来館・成約

入籍済みの二人が式場に問い合わせたら先に聞く3つのこと

式場の問い合わせ対応は、たいてい「婚約したばかりの二人」を思い浮かべて作られています。自動返信の一文目は「ご婚約おめでとうございます」、フォームの項目は「ご婚約日」、見学の案内は「これから結婚式を考える二人へ」。

ところが、問い合わせてくる二人の中には、すでに入籍している人たちがいます。この人たちに婚約の祝福から始まる返信を送ると、最初の一通で小さなズレが起きます。大きな問題ではないです。ただ、候補を3つ4つ並べて比べている最中の二人にとって、最初の一通は「この式場は自分たちを見てくれているか」を測る数少ない材料になります。

この記事では、入籍済みの二人から問い合わせが来たときに、先に聞いておきたいことを3つに絞ります。結論から書くと、聞くのは「なぜ今、式を考えたのか」「誰を呼ぶつもりか」「日取りに使いたい日があるか」の3つです。入籍日そのものや、入籍からの期間は、後回しにして構いません。

入籍済みの二人は、どれくらいいるのか

まず、数の話です。僕が確認できた範囲で、入籍後に式を挙げる人の割合を示した公開データは見つけられませんでした。そのかわり、入籍から挙式までの期間なら出ています。

リクルートの「ゼクシィ結婚トレンド調査2022」では、2021年度に結婚した人の入籍から挙式までの期間が平均9.5カ月で、過去最長だったと報じられています(ITmediaの記事による)。コロナ禍で緊急事態宣言などが長引き、式を後ろに延ばした人が多かった年の数字です。

この数字から言えるのは、入籍と挙式が同じ時期とは限らない、という当たり前のことまでです。平均が9.5カ月ということは、入籍のほうが先で、式があとから来る二人が少なくない、という構造は見て取れます。ただし、自分の式場でその割合がどれくらいかは、この数字からは分かりません。

だから最初にやることは、一般論を調べることではなく、自分の式場の問い合わせで数えることです。やり方は後半に書きます。

婚約前提の対応が、入籍済みの二人にズレる場所

入籍済みの二人に、婚約前提の対応を当てると、ズレる場所はだいたい決まっています。

  • 自動返信の一文目が「ご婚約おめでとうございます」になっている
  • フォームの「ご婚約日」が必須で、入力に迷う
  • 呼びかけが「新郎様・新婦様」で、苗字の扱いが決まっていない
  • 「結婚式の準備はこれからですね」という前提で案内が始まる

どれも、一つひとつは小さいです。ただ、二人はすでに生活を始めています。同じ家に住んでいて、苗字が同じになっていて、親族への報告も済んでいる。そういう二人に「これから結婚が決まる人」の言葉を向けると、式場の側が、二人の今の状況を見ていないように映ります。

もう一つ、見落としやすいのが苗字です。入籍して苗字が変わった新婦に、旧姓で連絡が届く。逆に、まだ旧姓で仕事をしているのに、新姓で呼ばれる。どちらも、二人が気にする点です。フォームの名前欄が「ご予約者名」と「ご新婦様のお名前」に分かれているだけで、答えが決まる式場もあるはずです。

先に聞く1つ目:なぜ今、式を考えたのか

入籍済みの二人に最初に聞いてほしいのは、式を考えた理由です。入籍して何カ月か、あるいは何年かたってから問い合わせてくる二人には、必ず「今」になった理由があります。

僕が思いつく範囲で、理由は次のように分かれます。

  • 入籍のときは時間や状況の都合で式を見送ったが、落ち着いたので改めて考え始めた
  • 親や親族から「式をしないのか」と言われた
  • 友人や職場の人の結婚式に出て、自分たちもやりたくなった
  • 子どもが生まれる、転勤するなど、式を挙げられる時期に区切りが見えた
  • 結婚記念日や節目の年を、式の日にしたい

