結婚式の招待客は2割減った。総額は3%しか減っていない
結婚式に呼ぶ人数は、コロナ前より約2割減ったままです。一方で、挙式・披露宴の総額は、コロナ前から約3%しか減っていません。
リクルートの「ゼクシィ結婚トレンド調査2024」では、披露宴・ウエディングパーティーの招待客は平均52.0人、挙式を含めた総額は平均343.9万円でした。コロナ前の2019年は、招待客が66.3人、総額が354.9万円です。
人数は14.3人減って、総額は11万円しか減っていない。この差が何で埋まっているのかを見ると、客単価の考え方が変わります。
招待客は戻りかけて、途中で止まっている
まず人数から見ます。ゼクシィ結婚トレンド調査の招待客数の平均は、次のように動いてきました。
- 2019年調査:66.3人
- 2020年調査:66.3人
- 2021年調査:42.8人
- 2022年調査:43.2人
- 2023年調査:49.1人
- 2024年調査:52.0人
2021年調査(2020年4月〜2021年3月に挙式した人が対象)で、前年の66.3人から42.8人へ、23.5人減りました。東洋経済オンラインもファイナンシャルフィールドも、この23.5人減を同じ数字で報じています。2022年のコロナ禍明けの報道でも、コロナ前は60〜70人台で推移していたと整理されています。
底の42.8人から、2024年の52.0人までに9.2人戻りました。ただ、コロナ前の66.3人まではあと14.3人あります。直近1年の戻りは2.9人(前年調査比105.9%)でした。単純にこのペースが続くと仮定すると、66.3人に届くまで約5年かかる計算です。これは直線で延ばしただけの試算なので、予測というより「戻りの遅さを見るための物差し」として置いておきます。
人数が戻っていない理由を、僕はこの記事では断定しません。ここで言えるのは、人数がコロナ前の水準に自動的に戻る前提で計画を立てるのは危ない、ということだけです。
総額はほぼ戻っている
次に総額です。挙式・披露宴・ウエディングパーティー総額の平均は、2024年調査で343.9万円。2023年調査の327.1万円から16.8万円増えています。2019年調査は354.9万円で、マネーフォワードの解説記事が同じ値を伝えています。
2019年と2024年を並べます。
- 招待客:66.3人 → 52.0人(14.3人減、約21.6%減)
- 総額:354.9万円 → 343.9万円(11.0万円減、約3.1%減)
人数が2割減ったのに、総額は3%しか減っていません。式場の売上を組単位で見ると、人数の減少がほとんど売上に響いていない計算になります。
ここで1つ、数字の読み方の注意があります。「総額を人数で割ればいい」と考えて、343.9万円 ÷ 52.0人を計算すると約6.6万円になります。ところが調査が公表している「招待客1人あたりの費用」の平均は8.6万円です。合いません。
理由は、平均の出し方です。リクルートの報告書の注記によると、8.6万円は「各サンプルごとに総額を招待客人数で割って、それを平均した値」です。全員の総額の平均を、全員の人数の平均で割った値ではありません。
この2つがずれるのは、人数が少ない結婚式ほど1人あたりの費用が高く出るからです。挙式料、衣装、装花のように、人数に比例しにくい費用が、少ない人数で割られるためです。小規模の式が増えると、サンプルごとの1人あたり費用の平均は押し上げられます。
つまり、「1人あたり8.6万円」と「総額÷人数の6.6万円」は、どちらも正しい数字で、聞いている問いが違います。見積もりの目安として使うときは、どちらの数字なのかを必ず確認します。
1人あたりの費用は、コロナ前より上がっている
招待客1人あたりの費用(サンプルごとに総額を人数で割った平均)は、2024年調査で8.6万円でした。
2019年調査の6.8万円は、マネーフォワードの記事でも「2009年の調査以来、過去最高」として紹介されています。そこから2024年の8.6万円まで、1.8万円、約26%上がっています。
人数が少ないほど1人あたりが高く出る関係は、人数が戻りきらない今の数字にも出ています。
ここまでをつなげるとこうなります。
- 人数は2割減った
- 総額はほとんど減っていない
- その差を、1人あたりの費用の上昇が埋めている
総額が守られているのは、新郎新婦が「少ない人数に、1人あたりより厚く使う」選び方をしているから、と読めます。値下げ圧力ではなく、使い方の配分が変わっています。
式場の売上に置き換える
調査の数字を、式場の数字に直してみます。ここからは前提を置いた試算です。計算は割り算と掛け算だけです。
前提:年間200組を施行する式場で、全国平均と同じ動きをすると仮定する。
売上の合計(総額×組数)は次のとおりです。
- 2019年の水準:354.9万円 × 200組 = 約7億980万円
- 2024年の水準:343.9万円 × 200組 = 約6億8,780万円
- 差:約2,200万円(約3.1%減)
売上は3%しか減っていません。ところが、人数の側では大きく違います。
