経営・組織

装花を外注から内製に替えると、1組あたり2.1万円は浮く。ただ、フローリスト2人を雇う年900万円を取り返すには、年423組が要る

会場の装花を、外部のフラワーショップに頼むか、自社のフローリストでつくるか。この判断は、会場が大きくなったり、料理や衣裳の原価を見直したりしたときに、必ず一度は出てくると思います。

内製のほうが利益が出る、という話はよく聞きます。外注費が売価の4割から5割もかかるなら、自分たちでつくれば半分近くが浮く、という理屈です。この理屈は半分だけ正しくて、浮くのは材料費との差額だけです。そこから人を雇う固定費を引くと、話が変わります。

結論から書きます。装花の売価が1組15万円、外注費が売価の45%の仮の式場で内製に替えると、1組あたり約2.1万円浮きます。ところが、フローリスト2人と設備で年900万円かかるので、取り返すには年に423組の挙式が要ります。年120組の会場では、内製に替えると年に約644万円の赤字です。

この記事は出典のある統計に頼る話ではありません。数字はすべて僕が置いた仮のものです。前提を本文に書くので、外注費の割合や人件費は、自分の会場の数字に置き換えて読んでください。最後に、年120組の会場でも内製が成り立つ3つの道を書きます。

前提:年120組、装花は1組15万円

まず仮の式場を決めます。

  • 年間の挙式は120組
  • 装花(会場装花、高砂、テーブル装花、ブーケ周りをまとめた一式)の売価は1組15万円
  • 外注のとき、フラワーショップへの支払いは売価の45%(6万7,500円)
  • 内製のとき、花材の仕入れは売価の28%(4万2,000円)
  • 内製では花が余ったり傷んだりするので、花材の1割(4,200円)を廃棄ロスとして上乗せする。実質の材料費は4万6,200円
  • フローリストは2人。1人あたり年420万円(給与、社会保険、交通費などを合わせた会社負担)で、2人で840万円
  • 花を保管する冷蔵設備、道具、作業場のリース料は年60万円
  • 固定費の合計は年900万円

この45%と28%は、僕が置いた仮の値です。外注先との契約や、花の種類、季節によって大きく動きます。自分の会場の請求書を1年分並べると、実際の割合が出ます。多くの会場は、装花の売価と外注費を、個別の見積もりごとにしか見ていないはずです。

1組あたり、いくら浮くか

内製に替えたときの差を、1組分で出します。

  • 外注の原価:15万円×45%=6万7,500円
  • 内製の原価(変動費):15万円×28%×1.1=4万6,200円
  • 差:6万7,500円−4万6,200円=2万1,300円

1組あたり約2.1万円浮きます。売価15万円の14%にあたります。

この2.1万円が、内製の収益の源泉のすべてです。挙式が増えれば増えるほど、この2.1万円が積み上がります。一方、フローリストの給与は、挙式が何組でも変わりません。

損益分岐は年423組

固定費900万円を、1組あたり2.13万円の差で割ると、損益分岐が出ます。

900万円÷2.13万円=約423組。

年120組の会場でこれを当てはめると、次のようになります。

年間の挙式 浮く額 固定費 差し引き
60組 128万円 900万円 −772万円
80組 170万円 900万円 −730万円
100組 213万円 900万円 −687万円
120組 256万円 900万円 −644万円
150組 320万円 900万円 −581万円
200組 426万円 900万円 −474万円

200組の会場でも、まだ赤字です。内製が黒字になるのは、固定費を割れる組数が十分あるときか、固定費そのものが小さいときのどちらかです。

「外注費が売価の45%もかかっている」という数字は、確かに重く見えます。ただ、内製にすると、その45%のうちの28%分は花材として残ります。浮くのは差の17ポイントと、ロス分の引き算だけです。この17ポイントに、組数をかけた額が、人を雇えるかどうかを決めます。

外注の割合と材料費の割合で、分岐は大きく動く

仮に置いた45%と28%が、実際には違っていたらどうなるでしょうか。外注の割合を40%、45%、50%、材料費の割合を24%、28%、32%に動かして、損益分岐の組数を出します。固定費は900万円、廃棄ロスは1割のままです。

外注の割合\材料費の割合 24% 28% 32%
40% 441組 652組 1,250組
45% 323組 423組 612組
50% 254組 313組 405組

どの組み合わせでも、年120組の会場は届きません。外注が売価の5割もかかっていて、材料費が24%に収まる、一番有利な組み合わせでも254組です。

逆に、見落とされやすいのは、外注の割合が下がる方向です。外注先との交渉で、45%を40%に下げられたら、損益分岐は一気に遠のきます。内製に切り替えるかどうかを考える前に、まず外注先との条件を確認する価値があります。

外注費の交渉は、内製より安い

年120組の会場で、外注費の割合を5ポイント下げたら、いくら浮くでしょうか。

120組×15万円×5%=90万円。

2ポイントなら36万円です。内製の固定費900万円と比べると、小さく見えるかもしれません。ただ、固定費を増やさずに、そのまま利益になる90万円です。リスクは外注先との関係だけで、フローリストの退職も、欠員も、道具のメンテナンスも起きません。

