集客

披露宴に来たゲストを見学につなぐなら、当日でなく後日の入口を作る

披露宴には、毎回60人前後のゲストが来ます。そのなかには、これから結婚する友人や同僚が必ず混ざっています。式場にとって、これほど会場の良さを丸ごと体験してもらえる機会は、ほかにありません。

では、その場でゲストに見学の案内を渡せばいいのか。僕は、当日にやるのは避けたほうがいいと考えています。理由は単純で、その日の主役は新郎新婦だからです。

この記事で言いたいことは一つです。披露宴のゲストを見学につなぐなら、当日に誘わず、後日に思い出した人が迷わず着地できる入口を作る。 そのうえで、入口がどれくらいの組数を連れてくるのかを、前提つきの計算で確かめます。

先に断っておくと、この記事は特定の調査の数字から組み立てた話ではありません。判断の条件と段取りを整理した記事です。「業界全体でこうなっている」とは言いません。仕組みとして、こうなりやすいという範囲で書きます。

ゲストは「見込み客」である前に「その日の参列者」

披露宴のゲストに会場を見せることは、広告で届く人を増やす手段のなかでも、体験の質が高いほうです。料理を食べ、チャペルに座り、音響や照明も実際に味わっています。見学フェアで半日かけて伝えることを、ゲストは数時間で体感しています。

ただ、この強みは、当日にゲストを見込み客として扱った瞬間に壊れます。理由は3つあります。

1つ目は、新郎新婦の日を使うことになるからです。受付やテーブルに他の人の見学案内が置いてあれば、二人は「自分たちの披露宴で営業されている」と受け取ります。契約の相手に、そう感じさせる選択は割に合いません。

2つ目は、ゲストの側に心の余裕がないからです。祝う日に、別の誰かの結婚の話を持ち込まれても、手に取った案内は帰りの荷物のなかで忘れられます。

3つ目は、紙を渡されたことが、会場への好印象を下げる原因になりうるからです。印象のよい一日を、勧誘の記憶で終わらせてしまいます。

だから当日は、何も売り込まないのが基本です。案内を出すのは、新郎新婦が同意した場合に限ります。

当日にできることと、やらないこと

当日にやらないことを決めておくと、現場が迷いません。

  • 受付やテーブルへの見学案内の設置は、新郎新婦の同意が無いかぎり行わない
  • スタッフがゲストに、結婚の予定を聞いて回ることはしない
  • ゲストが自分から「この会場、いいですね」と声を掛けてきたときだけ、案内できる状態にしておく

3つ目が大事です。ゲストが自分から興味を示した場面に答えられないと、せっかくの入口を逃します。このとき必要なのは、スタッフの口頭の説明ではなく、小さな案内を一つだけ持っておくことです。名刺サイズのカードに、会場名と「ご列席の方へ」と書いたページへのQRコードだけを載せる形で足ります。

もう一つ、新郎新婦の同意を取るタイミングにも選択肢があります。契約時のサービス内容の確認の場で「ご列席の方が会場に関心を持ったときのために、案内カードを置いてもよいか」を聞いておきます。同意しない二人には、置かないだけです。同意の有無を記録として残し、当日の担当者が確認できるようにしておきます。

この同意の取り方は、写真の掲載許諾と同じ考え方です。許諾を取る機会を契約時に一度だけ設けておけば、あとで判断が必要になる場面が減ります。

後日の入口は「ご列席の方へ」のページ一枚で足りる

参列したゲストが会場を思い出すのは、数日から数か月あとです。自分や身近な人の結婚が具体的になったときに、「あのときの会場、どこだったか」と検索します。ここで迷うのは、会場名を覚えていないことです。

ここで困るのは、会場名がうろ覚えで、新郎新婦の名前しか覚えていない場合です。この人に届く入口を考えると、次の2つが現実的です。

  • 公式サイトに「ご列席いただいた方へ」というページを一枚置く。見学の予約ボタンと、参列時に使った席・チャペルの写真、見学で確かめられること(試食、写真の見え方)を書く
  • 列席のお礼として新郎新婦が送るメッセージやサンクスカードに、会場の連絡先を添えてもらうことを、契約後の打ち合わせで提案する

どちらも、広告費を使いません。「ご列席の方へ」のページは、会場名を検索した人が最初に着地できる場所になります。既に別の記事で整理した「指名検索」の入口を、参列者向けに一つ増やす形です。

ページの中身で効くのは、参列時と同じ体験を、見学で再現できると伝えることです。たとえば「披露宴で召し上がった料理は、見学の試食で選べます」「チャペルの席に座った感覚を、見学で確かめられます」といった書き方です。ここでは料理の名前や価格は書かず、参列と見学のつながりだけを示します。

入口が連れてくる組数は、前提を置いて計算する

入口を作る価値があるかは、連れてくる組数で決まります。ただ、この種の数字は公開されていません。そこで、僕は次のように前提を置いて、式場の側で自分の数字に差し替えられる計算にしておきます。

