式場の内金は、契約日に払えず保留になる二人を減らす案内から
契約日に、二人が「カードの限度額が足りないかもしれません」「内金は振込だと思っていました」と言い出して、契約が翌週に延びる。現場ではよくある場面だと思います。
結論から書きます。契約日の保留には、気持ちの迷いではなく、内金の払い方を二人が知らなかっただけ、というものが混ざっています。気持ちが固まっている二人まで、支払いの段取りで持ち帰らせてしまう。これは見学の段階で払い方を案内しておけば減らせます。何を、どこで、いつ伝えるかを整理します。数字はすべて仮置きで、出典のある統計ではありません。
契約日の保留は、迷いと段取りに分けて数える
契約日に持ち帰る二人を全部「迷っている」とひとまとめにすると、打ち手が見えなくなります。僕は次の2つに分けて数えるのをおすすめしています。
- 迷いの保留:他の式場とまだ比べたい、親に相談したい、日取りが決まらない
- 段取りの保留:内金の額を知らなかった、払い方が合わなかった、手元の準備が間に合わなかった
迷いの保留は、見学での説明や比較の軸を変えないと動きません。段取りの保留は、気持ちがすでに決まっているので、先に伝えておくだけで消える可能性があります。同じ「持ち帰り」でも、効く手が違います。
分け方は難しくありません。契約日に持ち帰った二人について、担当者のメモに理由を一言だけ書いてもらいます。「払い方」「額」「準備」の言葉が出ていれば段取りの保留です。1か月分も溜まれば、自分の式場でどちらが多いかが見えてきます。
仮に月20組が契約日を迎えるとすると
ここからは、前提を置いたモデル計算です。実在の式場の数字ではないので、自分の式場の数字に置き換えて読んでください。
前提は次のとおりです。
- 月に20組が、契約のつもりで契約日を迎える
- そのうち3組(15%)が、内金の払い方や額が理由で、その日は契約せず持ち帰る
- 持ち帰った組のうち、後日契約に戻るのは6割。残りの4割は、他の式場に流れる、熱が冷める、親の意見が変わるなどで戻らない
- 1組の契約で残る粗利は80万円
この前提だと、戻らない組は月に3組×0.4で1.2組です。粗利にして月96万円、年間で1,152万円になります。
見学の段階で払い方を案内して、段取りの保留が3組から1組に減ったとします。戻らない組は1組×0.4で0.4組。差は月0.8組で、粗利は月64万円、年間768万円です。
戻る割合を変えると、重さも変わります。戻る割合が4割なら、保留3組で失う粗利は月144万円。8割戻るなら月48万円です。戻る割合が低い式場ほど、段取りの保留は重くなります。人気日を狙う二人が多い式場や、近くに競合が多い式場は、戻る割合が低くなりやすいと考えられます。ただし、これは仕組みから言える範囲の話で、どの地域でそうなるかを言い切る根拠は持っていません。
見学の段階で伝えておく内金の3点
二人が契約日に困る点は、内金に関しては3つに絞れます。
1. 額の目安
契約日にはじめて内金の額を聞くと、二人は「思っていたより高い」と感じて、そこで止まります。総額の何%か、または概算の金額帯を、見積もりを出す見学の段階で伝えておきます。
大事なのは、額そのものより「いつ聞いたか」です。見学の途中で一度聞いていれば、契約日の金額は驚きになりません。額をいくらにするかの話は別の記事で扱っているので、ここでは伝える時期だけに絞ります。
2. 払える方法
現金、振込、カード、ローンのうち、何が使えるか。ここが二人の予想とずれると、その場で払えません。特にカードは、限度額が足りるか、分割にできるか、手数料はどちらが持つかで、二人の判断が分かれます。
使える方法は一覧にして、見学の資料か予約完了のメールに書いておきます。「内金の払い方は、現金・振込・カードが選べます」と1行あるだけで、二人は準備ができます。
3. 払う期限
契約日に全額を払うのか、何日以内に振り込めばよいのか。期限が分からないと、二人は「今日払えないなら契約できない」と思い込みます。期限に幅があるなら、その幅を先に伝えます。
幅がない式場でも、幅がないと見学で伝えておけば、二人は準備した状態で契約日を迎えられます。幅がないこと自体は問題ではありません。知らされていないことが問題です。
伝える場所は3か所に分ける
3点を、見学の最後の「契約の話」にまとめて入れると遅すぎます。二人はもう決めたつもりで聞いているので、そこで新しい条件が出ると身構えます。僕は次の3か所に分けて置くのがよいと考えています。
- 見学予約の完了メール:払える方法を1行
- 見積もりを出す場面:内金の額の目安を、総額の隣に
- 契約日の前日の連絡:持ち物と払う期限の確認
予約完了のメールは、二人が一度は読み返す場所です。ここに書いておけば、見学前から払い方を知った状態で来館してもらえます。
