カード払いを全額で認めると、仮の式場では年612万円の手数料。内金だけに絞れば年36万円。決めるのは手数料率より、使える範囲だ
結婚式の支払いに、クレジットカードを使えるようにするか。使えるとして、いくらまで使えるようにするか。この二つは、別々に決める話です。
結論から書きます。年120組、1組の総額が340万円の仮の式場で、カード会社に払う手数料が3%、支払いの半分がカードだとすると、全額をカードで受けた場合の手数料は年612万円です。同じ式場で、カードを使えるのを内金の20万円までに絞ると、年36万円で済みます。手数料率の違いよりも、「どこまで使えるか」の線引きのほうが、17倍も大きく動きます。
この記事の数字は、すべて僕が置いた仮のものです。組数も、総額も、手数料率も、カードを使う人の割合も、調査の数字ではありません。自分の会場の数字に置き換えると結論が変わるので、「どの数字が結論を動かすのか」を読み取るための計算として読んでください。
カード手数料は、誰が払っているのか
まず仕組みを確認します。カードで支払われた代金のうち、数%はカード会社が取ります。これを加盟店手数料と呼びます。三井住友カードの解説は、この手数料を払うのは店側(加盟店)だと説明しています。
利用者側の負担は、支払い方で変わります。一括払いなら、利用者は手数料を払いません。分割払いやリボ払いは、利用者が金利にあたる手数料を払います。この利用者側の手数料は、式場の売上にはなりません。カード会社の取り分です。
つまり式場から見ると、カードで受けた代金は、そのうち数%が最初から入ってこない代金です。現金や振込なら、340万円は340万円のまま入ります。カードなら、340万円のうち数%がカード会社に回ります。
実際の料率は、業種や取引の規模、カード会社との契約で違います。解説では3%前後とされることが多い、というのが僕の理解です。ここでは仮に2%、3%、4%の三つを置いて計算します。自社の契約書か、カード会社の明細で、実際の料率を確かめてから読み替えてください。
仮の式場を置く
計算に使う前提です。
- 年間の成約は120組
- 1組の総額は340万円
- 1組の粗利は140万円(手数料を引く前)
- 年間の来館は600組。成約率は20%で、120組になる
- カードの手数料率は3%を中心に、2%と4%も見る
- 支払いのうち、カードで払われる割合は、20%、50%、80%の三つを見る
粗利140万円は、総額340万円から、料理・衣装・装花・人件費などの原価を引いた額です。ここに手数料がさらに乗ります。
1組あたりの手数料
総額340万円に手数料率を掛けます。全額がカードで払われたとした場合の、1組の手数料です。
- 2%なら6万8,000円
- 3%なら10万2,000円
- 4%なら13万6,000円
3%の10万2,000円は、粗利140万円の7.3%にあたります。1組あたりで見ると、目立たない額に見えるかもしれません。ただ、年120組を掛けると、話が変わります。
年間にすると、どのくらいか
カードで払われる割合を変えて、年間の手数料を出します。手数料率は3%、総額は340万円、年120組です。
| カードで払われる割合 | 年間の手数料 | 粗利140万円の組数に直すと |
|---|---|---|
| 20% | 245万円 | 1.75組分 |
| 50% | 612万円 | 4.4組分 |
| 80% | 979万円 | 7.0組分 |
手数料率を変えても見ておきます。カードの割合が50%のとき、2%なら408万円、4%なら816万円です。率を1ポイント動かすと、年に約200万円動きます。
この612万円という額は、見積書のどこにも出てきません。広告費や人件費のように、会議の資料に載る額でもありません。カード会社からの入金が、手数料を引いた額で入ってくるだけです。気づかないまま、毎年払い続けやすい費用です。
「使える範囲」を絞ると、どうなるか
手数料は、カードで払われた金額に比例します。だから、カードを使える範囲を絞れば、手数料は小さくなります。三つの線引きを比べます。
- 全額カードで受ける(340万円まで)
- 中間の金額までカードで受ける(仮に100万円まで)
- 予約金・内金だけカードで受ける(仮に20万円まで)
それぞれ、カードを使う人の割合が50%、手数料率が3%、年120組だとして、年間の手数料を出します。この「50%」は、使える範囲の中で、カードを選ぶ人が半分という意味です。
- 全額カードで受ける:340万円 × 3% × 50% × 120組 = 612万円
- 100万円まで:100万円 × 3% × 50% × 120組 = 180万円
- 20万円まで:20万円 × 3% × 50% × 120組 = 36万円
内金だけに絞れば、年36万円です。粗利140万円の1組に、0.26組を足したくらいの額です。全額と比べると、576万円の差になります。
絞ったときの代償は、成約が減るかどうか
