来館・成約

転勤が決まった二人には、空き日より先に赴任日から逆算した段取りを返す

「4月から転勤が決まりました。それまでに式を挙げたいです」。こういう問い合わせが、式場に入ることがあります。転勤、海外赴任、単身赴任の前、という二人です。

この問い合わせへの返信が、普通の問い合わせと同じ文面になっている式場は多いと思います。「ご希望の時期の空き日はこちらです。ぜひ一度ご見学ください」という返信です。丁寧ですが、この二人がいちばん知りたいことには答えていません。

結論から書きます。転勤が決まった二人には、空き日を並べる前に、赴任日から逆算した段取りを返したほうがいいです。二人が探しているのは「いい日」ではなく、「赴任日までに間に合うかどうか」の答えだからです。間に合うと分かれば、日取りは二人が自分で選びます。間に合うかどうかが分からないままだと、二人は、返信が速くて段取りまで書いてくれる式場へ移ります。

この記事に出てくる数字は、すべて僕が置いた仮のものです。業界の平均でも、どこかの式場の実績でもありません。式場ごとに準備に要る期間は違うので、自分の式場の数字に置き換えて読んでください。

転勤が決まった二人は、日取りの動かし方が違う

普通の問い合わせの二人は、日取りを動かせます。「来年の秋ごろ」と決めて、気に入った式場を見つけるまで何軒でも回れます。見学を1か月遅らせても、選べる日は大きくは減りません。

転勤が決まった二人は違います。動かせない端が、赴任日として先にあります。赴任日の前に挙げたい二人もいれば、赴任して落ち着いたあとに挙げたい二人もいます。どちらを選ぶにしても、「いつまでに何を決めるか」が赴任日で決まってしまいます。

この違いは、式場選びの順番にも出ます。普通の二人は「雰囲気が好きな式場」から回ります。赴任日が決まっている二人は、「間に合う式場」から回ります。好みの前に、条件で絞られるわけです。

もう一つあります。赴任日が近い二人は、仕事の引き継ぎで平日の昼間に動けません。見学に使える時間が、もともと少ないのです。見学の枠を土日の昼に集中させている式場だと、そもそも予約できないことがあります。

空き日を並べるだけの返信で、何が起きるか

典型的な返信を考えてみます。二人がフォームに「4月に海外赴任のため、3月までに挙式したい」と書いてきたとします。式場はこう返します。

「3月の空き日は、〇日(土)と〇日(日)です。ぜひご見学にお越しください。」

二人の側から見ると、この返信には足りないものが2つあります。

1つ目は、「その空き日で、本当に準備が間に合うのか」が書かれていないことです。空き日が見えても、衣装の決定、招待状の発送、料理の打ち合わせを何週間で終えられるのかは分かりません。二人は不安を持ったまま見学に来ることになります。見学の場で初めて「間に合いません」と言われれば、そこまでの時間が全部無駄になります。

2つ目は、「見学から契約までの間に、赴任の準備と両立できるか」が見えないことです。引っ越し、引き継ぎ、家探しと同時に結婚式の準備を進めるのは、二人にとって大きな負担です。負担が大きそうだと感じた二人は、挙式を赴任後に回します。そうなると、その二人は「いま挙げる式場」の検討から外れていきます。

赴任日から逆算した段取りを、仮の数字で見てみる

どのくらい余裕がないのかを、仮の前提で計算してみます。構造を見るための計算で、実際の期間は式場ごとに違います。

仮の前提を置きます。

  • 赴任日は、問い合わせの日から14週間後とする
  • 赴任日の2週間前までに挙式を終えたい。つまり挙式日は問い合わせの12週間後が上限
  • 契約から挙式までの準備に、式場の標準で10週間かかるとする
  • 問い合わせから見学までに1週間、見学から契約までの検討に2週間かかるとする

この前提で、問い合わせから挙式までの時間を積み上げます。

項目 必要な週数 累計
問い合わせから見学まで 1週間 1週間
見学から契約まで 2週間 3週間
契約から挙式まで 10週間 13週間

上限は12週間なので、1週間足りません。この仮の前提では、普通の流れで進むと、赴任日までに間に合わない二人になります。

ここで差が出ます。見学までの1週間を3日に縮められる式場、検討の2週間を1週間に縮める材料を渡せる式場、準備の10週間を8週間に圧縮した進め方を持っている式場があれば、この二人は間に合います。何も縮められない式場には、そもそも契約できる可能性がありません。

この計算で見えることは2つです。1つは、間に合うかどうかの境目が、ほんの1〜2週間の差で決まることです。もう1つは、その差を縮められるかどうかが、見学の日取りの空きではなく、段取りの持ち方で決まることです。空き日を並べる返信では、この差が伝わりません。

最初の返信に入れる3つのこと

では、最初の返信に何を入れるか。僕なら3つ入れます。

1. 赴任日までの全体の見通し。 「4月赴任の場合、3月中の挙式は、お申込みから最短で〇週間が目安です」と、先に書きます。ここで言う最短は、式場が実際に回せる期間にします。実際より短い数字を書くと、契約したあとに間に合わなくなり、信頼を失います。