ここでは、割合を書きません。書けるデータがないからです。ただ、理由によって、その後の話の進み方は大きく変わります。

「親に言われた」なら、決めるのは二人だけでなく、親の意向が大きく入ります。見学に親が同席する可能性も高く、費用の出どころも変わります。「区切りが見えた」なら、期限が先にあって、日取りの選択肢が狭い。「節目の年にしたい」なら、日にちが先に決まっていて、式場を選ぶ基準は「その日に空いているか」になります。

理由を聞かないまま、通常の見学案内を送ると、この違いが全部消えてしまいます。聞き方は、尋問にならないように、返信の最後に一行足す程度で十分です。「差し支えなければ、式を考え始めたきっかけを教えていただけると、当日のご案内がしやすくなります」。答えがなくても、見学の席で自然に聞けます。

先に聞く2つ目:誰を呼ぶつもりか

2つ目は、呼ぶ範囲です。入籍済みの二人は、入籍の時点で、家族や親族への報告を済ませていることが多いはずです。その場で食事会をした二人もいれば、報告だけで終えた二人もいます。

ここが、婚約したばかりの二人と違うところです。婚約したばかりの二人は、招待リストをこれから作ります。入籍済みの二人は、「入籍のときに集まった人たち」「集まれなかった人たち」の区別がすでにあります。

たとえば、入籍時に家族だけで食事をした二人が、今回は友人や職場の人も呼びたいと考えているとします。この場合、前回の食事会の人数が、今回の人数の下限になります。一方、入籍のときに誰とも会わなかった二人は、親族全員をこれから呼ぶことになるかもしれない。

人数が違えば、見学で案内する会場も、見積もりの総額も、全部変わります。ここを聞かずに、一般的な人数の見積もりを出すと、後で作り直しになります。

聞き方は、人数ではなく「どなたをお呼びしたいか」にします。人数を聞くと、二人は数字を絞り出そうとして、考えていない数字を答えてしまいます。「ご家族だけか、ご友人やご親族も含めるか」くらいの粒度で十分です。見積もりは、帯で出す。この考え方は、別の記事(初回見積もりは申告人数に増減の幅を添える)にも書いたとおりです。

先に聞く3つ目:日取りに使いたい日があるか

3つ目は、日取りです。入籍済みの二人には、婚約したばかりの二人にはない候補日があります。

  • 入籍した日(結婚記念日)
  • 入籍の日に近い週末
  • 初めて出会った日、プロポーズの日

入籍記念日を式の日にしたい二人は、その日が平日であることが多いはずです。平日の挙式を受けるかどうかは、式場によって方針が違います。だから、最初の返信の段階で、その日に挙式ができるかどうかを返せると、二人にとって大きな安心材料になります。

逆に、その日が大安の土曜日と重なっていたら、取り合いになる日です。人気日の仮押さえ期限や、割増料金の話に入る必要が出てきます。日取りを先に決めると見学できる会場が減るという構造は、別の記事でも書きました。二人が使いたい日が決まっているなら、その日に空いているかどうかを、見学の前に答えられるようにしておくほうが、時間を無駄にさせません。

聞き方は簡単です。「ご希望の日にちや、大切にされている日があれば教えてください」。この一言で、二人が日にちから逆算して動いているのか、会場を見てから日にちを決めるのかが分かります。

自分の式場の割合を、1か月で数える

ここまで、入籍済みの二人を特別扱いする話をしてきました。ただ、自分の式場でその二人がどれくらいいるかを知らないまま、文面やフォームを直しにいくのは順番が違います。

数え方は単純です。1か月、見学に来た二人のうち、入籍済みの人を記録します。フォームに項目を足す必要はありません。見学の冒頭の雑談で「入籍はもう済まされているんですか」と聞いて、予約表にチェックを入れるだけです。フォームの項目を増やすと完了率が下がる可能性があるので、数えるための項目は足さないほうがいいです。

1か月の見学組数が30組で、入籍済みが3組なら1割です。この割合が小さければ、文面を全面的に変える必要はありません。自動返信の一文目を、婚約を前提にしない言い方に変えるだけで足ります。たとえば「ご結婚に関するお問い合わせありがとうございます」にしておけば、婚約中の二人にも入籍済みの二人にも使えます。

