挙式後の集合写真は、押す日だけ年24回。仮の式場では、並び表を繁忙日に絞って作ると年2.9万円浮く
挙式のあとの集合写真は、披露宴の開始時刻を左右する、地味ですが大きな作業です。階段やチャペル前に全員を並べ、撮影し、控室や披露宴会場へ案内するまでの間に、予定が数分ずつ押していきます。
結論から書きます。僕は、集合写真の段取りを全組に同じ手間で整えるのは割に合わず、人気日だけ「並び表」を事前に作るのが合理的だと考えています。仮の式場で試算すると、集合写真が押して披露宴の準備が遅れる回数は、現状で年24回。全組に並び表を作ると手間のほうが高くつき、繁忙日の80組に絞ると年2.9万円ぶんだけ浮く計算です。金額は小さいです。ただ、この金額に表れない「次の組のゲストを待たせない」という価値が、判断の本体になります。
先に断っておくと、この記事に出典はありません。「集合写真が30%の日で押す」といった割合は、僕が置いた仮の数字です。実在の式場の実績でも、どこかの調査の結果でもありません。自分の会場で何回押しているかは、記事の最後に書く方法で数えてください。
集合写真が押すと、何が起きるのか
流れを確認します。挙式が終わると、フラワーシャワーやバルーンリリース、集合写真に続いて、ゲストは披露宴会場の前の待合に移ります。この間に、会場ではテーブルの最終確認、ドリンクの準備、料理の仕込みの最終段階が進んでいます。
集合写真が長引くと、この流れが後ろにずれます。ゲストの移動が遅れるだけではありません。人気日で同じ会場を1日に2回使う式場なら、前の組の披露宴の開始が遅れると、終了も遅れて、次の組の転換時間が削られます。
転換時間が足りなくなったとき、現場で起きることは3つです。配膳スタッフが延長で作業して人件費が出る。次の組の入場を遅らせて、ゲストが待つ。転換の手順を端折って、テーブルの仕上がりの質が落ちる。どれも、集合写真が10分押しただけで始まる話です。
仮の式場の前提
試算に使う前提を並べます。
- 年間の挙式は200組
- 1日に2組以上の披露宴が入る繁忙日は、そのうち80組(仮)
- 繁忙日の披露宴会場の転換には、本来60分かかり、組と組の間は75分空けてある(余裕は15分)
- 集合写真が想定時間を超えて押す日は、繁忙日の30%(仮)。押した場合の超過は平均15分
- 超過が15分を超えると、転換の余裕がなくなり、配膳スタッフ10人が15分の延長で働く
- 配膳スタッフの時給は1,300円、延長は25%割増(仮)
- 並び表は、プランナーが1組15分で作る。プランナーの人件費は1時間1,800円(仮)
この前提で計算します。
押したときの損失は、1回あたり約4,000円
配膳スタッフが10人で15分延長したときの人件費です。
1,300円 × 10人 × 15分 ÷ 60分 × 1.25 = 4,062円
1回あたり約4,000円。これが、集合写真の押しに対する、目に見える損失の単位です。
繁忙日の80組のうち、30%が押すなら、年24回。24回 × 4,062円 = 9.75万円です。
年に約10万円。式場の年間の売上から見れば、ごく小さい金額です。この金額だけを見て、「放っておいていい」と判断する人もいると思います。その判断は、人件費だけを見るなら間違っていません。ただ、次の節で見る通り、目に見えない損失が別にあります。
人件費に表れない損失が、本体になる
集合写真の押しで、本当に困るのは次の2つです。
1つ目は、次の組のゲストを待たせることです。転換が間に合わないと、次の組の入場が遅れます。待合で30分待たされるゲストは、「ここの式場は段取りが悪い」という印象を持って帰ります。その印象は、口コミや、次に式を考える友人への一言に変わります。この影響を金額にする方法は、僕は知りません。測った調査も知りません。
2つ目は、転換の手順を端折ることです。10分で終わらせるはずのテーブルの仕上げを5分で済ませると、フォークの向きや、グラスの水滴や、花の位置のずれが出ます。気づくのは、ゲストではなくプランナーと、細かい二人の親族です。
この2つは、金額で比べられません。だから僕は、「年9.75万円」という数字を、押す頻度を下げる投資の上限の目安として使うのがいいと考えます。9.75万円までなら、手間をかけて押す回数を減らしても、人件費の面では損をしない。それを超えるなら、見えない損失を含めて判断する、という使い方です。
並び表で、押す回数は減るのか
並び表とは、集合写真の並び方を事前に決めておく1枚の表です。前列に誰、後列に誰、両家の順番、車椅子のゲストの位置、小さな子どもの位置を、挙式の前日までに決めておきます。
当日の現場で「誰を前に出しますか」と聞くところから始めると、それだけで5分から10分かかります。並び表があれば、カメラマンとスタッフが表を見ながら動けるので、聞き取りの時間が消えます。
ここでも仮の数字を置きます。並び表を作った日は、押す割合が30%から10%に下がるとします。この「10%」は、僕の想像です。実際は、もっと下がるかもしれませんし、ほとんど変わらないかもしれません。
押す回数は、24回から8回に減ります。16回減ったことになり、16回 × 4,062円 = 6.5万円の人件費が浮きます。
全組に作ると、手間のほうが高くつく
並び表の費用を計算します。
全組200組に作る場合、200組 × 15分 = 50時間。50時間 × 1,800円 = 9万円です。
