見学の当日に、予約と担当者を紐づける仕組みがない。名前だけ出して、別の人が出迎えることになる

この三つのうち、一つでも当てはまるなら、先に直すのは差出人の名前ではなく、運用のほうです。名前だけを変えても、期待を上げるだけで、当日の落差が大きくなります。

切り替えの手順

担当者名に変えると決めたとき、一度に全部を変えず、順番に進めます。

  1. 担当者を決める。最初は、返信と見学の両方に入っている一人か二人にする
  2. 差出人の表示名と、返信文の署名を、その人の名前に変える
  3. 共用の受信箱にも届く設定を確かめる。担当者が休みの日に、誰が見るかを決める
  4. 初回返信の末尾に、不在の日と代わりの名前を一行入れる
  5. 見学の予約と担当者の名前を、当日の台帳に紐づける
  6. 1か月後に、予約率と、返信が止まった日の数を見る

2番まで進めて3番以降を後回しにするのが、いちばん多い失敗だと思います。名前を出すところは目に見えて分かりやすいので、先に手が付く。しかし効くのは、3番から5番の裏側のほうです。

まとめ

  • 二人の受信箱では、差出人が会場名だけの返信は他の式場の返信と見分けがつかない。担当者の名前が付くと、開く前に差がつく
  • 共用アドレスは「誰が休んでも止まらない」のが強み。担当者名は「顔が思い浮かぶ」のが強みで、休みに弱い
  • 担当者名で出すなら、返信先を共用の受信箱にも届ける、休みの日と代わりの名前を書く、当日も同じ人が出迎える、の三つを先に決める
  • 仮に月80件の問い合わせで予約率が2ポイント上がれば、年の成約は約5.8組増える。1ポイントなら約2.9組。この前提は自分の数字で確かめる
  • 日付の偶数・奇数で半分ずつ分けて1〜2か月比べると、効果が見える。件数が少ない式場は、試さず担当者名にしてよい
  • 担当者の入れ替わりが多い、共用の受信箱を誰も見ない、当日に担当者を紐づけられない場合は、名前の前に運用を直す