数字はすべて仮置きです。

  • 年間の挙式組数:240組(月20組)
  • 1組あたりのゲスト数:60人
  • 年間の延べゲスト数:240 × 60 = 14,400人
  • そのうち、近いうちに結婚を考えている人の割合:5%
  • 該当するゲスト:14,400 × 5% = 720人

ここから、入口に気づいて見学を予約する人の割合を、2%(控えめ)と5%(強気)の2通りで置きます。

見学予約に至る率 見学予約 成約率30%とした成約数
2% 14組 約4組
5% 36組 約11組

成約単価を仮に350万円とすると、年間の売上は約1,400万円から約3,850万円の幅になります。もちろん、これは前提の置き方次第で大きく動きます。重要なのは金額そのものではなく、どの前提が結果を最も動かすかです。

この計算で効いているのは、「近いうちに結婚を考えている人」の割合です。5%が10%なら、組数はそのまま倍になります。つまり、列席者の年齢構成が、入口の価値を左右します。友人・同僚中心の披露宴が多い会場は、親族中心の会場より、入口の効きが出やすい構造です。

逆に、ここが小さい会場は、ページを一枚置く以上の投資はしないほうがいいです。

参考にした調査の読み方

この論点に近い調査として、検索で確認できたものが二つあります。ただ、どちらも検索結果の要約でしか読めていないので、傾向の参考として扱います。

一つは、リクルートブライダル総研による、家族や友人が参列した会場で自分が挙げることへの抵抗感の調査です。結果は割れていて、抵抗がない人が4割強、抵抗がある人が約6割という内容でした。参列した会場で挙げることに、前向きな人と慎重な人が混在していることを示しています。

もう一つは、クロス・マーケティングが2015年1月に行った調査で、直近に参列した披露宴会場で自分も挙げたいと考える参列者は、全体の1割程度でした。調査から10年が経っているので、数字そのものではなく、「参列者の全員が候補になるわけではない」という見方の参考にとどめます。

どちらの調査も、「参列がきっかけで見学した割合」を直接示してはいません。なので、上のモデル計算の見学予約率は、調査の数字ではなく、仮置きです。この点を混同しないでください。

測り方は、予約フォームの一問で足りる

入口を作ったら、効いたかどうかを測ります。新しい計測ツールは要りません。見学予約フォームの「当会場を知ったきっかけ」の選択肢に、「友人・知人の結婚式に列席した」を一つ足すだけです。

見方は二段階です。

  1. 3か月たって、この選択肢を選んだ予約が0〜1組なら、入口は続けるほどの効きが出ていない。ページはそのまま置いておくが、改善は後回しにする
  2. 3か月で3組以上あれば、列席者向けの案内を増やす余地がある。カードの設置や、サンクスカードへの連絡先の添付を、同意した二人の披露宴で広げる

ここで注意したいのは、予約フォームの選択式は、実際より少なく出やすいことです。列席がきっかけでも、検索サイトや口コミで確認してから予約する人は、「検索」を選びます。なので、選択肢の数字は下限として読みます。この読み方は、媒体別の予約数を見るときと同じ注意です。

選択肢を増やしすぎると、フォームの項目が長くなります。きっかけの項目を一つにまとめて、選択肢を3〜5個に抑えておく運用で足ります。

続けるか止めるかの判断

最後に、判断の分かれ目を整理します。

  • 友人・同僚中心の披露宴が多く、列席者の年齢が近い会場は、ページ一枚の入口を置く価値がある
  • 親族中心で、結婚を考える年代の列席者が少ない会場は、ページを置いても動かない。ほかの入口に時間を使う
  • 新郎新婦の同意が取れない場合は、カードは置かない。ページとお礼状の経路だけで続ける
  • 3か月たっても予約が0〜1組なら、列席者向けの追加投資はしない

どの場合も、当日の披露宴の場では何も売り込まない、という線は変わりません。ゲストが会場を好きになる体験は、既にその日に済んでいます。式場にできるのは、その体験が薄れる前に、思い出した人が迷わず着地できる場所を用意しておくことです。

まとめ

  • 披露宴のゲストは将来の見込み客でもあるが、当日に案内を出すと新郎新婦の日を損なう。当日は何も売り込まない
  • 案内を置くのは、契約時に新郎新婦の同意を取れた場合だけにする
  • 後日の入口は、公式サイトの「ご列席の方へ」ページ一枚と、お礼状に添える連絡先で足りる
  • 入口が連れてくる組数は、近いうちに結婚を考える列席者の割合で決まる。仮の前提では、年間で約4組から約11組の幅になる
  • 参列した会場で挙げることへの調査は割れており、列席者の全員が候補になるわけではない
  • 測るのは予約フォームの「友人・知人の結婚式に列席した」の選択肢一つ。3か月で0〜1組なら追加投資はしない