来館・成約

式場の問い合わせフォームは、項目を減らす前に使い道を点検する

式場サイトの問い合わせフォームについて、よく聞く助言があります。「項目は少ないほど完了率が上がる。名前とメールアドレスだけにしなさい」というものです。入力の手間が減れば、途中でやめる人が減る。理屈は合っています。

ただ、僕はこの助言をそのまま受け取ると、半分は損をすると考えています。フォームの項目は、入力する二人の負担であると同時に、返信する式場の道具でもあるからです。削った項目は、なくなるわけではありません。返信メールや電話で、あとから聞くことになります。

この記事では、項目を減らす前にやることを整理します。各項目が接客のどこで使われているかを点検して、使われていないものだけを削る。その手順と、減らしたほうが得になる条件の出し方です。数字の調査ではなく、フォームと返信の流れという構造から組み立てた話なので、業界全体の傾向は言いません。「仕組みとして、こうなりやすい」という範囲で書きます。

削った項目は、返信の聞き返しに形を変える

まず、起きることを順に追います。

項目を5つから2つに減らしたとします。フォームの完了率は上がるかもしれません。問い合わせの件数も増えるでしょう。ここまでは、減らした側の成果として目に見えます。

次に、返信の場面です。希望日も人数も分からないまま届いた問い合わせに、担当者は何を返すでしょうか。空き日を案内したくても、いつの話か分かりません。見積もりの目安を出したくても、人数が分かりません。結果として、返信は「ご希望の時期とご人数を教えてください」という質問になります。

二人から見ると、問い合わせたのに答えが返ってこず、また入力を求められた形です。しかも今度は、フォームではなくメールの返信を打つ手間がかかります。スマホで入力欄に選択肢をタップするのと、メールに文章で書くのとでは、負担が違います。

つまり、項目を削って減るのは入力の回数ではなく、入力する場所です。フォームの入力が、返信の聞き返しに引っ越すだけになることがあります。引っ越した先のほうが手間が重いなら、フォームで稼いだ完了率を、その後の離脱で返すことになります。

損益の分かれ目を、仮置きの数字で出す

どのくらいの離脱なら元が取れるのか。実際の数字は式場ごとに違うので、前提を置いた計算で見てみます。以下はすべて仮置きで、出典はありません。

  • 月に1,000人がフォームを開く
  • 項目が多い現状では、55%が送信まで進む(550件)。返信後に見学の予約まで進む割合は40%
  • 項目を減らすと、送信まで進む割合は65%に上がる(650件)

この前提で、現状の予約は 550 × 40% で月220組です。

減らした後の予約は、返信後の予約率しだいで変わります。聞き返しが増えて予約率が36%に下がったとすると、650 × 36% で月234組です。差は14組で、減らしたほうが勝ちます。

では、どこまで下がると負けるのか。現状の220組を650件で割ると、33.8%です。返信後の予約率が40%から33.8%を割り込むと、項目を減らしたほうが予約は少なくなります。下がり幅にして6ポイント強です。

この数字の読み方を2つ書きます。

1つ目は、減らして勝てる余地はたしかにあるということです。完了率が10ポイント上がる前提なら、予約率が6ポイント下がるまでは耐えられます。「項目は減らすな」とは言いません。

2つ目は、この分かれ目は式場ごとに違うということです。完了率の上がり幅が3ポイントしかなければ、予約率はほとんど下げられません。逆に、減らす項目が返信にまったく影響しないなら、予約率は下がらず、完了率の上がり分がそのまま残ります。つまり勝負は、「何を削るか」で決まります。件数ではありません。

点検するのは、項目ごとの「返信での使い道」

削る項目を決めるには、現在のフォームの項目を1つずつ見て、次の3つに答えます。

  1. この項目は、最初の返信で使っているか
  2. 使っていないなら、見学の予約を取るまでのどこかで使っているか
  3. どこでも使っていないなら、なぜ聞いているのか

3に答えられない項目が、最初に削る候補です。ここは迷いません。住所や電話番号、「ご意見・ご要望」の長い自由記入欄が、よく残っています。いつか使うかもしれないと思って残したまま、誰も見ていない項目です。

例として、よくある項目を並べて、使い道の見方を書いておきます。これは各式場に当てはまる答えではなく、点検の型です。

  • 希望の挙式時期:最初の返信で空き日を出すのに使う。ないと返信が聞き返しになる。残す候補
  • 人数の目安:見積もりの目安を返すのに使う。ただし、決まっていない二人も多い。必須にせず、選択式にして「未定」を置く手もある
  • 見学の希望日:予約を取るのに使う。問い合わせと予約を同じフォームで済ませるなら残す。別に予約ページがあるなら、問い合わせ側には要らない
  • 電話番号:折り返し電話をする運用があるなら使う。メールとLINEだけで返す運用なら、必須にする理由がない
  • どこで知ったか:媒体費の評価に使う。ただし、二人の自己申告は見学の場でも聞けるので、フォームで必須にする必要は薄い。見学の最初の1問で聞くほうが、答えが正確になることがあります
  • ご意見・ご要望の自由記入欄:読んで返信に反映しているなら残す。読んでいないなら削る。任意にして、置いておくだけなら完了率への影響は小さい