2. 縮められる部分と、縮められない部分。 衣装は何週間前までに決めればよいか、招待状は何週間前までに出せばよいか、料理の最終確認はいつか。縮められない部分を先に書いておけば、二人は「どこで無理をするか」を判断できます。縮められる部分には、打ち合わせの回数を絞る、オンラインで済ませる、といった進め方を添えます。

3. 見学で決めることの絞り込み。 見学の日に、全部を見せる必要はありません。会場と見積もりと日取りだけ決めて、残りは契約後にオンラインで進める、といった形を先に示します。見学の枠を平日の夜やオンラインにも広げられるなら、そこも書きます。

この3つは、空き日の一覧よりも先に、二人の「間に合うのか」という問いに答えます。空き日は、その後ろに添えるだけで構いません。

赴任後に挙げる二人にも、同じ返信が効く

赴任日の前に挙げられないと分かった二人は、赴任後に挙げることを考えます。この二人は、日取りが決まっていないだけでなく、住む場所が変わっています。

たとえば、海外赴任から帰国したあとに挙げる、あるいは赴任先から一時帰国したタイミングに挙げる、という選び方です。この二人にとって大事なのは、挙式の日そのものより、日取りを動かせる範囲が広いかどうかです。

ここでも、返信に入れるのは同じ3つです。「帰国後に挙げる場合、帰国の何週間前から準備を始めればいいか」を示せば、二人は赴任中にオンラインで準備を進める選択ができます。式場にとっては、いま契約が取れなくても、赴任後の契約につながる接点になります。

ただし、先の話を急いで契約に結びつけないことです。帰国時期が未定の二人に「今のうちに押さえませんか」と迫ると、離れていきます。見通しを示して、二人が判断できる材料を渡すところまでにとどめるほうが、あとで連絡が返ってきます。

この返信を作るために、式場の側で用意しておくもの

こういう返信は、問い合わせが来てから考えていると遅れます。あらかじめ用意しておくものは、次の3つです。

1つ目は、契約から挙式までの「最短の標準期間」を、式場の中で決めておくことです。担当者によって言うことが違うと、二人は信用しません。実際に回せる最短を一度確認して、全員が同じ数字を言える状態にします。

2つ目は、期間を圧縮するときの進め方を、手順として書いておくことです。何を先に決めて、何を後回しにするか。打ち合わせをオンラインで済ませる場合は、どの回が対象か。これを一枚にまとめておくと、返信の文面を毎回考えなくて済みます。

3つ目は、圧縮しても間に合わない日程の見極めです。間に合わない二人には、正直に「この日程では難しいです」と伝えます。そのうえで、赴任後に挙げる案を示します。できないことをできると言って契約した場合、その後の準備で二人に無理をさせ、結果として口コミに響きます。

問い合わせフォームにも、一つ工夫ができます。「挙式までに期限のある事情がありますか」と自由記入欄で聞くのではなく、「いつまでに挙式を終えたいですか」という項目を任意で置いておけば、期限のある二人が自分から書いてくれます。理由まで聞く必要はありません。転勤か、妊娠か、親の事情かを式場が詮索すると、二人は身構えます。期限だけ分かれば、段取りは組めます。

見落としやすい点:赴任日が動く場合

転勤や赴任は、辞令が出てから日付が決まるまでに動くことがあります。二人が「4月と言われているが、3月になるかもしれない」と話してくることもあります。

この場合、式場は日付を確定させようとしないほうがいいです。「赴任日が決まった時点で、改めて準備の見通しをお出しします」と伝え、仮押さえの期限や、日程変更の条件を先に伝えておきます。変更の条件が見えていれば、二人は安心して先に進めます。

仮押さえの期限や日程変更の扱いは、式場によって大きく違います。ここを曖昧にしたままだと、二人は決め切れずに保留にします。保留になった二人が戻ってくる可能性は、時間が経つほど下がると考えるのが自然です。条件を先に出しておくのは、成約率を守るための準備です。

まとめ

  • 転勤や海外赴任が決まった二人は、日取りを動かせない端が先にある。探しているのは「いい日」より「間に合うかどうか」の答え
  • 空き日を並べるだけの返信では、準備が間に合うかどうかと、赴任準備との両立が見えない
  • 仮の前提(赴任まで14週、準備10週など)で逆算すると、間に合うかどうかは1〜2週間の差で決まる。その差を縮められるかは、空きではなく段取りの持ち方で決まる
  • 最初の返信には、全体の見通し、縮められる部分と縮められない部分、見学で決めることの絞り込みの3つを入れる
  • 事前に、標準の最短期間、圧縮の進め方、間に合わない日程の見極めを決めておく
  • 赴任日が動く二人には、日付を確定させず、仮押さえの期限と変更の条件を先に伝える