ここで気になるのは、「カードを使えない人は、契約をやめるのではないか」という点です。この点は、仮に数字を置いて、損益分岐を出せます。
全額をカードで受ける場合と、内金だけに絞る場合の手数料の差は、年576万円です。この576万円を取り返すのに要る成約は、576 ÷ 140 = 4.1組です。年間の来館が600組なら、成約率に直して0.69ポイントにあたります(4.1 ÷ 600)。
言い換えると、こうです。内金だけに絞ったことで、成約が年に4組以上減るなら、全額対応のほうが得です。4組未満の減少なら、絞るほうが得です。
年間来館600組のうち、カードで払えないために契約をやめる人が0.7%、つまり600組のうち4組以上いるか。これが分かれ目になります。自社の失注理由を見て、「支払い方法」が理由で外れた人が年に何組いるか、数えてみてください。
使える範囲を決めるときに見る四つの点
数字の置き方で結論は変わります。決める前に、次の四つを自社で確かめます。
一つ目は、カードで払う人の割合です。 50%と置きましたが、実際は会場によって大きく違います。内金だけにカードを許している会場なら、割合そのものが高くなりやすいです。振込の手間が要らないので、内金はカードを選ぶ人が増えます。全額に広げると、割合が下がる場合もあります。自社の入金明細から、カードで入った額を数えます。
二つ目は、手数料率が下がる余地があるかどうかです。 取扱額が大きい加盟店ほど、料率は下がる傾向があります。3%を2%に下げられれば、全額対応でも年408万円です。1ポイントで約200万円という大きさは、交渉する価値のある額です。ただし、これは契約先のカード決済会社との話なので、自社の取扱額と、他の決済会社の条件を見てから決めます。
三つ目は、ポイントを理由にした支払いの偏りです。 カードを使う人の中には、ポイントを貯める目的の人がいます。340万円の支払いは、ポイントの額として大きくなります。この人たちは、カードが使えないと分かった時点で、見積もりの比較から外すことがあります。これは僕の見立てで、数字の裏付けはありません。自社の失注理由に「支払い方法」が出ているかどうかで確かめます。
四つ目は、入金のタイミングです。 カード払いは、代金の入金が、カード会社の締め日と支払日に従います。振込なら即日に近いですが、カードは翌月や翌々月になることがあります。預かり金の動きは、別の記事で書いたとおり、式場の資金繰りを大きく動かします。手数料だけでなく、入金が遅れる日数も、費用として数えます。
「手数料を二人に上乗せする」は、選びにくい
手数料を二人に上乗せする、という手があります。カードで払うなら、3%分を足して請求する、という考え方です。
先ほどの解説は、この上乗せを加盟店規約が禁じている、と説明しています。契約するカード会社や決済会社によって規約は違うので、僕は断定しません。ただ、禁じられている場合があることは、決める前に知っておく必要があります。
規約の問題を別にしても、上乗せには別の問題があります。見積書の総額が、カード払いのときだけ3%高くなります。二人が3会場を比べているなら、総額の比較で不利になります。見積もりの比べやすさについては、別の記事で書きました。総額が高く見えることの損は、手数料の3%より大きくなる場合があります。
上乗せせずに手数料を吸収するか、使える範囲を絞るか。この二つのほうが、現実的な選択肢です。
自社の数字で確かめる手順
仮の数字を、自社の数字に置き換える手順です。
- 直近1年の入金明細から、カードで入った額と、手数料として引かれた額を出す。引かれた額が分からないときは、カード会社の月次の明細を見る
- 手数料の総額を、成約した組数で割る。これが1組あたりの手数料になる
- 1組の粗利で割る。7%を超えているなら、使える範囲を決め直す価値がある
- 失注理由のうち、「支払い方法」「カードが使えない」を理由にした組数を数える
- 手数料の削減額を、1組の粗利で割る。この組数より、失注が少ないなら、絞るほうが得になる
この手順で、一番手間がかかるのは、失注理由の記録です。記録していない会場は、まず「支払い方法」の欄を、失注理由に足すところから始められます。
まとめ
- カード払いの手数料は、店側が払う。一括払いなら二人は払わない
- 仮の式場(年120組・総額340万円・手数料3%・カードが半数)で、全額対応なら手数料は年612万円。粗利140万円の組数にして4.4組分
- 使える範囲を内金の20万円までに絞ると、年36万円。差の576万円は、成約4.1組分、来館600組に対する成約率で0.69ポイント
- 手数料率を1ポイント下げられれば、同じ前提で年約200万円が動く
- 絞って失う成約が年4組未満なら絞るほうが得、それ以上なら全額対応のほうが得。決め手は、失注理由に「支払い方法」が何組あるか
- 上乗せは規約で禁じられている場合があり、総額の比較でも不利になる。吸収するか、範囲を絞るかで考える
