フォロワー1万人の投稿から式場の見学は何組来るか|依頼費の上限の出し方
式場がインフルエンサーに投稿を頼むとき、最初に聞かれるのはたいてい「フォロワーは何人ですか」です。次に「1投稿いくらですか」と続きます。この2つで話が進むと、費用の高い安いは分かっても、その費用で式場に何組の二人が見学に来るのかは、誰も計算していないまま契約が決まります。
この記事では、フォロワー1万人のアカウントに1回投稿を頼んだと仮定して、見学予約が何組くらい生まれるのかを、前提を置いて計算します。そのうえで、式場が払える依頼費の上限を、1成約あたりの粗利から逆算する手順をまとめます。先に結論を書くと、上限は相場ではなく、見学予約の見込み組数で決まります。フォロワー数は、その見込みを出すための入力の1つにすぎません。
なお、ここで置く数字は、僕が計算のために仮に置いたものです。実在の式場の実績ではありません。自分の会場の数字に置き換えて使ってください。
依頼費を決める前に、投稿の先を数える
インフルエンサーへの依頼は、投稿が出た時点では何も起きていません。式場の売上に届くまでには、段が何枚もあります。
- 投稿を見る人がいる(フォロワーのうち何割が見るか)
- 見た人のうち、プロフィールや予約ページへ進む人がいる
- 進んだ人のうち、見学かフェアを予約する人がいる
- 予約した人のうち、実際に来館する人がいる
- 来館した人のうち、契約する人がいる
依頼費の相談では、この5段のうち最初の1段(フォロワー数)しか出てきません。残りの4段は、式場が自分の数字で答えられる部分です。予約から来館への率は予約管理の記録で出ますし、来館から契約への率は成約の記録で出ます。つまり、依頼費の上限を決めるのに必要な数字のうち、式場の外から取らないといけないのは「投稿を見る人」「リンクへ進む人」の2段だけです。
仮のモデル:フォロワー1万人の1投稿
フォロワー1万人のアカウントが、式場の見学予約につながる投稿を1本出すとします。次の3つの率を、強気・中間・控えめの3通りで置いて、見学予約が何組になるかを計算します。
| 投稿を見る割合 | リンクへ進む割合(見た人のうち) | 予約する割合(進んだ人のうち) | 見学予約の見込み | |
|---|---|---|---|---|
| 控えめ | 5% | 0.5% | 3% | 0.075組 |
| 中間 | 10% | 1% | 5% | 0.5組 |
| 強気 | 20% | 2% | 10% | 4組 |
計算は、フォロワー数 × 見る割合 × 進む割合 × 予約する割合です。控えめなら10,000人 × 5% で500人が見て、そのうち0.5%の2.5人がリンクへ進み、3%の0.075組が予約します。中間は1,000人が見て10人が進み、0.5組。強気は2,000人が見て40人が進み、4組です。
この3つの率は、どれも仮置きです。ただ、並べてみると分かることがあります。同じフォロワー1万人でも、率の置き方で見学予約は0.075組から4組まで、50倍以上開きます。 依頼費の見積もりの前に、この開きを式場が把握していないと、「高い」「安い」の判断そのものができません。
見学予約を、粗利に直す
次に、見学予約の見込みを、式場の粗利に直します。ここでも前提を仮に置きます。
- 見学予約した二人のうち、実際に来館する割合:70%
- 来館した二人のうち、契約する割合:30%
- 1成約あたりの粗利:80万円
この3つを掛けると、見学予約1組あたりの期待粗利が出ます。0.7 × 0.3 × 80万円 = 16.8万円です。見学予約が1組増えるごとに、平均すると16.8万円分の粗利が見込める、という意味になります。
先ほどの3通りに当てはめます。
| 見学予約の見込み | 期待成約 | 期待粗利 | |
|---|---|---|---|
| 控えめ | 0.075組 | 0.016組 | 約1.3万円 |
| 中間 | 0.5組 | 0.105組 | 約8.4万円 |
| 強気 | 4組 | 0.84組 | 約67万円 |
控えめなら、1投稿で見込める粗利は1.3万円です。ここに依頼費が5万円かかれば、その1投稿は赤字になります。中間でも8.4万円で、依頼費が10万円なら届きません。強気で初めて、大きく黒字です。
この表の見方で大事なのは、期待粗利の全額が、依頼費の上限ではないことです。粗利の中から、契約後の運営費用や人件費が出ていきます。依頼費に粗利の全額を充ててしまうと、成約しても手元に残りません。上限は、期待粗利の何割かまで、と先に決めておきます。たとえば半分を上限にするなら、中間のモデルでは約4.2万円です。
3つの率のうち、どれを自分で確かめられるか
仮置きした3つの率のうち、依頼前に式場が確かめられるものと、依頼してみないと分からないものがあります。
確かめられるもの
- 予約から来館に至る率、来館から契約に至る率、1成約の粗利は、自社の記録から出せます
- 予約ページの入力が長くて途中でやめる人が多いなら、「予約する割合」は低く置くべきです。これも自社のフォームの記録で見えます
依頼しないと分からないもの
- 投稿を見る割合と、リンクへ進む割合は、そのアカウントの過去の投稿でしか分かりません
後者は、依頼前に相手から教えてもらえる数字があります。過去の投稿ごとのリーチ数(見た人の数)と、プロフィールやリンクのクリック数です。アカウントの管理画面で見られる数字なので、依頼の相談のときに、直近の投稿数本分を見せてもらうよう頼めます。出してもらえない相手は、率を最も控えめに置いて計算します。
