業界動向

カメラマンやMCへの支払いは「月末締め翌月末払い」で足りるか。60日の数え方が割れていて、土日に当たって引っかかるのは2028年7月1日の土曜だけ

個人で請けているカメラマンやMC、ヘアメイクに、式場が払う報酬の日付は、いつ決めたものでしょうか。多くの式場では「月末に締めて、翌月末に払う」という経理の都合で決まったまま、何年も動いていないと思います。

2024年11月に施行されたフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、この日付にも決まりを置いています。報酬は、仕事を受け取った日から60日以内に払うことです。月末締め翌月末払いは、ほとんどの月で60日に収まります。ただ、収まらない日が年に2日だけあります。7月1日と12月1日に受け取った分は、翌月末まで待つと61日になります。

しかも、この「61日はアウトか」について、公正取引委員会の説明と、税理士系の解説記事で言っていることが違います。この記事では、どちらが正しいかを僕が決めることはしません。割れている事実をそのまま書いたうえで、式場の側で何を決めておくと困らないかを、仮の式場の数字で並べます。

先に断っておくと、この記事の制度の説明は、報道と解説資料から読んだ内容です。条文や公取委のQ&A本文そのものは確認できていません。後半の金額は、すべて僕が置いた仮の前提で、出典はありません。

法律が置いている決まり

フリーランス法の中で、式場の経理に直接関わるのは次の2つです。

1つ目は、取引条件の明示です。業務を頼んだら、業務の内容、報酬の額、支払期日、双方の名称を、書面かメールなどの電磁的な方法で、すぐに示す必要があります。口頭だけでは足りません。東京労働局の資料では、この義務の違反そのものに罰則が付くのではなく、行政の勧告や命令の対象になり、その命令に従わなかった場合に50万円以下の罰金になる、という段階で説明されています。

2つ目が、支払期日です。受け取った日から60日以内の、できるだけ短い期間で、日付を決めて払います。「検収が終わってから」「入金があり次第」のような決め方は、日付を特定していないので認められません。

相手は、従業員を使っていない個人や、代表者1人の法人です。式場の常時の社員ではなく、案件ごとに頼んでいる外部の人が当たります。婚礼では、次のような人たちです。

  • 披露宴の司会者(MC)
  • 挙式や披露宴、前撮りのカメラマン、ビデオカメラマン
  • ヘアメイクや着付けの担当
  • 生演奏の奏者、フラワーデザイナーなど

式場は、この個人から見れば発注する側です。従業員を使っている式場なら支払期日のルールがかかる、と僕は読んでいますが、条文では確かめていません。

受け取った日はいつか

60日を数えるには、起点の「受け取った日」を決める必要があります。婚礼の外注では、これが意外と一つに決まりません。

司会者のように、挙式当日に仕事そのものが終わる役務なら、起点は挙式の日です。カメラマンは少し込み入ります。撮影は挙式の日に終わりますが、渡すのは写真のデータやアルバム用の画像で、納品が数日から数週間あとになります。式場が受け取るのが撮影した当日なのか、データを受け取った日なのかで、起点が変わります。

僕が確かめられた範囲では、この線引きまで書いた解説は見つかりませんでした。なので、ここは式場ごとに決めておくしかありません。決め方の考え方は2つです。

  • 撮影そのものを頼んでいるなら、挙式の日を起点にして、日付を決めておく
  • 納品物を受け取ることが目的なら、納品を受けた日を起点にして、納品の期限も日付で決めておく

どちらにしても、取引条件の書面に「何を受け取った日から数えるか」を書いておけば、あとで食い違いません。

月末締め翌月末払いを数える

次に、月末締め翌月末払いが、実際に何日になるかを数えてみます。仕事を受けた日から、翌月の末日までの日数です。

  • 1月1日に受けた分は、2月28日払いで58日
  • 3月から6月、8月から11月に受けた分は、どの日でも60日以内
  • 7月1日に受けた分は、8月31日払いで61日
  • 12月1日に受けた分は、1月31日払いで61日

61日になるのは、受けた月と翌月がどちらも31日ある組み合わせ(7月と8月、12月と1月)の、月の1日だけです。同じ月でも2日以降に受けた分は、60日に収まります。

2026年から2035年までの10年を数えたところ、61日に当たる日は毎年7月1日と12月1日の2日だけでした。では、そのうち土日に当たる日はいつか。

  • 2028年7月1日(土曜)
  • 2029年7月1日(日曜)と12月1日(土曜)
  • 2030年12月1日(日曜)
  • 2034年7月1日(土曜)
  • 2035年7月1日(日曜)と12月1日(土曜)

2026年と2027年は、該当日がすべて平日です。挙式が入る土日で数えると、直近で当たるのは2028年7月1日の土曜日になります。次が2029年7月1日の日曜、同じ年の12月1日の土曜です。

2026年と2027年の土日の挙式には、1件も当たりません。数え方だけで言えば、当面慌てなくてよい話です。

見解が割れている点

ただし、この数え方が正しいかどうかは、また別の話です。僕が見つけた範囲で、見方は二つに分かれていました。

一つは、公取委の説明です。労働新聞社の報道によると、2024年8月の説明会で、公取委の担当室長が「受領後60日以内」を「受領後2か月以内」と運用すると述べたと伝えられています。この読み方なら、月の暦日数にかかわらず、毎月末日締めの翌月末日払いも認められます。7月1日の61日分も、問題になりません。