交渉の材料は、年間の発注量です。年120組の発注を1社にまとめる、繁忙期の前に予定を出す、花材の指定をゆるくする(時期の花を使う)など、外注先にとってのコストが下がる条件を出せれば、割合は動きます。僕の知る範囲では、この条件の話し合いを年に一度もしていない会場が少なくありません。

内製が成り立つ3つの道

ここまでの計算は、「フローリスト2人を雇う」という重い前提でした。内製が成り立つ道は、この前提を変えることで見つかります。

1. 固定費を小さくする(パートで始める)

フローリストを正社員2人ではなく、週2日働くパート1人にします。年180万円(設備リース込み)と置くと、損益分岐は180万円÷2.13万円=約85組。年120組なら、浮く256万円から180万円を引いて、年に約76万円の黒字です。

ただし、この黒字には条件があります。パート1人が処理できるのは、挙式が重ならない日の分だけです。土日に2組の挙式が入る日は、どちらかを外注に出す必要があります。その外注の分は、内製の効果から外れます。

2. 全部ではなく、一部だけ内製にする

装花一式のうち、ブーケやテーブル装花だけを内製にして、大きな会場装花は外注に残す方法です。内製の範囲が狭いので、必要な人数も少なく済みます。

この場合の分岐は、内製にする部分の差額と、それをつくるための時間で決まります。1組あたりの差額は2.13万円より小さくなりますが、固定費も900万円より小さくなります。小さく始めて、数字を見ながら範囲を広げるやり方です。

3. 組数を増やす(装花だけ別の売上を持つ)

固定費を割る組数を、自社の挙式以外で増やす道です。たとえば、近隣の別の会場や、法人のイベント向けに装花を外販する。ここまで来ると、会場の装花の話ではなく、フラワー事業の話になります。

僕はこの道を、結婚式場が最初に選ぶ道としては勧めません。別事業の営業と品質管理を、同時に始めることになるからです。ただ、すでに近隣に複数の会場を運営している法人なら、1人のフローリストが複数の会場を回ることで、組数が増えます。

計算に入らない、3つの見えにくい効果

数字に入れていない効果が、3つあります。内製を推す側は、ここを強調します。

  • 変更への対応が速い:ご新郎新婦の要望が直前で変わっても、自社で調整できる
  • 品質を自社で管理できる:外注先の担当者が変わっても、質が落ちない
  • 提案の幅が広がる:現場にフローリストがいれば、打ち合わせの場で実物に近い提案ができる

どれも本物の効果だと思います。ただ、数字になりにくいので、判断に入れるときは慎重にしたほうがいいです。

たとえば、「提案の幅が広がる」が、装花の売価を15万円から17万円に上げられるなら、年120組で240万円です。固定費900万円の4分の1を取り返せます。ただ、売価を上げて成約が減れば、1組140万円の粗利が飛びます。240万円を稼ぐ代わりに、2組の成約を失えば、差し引きで損になります。

この2組という数字が、判断の基準線です。内製で売価を上げるなら、成約への影響を見る必要があります。

欠員のリスクを数える

もう1つ、固定費の計算には出ない損があります。フローリストが辞めたときです。

外注なら、外注先が人を補います。内製だと、1人が辞めると、その人の分の装花がつくれません。補充に3か月かかるとすると、その間の挙式は、緊急で外注先に頼むことになります。

仮に、年120組のうち3か月分(約25組分)を、緊急対応の割増料金で外注したとします。割増が通常の外注費の2割増なら、1組あたり1万3,500円の追加です。25組で約34万円。金額としては小さいです。

ただ、緊急対応を頼める外注先が見つからなければ、金額の問題ではなくなります。内製に切り替えて外注先との関係を切った会場は、このときに困ります。内製を始めても、外注先との取引は完全には切らず、年に数組だけ頼み続ける運用が安全です。

自分の会場に当てはめる手順

最後に、この記事の計算を自分の会場で使う手順を書きます。

  1. 過去1年の装花の売価と、外注先への支払いを組ごとに並べる。外注の割合の平均と、ばらつきを出す
  2. 内製にした場合の花材の仕入れ額を、外注先の見積もりや市場の相場から推計する。ロス率は1割から始める
  3. 1組あたりの差額を出す。差額に、年間の挙式数をかけて、浮く総額を出す
  4. フローリストの人数と給与を決めて、固定費を足す。パート、一部内製、フル内製の3つで試す
  5. 外注先との条件交渉で浮く額を、同じ表に並べる。内製の固定費と比べる

この5つで、内製が成り立つかどうかが数字で見えます。浮く額が固定費を下回るなら、先に交渉に動くほうが早いです。

まとめ

  • 装花の売価が15万円、外注費が売価の45%の仮の式場では、内製で1組あたり約2.1万円浮く。
  • フローリスト2人と設備で年900万円かかるので、損益分岐は年423組。年120組の会場では、年に約644万円の赤字になる。
  • 外注の割合が5割、材料費が24%でも、損益分岐は254組。年120組では届かない。
  • 外注先との条件交渉で割合を5ポイント下げれば、年90万円浮く。固定費は増えない。
  • 内製が成り立つ道は、パートで始める、一部だけ内製にする、組数を外で増やす、の3つ。
  • 数字に出ない効果は、売価の引き上げが成約を1.7組以上減らさない範囲でだけ、判断に入れる。
  • 緊急時に頼れる外注先との取引は、内製に替えても残す。