新郎新婦のリアル

結婚式の準備に夫が主体的に関わったと答えた妻は64.7%。残る3人に1人の新郎に役割を預ける年11万円の手は、成約が0.08組増えれば元が取れる。ただ、効果は年240組では測れない

見学の予約を入れるのは新婦で、当日は新郎も来る。ここまでは多くの会場で見る光景です。ただ、新郎が席に座っているだけなのか、自分の意見を持って来ているのかで、その日の帰り道の会話は変わります。

結婚式の準備に夫がどれだけ関わっているのか。ゼクシィ結婚トレンド調査2024の首都圏版に、妻に直接たずねた数字があります。「結婚式やその準備を通して、夫が主体的に関わったと思う」に「そう思う」と答えた妻は64.7%、「そう思わない」と答えた妻は16.8%、残りの17.5%が「どちらともいえない」でした。

結論を先に書きます。夫の関わりが薄い約3組に1組のために、新郎宛の1枚と直接の連絡で役割を預ける手は、仮の式場で年11万円です。成約が年0.08組増えれば元が取れます。ただし、年240組の来館では、この手の効果は測れません。測れないことを前提に、費用が軽い手は続け、重い手は先に測れる形を考える、というのが今日の話です。

この記事の調査の数字は、ゼクシィ結婚トレンド調査2024首都圏の報告書から読んだものです。後半の式場のモデル計算は、すべて僕が置いた仮の数字で、出典はありません。

調査が聞いたこと

まず調査の中身から確かめます。ゼクシィ結婚トレンド調査2024は、2024年4月から5月にかけて、2023年4月〜2024年3月に挙式または披露宴・ウエディングパーティーを実施した人を対象に行われました。調査票への記入は妻に依頼する形です。首都圏の集計は417人です。

ここで注意が2つあります。

1つ目は、答えているのが妻だということ。「夫が主体的に関わったと思う」は、夫本人の自己評価ではなく、妻の目から見た夫です。夫が「自分はやった」と思っていても、妻が「やっていない」と思えば、この数字には「そう思わない」で入ります。逆もありえます。

2つ目は、式を挙げた人しか入っていないこと。見学に来たけれど、夫が乗り気でなくて他の会場や挙式なしに流れた二人は、この調査にいません。ですから、夫の関わりが薄い二人が実際に来館する人のなかで占める割合は、この数字より高い可能性があります。逆に低いとは言いにくい。「式を挙げた人のなかで17%」が下限に近い数字、と読むのが安全です。

夫の関わりに表れる気持ちの差

同じ調査には、式をしたい気持ちを聞く設問もあります。「(あなたは)結婚式をしたいと思っていた」に「そう思う」と答えた妻は75.1%。「(夫は)結婚式をしたいと思っていたと思う」は64.0%で、「そう思わない」が17.5%でした。差は11.1ポイントです。

年ごとに見ると動きがあります。

  • 妻自身の「したいと思っていた」:2018年84.1%、2021年84.8%、2023年84.9%、2024年75.1%
  • 妻から見た夫の「したいと思っていた」:2018年70.4%、2021年76.3%、2023年68.7%、2024年64.0%

2023年から2024年にかけて、妻自身が約10ポイント落ちています。夫のほうは2021年の76.3%から12.3ポイント落ちて、2024年の64.0%です。「結婚式は行うのが当たり前だ」に「そう思う」と答えた妻も、2018年の42.0%から2024年は26.6%まで下がり、「そう思わない」は47.0%まで上がっています。

2018年は妻と夫の差が13.7ポイント、2023年は16.2ポイント、2024年は11.1ポイントでした。差が縮んだのは、夫が前向きになったからではありません。妻の側が落ちたからです。式をするのが当たり前ではなくなった結果、夫婦のどちらも、昔より「しなくてもいい」に近い場所から始めている、と読めます。僕はそう読みました。別の読み方もできる数字ですが、見学に来る二人の「前提」が10年前と違うことは、この表から言えます。

もうひとつ、数字を並べておきます。「結婚式の内容は、二人の意見・希望を重視した」は93.3%、「親の意見・希望を重視した」は26.1%で、「そう思わない」が52.3%です。決めているのは二人。親ではなく、二人の意見が通ったと感じている妻が9割を超えています。見学のとき、誰に向けて説明するかは、「二人」を基準に考えたほうがいい。この「二人」のうち、片方がほとんど話に入っていないとしたら、説明は半分しか届いていません。

夫の関わりが薄いと、会場側は何を失うか

ここから先は調査にはない話です。夫の関わりが薄い二人が、式場にとってどういう状態かを、仕組みとして整理します。

見学の場で、新婦は質問し、新郎は黙って聞いている。そのまま持ち帰りになる場面を想像してください。帰りの車で新婦が「どう思った?」と聞き、新郎が「いいんじゃない」と答える。この返事は、賛成にも、考えていないにも読めます。

会場の側から見える失い方は2つあります。

  • 見学の最中に、新郎が確かめたかったこと(総額、ゲストの席、親の立ち位置、当日の流れ)が出ないまま終わる。出なかった疑問は、持ち帰ったあとに「やっぱりやめよう」の形で出てきます
  • 契約後の打合せで、新郎が参加できない。夫が主体的に関わらなかった17%前後の二人は、準備の途中で新婦に負担が寄り、「しなければよかった」まで行かなくても、満足度を落とす要因になりえます