- 提供する席数:14.3人 × 200組 = 年間約2,860席分少ない
売上がほぼ同じで席数だけが2割減っている。この数字を、会場運営の目で見ます。席数が減ると、料理や飲料を出す数も、配膳にかかる手も、本来は減ります。売上が同じなのに処理量が減るので、粗利の構造は変わる可能性があります。ただし、原価や人件費の構造は会場ごとに違います。この試算では売上までしか見ていないので、利益の話はここでは書きません。
総額を2019年の水準に戻すには、何が必要か。52.0人のまま、354.9万円に戻す場合を計算します。
- 354.9万円 ÷ 52.0人 = 約6.82万円
- 現在の343.9万円 ÷ 52.0人 = 約6.61万円
- 差:約0.21万円。1人あたり約2,100円
つまり、人数が戻らなくても、1人あたり約2,100円を上乗せできれば、総額はコロナ前の水準に戻ります。大きな値上げではありません。料理のグレード差、ドリンクの追加、演出の1つ分で届く範囲です。
逆に、人数を増やして総額を戻す道もあります。平均値で見ると、招待客1人あたりの費用は約6.6万円です。招待を5人増やす提案が通れば、約33万円、総額の約9.6%に当たります。人数を増やす提案は、1人あたりを上げる提案より、新郎新婦の心理的な抵抗が大きいはずです。招待は人間関係の話で、料理のグレードは予算の話だからです。この比較は僕の推測ですが、見積もりの組み立てを考えるときの順番としては、役に立ちます。
ご祝儀と自己負担の動き
同じ調査で、ご祝儀と自己負担も見ておきます。ご祝儀総額の平均は205.6万円で、前年の197.8万円から7.8万円増えました。カップルの自己負担額の平均は161.3万円で、前年の153.7万円から7.6万円増えています。ご祝儀の増加とほぼ同額、自己負担も増えています。
総額が16.8万円増えたうち、ご祝儀が7.8万円、自己負担が7.6万円を負担した形です。
ご祝儀の側から見ると、招待客が増えればご祝儀も増えます。人数が少ないままで総額が上がる場合、ご祝儀による回収が間に合わず、自己負担と援助が増えやすい構造になります。2024年の自己負担が増えているのは、この構造とも整合します。
新郎新婦にとっての自己負担161.3万円は、人数が戻りきらない状況で総額が上がることの痛みが出る場所です。見積もりを出す側が、自己負担をどう見せるかは、契約の判断に近いところにあります。
この数字の限界
最後に、この数字を使うときの限界も書いておきます。ゼクシィ結婚トレンド調査は、結婚情報誌『ゼクシィ』の読者とネット会員のうち、披露宴などを実施した人への郵送調査で、集計は3,656人分です。全国の婚姻件数に合わせて重みづけをした推計値ですが、ゼクシィを使わない層や、披露宴をしなかったカップルは入っていません。
自分の会場の客層が、この平均とどれだけ近いかは別の問題です。平均の52.0人に対して、自社の実績が40人台なのか60人台なのかで、打ち手は変わります。まずは自社の過去3年の人数と総額を同じ形で並べて、全国平均との差を見るところから始めるのが、いちばん安く確かめられる方法です。
決めること
ここまでの数字から、式場の経営者・決裁者が決める判断は2つあります。
1つ目は、売上の計画を「人数×単価」のどちらで組むか、です。人数がコロナ前に戻る前提で組んでいるなら、戻りの遅さ(直近1年で+2.9人)に合わせて見直す必要があります。人数が戻らなくても総額が守れる設計に寄せるのが、現実に近いです。
2つ目は、見積もりで「1人あたり」をどの数字で見せるか、です。総額÷人数の6.6万円と、サンプル平均の8.6万円は、別の数字です。会場の営業が使う「1人あたり」の定義が揃っていないと、競合比較のときに話が噛み合いません。自社の定義を決めて、営業で統一しておきます。
人数が減る流れの中で、総額を守っているのは新郎新婦の側の選択です。式場が「単価を上げる」と考える前に、すでに上がっている1人あたりの費用が、人数減の穴を埋めていることを、数字として把握しておく。そこが出発点になります。
まとめ
- ゼクシィ結婚トレンド調査2024の招待客は平均52.0人、総額は平均343.9万円。2019年調査(66.3人、354.9万円)と比べて、人数は約21.6%減、総額は約3.1%減
- 招待客は2021年調査の42.8人から回復中だが、直近1年の戻りは+2.9人。コロナ前の水準まではあと14.3人
- 1人あたりの費用(サンプルごとの平均)は6.8万円から8.6万円へ約26%上昇。人数が少ないほど1人あたりが高く出るので、総額÷人数の約6.6万円とは別の数字として扱う
- 年間200組の式場で試算すると、売上差は約2,200万円(約3.1%)。席数は年間約2,860席分少ない。総額を2019年水準に戻すのに必要なのは、1人あたり約2,100円の上乗せ
- ご祝儀(205.6万円)と自己負担(161.3万円)はいずれも前年から約7.6〜7.8万円増えた。人数が戻らないまま総額が上がると、自己負担の側に効きやすい
- 決めることは2つ。売上計画を人数と単価のどちらで組むか、見積もりの「1人あたり」をどの定義で統一するか