繁忙日の80組だけに作る場合、80組 × 15分 = 20時間。20時間 × 1,800円 = 3.6万円です。
ここで比べます。
- 全組に作る:費用9万円。ただし、人件費が浮くのは繁忙日の分だけで6.5万円。差し引き2.5万円の赤字
- 繁忙日に絞る:費用3.6万円、浮く人件費6.5万円。差し引き2.9万円の黒字
全組に作る理由が薄いのは、平日や1日1組の日は、押しても次の組がいないからです。押した15分は、配膳スタッフの待機時間になるだけで、延長の人件費が出にくい。出るとしても、片づけがずれる程度です。
僕は、この比較を見て、次のように整理します。並び表は、次の組が待っている日の、前の組にだけ作る。それ以外は、当日の現場判断で足ります。
並び表を作る手間を、さらに減らす方法
15分という手間は、さらに縮められます。僕が考えるのは3つの工夫です。
型を3つに絞る
家族構成には、おおよその型があります。両家の人数が近い場合、片方が多い場合、車椅子や杖のゲストがいる場合。この3つの型を用意して、人数だけ入れ替えて使えば、作成時間は5分に縮まります。5分になれば、繁忙日80組の費用は80 × 5分 ÷ 60 × 1,800円 = 1.2万円です。
打合せの記入欄にする
打合せのときに、二人に「前列に座ってほしい方」「動きに配慮が要る方」を聞く欄を、既存のヒアリングシートに足します。聞く場面を別に作らずに、すでに会っている時間の中で終わらせます。この方法なら、追加の手間はほぼゼロです。
カメラマンと共有する
並び表を作っても、カメラマンが見ていなければ、当日は機能しません。前日までに、カメラマンに送る手順を1つ決めておきます。写真の持ち込みカメラマンの場合は、依頼の際に共有する一言を足しておきます。持ち込みの手続きについては、別の記事で整理しました。
並び表で解決しないこと
並び表を作っても、押す原因のうち、残る部分があります。
- 天候:雨で屋外撮影が屋内に切り替わり、並べるスペースが狭くなる
- 遅刻ゲスト:挙式に間に合わなかったゲストが、集合写真の直前に到着する
- 子どもの機嫌:小さな子どもが泣いて、撮影が止まる
- 人数の追加:当日に、予定になかった親族が増える
この4つは、並び表では減らせません。だから、僕は「並び表で押すのが30%から10%になる」と仮定しつつ、ゼロにはならないと見ています。残りの10%は、転換の余裕である15分を守るために、撮影の持ち時間に上限を決めておくことで対応します。たとえば、「撮影は集合から10分で終える。10分を超えたら、残りは披露宴の入場前に撮る」という線を引いておけば、押しの上限が決まります。
この線は、カメラマンとスタッフが共有しておかないと使えません。現場の一言で「そろそろ切り上げましょう」と言える人を、前もって決めておきます。僕は、プランナーよりも、会場の進行を見ている支配人やチーフが言うほうが通りやすいと思っています。ただ、これは式場ごとの組織の話で、一般論としては言い切れません。
自社の数字で確かめる方法
仮の数字のまま決めるのは危ないので、確かめる方法を書きます。
- 繁忙日の披露宴について、次の2つの時刻を記録する:集合写真の予定終了時刻と、実際の終了時刻
- 3か月続けて、予定より何分押したかを一覧にする
- 一覧から、押した回数(予定より5分以上遅れた回)と、平均の超過時間を出す
繁忙日が3か月で20組なら、押した回数が6回、平均超過が15分なら、僕の仮置きと同じ水準です。回数が2回しかなければ、そもそも対策は要りません。逆に10回を超えるなら、並び表より前に、撮影場所や集合の仕方を見直すべきです。
もう1つ、記録するとよいのは、押した日の原因です。天候、遅刻ゲスト、子ども、人数追加、並びの決め直し。5つくらいに分けて印をつければ、並び表で減らせる分がどれだけあるかが見えてきます。並びの決め直しが原因の半分以上を占めていなければ、並び表の効果は小さいと判断できます。
判断をまとめる
仮の前提で整理します。
- 押した日の損失は1回約4,000円。年24回で約10万円
- 並び表を全組に作ると、手間が浮く人件費を超える。次の組が待つ繁忙日に絞ると、年2.9万円浮く
- 型を3つに絞り、打合せのヒアリングシートに欄を足せば、手間はさらに減る
- 天候、遅刻、子どもの機嫌は並び表で防げない。撮影の持ち時間の上限を決めて対応する
- 見えない損失(次の組のゲストの待ち時間、転換の質)は金額にしない。年10万円を、手間をかけてよい上限の目安にする
どれも、規模の小さな改善です。ただ、押しているかどうかを数えていない式場は多いと思います。まず3か月数えるだけで、この記事の仮の数字が自社の実態に近いのか遠いのかが、分かります。
まとめ
- 集合写真が押すと、披露宴の開始が遅れ、繁忙日の転換の余裕15分が削られる。数字はすべて仮置き
- 配膳10人が15分延長すると約4,062円。繁忙日80組の30%が押すなら、年24回で約9.75万円
- 並び表を全組に作ると9万円の手間で、浮く人件費は6.5万円。繁忙日に絞ると手間は3.6万円で、年2.9万円浮く
- 型を3つに絞る、ヒアリングシートに欄を足す、カメラマンと共有する、の3つで作成の手間は縮められる
- 天候、遅刻ゲスト、子どもの機嫌、人数の追加は並び表で防げない。撮影の持ち時間に上限を決めておく
- 自社の数字は、繁忙日の集合写真の予定終了と実際の終了を3か月記録し、押した原因まで印をつけて確かめる