見積もりの隣に内金の額を置くと、二人は総額と同じ画面で「最初に出ていくお金」を見ます。契約日にはじめて出てくるより、心の準備ができます。
契約日の前日の連絡は、持ち物の確認を兼ねます。「当日は内金のお支払いがあります。現金・お振込・カードからお選びいただけます」と書き、カードの場合は限度額の確認をお願いします。これで、当日の「足りないかも」はかなり減らせます。
段取りの保留が減ったかを測る
案内を足したら、減ったかどうかを測ります。見る数字は2つです。
- 契約日に持ち帰った組のうち、理由が「段取り」だった割合
- 契約日に契約した組の割合(契約日を迎えた組が分母)
前者が下がり、後者が上がれば、案内が効いています。後者だけが上がって前者が変わらないときは、案内以外の要因(季節の波、フェアの本数、担当者の入れ替わりなど)が動いた可能性があります。前者が下がったのに後者が変わらないなら、段取りの保留が減った分だけ、迷いの保留が表に出てきたと読めます。
数え始めは件数が少なく、月ごとのブレが大きくなります。1か月で判断せず、3か月は同じ数え方で続けてから、続けるか直すかを決めるのが安全です。
当日払えなかった二人への受け方も決めておく
案内を足しても、当日払えない二人はゼロにはなりません。そのときの受け方を決めていないと、担当者ごとに対応が割れます。「では来週また来てください」と返せば、二人は来週までに他の式場を見ます。
決めておくのは、次の3つです。
- 別の方法に替えられるか:カードで足りないなら振込に、振込が間に合わないなら後日の入金に、と選べるようにしておく
- 契約書への署名と入金を分けられるか:署名はその日に済ませ、入金は数日後にできる式場なら、二人の熱が冷める前に契約を結べる
- 日程の押さえをどう扱うか:入金までの数日間、希望の日取りを仮に押さえておけるかどうか
どれを認めるかは式場ごとに事情が違うので、僕は「こうすべき」とは言えません。ただ、認めるかどうかを前もって決めておけば、担当者は二人にその場で選択肢を示せます。示せれば、持ち帰りが「来週また」から「入金は金曜までに」に変わります。後者のほうが、戻らない組は少なくなるはずです。
もうひとつ、ローンを使う二人は別に考えます。審査に日数がかかるので、契約日に内金を払えないのは最初から分かっています。この二人には、見学の段階で「ローンを使う場合は審査に何日かかり、その間は日取りをどう押さえるか」を伝えておきます。契約日に初めて知らされると、審査待ちの間に不安が膨らみます。
なお、段取りの保留は担当者の経験年数で偏ることがあります。新しい担当者ほど、契約日の支払いの話を後回しにして、署名の直前に切り出しがちです。個人の力量の問題にせず、案内の紙とメールを式場の側で用意しておけば、誰が担当しても同じ順番で伝わります。
書き方を誤ると圧になる
内金の案内は、書き方によっては契約を急かす圧になります。気をつけたいのは次の3つです。
- 「契約を前提に」という書き方にしない。「契約される場合は」と、選ぶのは二人だと分かる言い方にする
- 期限を煽らない。期限は事実として伝え、「今日中でないと」のような言い方は使わない
- 払えない二人を責めない。払えないときの選択肢(日を改めて振り込む、別の方法に替える)も同時に書く
払い方を先に伝えるのは、契約を急かすためではありません。二人が準備した状態で、落ち着いて決められるようにするためです。この線を守れば、段取りの保留を減らしながら、迷いの保留を増やすことは避けられます。
動き出す順番
最後に、順番をまとめます。
- 直近3か月の契約日の持ち帰りを、「迷い」と「段取り」に分けて数える
- 段取りの保留が全体の1割を超えていたら、案内の見直しに進む
- 額の目安・払える方法・払う期限を、1枚の紙か数行の文にまとめる
- 予約完了メール、見積もりの隣、契約前日の連絡の3か所に置く
- 3か月、同じ数え方で見る
段取りの保留が1割に届かない式場なら、案内を足す前に、迷いの保留のほうを見たほうが早いです。どちらが大きいかは数えてみるまで分からないので、まず数えるところから始めます。
まとめ
- 契約日の持ち帰りは、迷いの保留と段取りの保留に分けて数える
- 段取りの保留は、気持ちが決まっているのに内金の払い方で止まる組で、先に伝えれば減らせる
- 仮に月20組が契約日を迎え、3組が段取りで持ち帰り、6割しか戻らないなら、粗利で年間1,152万円が失われる計算になる(前提つきの仮置き)
- 伝えるのは、内金の額の目安、払える方法、払う期限の3点
- 置く場所は、予約完了メール、見積もりの隣、契約前日の連絡の3か所に分ける
- 効いたかは、持ち帰りに占める段取りの割合と、契約日に契約した組の割合で、3か月見る
- 言い方は「契約される場合は」とし、期限を煽らず、払えないときの選択肢も添える