もう一つは、税理士系の解説記事の見方です。マネーフォワードの解説(2026年3月3日作成)は、大の月が重なると「翌月末払い」は61日になって違法になりうるので、「翌月20日払い」のように短縮したほうがよい、という立場を取っています。公取委の運用とは、日数の数え方が異なります。

どちらが正しいかは、条文とQ&Aの原文にあたらないと、僕には言い切れません。ただ、式場の側から見ると、判断の分かれ目はこう整理できます。

  • 公取委の運用の通りなら、今の支払日のままでも違反にはならない
  • 解説記事の見方が正しければ、年に2日(7月1日と12月1日)に受けた分だけが違反になる
  • 後者の場合でも、該当するのは7月1日と12月1日に受けた分だけで、対象の仕事は数件

つまり、損をするとしても件数が少ない話です。そして、念のために避けたいなら、避けるための費用は小さい。次の節で、いくら小さいかを計算します。

前倒しする費用を計算する

ここからは、すべて仮の前提です。出典はありません。

仮の式場は、年120組の挙式を受けます。外部の個人に頼むのは、司会者とカメラマンの2人です。1組あたりの報酬を、司会者3万円、カメラマン8万円と置きます。合計で年間1,320万円です(120組×11万円)。

支払日を「月末締め翌月末払い」から「月末締め翌月15日払い」に前倒しします。前の表の通り、月末締め翌月末払いの平均は45.1日、翌月15日払いは29.7日です。平均で約15日、早く払うことになります。

早く払った分だけ、式場の手元の現金が減ります。減る額は、年間の支払額を365で割って15日分かけた約54万円です。これを一時的な借入で賄うとして、金利を年2%と置くと、1年あたりの費用は約1万1千円になります。

支払日を「翌月25日払い」にした場合は、平均が39.7日で、最大でも55日です。月末払いより平均で約5日早く、費用は年に約3,900円です。7月1日も12月1日も、55日以内に収まります。

この金額は、判断の材料としては小さすぎます。損得より、他にかかる手間のほうが重いと思います。

  • 支払日を変えることを、外部の人に通知する手間
  • 請求書の締め日と経理の締め日を合わせる手間
  • 現場から経理に回る伝票の流れを直す手間

とくに最後の手間が現実的です。月末にまとめて処理している経理に「25日にも一度払う」運用を足すと、振込の回数が月1回のままなら問題ありませんが、月2回に増えるなら、手間は無視できません。

判断の分かれ目

整理すると、式場が選べる道は三つです。

  • 今のまま。公取委の運用の通りと読むなら、変えなくてよい。ただし、取引条件の書面に支払日を日付で書く
  • 「翌月25日払い」に寄せる。見解が割れていても、どちらの読み方でも収まる。費用は年に4,000円ほど
  • 受け取った日を起点にした個別の払い方。納品がずれるカメラマンだけ、納品日から数えて条件を書く

僕なら、どう選ぶか。まず、支払日を日付で書いた書面が、全員に出ているかを確かめます。法律が最初に求めているのは、支払日の短さより、取引条件を書いて渡すことだからです。口頭で「いつもの通りで」としか言っていない相手がいると、そこが最初に問われる場所になります。

そのうえで、月末締め翌月末払いを続けるか、25日に寄せるかは、経理が動けるほうで決めればよいと思います。7月1日と12月1日の分が年に数件、という規模なら、どちらを選んでも損は小さいです。

取引条件の書面に入れておくこと

支払日の日数より先に、書面に何を書くかを決めておくと、あとが楽です。式場が外部の個人に出す書面には、次の項目を入れておきます。

  • 頼む仕事の内容(挙式の撮影、披露宴の司会、前撮りの撮影など、場面ごと)
  • 報酬の額(1件あたり、または時間あたり)
  • 支払期日(「月末締め翌月25日」のように、日付で書く)
  • 受け取った日として扱う日(挙式の当日か、納品を受けた日か)
  • 双方の名称

挙式日が決まった時点でメールで送る形にしておけば、組ごとに1通で済みます。メールの文面を一つ用意して、組の名前と日付を差し替えるだけにすれば、事務の手間は1通あたり数分です。

まとめ

  • フリーランス法では、報酬を受け取った日から60日以内に払う。相手は個人のカメラマン、MC、ヘアメイクなど、従業員のいない外部の人
  • 月末締め翌月末払いが61日になるのは、7月1日と12月1日に受けた分だけ。土日では2028年7月1日の土曜が最初
  • 公取委は「60日以内」を「2か月以内」と運用すると説明したと報じられている。一方、解説記事には、大の月が重なれば違法になりうるとする見方もある
  • 前倒しの費用は、仮の式場(年間1,320万円)で、翌月25日払いなら年に約3,900円
  • 支払日を短くするより先に、支払日を日付で書いた書面を、全員に出しておく
  • 起点の「受け取った日」は、挙式の当日か、納品を受けた日かを、書面に書いて決める