割合が3割を超えるなら、入籍済みの二人向けの案内を別に用意する価値が出てきます。ここは判断の分かれ目なので、数えてから決めます。

前提を置いたモデル計算

ここで、直すことに意味があるかを、仮の数字で確かめます。数字は全部、僕が置いた前提で、実在の式場のものではありません。

前提は次のとおりです。

  • 月の問い合わせは50組
  • そのうち入籍済みの二人は2割で、10組
  • 問い合わせから成約までの割合は、全体で8%(月4組)
  • 入籍済みの二人の成約率も、同じ8%で月0.8組
  • 文面の見直しと聞き取りに使う作業は、年に3時間で、1時間2,500円とすると7,500円
  • 1組成約したときの粗利は、仮に100万円

入籍済みの二人への対応を見直して、成約率が8%から9%に1ポイント上がったとします。月10組の1ポイントは、0.1組です。年にすると1.2組。粗利にして120万円です。

作業費の7,500円は、粗利100万円の1組分の、約0.75%です。年に1組の1%強が動けば元が取れる、という計算になります。

この計算で言いたいのは「必ず1ポイント上がる」ということではありません。効果は分かりません。言えるのは、直す作業が小さいので、効果が小さくても元が取れやすい、という構造です。

逆に、入籍済みの割合が仮に5%で、月2.5組だとします。1ポイント上がっても、月0.025組、年0.3組です。粗利30万円。作業費はほぼ同じなので、それでも元は取れますが、優先順位は他の施策より下がります。割合を数える意味はここにあります。

聞き取りのあとに、何を変えるか

3つの質問の答えが集まると、入籍済みの二人に必要な案内が見えてきます。

理由が「親に言われた」に偏っていたら、親が同席する前提で案内を作ります。見学に来た親に二人が説明を求められる場面も出てくるので、二人に渡す資料を一枚用意しておく。呼ぶ範囲が「前回の食事会より広げたい」に偏っていたら、人数の幅を広めに取った見積もりの型を作っておく。日取りが「記念日」に偏っていたら、平日の枠の空きを案内の中に入れておく。

どの答えが多いかは、式場によって違うはずです。だから、最初の数か月は、聞いた答えを一行ずつ予約表に残していきます。件数が10組を超えたあたりで、傾向を見る。20組あれば、案内を分ける価値があるかが判断できます。

入籍済みの二人に、避けたい言い方

聞き取りの前に、こちらから避けたい言い方も整理しておきます。

  • 「ご結婚が決まったばかりの二人」と決めつける
  • 「入籍はまだですか」と聞く
  • 「どうして式をしなかったんですか」と過去を聞く
  • 「新婦様のお名前」を旧姓のまま呼ぶ、または新姓で呼んで確認しない

とくに過去を聞く質問は、二人にとって、答えにくい場合があります。式を挙げなかった理由は、お金、時間、体調、家族の事情など、さまざまです。式場が聞いて良いのは「今、考えている理由」までで、「なぜ当時やらなかったのか」は、二人が自分から話してくれるまで待つほうが安全です。

まとめ

  • 式場の問い合わせ対応は、婚約したばかりの二人を前提に作られがちで、入籍済みの二人には最初の一通でズレが出る
  • 入籍済みの二人に先に聞くのは、式を考えた理由、呼ぶ範囲、日取りに使いたい日の3つ
  • 入籍後に式を挙げる二人の割合は、公開データでは確認できなかったので、自分の式場の見学で1か月数える
  • 入籍から挙式までの平均期間は9.5カ月(ゼクシィ結婚トレンド調査2022・2021年度結婚者)で、入籍が先に来る二人がいる構造は見て取れる
  • 自動返信の一文目を婚約前提にしない言い方に変えるだけでも、作業は小さく、元が取れやすい
  • 割合が小さければ文面の修正だけ、3割を超えるなら入籍済みの二人向けの案内を別に用意する
  • 過去を聞かず、今の理由を聞く