フォロワー数が少ないほうが、率は高いことがある
フォロワー数が多いほど効果が高い、とは限りません。ビジネスインサイダー・ジャパンが紹介している調査では、Instagramのエンゲージメント率は、フォロワー規模が小さいほど高い傾向が示されています。目安として、1,000〜1万フォロワーで4〜5%、1万〜10万フォロワーで1.4〜2%、10万〜100万フォロワーで1.3〜1.6%と紹介されています。
ただし、これは「いいね」とコメントの合計をフォロワー数で割った数字で、見学予約の率ではありません。さらに、1つの調査を紹介した記事の数字なので、あくまで傾向の目安にとどめます。式場にとって意味があるのは、次の読み替えです。
フォロワー規模が小さいアカウントは、1人あたりの反応が高い可能性があるので、「リンクへ進む割合」を中間より高めに置く根拠になる。ただし、フォロワー数が少ない分、見る人の数が小さく、見学予約の組数は少ない。
つまり、小さいアカウントを複数に頼む場合と、大きいアカウントを1つに頼む場合では、依頼費が同じでも、見学予約の期待値は違ってきます。どちらが良いかは、それぞれのアカウントの過去の投稿の数字を、先ほどの表に入れて比べるしかありません。
フォロワーの住んでいる場所を確かめる
式場のインフルエンサー施策で、もう1つ見落とされやすいのが、フォロワーの居住地です。見学は来館が前提なので、遠くの人がいくらフォロワーに入っていても、見学予約にはなりません。
管理画面には、フォロワーの上位の地域や年代が出ます。式場の商圏(車や電車で見学に来られる範囲)にいるフォロワーが何割かを、依頼前に確認します。仮に、1万人のうち商圏にいるのが2割なら、前の表の「投稿を見る人」は、2,000人を基準に計算し直すことになります。
同じように、年代と婚姻の予定も確認します。結婚式を検討する年代のフォロワーが多いアカウントと、そうでないアカウントでは、率の置き方が変わります。
払い方で、リスクを分ける
上限が決まったら、払い方を決めます。主な選択肢は3つです。
- 固定額:投稿1本いくら、と決める。リスクは式場が負う
- 成果に連動:見学予約が入った数や、来館した数に応じて払う。リスクは相手が分ける
- 固定額+成果の上乗せ:低めの固定額に、成果で上乗せする
成果に連動する形は、式場にとっては安心です。ただ、相手にとっては、投稿の中身が式場の予約フォームの使いやすさや、特典、日程の空きに左右される部分があるので、受けてもらえないことがあります。その場合は3つ目の形が、現実的な落としどころになります。
どの形でも、どの予約がその投稿から来たのかを数える仕組みが先に必要です。投稿専用のリンク(予約ページのURLに目印を付けたもの)を用意して、予約フォームの「どこで知りましたか」の選択肢に、その人の名前か「Instagramの投稿」を入れておきます。数えられないまま依頼すると、翌月に「効いたかどうか分からない」で終わります。
広告であることを、投稿に明示する
事業者が依頼して出してもらう投稿は、一般の人から見て広告と分かる形にする必要があります。消費者庁の告示(令和5年内閣府告示第19号)は、事業者の表示であることを一般消費者が判別しにくい表示を、不当表示として指定していて、2023年10月1日に施行されています。
式場側が気を付ける点は、次のとおりです。
- 依頼した投稿には、「PR」「広告」など、依頼を受けたことが分かる表示を、投稿の目立つ場所に入れてもらう
- 表示の入れ方は、依頼の時点で書面かメッセージに残しておく
- 費用を払っていなくても、無料の宿泊や食事の提供、割引のような対価を渡すなら、同じ扱いで考える
この表示を入れると、見る人が減るのではないか、と心配する人もいます。その場合は、モデルの「見る割合」を少し低く置いて計算し直してください。表示を入れた形で上限を決めておけば、あとで条件が変わっても慌てません。
結果を見て、次の依頼を決める
1本の投稿が終わったら、モデルに置いた3つの率を、実際の数字で置き換えます。見学予約の数、リンクのクリック数、投稿のリーチ数の3つが分かれば、「見る割合」「進む割合」「予約する割合」が実績で出ます。
次の依頼は、その実績の率で、同じ表をもう一度作って判断します。
- 実績が、中間と控えめの間なら、依頼費を下げて続けるか、やめる
- 実績が、中間と強気の間なら、同じ条件で続ける
- 実績が、予約には届いたが来館に届かなかったなら、投稿から予約ページの案内や、日程の出し方を見直す
1本の結果でアカウントの良し悪しは決まりません。ただ、1本目で依頼費の上限と実績の差が見えれば、次の話し合いは「相場」ではなく「この率なら、この金額まで」という、数字の会話になります。
まとめ
- インフルエンサーへの依頼費は、フォロワー数や相場ではなく、見学予約の見込み組数から逆算して上限を決めます
- フォロワー1万人でも、率の置き方で見学予約は0.075組から4組まで開きます(仮置きの計算)
- 見学予約1組の期待粗利は、来館率 × 成約率 × 1成約の粗利で出せます。粗利の全額を依頼費にせず、何割までかを先に決めます
- 依頼前に、直近の投稿のリーチ数・リンククリック数・フォロワーの居住地と年代を見せてもらいます
- 払い方は、固定額、成果連動、その組み合わせから選びます。どの場合も、予約の入り口を数える仕組みが先です
- 依頼した投稿には、広告と分かる表示を入れてもらい、その前提でモデルを組みます
- 1本ごとに実績の率で表を作り直し、次の依頼費を決めます
