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ヘアメイクリハーサルの決定事項を当日の担当に渡す手間は、仮の式場で年6万円。回収に要る成約は0.04組。決めるのは、リハと当日が別の人かどうかだ

結婚式のヘアメイクリハーサルは、式の前に髪型とメイクを試す場です。花嫁はここで、イメージ写真を見せ、何度か直してもらい、「これでお願いします」と決めて帰ります。

ところが、この「決めた」がどこに記録されて、誰が当日に見るのかは、式場によってばらばらです。リハーサルを担当したヘアメイクが当日も入るなら、本人の記憶に残っています。別の人が当日に入るなら、記録がなければ、決めた内容はリハーサルの日に消えます。

結論を先に書きます。年120組の仮の式場で、リハーサルの決定事項を写真とメモで当日の担当に渡す手間を計算すると、年6万円です。元を取るのに必要な成約は0.04組、つまり25年に1組増えれば足ります。損益だけを見れば、やらない理由がありません。

ただ、この記事で言いたいのは損益のほうではありません。先に決めるのは、リハーサルを担当する人と当日を担当する人が、同じなのか別なのか、という線です。別になる組がどれだけあるかで、引き継ぎの中身も、責任を誰が持つかも変わります。

なお、ここで使う数字は、ほぼすべて僕が置いた仮の前提です。リハーサルの実施率や、当日に「イメージが違う」と言われる割合について、僕が確かめられた公開データはありませんでした。業界の相場として読まず、自分の会場の数字に置き換えるための型として読んでください。

参考にした公開情報と、確かめられなかったこと

リハーサルの進め方について、ゼクシィの記事はいくつかの助言を載せています。ドレスの上半身に近い白いトップスで行くこと、イメージ写真やヘッドパーツを持参すること、リハーサルは上半身だけで判断しがちなので全身や当日の撮影条件を意識すること、1つのスタイルで長い時間を過ごすので持ちの良さも見ること、などです。

同じ記事群には、リハーサルで何度も直してもらって時間が延び、焦って決めてしまった花嫁の体験談も出ています。

つまり、リハーサルの場面では、花嫁側にも「決めきれないまま決める」ことが起こりえます。その状態で決まった内容を、当日の担当が正確に再現できるのか。ここが今日の論点です。

一方で、費用の相場や実施率については、検索では公開された調査を見つけられませんでした。実施率は式場やプランによって大きく違うはずなので、一般論としては書きません。以降は、置いた前提の計算です。

前提を先に置きます

仮の式場の前提は次のとおりです。

  • 年間の挙式は120組、1組あたりの粗利は140万円です
  • 来館は年300組、成約率は40%です
  • ヘアメイクは提携の外部業者で、リハーサルを受ける組は6割の72組とします
  • スタッフ1人の1時間あたりの人件費は、社会保険などを含めて2,500円とします

リハーサルを受ける割合は、実際には3割の会場も9割の会場もあるはずです。ここでは計算を進めるために6割と置きます。後で、4割と8割に動かして確かめます。

引き継ぎの中身と、かかる手間

引き継ぎは、難しいことをする必要がありません。最小の形は次の3つです。

  1. リハーサルが終わった時点で、完成形の写真を正面・横・後ろの3方向で撮る
  2. 髪型の名前、使うヘッドパーツ、メイクの色味、「ここは直した」という一言を、プランナーかヘアメイク本人がメモに残す
  3. 当日の朝、そのメモと写真を、当日の担当が見たことを確認する

手間は、1と2で、プランナーまたはヘアメイクが10分、3で当日の担当が10分と置きます。2人分で、1組あたり合計20分です。人件費にすると次のとおりです。

20分 ÷ 60 × 2,500円 ≒ 833円

これを72組に行うと、72組 × 833円で年6万円です。計算を分けて確かめます。

  • 実施率が4割(48組)なら、年4万円です
  • 実施率が8割(96組)なら、年8万円です
  • 1組あたりの手間が30分に伸びれば、6割のままでも年9万円です

どの置き方でも、年4万〜9万円の範囲に収まります。金額の桁は小さく、これを理由に見送る会場は少ないはずです。

元を取るのに必要な成約

年6万円は、成約がどれだけ増えれば回収できるでしょうか。粗利が1組140万円なので、6万円 ÷ 140万円で0.04組です。来館が年300組なので、成約率に直すと0.014ポイントです。

もちろん、リハーサルの引き継ぎが成約を直接増やすわけではありません。リハーサルを受けるのは、すでに契約した組です。効果が出るとすれば、満足した花嫁が口コミを書く、友人に紹介する、といった間接の形です。

この間接の効果は、年間の数字を見ても測れません。測れない前提で、コストが年4万〜9万円に収まっているかだけを見て決めることになります。0.04組という数字は、「これを正当化するための効果の大きさ」ではなく、「この程度の効果で足りる」という目安として使えます。