この点検で見つかるのは、「減らせる項目」と「減らすと返信が重くなる項目」の区別です。件数の目標から入ると、この区別が飛びます。

必須にするか、任意にするか

もう1つの論点があります。同じ項目でも、必須と任意では、二人の負担がまったく違うことです。

必須の項目は、書かないと送れません。二人が答えを持っていない項目だと、そこで止まります。まだ日取りが決まっていない、人数も分からない、という二人は少なくありません。この二人に挙式時期や人数を必須で求めると、答えを無理に作って入れるか、送信をやめるかのどちらかになります。

任意の項目は、書ける人だけが書きます。ここで押さえたいのは、書かれていないことそのものが情報になるという点です。人数が空欄なら、まだ決まっていない二人だと分かります。その二人には、見積もりの目安より、先に見学で会場を見てもらう案内のほうが合います。

なので、次の順で考えると整理しやすくなります。

  • 最初の返信が成り立たない項目だけを必須にする。多くの場合、連絡先と、返信の形を決める1〜2項目
  • 返信の中身を良くする項目は、任意にして選択式にする。「未定」「決まっていない」の選択肢を必ず置く
  • 使い道のない項目は削る

選択式にするのは、入力の負担を下げるためだけではありません。自由記入だと、「来年の春くらい」「秋ごろ」「決まっていません」と、表記がばらばらに届きます。返信のたびに担当者が解釈することになり、返信テンプレートにも組み込みにくくなります。選択式なら、選んだ内容でそのまま返信の型を切り替えられます。

項目を減らした後に見るもの

フォームを変えたら、見る数字を決めておきます。完了率だけを見ていると、先ほどの引っ越しが見えません。

  • フォームの完了率:送信まで進んだ割合。減らした効果が最初に出る
  • 初回返信への反応率:返信を送った件数のうち、二人から再び連絡があった割合。聞き返しが増えると、ここが下がる
  • 見学予約までの日数:問い合わせから予約確定までの日数。聞き返しが増えると、延びる
  • 予約件数:最終的な成果。上の3つの結果として出る

大事なのは、減らした前後を、同じ長さの期間で比べることです。フェアの時期や広告の出稿量が変わると、件数だけ見ても原因が分かりません。前後の数週間ずつ、広告の出し方を変えずに比べるのが現実的です。

加えて、返信の下書きに「聞き返しの文面」がどれだけ増えたかを、担当者に数えてもらうのも手です。聞き返しの返信が、全体の何割になったか。この割合が目に見えて増えているなら、削った項目のどれかは必須で戻したほうがいい、というサインです。

一気に変えず、1項目ずつ動かす

最後に、進め方を書きます。

項目を5つから2つへ、一度に変えるやり方は避けたほうがいいと考えています。結果が出たとき、どの項目が効いたのか、どの項目が余計だったのかが分からなくなるからです。

1か月に1項目ずつ動かす手もありますが、式場の問い合わせ件数は月に数十から数百件のことが多く、1項目の差では数字が揺れて、効果が読めません。現実的には、次の順がいいと思います。

  1. まず、使い道が見つからない項目をまとめて削る。返信に影響しないので、リスクが小さい
  2. 次に、必須の項目を任意に変える。答えを持っていない二人の離脱を減らす
  3. 最後に、返信で使っている項目を削るかどうかを、損益の分かれ目の計算で判断する

1と2で、フォームの手間の大半は減らせるはずです。3は、1と2を済ませてもなお完了率が低い場合の、最後の手段です。

まとめ

  • フォームの項目を削っても、聞く手間はなくなりません。返信の聞き返しに移るだけで、入力の負担がかえって重くなることがあります
  • 仮置きの数字では、完了率が55%から65%に上がっても、返信後の予約率が約34%を割ると、項目を減らしたほうが予約は少なくなります。この分かれ目は式場ごとに違うので、自分の数字で出し直します
  • 点検の基準は「最初の返信で使うか」「見学の予約までに使うか」です。どちらにも使わない項目を、先に削ります
  • 必須にするのは、最初の返信が成り立たない項目だけにします。決まっていない二人のために、選択肢には「未定」を置きます
  • 変更後は、完了率だけでなく、初回返信への反応率と、予約までの日数も見ます。削る順番は、使い道のない項目、必須の見直し、返信で使う項目の順です