2つ目は調査から直接は言えません。ただ、同じ調査で「結婚式にお金を払う価値があったと思う」に「そう思う」と答えた妻は、「非常にそう思う」71.0%と「ややそう思う」22.5%を合わせて93.5%です。大多数は満足しています。そのなかで、夫の関わりという一点だけ、64.7%と他の設問より低めに出ている。ここは会場が動かせる部分が残っているかもしれない、という見立てです。

新郎に役割を預ける手の損益

では、会場に打てる手の損益を、仮の式場で計算します。打ち手は2つです。

  • 見学の終わりに、新郎宛の1枚を手渡す。内容は、確認したいこと3つ、当日の流れ、総額の内訳。「ここだけは新郎さまが決めてください」と、項目を1つ預ける
  • 見学の翌日までに、新郎にも案内が届くようにする。新婦経由ではなく、新郎のスマホに担当者から直接1通。担当者が5分でできる範囲にとどめる

前提を置きます。数字はすべて仮です。

  • 年間の来館は240組、成約率は35%、粗利は1組140万円
  • 新郎宛の1枚の作成に5万円。年1回つくり直す想定
  • 新郎への連絡は1組5分。担当者の時給を3,000円とすると、1組250円で、240組で年6万円
  • 年間の費用は合計11万円

損益分岐は、11万円÷140万円で0.079組です。年240組に対して、成約が0.08組増えれば足ります。成約率に直すと0.033ポイント。ほとんど誤差です。

調査の比率を来館組にそのまま当てはめると、夫の関わりが薄い(どちらともいえない17.5%と、そう思わない16.8%を足して34.3%)組は、年82組です。その82組のうち、0.1%、つまり0.08組だけ動けば元が取れます。費用の側から見れば、やって損をする手ではありません。

効果は測れない

ここが、この手のむずかしいところです。年240組で効果を測れるか、計算してみます。

成約率35%の見学を、120組ずつ2つの群(新郎宛の1枚あり・なし)に分けたとします。成約率の差の標準誤差は、約6.2ポイントです。2つの群の差が6.2ポイントの2倍、つまり12ポイント以上開かないと、偶然のばらつきと区別できません。

損益分岐の0.033ポイントどころか、現実的に起こりそうな3ポイントの差を見分けるのに、各群で約4,000組、年240組なら33年かかります。7ポイントでも各群で約730組、6年です。14ポイントの差があって初めて、各群182組、約1.5年で見えてきます。

つまり、こうなります。

  • 費用が軽い手(年11万円)は、効果が測れなくても、損益分岐が低いので、測らずに続けていい
  • 費用が重い手(人を置く、枠を増やす、設備を入れる)は、分岐点が見える範囲に来るので、効くかどうかを確かめないと意思決定できない

新郎宛の1枚は前者です。続けるかやめるかを決めるのは成約率ではなく、「新婦の負担を増やしていないか」を現場の感触で見るほうが、現実的です。

失敗する渡し方

注意点がひとつあります。新郎に宿題を渡すと言って、新婦の仕事を増やしたら逆効果です。

新郎が動かないままなら、1枚の紙は新婦の宿題に変わります。「渡したのに見てくれない」が、見学帰りの二人の会話に出てくると、むしろ負担です。渡し方は、新郎に直接手渡す、新郎のスマホに直接届ける、のように、新婦経由にしない形にするのが基本です。

もうひとつ、新郎が見学に来ていない場合です。土日の昼に来られない新郎には、1枚を手渡すことができません。新婦経由でしか届かない。この場合は、新郎に直接届く連絡先(メールやLINE)を新婦に聞いておくだけでも、その後の連絡が変わります。ただ、聞き方を間違えると「新郎が信用されていない」と読まれるので、「新郎さまにも同じ資料をお送りしていいですか」くらいの、軽い聞き方がいいと思います。

夫が主体的に関わった実感は、役割があるかどうかで変わる、と僕は考えています。調査の数字ではそこまでは言えませんが、「そう思わない」16.8%の妻の準備が、新郎の関わりなしで進んだ可能性は残ります。

今日の数字を読むときの注意

最後に、使うときの注意を書いておきます。

  • 64.7%は妻の見立てで、夫本人の自己評価ではありません
  • 調査は式を挙げた人の集計で、見学したのに挙げなかった二人は入っていません
  • 首都圏417人の数字なので、他の地域にそのまま当てはめられません。ゼクシィの報告書は地域別に出ています
  • モデルの数字(年240組、同席率55%、成約率42%と28%)はすべて仮置きで、出典はありません

まとめ

  • ゼクシィ結婚トレンド調査2024首都圏で、夫が主体的に関わったと答えた妻は64.7%、そう思わない妻は16.8%、どちらともいえないは17.5%でした
  • 妻から見た夫の「結婚式をしたい」は、2021年の76.3%から2024年は64.0%に下がっています。妻自身も84.9%から75.1%(2023年→2024年)に下がり、前提が変わっています
  • 回答は妻、対象は挙式をした人です。夫の本音ではなく、見学後に別の道へ進んだ二人も入っていません
  • 新郎宛の1枚と直接の連絡は、仮の式場で年11万円。成約が年0.08組、成約率で0.033ポイント動けば元が取れます
  • 年240組では、3ポイントの差を見分けるのに各群で約4,000組かかります。軽い手は測らずに続け、重い手は測れる形を先に考えます
  • 渡し方は新婦経由にしないこと。新郎の連絡先を聞くときは、疑っているように聞こえない言い方にします