引き継ぎをしなかった場合の損

逆に、引き継ぎをしなかった場合は、何が起きるでしょうか。起こりうる場面は2つに分けられます。

1つ目は、当日の朝に、花嫁が「リハーサルと違う」と気づく場面です。ここで作り直しになれば、メイク室の時間が延びます。

仮に、リハーサルを受けた72組のうち5%の3.6組で、当日に30分のやり直しが起きるとします。その30分の間、ヘアメイク、着付け、プランナー、介添えの4人が待つと置くと、人件費は次のとおりです。

3.6組 × 4人 × 0.5時間 × 2,500円 = 年1.8万円

5%が10%に倍増しても、年3.6万円です。待つ時間が1時間なら、年3.6万円から7.2万円です。ここまで見ても、直接の人件費は、引き継ぎの手間と同じ桁です。

直接の費用は小さいのです。ですから、損の中心はここではありません。

2つ目は、時間の遅れが式の進行に波及する場面です。メイクが30分延びれば、挙式の開始時刻や、写真撮影の時間が押されます。進行が押されると、披露宴会場の入れ替えや、料理の出し方まで影響が出ます。これも金額にはなりにくい損です。

そして3つ目、もっとも大きいのは、花嫁の気持ちです。一生に一度の日に、髪型が思っていたものと違う。リハーサルまで受けたのに、と思う。この感情は、口コミや紹介の形で、式場の数字に戻ってきます。

ここから、損益の見方をはっきりさせておきます。引き継ぎを怠ったときの損は、直接の人件費では年数万円。ただし本当の損は、満足度の低下による口コミと紹介の減少で、これは測れません。

先に決める線:リハーサルと当日は、同じ人か

ここまでの計算は、リハーサルと当日の担当が別の人であっても、引き継ぎを丁寧にやれば成り立つ、という前提でした。そこで、先に決めておきたい線があります。担当が同じなのか、別なのかです。

提携のヘアメイク会社が、リハーサルと当日に同じ担当を出す約束をしているなら、引き継ぎの中身は軽くなります。本人の記憶と、本人の記録で足ります。

別の人が入る可能性があるなら、引き継ぎの質が当日の再現度を決めます。ここで、確認しておきたいことが3つあります。

  • 提携会社との契約に、同じ担当を出す約束があるか。ない場合、別の人が入る組の割合は、どのくらいか
  • リハーサルの記録は、提携会社が持つのか、式場が持つのか。当日の朝、プランナーが見られる形になっているか
  • 当日に変更があったとき、誰が花嫁に確認を取るのか

3つ目が、実は一番決めにくいところです。ヘアメイクは外部の業者です。花嫁に「リハーサルと違いますよね」と言い出すのは、ヘアメイクでしょうか。それとも式場のプランナーでしょうか。

僕は、この確認は式場の側が持つのが、堅いと考えています。理由は、花嫁が「違う」と感じたとき、その苦情は外部業者ではなく、式場に向くからです。花嫁から見れば、ヘアメイクも式場の一部です。

同じ担当を約束する場合の、別の損益

「同じ担当を約束してもらう」のは、一見すると最も確実な方法に見えます。ただし、約束には費用が伴います。

提携会社にとっては、土日の特定の日に、特定の担当を空けておく必要が出ます。人気の日に、リハーサルを担当した人が別の式に入っていれば、約束は守れません。守れない約束を結べば、契約違反の連絡と調整に、新しい手間が増えます。

そう考えると、同じ担当を約束するより、「別の人が入っても同じ仕上がりになる」記録を作るほうが、運営としては安定します。担当が同じでも、記録は残る。別になっても、記録が引き継がれる。記録が主役で、担当の固定は補助です。

運用のチェックリスト

最後に、引き継ぎの運用を、チェックリストの形にしておきます。

  • リハーサル終了時の写真は3方向。正面・横・後ろで撮る
  • メモには、髪型の名前、ヘッドパーツ、メイクの色味、直した点を書く
  • 記録の置き場所を1つに決める。プランナーが当日の朝に開ける場所にする
  • 当日の担当が、記録を見たことを一言残す。見たという事実が、責任の線になる
  • 当日に違いがあったとき、花嫁への確認はプランナーが行う

この5つは、どれも特別な道具を要りません。スマートフォンのカメラと、共有できるメモがあれば足ります。

まとめ

  • リハーサルの決定事項を当日の担当に渡す手間は、仮の式場(年120組、リハーサルを受けるのは6割)で年6万円。実施率を4割から8割で動かしても、年4万〜9万円
  • 回収に要る成約は0.04組で、成約率に直すと0.014ポイント。年間の数字では効果を測れないので、コストが数万円に収まっているかだけで決める
  • 引き継ぎをしなかったときの直接の人件費は、当日のやり直しが5%で年1.8万円。損の中心は、満足度の低下がつくる口コミと紹介の減少
  • 先に決めるのは、リハーサルと当日の担当が同じかどうか。別の人が入りうるなら、記録の質が当日の再現度を決める
  • 記録は3方向の写真と、髪型・小物・色味・直した点のメモ。置き場所を1つに決め、当日の担当が見たことを残す
  • 当日に違いが出たとき、花嫁への確認は式場側が持つ。苦情は外部業者ではなく式場に向くため